5-1-1スピン磁気モーメントおよび軌道磁気モーメントの導出
Fe3Ptのスピン磁気形状因子FM,S(k)および軌道磁気モーメントFM,L(k)は以下のようにな る。
μ μ
μ μ
μ μ μ μ
上の式では、Pt, Fe のスピン磁気形状因子を μS,Pt(k), μS,Fe(k) とし、軌道磁気形状因子を
μL,Pt(k), μL,Fe(k)としている。双極子近似モデルでは、各原子のスピン磁気形状因子は以下
のように表される。
μ μ
PtとFeのスピン磁気モーメントをそれぞれfS,Pt, fS,Feで表している。
軌道磁気形状因子では以下の式で表される。
μ μ
PtとFeの軌道磁気モーメントをそれぞれfL,Pt , fL,Feで表している。
これらの関係を利用し、PtとFeのスピン磁気モーメントおよび軌道磁気モーメントをフ ィッティングパラメータとして、最小二乗法による評価を行う。
最小二乗法の基本として残差の二乗和Δを考える。理論磁気形状因子FM,clcと実測磁気形
状因子FM,obsの残差の二乗和は以下のようになる。
評価の基準は、この残差の二乗和が最小になるものが最善であることである。この処理は スピン磁気形状因子、軌道磁気形状因子ごとに行う。
(5-4) (超格子反射) (基本反射)
(超格子反射) (基本反射)
(5-1)
(5-3) (5-2)
45 5-1-2.フィッティングパラメータの導出
磁気形状因子の理論値と測定値の残差の二乗和Δについて考えて行く。本研究の測定にお いては基本反射と超格子反射を得ることが出来た。よって基本反射系列では i=n とし、超 格子反射系列ではi=mと置く。また、式の簡略化のためFM,clc,i(k)をFci、FM,obs,iをFoiと置 き換え記述する。磁気モーメントの評価は、スピン磁気モーメント、軌道磁気モーメント 毎に行う。スピン磁気モーメントの場合、 , を、
と置き換え、軌道磁気モーメントの場合、 ,
は
と置き換えて、導出式に適用する。
残差の二乗和Δを基本反射、超格子反射の場合に分けて考える。基本反射系列では , 超格子反射系列では とする。以下にこれを示す。
この二つの式を合わせたものを残差の二乗和Δとして取り扱う。以下の式で与えられる。
(5-7)
(5-8)
(5-9) (5-5)
(5-6)
46 と表す。
Ptの磁気モーメントfPtについて解いていく。fPtで偏微分を行うと、
となる。Δが最小にするため、微分が 0 になると置く。この式を展開し、磁気モーメント で整理すると以下のようになる。
ciを基本反射の場合cn 、超格子反射の場合cmとすると以下のようになる。
以上の(5-11)式を、
により、書き換えを行うと以下の式のようになる。
Feについて解いていく。fFeにて偏微分を行う。(5-10)式と同様に結果を0と置き、Δが 最小になる場合を考える。
(5-10)
(5-11)
(5-13)
(5-15) (5-14) (5-12)
47
この式を展開し、磁気モーメントで整理すると以下のようになる。
diは基本反射の場合dn 、超格子反射の場合dmとすると以下のようになる。
同様に簡略化のために以下のように置き換える。
これらによって(5-15)式は
のように表される。(5-13)式、(5-17)式の2つの結果を行列式にまとめる。
この行列式を磁気モーメントについて解く。
これにより磁気モーメントμPt μFeが求められる。
(5-16)
(5-18)
(5-20)
(5-21) (5-19) (5-17)
48 5-1-3.最小二乗フィッティングの解析誤差
スピン磁気モーメントおよび軌道磁気モーメントの誤差
原子ごとのスピン磁気モーメントの誤差ΔμPt,S , ΔμFe,S 、軌道磁気モーメントの誤差ΔμPt,L , ΔμFe,Lを求めて行く。C1, C2に含まれる誤差をΔC1, ΔC2とすると以下の式で表す事が出来 る。
ΔC1,S , ΔC2,Sはスピン磁気形状因子の誤差 により以下のようになる。
ΔC1,L , ΔC2,Lは軌道磁気形状因子の誤差 により以下のようになる。
以上のように、スピン磁気モーメントの誤差と軌道磁気モーメントの誤差を求める。
(5-22)
(5-23)
(5-24)
49 5-1-4.双極子近似モデル
解析にはFe+1価~+4価、Pt+1価~+5価を利用し双極子近似モデルにより行った。Feにつ いては、International Table11)から引用したデータにより計算を行った。Ptについては群 馬大学小林ら6)により計算された数値を引用した。
