第 4 章 密度汎関数理論を用いた β-ZrNCl の第一原理計算 93
4.4 バンド分散と状態密度の計算
得られたKohn-Sham補助系での電子密度を、実際の基底状態での電子
密度に等しいと仮定し、電子密度とそのための波動関数が得られた。これ らを用いて、エネルギーバンド分散・状態密度の計算を行った。
バンド分散の横軸である、波数の経路(k-path)であるが、Hexagonalブ リルアンゾーン[図4.4(a)]について、Γ-K-M-Γという、Hexagonalのkz
軸について常に0をとる一定な平面と、A-Λ-Hというkz=πの一定な平 面について経路をとった。β-MNClの構造より、kx, ky平面の強い二次元 性についてバンド分散で確認する必要があるためである。バンドおよび状 態密度計算の結果を図4.4に示す。
バンドの二次元性であるが、K-M-ΓとH-Λ-Aで分散がほぼ一致してい ることから、kx, ky軸についての二次元性が強い様子が確認できる。エネ ルギーギャップは1.7eV程度であり、少量ドープにより、電子がK点まわ りの運動量で運動すると考えられる。
得られた状態密度を見ることで、エネルギーバンドへの軌道の寄与を 見ることができる。図4.4(b)より、フェルミ準位直下のバンドはN pが、
Γ Κ Μ
Α Η Λ kz = 0 kz = π
ky
kx
図 4.3: Hexagonal Brillouin Zone
(a) (b)
Γ K M ΓA Λ H
Energy (eV)
0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0
-1.0 -2.0 -3.0 -4.0 -5.0
Density of States Zr d Total N p
図 4.4: (a)第一原理バンド計算によるβ-ZrNClのバンド分散(b)フェル ミ準位近傍での状態密度
Γ K M ΓA Λ H 2.0
3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0
Γ K M ΓA Λ H
2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0
Γ K M ΓA Λ H
2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0
Γ K M ΓA Λ H
E F
0.0 -1.0 -2.0 -3.0 -4.0 -5.0
Γ K M ΓA Λ H
E F
0.0 -1.0 -2.0 -3.0 -4.0 -5.0
(a) (b)
図 4.5: (a)Zrのd-軌道成分(b)Nのp-軌道成分.対応しているプロットよ り、線幅が太くなっている部分が、バンドへの寄与を表している。
ギャップの上にあるバンドはZr dの状態が強く寄与している様子が伺え る。
次に、バンドに寄与している軌道成分を確認する。伝導に寄与するZrd 軌道、Np軌道について、それぞれの軌道成分を計算した。計算結果を図 4.4に示す。各プロットのバンドについて、線幅が太くなっている部分が バンドへの寄与である。電子ドープによりフェルミ準位が2.0eVの準位ま で上がり、K点まわりでフェルミ面を形成する事を考えると、図4.4(a)の dx2−y2軌道とdxy軌道の寄与は特に重要であることが分かる。また、フェ ルミ準位近傍の(図で2.5eV-4.0eV周辺)バンドを形成しているdyz+dxz 軌道の寄与も重要である。dz2 軌道の寄与に関しては、4.0eVを下限とし たバンドに寄与が認められるが、超伝導-室温での温度スケールとしては、
高くても0.1eV(∼1000K)程度のオーダーであり、電子ドープによって考
慮されるフェルミ面からこのバンドの寄与は極めて小さくなると考えられ
る。p軌道での軌道成分についても、px+pyおよびpzが混成することで、
現在母物質でフェルミ準位にあるバンドが形成されている様子が伺える。
この結果を基に、最局在Wannier軌道を求め、Zr d軌道とNp軌道に よる強束縛模型を構築していく。