第 3 章 手法 23
3.11 ファインマン・ダイアグラムを用いた摂動展開
という行列形式での松原グリーン関数が得られた。松原周波数は(3.267) 式、化学ポテンシャルµはバンド計算より、そしてε(k)ˆ は(3.79)式をも とに組めば計算できるようになることが分かった。
(1) (2) (3) (1)
添字の順番
(3) (2)
(1) (2) (3)
(1)
添字の順番
(3) (2)
図3.3: 摂動展開の一次項2つについてのファインマン・ダイアグラム
(1) (2) (3)
(4) (5) (6)
(7) (8)
非連結 ダイアグラム
連結 ダイアグラム
図3.4: 摂動展開の二次項についてのファインマン・ダイアグラム
と呼ばれている。ここから想像がつく通り、摂動展開の三次の項O(3)で は、一次の項、二次の項で出てきた連結ダイアグラムをただいくつか並べ たような非連結ダイアグラムの項があらわれる。
n次の非連結ダイアグラムをOcon.(n) としたとき、摂動展開e−β(Ω−Ω0)は、
e−β(Ω−Ω0) = exp [∑
n
O(n)con.
]
(3.289)
= 1 +∑
n
Ocon.(n) +1 2
∑
ni
O(ncon.1)O(ncon.2)+· · · (3.290) と、対数の肩に連結ダイアグラムを考慮することで、非連結ダイアグラム の項も連結ダイアグラムの積でまとめて表現することができる。
−β(Ω−Ω0) = ∑
n
Ocon.(n) (3.291)
Ω−Ω0 = −1 β
∑
n
O(n)con.≡∑
n
Ω(n) (3.292)
3.12 1体・2体グリーン関数の摂動展開
摂動展開を応用し、相互作用がある系でのグリーン関数と、2体のグ リーン関数である感受率χσσ′の計算を行う。
2つの虚時間τ, τ′の間についてのHeisenberg演算子を考える。虚時間 τ でのHeisenberg演算子をA(τ˜ )、τ′での演算子をB(τ˜ ′)とすると、温度
グリーン関数は
− ⟨TτA(τ˜ ) ˜B(τ′)⟩ = −Tr [
TτUH(β) ˜A(τ) ˜B(τ′) ]
Ξ (3.293)
現在の状態から摂動展開を行うためには、演算子のハイゼンベルグ表示を 相互作用表示に変換し、対角和の先頭にUH0(β)を用意して、相互作用の ない系での物理量の計算の形式に持っていく。最後はBloch-de Dominics 定理により縮約をとる。といった段取りを踏む必要がある。
まずハイゼンベルグ表示を相互作用表示に変換する。
UH(τ) = e−τHˆ (3.294)
= e−τ( ˆH0+ ˆHI) (3.295)
= UH0(τ)e−τHˆI (3.296) を用いると、A(τ˜ )は
A(τ˜ ) = UH†(τ) ˆAUH(τ)
= eτHˆIUH†
0(τ) ˆAUH0(τ)e−τHˆI
= eτHˆIA(τ¯ )e−τHˆI
= UH†
I(τ) ¯A(τ)UHI(τ) (3.297) という関係であるため、(3.293)に代入し
− ⟨TτA(τ˜ ) ˜B(τ′)⟩
= −1 ΞTr
[
TτUH(β) {
UH†
I(τ) ¯A(τ)UHI(τ) } {
UH†
I(τ′) ¯B(τ′)UHI(τ′) }]
= −1 ΞTr
[
TτUH0(β) {
UHI(β)UH†
I(τ) }A(τ¯ )
{
UHI(τ)UH†
I(τ′)
}B(τ¯ ′) {
UHI(τ′)UH†
I(0) }]
(3.298) が導かれる。Tr [· · ·]は自由粒子系の物理量⟨· · ·⟩0の表式(3.207)の分子の
かたちをとるため、
− ⟨TτA(τ˜ ) ˜B(τ′)⟩
= − 1
⟨UHI(β)⟩0 ⟨TτS(β, τ) ¯A(τ)S(τ, τ′) ¯B(τ′)S(τ′,0)⟩0.
