「経営哲学の浸透~ JAL 再生を題材として~」
第 2 部 パネルディスカッション
とき:2015年 9 月12日 ところ:鹿児島大学 稲盛会館 吉田(健) それではただ今より、第 2 部のパネルディスカッションに移らせていただきたいと思い ます。私は、本日の第 2 部のモデレーターを務めます鹿児島大学稲盛アカデミーの吉田でございます。
どうぞよろしくお願いいたします。
本日のパネリストの方々のご紹介をさせていただこうと思っていたのですが、最初にアカデミー長の 方からご紹介がございましたので、ここは割愛させていただきます。パネリストの方々のプロフィール につきましては、配布いたしました資料をご参照いただきたいと思います。
では、早速第 2 部のパネルディスカッションに移らせていただきたいと思います。
引頭さん、改めまして第 1 部のご講演ありがとうございました。たいへん深いご講演をいただきまし て、私も大変感銘を受けました。
最初に、まず引頭さんのお話を聞かれてのご感想を、パネリストの方々より一言ずつご発言をいただ きたいと思います。それでは最初に大田さん、よろしくお願いいたします。
大田 引頭さん、今日は大変素晴らしいお話をありがとうございました。もともと引頭さんは、経歴 の中にもお話がありましたけれども、大和総研という所で、経営を数字で分析するということを専門に やっておられる方です。私は以前から存じ上げておりましたので、JAL に着任した後、引頭さんのほ うに、そういう世の中から見える数字だけではなくて見えない部分、数字には表れない部分もぜひ分析 してほしいとお願い申し上げました。
大変難しいテーマだったと思いますが、本当に多くの方に取材していただいて、引頭さんだけでなく チームとして、大和総研全体で JAL の方々にインタビューをしていただいて、いろんな分析もしてい ただいて、数字プラスその背景にあるものは何かというものを研究し、また出版もしていただきました。
今日はその中のエッセンスをお話ししていただいたわけですけれども、本当によくまとめていただい て、特に最後のところ、一般企業が抱える問題点、それとそれに対する答えみたいなものを発表してい ただきました。最初にあった数字のところ、それから最後の一般企業の問題点とそれに対する解決の一 つの方法ということで、私も中にいた人間ですけれども、よくまとめていただいて、外から見たらこう いうふうに見えるのかと大変勉強になりました。どうもありがとうございました。
吉田 大田様、ありがとうございました。それでは、今日のお話の中ではまさに当事者のお一人で あったわけですけれども、日本エアコミューターの社長で、今、JAL の役員でもあられます安嶋社長様、
一言ご感想をよろしくお願いいたします。
安嶋 最初に、こちらにいらっしゃる皆様、それから関係されたすべての皆様のおかげで、本日も事 業を継続させていただけておりますことに、この場を借りまして、まず冒頭厚く御礼を申し上げたいと 思います。本当にありがとうございました。
それではお話の感想というよりは、やはり当事者ということもあって少しだけお時間をいただいて、
いくつかエピソード的なことをお話しさせていただければと思います。
引頭さんのお話を聞いて、本当にこの 5 年半を走馬灯のようにバーッと思い出して、かみしめていた わけですけれども。本当にわれわれ、大変未熟だったゆえに経営破綻ということになりまして、その時 に稲盛名誉会長が本当にわれわれにとっては光でした。この人についていけば大丈夫だろうと、再生の スタートに立った頃からそう思えたというか、思わせていただいたことがものすごく大きかったなあと 思っております。この稲盛経営をちゃんと実践していけば立ち直れるだろうということで、ご指導いた だくとおりに経営をしていったというところが実態だったと思います。
2 つほど具体的なことをお話しさせていただきます。
まず一番最初に名誉会長からご指導いただいたのは、社員の幸福の源である会社再生、永続のために 何をするのかということでした。それを施策ということだけでなく、ちゃんと思いを数字にして、数字 で明確にして、数字で経営をしなさいと。それを社員全員で共有しなさいとご指導をいただきました。
