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本章においては、「バ」国における経済特区開発候補地選定の背景と目的を明確にし、続 いて経済特区開発候補地の選定条件と評価軸について詳細な説明を行う。これらの評価軸 により実施された評価結果を整理し、ランキング付けを行った。これ等の候補地の中から 優先度の高い候補地について短期と長期の視点から開発コンセプトを策定した。開発コン セプトの策定に当たっては、その前に実施した日本企業に対するアンケート調査や関連企 業等への訪問調査の結果を反映させて「バ」国における経済特区の開発の方向性を議論し ている。

5.1 経済特区開発候補地選定の背景と目的

「バ」国においては、上位計画である「ビジョン 2021」や「第 6 次 5 カ年計画

(2011~2015)」において産業の高度化を図り、第一次産業から第二次産業・第三次産業へ の労働移転を図ることで所得水準の向上と中所得国の仲間入りをすることが謳われている。

「バ」国の主要産業としては、繊維・縫製産業が突出しており、今や「バ」国全体の輸出

の70%以上は繊維製品が占めていて、世界第2位の繊維製品生産国となっている。これ等

の縫製品の輸出市場としては、欧米諸国が中心であり、世界的な経済不振の影響を受ける 事態となっている。「バ」国では1980年代から全国8カ所において輸出加工区の整備を進 め、縫製産業などの工場の受け皿として貢献してきた。一方では、輸出加工区での生産活 動は他の産業・地域との連携を促進せず、加工区外の産業との連携が課題となっていた。

これ等の輸出加工区も「バ」国の経済発展と共に西部地区にある 3 カ所を除き満杯とな っているが、「バ」国政府は新たに輸出加工区を建設することはせず、今後は経済特区の開 発を進める方針が打ち出されている。しかし、「バ」国は国土が狭い上に人口が多く基本的 に工業用地が不足している。「バ」国政府は、全国にある政府所有地を積極的に経済特区・

工業団地として活用することを考えているが、経済特区・工業団地の開発に必要な資金や 技術の面で遅れており、外部からの支援を期待している状況である。

5.1.1 「バ」国における経済特区候補地選定の背景

2010年10月に設立されたBEZAは、政府が保有する土地を対象にして世銀やIFCの支 援を得て経済特区開発の取り組みを進めている。現在は、5カ所の政府所有の土地に経済特 区の開発が進められているが、その基本となる経済特区法の施行規則はまだ発効していな い。

一方、日本政府は中小企業等による海外展開の支援を行うために「バ」国での経済特区

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チッタゴンから通勤できる範囲内で生産拠点等を建設するのが前提となっている。また、

自然条件の厳しい土地での操業も、サプライチェーンを確保する意味から企業の負担とな る可能性があり、望ましい条件とはならない。

5.1.2 経済特区開発候補地選定の目的

経済特区開発候補地の選定を行うのは、具体的な開発コンセプトを示すことで将来の事 業化を促進することが可能となるためである。候補地は、短期的視点からと中長期的視点 から二カ所を選び、それぞれ開発コンセプトを策定した。この開発コンセプトをベースに 経済特区の実現に必要なハードおよびソフト面での各種支援策を検討し、提言した。

5.2 経済特区開発候補地の選定条件と評価軸 5.2.1 経済特区開発候補地の選定条件

(1) アプローチ

BEZA, World Bankによる既往調査において検討された候補地より、次項の条件に合う

ものを抽出した。なおBEZA に対し、既往調査において作成されたとされるロングリスト

(30 候補地)についてヒアリングを行ったが、資料はないとことであった。BEZA は、

Mirershorai(Chittagong)、Anwara(Chittagong)、Sherpur(Syllhet)、Sirajgonj(Rajshahi)、

Mongla の 5 カ所、及び民間企業からの申請のあった 9 か所より選出した A.K.Khan、

Garment Village(衣料工業団地)の2箇所をショートリストに載せたとのことであった。

これをうけ、JICA ダッカ事務所と打合せ協議を行い、BEZA が検討した候補地を含め、

ダッカ、チッタゴン周辺で探索を行うこととなった。

「バ」国における現地調査において、上記により抽出された候補地以外に現地探索によ る敷地や地元の紹介などによる敷地の中より適地と判断された敷地を評価対象の候補地と した。

(2) 選定条件

前項により探索した敷地より候補地としてショートリストに選定する考え方、及び評価 の考え方を以下に述べる

1) 日系企業職員の通勤を考慮し、ダッカ、チッタゴンの外国人居住区から約1.5時間以 内の範囲。

2) 希少種の存在などによる開発制限地、係争地でないこと 3) 現地政府、地域住民の反対がないこと

a. 第1ステージ(定性評価)