(3.299) ここで、相互作用ユニタリ演算子の時間発展S(τ, τ′)を導入し、まとめて いる。
S(τ, τ′) = UHI(τ)UH†
I(τ′) (3.300)
時間発展の微分は、(3.217)を用いて
∂
∂τS(τ, τ′) = [ ∂
∂τUHI(τ) ]
UH†
I(τ′)
= −H¯I(τ)UHI(τ)UH†
I(τ′)
= −H¯I(τ)S(τ, τ′) (3.301) といった逐次積分の形になるため、(3.217)からの導出と同じ手法を用いる。
S(τ, τ′) = 1−
∫ τ
τ′
dτ′′H¯I(τ′′)S(τ′′, τ′)
= exp [
−∫ τ
τ′
dτ′′H¯I(τ′′) ]
(3.302) とまとめられる。Tτ記号下での指数関数は互いに可換であるため、(3.299) は
− ⟨TτA(τ˜ ) ˜B(τ′)⟩
= − 1
⟨UHI(β)⟩0
⟨Tτexp [
−∫ β
τ
dτ′′H¯I(τ′′) ]
A(τ¯ ) exp [
−∫ τ
τ′
dτ′′H¯I(τ′′) ]
B¯(τ′) exp [
−∫ τ
′
0
dτ′′H¯I(τ′′) ]
⟩
0
(3.303)
= − 1
⟨UHI(β)⟩0⟨Tτexp [
−∫ β
0
dτ′′H¯I(τ′′) ]
A(τ¯ ) ¯B(τ′)⟩
0
(3.304) 分母のUHI(β)は、(3.225)式の級数から
UHI(β) = Tτexp [
−
∫ β
0
H¯I(τ′)dτ′ ]
(3.305) であるため、
− ⟨TτA(τ˜ ) ˜B(τ′)⟩ = − 1
⟨UHI(β)⟩0⟨TτUHI(β) ¯A(τ) ¯B(τ′)⟩0(3.306). 左辺のグリーン関数の形が、右辺の摂動展開の形で表現された。以下では 応用について記す。
3.12.1 1粒子グリーン関数の摂動展開
一粒子温度グリーン関数Gkσ(τ −τ′)は
Glk,σ1l2(τ−τ′) = − ⟨Tτ˜clkσ1 (τ)˜clkσ2†(τ′)⟩
= −⟨TτUHI(β)¯clkσ1 (τ)¯clkσ2†(τ′)⟩0
⟨UHI(β)⟩0 (3.307)
である。分子について摂動展開を行っていく。
− ⟨TτUHI(β)¯clkσ1 (τ)¯clkσ2†(τ′)⟩0
= − ⟨Tτ¯clkσ1 (τ)¯clkσ2†(τ′)⟩0+
∫ β
0 ⟨TτH¯I(τ1)¯clkσ1 (τ)¯clkσ2†(τ′)⟩0dτ1−1 2
∫ β
0 · · · (3.308) 零次の項は、自由粒子温度グリーン関数G(0)lkσ1l2(τ−τ′)そのものである。
一次の項について、
∫ β
0 ⟨TτH¯I(τ1)¯clkσ1 (τ)¯clkσ2†(τ′)⟩0dτ1
= 1 2
∑
qk1k′1
∑
ma
∑
σa
∫ β
0
Vq(ma, σa)⟨Tτc¯mk11+qσ† 1(τ1)¯cmk′2†
1−qσ2(τ1)¯cmk′3
1σ3(τ1)¯cmk14σ4(τ1)¯clkσ1 (τ)¯clkσ2†(τ′)⟩
0dτ1
(3.309) である。グリーン関数のτとτ′の間の過程について計算しているため、τ1
はそれらの虚時間の間に無くてはならない。Bloch-de-Dominicisの定理に よる縮約のとり方としては、図3.5のようなとり方が考えられる。図では 赤い点を生成演算子、青い点を消滅演算子としている。縮約をとりグリー ン関数を組む、ということは、赤い点と青い点を実線で結ぶことである。