双極子近似モデルにより、Fe と Pt のスピン磁気形状因子とスピン磁気モーメントは(5-2) 式で表される。Feと Pt の軌道磁気形状因子と軌道磁気モーメントの関係は(5-3)で表され る。(5-2)式と(5-3)に含まれる , は以下 の式で表される。
jL,(k⋅r) :L次球ベッセル関数 (L=0,2) RFe(r), RPt(r) : 磁性電子の動径波動関数 k : 散乱ベクトル
(5-25)
50
fig. 33 Fe+1価~+4価における<j0,Fe(kr)>
fig. 34 Fe+1価~+4価における<j2,Fe(kr)>
0 0.5 1 1.5
0 0.5 1
<j
0(k) >
sinÅ]
- : Fe+
- : Fe2+
- : Fe3+
- : Fe4+
0 0.5 1 1.5
0 0.5
<j
2(k) >
sinÅ]
- : Fe+
- : Fe2+
- : Fe3+
- : Fe4+
51
fig. 35 Pt+1価~+5価における<j0,Pt(kr)>
fig. 36 Pt+1価~+5価における<j2,Pt(kr)>
0 0.5 1 1.5
0 0.5
1 - : Pt+
- : Pt2+
- : Pt3+
- : Pt4+
- : Pt5+
sinÅ]
<j
0(k) >
0 0.5 1 1.5
0 0.5
- : Pt+
- : Pt2+
- : Pt3+
- : Pt4+
- : Pt5+
sinÅ]
<j
2(k) >
52 5-1-5.最小二乗法による最適な組合せ評価
前頄で示した , を用いてフィッティン グ解析を行った。全ての価数組み合わせで測定した磁気形状因子との残差を求め、残差の 二乗和によって評価をした。結果をfig.37に示す。横線で示した範囲がFe価数に対応し、
それに組み合わされているPtは価数ごとに色分けをしている。
スピン成分の結果より、Fe3価、Pt1価の組合せが適当であると考えられる。軌道成分の 結果ではPt1価の組合せであれば問題が無い様である。
fig. 37 スピン磁気形状因子の測定値とフィッティングによる理論値の残差の二乗和
0.38 0.39 0.4 0.41
Fe+ Fe2+
Fe3+ Fe4+
● : Pt+
● : Pt2+
● : Pt3+
● : Pt4+
● : Pt5+
53
fig. 38 軌道磁気形状因子の測定値とフィッティングによる理論値の残差の二乗和
採用したFe+3価とPt+1価の について以下に示す。
fig. 39 Fe3+における
0.0852 0.0855 0.0858
Fe+ Fe2+ Fe3+ Fe4+
● : Pt+
● : Pt2+
● : Pt3+
● : Pt4+
● : Pt5+
0 0.5 1 1.5
0 0.5 1
sinÅ]
<j
R(k) >
- : j0
- : j2
- : j0+j2
54
fig. 40 Pt+における
0 0.5 1 1.5
0 0.5 1
- : j0
- : j2
- : j0+j2
sinÅ]
<j
L(k) >
55
5-2.解析結果
フィッティング結果を以下に示す。fig.41 がスピン磁気形状因子、fig.42 が軌道磁気形状 因子の結果である。基本反射と超格子反射ごとに分けて示している。点は磁気形状因子、
実線が原子モデル理論曲線になっている。
fig. 41 スピン磁気モーメントフィッティング結果
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fig. 42 軌道磁気モーメントフィッティング結果
波数 0[1/Å]における原子モデル曲線の値が磁気モーメントに相当する。上の図の結果を
table.4にまとめる。
table. 4 スピンおよび軌道磁気モーメント評価結果
spin orbital total
Pt[μB/atom] 0.61±0.24 -0.10±0.10 0.51±0.26 Fe[μB/atom] 1.99±0.01 0.01±0.01 2.0±0.01 Fe3Pt[μB/f.u] 6.58±0.24 -0.07±0.09 6.51±0.26
全磁気モーメントについてはスピン磁気モーメントと軌道磁気モーメントの結果の和を示 している。
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