下記の条件を満たせない候補地は、現場踏査の対象から外すこととした。

- 3年後の目標年次において、ダッカ・チッタゴンの外国人居住地より1.5時間以内で

自動車による通勤できないと判断された候補地

- 候補地内に希少種の存在を理由とする等の開発制限地域が含まれていることが確認 された候補地

- 候補地内に係争地域が含まれていることが確認された候補地

- 候補地の開発に対して現地政府又は地域住民が反対していることが確認された候補 地

- また、今回の現地調査において、治安上の理由から現地調査が実施できなかった

Ashulia地区 Dhamrai候補地、及び現地調査において厳しい自然環境から不適と考

えられるAnawara候補地は、ショートリストから外すこととした。

b. 第2ステージ(定量評価)

- 第1ステージ(定性評価)により現場踏査の対象となった候補地に対しては、別紙評 価スコアカードによる定量評価を行い、ランク付けを行った。評価軸・評価内容に ついては、次項で述べる。

c. 最適SEZ候補地に対する開発コンセプトの策定

- 短期的視点から見た最適SEZ候補地の選定と開発コンセプトの策定 - 中・長期的視点から見た最適SEZ候補地の選定と開発コンセプトの策定 評価作業の全体フローを下図に示す。

START

絶対的条件の適用 定性評価

の実施

Pass Fail

定量評価作業 の開始

現場踏査の 対象外

サドンデス条件 のクリアー

Pass Fail

定量評価によるSEZ 候補地のランキング

定量評価作業 の中止

中・長期視点から のSEZ候補地

の選定

短期的視点から のSEZ候補地

の選定

最適候補地への開 発コンセプトの策定

最適候補地への開 発コンセプトの策定

5-4 5.2.2 経済特区開発候補地の評価軸

評価軸として、以下の4つの軸を設定することとする。

a. 基本特性(Location)

- 当該敷地の有する基本的特徴の評価を行う。

- 具体的には、敷地の広さ・拡張可能性、洪水対策のための盛土の必要性、現況の土地利用、

地権者の状況、想定される補償、関係機関(公共、民間)、汚染状況、地盤状況などであ る。

b. 周辺特性(Surrounding Area)

- 候補地と周辺地域との関係、労働資源状況などの評価を行う。

- 具体的には、近隣街との利便性、労働者の獲得可能性(量、質)、近隣の工業団地との連 携性などである。

c. 自然災害特性(Natural Disaster)

- 河川氾濫による洪水、サイクロンによる高潮、地すべり、地震などの災害に対する脆弱性 の評価を行う。

d. インフラ特性(Infrastructure)

- 運輸関係として、道路、鉄道、国際空港、国際港、河川港、ランドポートなどへのアクセ ス性を評価した。

- 電力、ガス、給水、下水、廃棄物処理、通信、公共交通などのインフラ施設へのアクセス 性を評価した。

なお、評価対象である候補地については、調査団の日本人技術者(2名以上)、及びロー カルコンサルタントが現地を実際に踏査した。評価項目のうち、現地踏査で確認すること が困難な項目についてはローカルコンサルタントにて別途ヒアリングし、図上計測等によ り評価を実施した。

評価スコアカードを表5-2-1に示す。

表 5-2-1:経済特区評価スコアカード

1 2 3 4 5

Total Area (ha) Size & Shape of the Site Expandability Level of Landfill Required

Existing Land Use & Zoning Existing Land Use (Number of Annual Harvests) Convertibility to Industrial Use

Land Ownership Number of Land Owners

Major Occupation (Ratio of skilled workers) Agreement to Land Acquisition

Resettlement & Compensation Number of Resettlements (house holders) Magnitude of Compensation

Existence of Supporter Public Sector (Past Experience)

Private Sector (Technical/Financial Capability of proponent) Contamination of Land

Soil Bearing Capacity Sub Total

Distance to Main Towns Physical Distance to the available amenities Availability of Amenities in Main Town

Commuting Time from Prime Residential Areas in Dhaka/Chittagong

Labor Market Availability of labor force

Quality of Labor Quality of Middle Managers

Linkage with Forward/Backward IndustryDistance from Existing Industrial Clusters Adjacent Development Adjacent Development of public services Sub Total

Risk of Flood & Land Erosion Risk of Submersion Risk of Land Erosion Risk of Land Slides Risk of Cyclone

Risk of Earthquake Sub Total

Transportation (Availability & Distance) Access to Main Highway Access to Railway Line Access to Main sea Port Access to Major Airport

Access to Inland Container Terminal Access to Land Port/Customs

Power Supply Access to National Grid

Supply Capacity Frequency of Outage

Gas Supply Access to Gas Pipeline Network

Supply Capacity

Water Supply and Sewage System Distance to Water Supply Source Supply Capacity & Water Quality Distance to Effluent Treatment Solid Waste Treatment Distance to Solid Waste Treatment Telecommunication

Availability of Public Transport to Site

Evaluation Scores Locations

(350 points)

Infrastructure (300 points) Natural Disaster (150 points) Surrounding Area (200 points)

Evaluation Scorecard for the proposed SEZ Sites in Bangladesh (Candidate No. : )

Key Aspect Evaluation Points Specific Requirements