そのように考えると、(b)(c)(d)のようなパターンで縮約をとることがで きる。図の(b)は、⟨¯c(τ)¯c†(τ′)⟩0で縮約をとった場合で、このときは間に 残った相互作用の4点が、⟨UHI(β)⟩0の一次のダイアグラムを組み、非連 結なダイアグラムとなる。もしも、⟨c(τ¯ )¯c†(τ1)⟩0かつ、⟨¯c(τ1)¯c†(τ′)⟩0とい うような縮約をとる場合は、相互作用側の軌道の掴み方によって、(b)(c) のようなバリエーションが生じる。(c)のようにとる場合、外線(つながら ない一本線)から相互作用線が伸び、もう一方でBubbleなダイアグラム が描かれる。(d)のように取る場合では、すべての点を使って外線を描い ているものの、途中で相互作用を自ら放って受け取るようなふるまいを記 述している。
2次の場合は、τ とτ′の間にもうひとつ、τ2という虚時間の領域を作り、
そこに相互作用の線と4つの生成消滅演算子を置いて考える。
n次のダイアグラムについて共通して言えることは、このグリーン関数の 計算でも、非連結な項、連結な項にわけられるという点である。しかも、
非連結な項にある、外線と繋がっていないダイアグラムは、先ほど計算を 行った⟨UHI(β)⟩0を構成する要素O(n)con.と同じである。従って、外線とつ ながっているダイアグラムをOcon.(G:n)としたとき、グリーン関数は
−
(∑O(n)con.) (∑
O(G:m)con.
)
∑O(n)con.
(3.310)
図 3.5: Green関数の1次での摂動展開について(a)与えられた演算子と 相互作用(b)非連結なダイアグラム(c)連結ダイアグラムのHartree項(d) 連結ダイアグラムのFock項
と表現ができる。グリーン関数は、外線とつながっているダイアグラムの みを数え上げればよい。
Glk,σ1l2(τ−τ′) = − ⟨TτUHI(β)¯clkσ1 (τ)¯clkσ2†(τ′)⟩0,con. (3.311)
3.12.2 2粒子グリーン関数の摂動展開
2粒子温度グリーン関数についても、前述したダイアグラムのとり方を 採用すればよく、(3.193)式を、それぞれの生成・消滅演算子に軌道の成 分を付けて、
χσσl1l2′l3l4(q, iωm)
= 1
N
∫ β
0
eiωmτ ∑
k1k2
⟨˜clk1†
1σ(τ)˜clk2
1+qσ(τ)ˆclk3†
2σ′cˆlk4
2−qσ′⟩ (3.312)
= 1
N
∫ β
0
eiωmτ ∑
k1k2
⟨TτUHI(β)¯clk1†
1σ(τ)¯clk2
1+qσ(τ)¯clk3†
2σ′(0)¯clk4
2−qσ′(0)⟩0,con.
(3.313) と書ける。
HI(β)を展開する。零次O(0)= 1による感受率の摂動展開項χσσ0l1′l2l3l4(q, iωm) を既約感受率(Irreducible Susceptibility)と呼ぶ。
χσσ0l1′l2l3l4(q, iωm)
= 1
N
∫ β
0
eiωmτ ∑
k1k2
⟨Tτ¯clk1†
1σ(τ)¯clk2
1+qσ(τ)¯clk3†
2σ′(0)¯clk4
2−qσ′(0)⟩0,con.
(3.314) ダイアグラムのとり方[図3.6(b)]より、この式ではσ =σ′,k1 =k2の みグリーン関数をとることができる。従って表記はχσ0 と、スピンの表記 は1つでも問題ない。(b)のように外線2本の縮約が得られたが、連結が 要請されているため(c)のように運動量qを吸収・放出し分極するような
Bubbleのダイアグラムで表記する。以降では、(d)のように略記する。