図6.5 プランクの熱放射式(a)と1振動子あたりのエネルギー配分(b)
これは,熱力学で圧力Pとエネルギー密度uの間に成り立つ関係P =u/3を用いて導かれ るシュテファン-ボルツマンの法則3 であり,ここでは係数まで決定することができた。さ らに,単位面積への衝突数の公式(1.8)で粒子(光子)の速さはすべて光速度cとし,粒子 数密度nの代わりにエネルギー密度uを代入することにより,放射エネルギー流の公式
Q= cu
4 =σT4
が得られ,係数(シュテファン-ボルツマン定数)σ =cα/4の値は σ = 2π5k4
15c2h3 = 5.6705×10−8W/m2K4
となる。統計力学では,関係式P =u/3も大分配関数を計算することにより直接導くこと ができる。(演習問題25参照)なお,(6.22)を温度Tで微分すればわかるように,電磁場の 定積比熱もT3則に従うが,固体と違い振動数の上限がないため全温度域で成り立つ。
問2 熱放射のエネルギー強度が最大となる波長λmaxが温度に反比例することを示せ。
[λmaxT = 2.898×10−3mK。これをウィーンの変位則という。]
3 dU =TdS−PdV より ∂U
∂V
T
=T ∂S
∂V
T
−P =T ∂P
∂T
V
−P = T 3
du dT −u
3 一方,U =u(T)Vより(∂U/∂V)T =u,以上よりdu/u= 4dT /T,よってu∝T4。
7 章 量子統計
すでに古典統計にも利用してきたように,量子力学では状態が連続ではなく飛び飛びで,状態の 数を数えることができるという,統計力学にとっては大変つごうのよい構造を持っていた。しかし ながら一方で量子力学的粒子は,同種粒子は番号づけて区別することをしないという約束があると 同時に,その種類に応じて異なる統計的規則に従うため,状態数を数え上げる際に注意を要する。
7.1 量子統計
3章の最後でふれたように,量子力学では同種粒子は番号づけて区別することをしない1の で,状態数を数えるときに注意を要する。1粒子のエネルギー準位を{i}(i= 1,2,3,· · ·)で 表すとき,量子統計では
どの準位を何個の粒子が占拠しているか?
だけで状態を区別する。つまり,各準位を占拠している粒子数の組{ni}で状態が決まる。
さらに量子統計では,粒子の種類によって準位の占拠可能数niに関して以下の2通りの規 則がある。
(a) ボーズ-アインシュタイン統計(BE統計)
同一準位をいくらでも占拠することができ,ni = 0,1,2,3,· · ·,∞である。
(b) フェルミ-ディラック統計(FD統計)
同一準位を2つ以上の粒子が占拠することはできず,ni = 0,1だけである。
(a)の性質を持つ粒子をボーズ粒子(ボゾン),(b)の性質を持つ粒子をフェルミ粒子(フェ ルミオン)という。光子や質量数が偶数の4Heなどの原子核は前者,電子・陽子・中性子 あるいは3He原子核などは後者である。
これに対して古典統計では
どの粒子がどの準位を占拠しているか?
1 粒子が十分離れているときにはもちろん区別できるが,衝突前に仮に番号1,2を付けておいても,接近 して2粒子の波動関数が重なり合ったあと再び離れたときに,どちらが「元1」か「元2」かを問うことはで きないであろう。したがってこのことが意味を持つのは,衝突を繰り返しながら粒子が全体積を動きまわる気 体のような場合であって,量子力学的粒子であっても固体のように運動が局在している場合は,番号づけら れるとしても差し支えない。これは逆に古典力学的粒子の場合にN!で割る必要がなかったのと同様である。
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で状態を区別する。こうして状態数を数えたあと,必要ならばN個の同種粒子の置き換え 数N!で割ったものを,特にマクスウェル-ボルツマン統計(MB統計)という。
ボーズ分布 系全体の粒子数N =ini,エネルギーE =iniiのどちらか,あるいは その両方を決めておいて可能な状態数を数え上げるのは,エネルギー準位の構造がごく簡 単な場合を除いて一般にはやっかいである。(ミクロカノニカル分布の方法→演習問題22)
実はこの場合には粒子数を制限しない大きいカノニカル分布の方法が最も便利である。占 拠数を表す整数の組{ni}に1つの状態が対応するから,大分配関数を求める(4.18)におい
て状態数GN(E) = 1とおき,可能な整数の組{ni}について和をとるだけでよいのである。
ボーズ粒子の場合,ni = 0,1,2,· · ·であるから,大分配関数は等比級数の公式を利用して 次式で与えられる。
Ξ(T, V) =
{ni}
e−β(E−µN) =
∞ n1=0
∞ n2=0
· · ·e−β(i−µ)ni
= !
i
∞ ni=0
e−β(i−µ)ni =!
i
1 1−e−β(i−µ)
∴ logΞ(T, V) =−
i
log(1−e−βi+α) , (α=βµ) (7.1) ここでも,βµ=αとおいた。これを用いれば,(4.20),(4.21)により
E =−∂logΞ
∂β =
i
ie−βi+α
1−e−βi+α =
i
i
eβ(i−µ)−1 (7.2)
N = ∂logΞ
∂α =
i
e−βi+α
1−e−βi+α =
i
1
eβ(i−µ)−1 (7.3)
となる。したがって,エネルギーiの準位を占拠する粒子数の期待値2は ni = 1
eβ(i−µ)−1 (7.4)
となる。これはボーズ分布と呼ばれ,古典統計のマクスウェル-ボルツマン分布に対応する。
全粒子数の期待値を与える(7.3)は,粒子数Nが与えられている場合に,化学ポテンシャル µをNおよび温度T,体積V の関数として決める条件として用いることができる。
電磁波を粒子と見なした光子(フォトン)もボーズ粒子であり,(7.4)においてµ = 0,
i = hνとおき,エネルギーhνと状態密度(振動数分布)g(ν)をかければ,前章の(6.20) が得られる。すなわち,熱放射中の振動数νの電磁波の強度は,エネルギー量子hνを持つ 光子の数に比例すると考えればよい。この場合の化学ポテンシャルµ= 0は,光子が容器
2これで安心できなければ,最初にβµ
ini=
iαiniとし,logΞ(T, V) =−
ilog[1−exp(−βi+αi)],
ni=∂logΞ/∂αi= 1/[exp(βi−αi)−1]と計算した後,すべてのαi=βµに戻せばよい。