また当時、JAC、わが社の飛行機は結構古くて、買い換えるお金がなければ、この飛行機が使えなくなっ たら、その度に規模が縮小していって、最後は会社がなくなってしまうというぐらいに飛行機を買い換 える必要性が高く、しかし買い換えるお金が当時はなくて。
その時も、まだ実現しない利益を見込みで当て込んで資産を買うなんてとんでもない。事業をちゃん とやるのだったら、ちゃんとお金を貯めてから買うのが当たり前であると、そういうご指導もいただい た。とにかく飛行機は今、大事に使えば20年、25年使えるといえば使えるのですが、でもやはり限度と いうものがありますので、間もなく更新の時期を迎える飛行機をいっぱい抱えていて、とにかくこれを 更新するお金がないと事業は継続できないぞと。毎年度が始まるときに、今のバランスシートはこれだ けれども今年度末のバランスシートはこれにするぞ、というかなり具体的な貯金目標額みたいなものを 定めてですね、それで売上を最大に経費を最小にと、地道に頑張ってきました。
そうするとですね、社員も今びっくりしているんですけれども、すごくたくさんあった借金が返済で きて、目標とした資金も貯金ができてしまったんですね。それで今般、新しい飛行機をようやく無借金 で買えるような状況になりまして、ああ、やっぱり稲盛経営を信じたからだということで、社員の士気 も大変高いです。やはり今までは親会社の信用とか、直接的に親会社のお金で飛行機を買って事業を やっていたというのが、われわれ航空子会社の実態だったのですけれども、今般初めて自分たちで目標 を決めて、自分たちが貯めたお金で飛行機を買うということが実現したので、社員もびっくりしながら 大変喜んでおり、非常に士気が高いというところでございます。これも本当に稲盛経営だなと思ってお ります。
先ほど引頭さんのお話でもあったかもしれませんけれども、やはり JAL グループ、わが社も JAL も そうですけれども、非常に経営の状況が悪かったので、その悪い数字を社内で共有できなかったんです ね。つまり、こんなにひどい経営状況だということを社内に伝えると、必ず社外に伝わる。そうすると 風評被害みたいなのがあって、例えばもうお金を貸さないとか、あるいは今のリース物件に担保を積め とか、いろんなことも起こり得る。絶対に風評被害もあるから、それでは会社が立っていられなくなる ので、悪い数字を社内で全然共有しないという状況でした。破綻前は。なので、本当に会社は厳しい状 況なんだという情報共有ができないから、当然みんなで頑張ろうとか、跳ね返そうとか、そういう気運 も生まれることもなく、みんな、まだ何とかなるんじゃないかみたいな、そんなようなことで破綻をし たということでございます。
そのような話を最初に名誉会長の前で、経理か何かの担当者が話をして、数字をあまり社員に開示す ると外に漏れてしまうというような話をした時に、名誉会長が、「社員を信じなくて何のための経営だ」
とバシッとおっしゃられた。それで、やっぱりちゃんと数字の共有をしなければ統一的な目標に向かっ て動けないよねということで、考え方が改まりました。そうすると社員の中では、「すみません、バラ ンスシートって何ですか」と。そんなもの見たことありませんという社員もいたので、これはわが社の 経理の担当が一生懸命汗をかいて、じゃあ経理勉強会をやりますと。バランスシートってどういうもの かというのを、実際の自分の会社のバランスシートを見せながら、つまりかなり細かい内容も開示しな がら、見たことない人にはみんなで見方も勉強しながら、とにかく数字の共有をしようよということで やっていった。そういうようなところで一体感ができていったのかなあと思います。これは、でもやは り稲盛経営に対する信頼があってこそのことだと思っております。
それから、長くなって申し訳ありませんがもう 1 点。やはり名誉会長から、今がこうだからこのまま でいいということはないんだと。これは業績報告会の席で度々、私どもだけじゃなくてほかの関連航空 会社もみな同じようなことを言われていましたけれども。数字を見ながら、社員数を見なさい、売上高 も見なさい、利益額も見なさいと。これらがどういうバランスになっているか。それを、自分たちの会 社もそうだし、隣の会社はどうなのか。そこをよく見て経営しなさい。答えは言わない。自分で考えな