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A.2 民営化・PFI の実施・検討状況

2.2 バスの現状と契約内容

2.2.1 バスの現状

バス事業の概要が表 C- 4に示されている。

表 C- 4 バス事業の概要

大マンチェスター都市圏40 ウェスト・ミッドランド都市圏 施設名

運行主体 各民間バス会社(51 社) 民間バス会社(64 社)

バスステーション(総数) 21 12

バス停(総数) 12,500 15,000

出所:参考資料から筆者作成

まず、大マンチェスター都市圏のバスについては、多くのバスが GMPTE の運営するバス ステーションを始発とするか、経由するものの、GMPTE によって直接運行されるわけではな く、民間バス会社がそれぞれ所有するバスを走らせている。また、Metroshuttle (FREE CITY CENTRE BUS SERVICES)が2路線存在し、ナイトバスやスクールバスも運行されている。

バス停や専用バスレーンのようなバス用のインフラについては、GMPTE が提供している。

バス停やバスレーンの整備は“Quality Bus Corridors”として知られ、WMPTE の“Bus Showcase”とともに、市民から高く評価されている。

ウェスト・ミッドランド都市圏における多くのバスは CENTRO の運営するバスステーショ ン41を始発とするか、経由するものの、CENTRO が直接運行を行っているわけではなく、Travel West Midlands 社42、Pete's Travel 社、Diamond Bus (The Birmingham Coach Company)社 等の民間バス会社がそれぞれ独自に所有するバスを運行している(年間約 260 万キロ)。

また、15000 のウェスト・ミッドランド都市圏内のバス停・待合所のうち、約 85%に当 たる 4850 箇所43が CENTRO によって建設、所有、管理され、12 箇所のバスステーションにつ いても同様に CENTRO が建設、所有、管理を行っている。また、バスは West Midlands 内の 2、3マイルの移動において大多数の人々の移動手段として利用されていることから、

CENTRO はバスによる移動をより効果的なものにすることで、バスの移動者を 2003/04 年の 325 万人から 2011 年には 355 万人にする計画「The Bas Strategy 2003-2011」を立ててい る。そして、その為に以下のバスサービスの向上のための 3 つの主題を掲げている。

① サービス配布

② 顧客の信頼

③ 設備と計画

①は高品質のバスサービスを確実に、効果的に、利用しやすく提供・保守すること、②は 人々がバスに乗ることに利便性を感じるような、適切な水準の情報、顧客サービス、安全 を開発・保守すること、③は人々とサービスの供給者にとって便利で魅力的な、高品質な 設備と計画の開発と保守することをそれぞれ示している。

2.2.2 バス運行のリスクと官民の契約内容

大マンチェスター都市圏の都市部におけるバスの運行は、45 の民間バス会社が行ってい る。その際、商業的ベースでみて採算の取れている路線(黒字路線)に関してはバスの価 格(料金)設定は各バス会社に任されている。つまり、規制を行わない以上、運行のリス クに関しては一切を民間バス会社が負うことになる。しかし、採算の取れない路線、特に 早朝・夜間の運行や障害者・高齢者向けの運行、日曜日の運行(赤字路線)は、社会的に 必要性が認められているにもかかわらず、民間バス会社の参入が期待できないことから GMPTE が 100%補填する仕組みになっている。したがって、GMPTE が 100%補填する路線に ついては GMPTE が全リスクを負っていることになる。また、それぞれのバスについて営業 距離については前者が 85%、後者が 15%となっている。

41 CENTRO の運営するバスステーションは Bearwood, Bilston, Cradley, Dudley, Halesowen, Merry Hill, Pool Meadow, Stourbridge, Walsall, Wednesbury, West Bromwich and Wolverhampton.の 12 施設である。

42全路線の 80%と、CENTRO が管理していないバス停を持ち、管理・運営を行っている。

ウェスト・ミッドランド都市圏において、商業的ベースでみて採算の取れている路線(黒 字路線)に関してはバスの価格(料金)設定は各バス会社に任されている。つまり、規制 を行わない以上、運行のリスクに関しては一切を民間バス会社が負うことになる。しかし、

採算の取れない路線、特に早朝・夜間の運行や障害者・高齢者向けの運行、日曜日の運行

(赤字路線)は社会的に必要性が認められているにもかかわらず、民間バス会社の参入が 期待できないことから CENTRO が 100%補填する仕組みになっている。その際、運行を行う 会社は、「CENTRO の入札者」として申請し44、その中から競争入札45によって決められる。

したがって、CENTRO が 100%補填する路線については CENTRO が全リスクを負っていること になる。また、それぞれのバスについて営業距離については前者が 93%、後者が7%とな っている。これらは表 C- 5にまとめられている。

表 C- 5 バスの採算、不採算路線の割合と官と民の役割分担の状況

大マンチェスター都市圏 ウェスト・ミッドランド都市圏 商業ベースで採

算のとれる路線

(黒字路線)

早朝・夜間運行、

高齢者・障害者 向け(赤字路線)

商業ベースで採 算のとれる路線

(黒字路線)

早朝・夜間運行、

高齢者・障害者 向け(赤字路線)

路線割合(距離) 85% 15% 93% 7%

時刻表の決定主 体

民間バス会社 GMPTE CENTRO CENTRO 運賃の決定主体

(規制しない理由)

民間バス会社

(会社も公益を重 視する)

GMPTE 民間バス会社 (会社間競争)

CENTRO

規制内容 なし 路線 サービス水準

財政的リスク 民間バス会社 GMPTE 民間バス会社 CENTRO

出所:参考資料から筆者作成

以上の説明より、GMPTE が交通政策を所管する大マンチェスター都市圏、CENTRO が交通 政策を所管するウェスト・ミッドランド都市圏ともに、路線の大部分において、運行を行 っている民間バス会社が運行リスクを負っていることが分かる。

GMPTE でバスの料金(価格)について規制を行わない理由は、「大マンチェスター都市圏 内を運行するバス会社は大手 2 社が大部分の路線を運行している寡占状態だが、各民間バ ス会社は社会を構成する一員という認識が市民全体にあり、急激な値上げのように消費者 の不利益になるようなことをすると、各メディアを通じた報道により市民の非難にあう(市 民の目が働く)ため規制を行う必要が無い」であり、また、ほとんどの路線を2社という 巨大な組織で運行しているために、路線を別会社に変更することが容易ではないという事 情もある。さらに、現在 GMPTE にとってより重要視していることは、「バス会社と他の交通 会社との partnership」を強めることである。この partnership とは、バス、鉄道、そして トラムの3つの交通事業を共同の計画の中で運行し、より効率的な都市交通の構築

(Integration)を目指すというものである。

である。

2.2.3 バスの改善策

表 C- 6 バスの改善策

大マンチェスター都市圏 ウェスト・ミッドランド都市圏 改善

計画

・The Quality Regime ・bus showcase project 例、33 系統

・West Midlands Statutory Bus Strategy

出所:参考資料から筆者作成

表 C- 6に示されているような経営改善策が行われている。

大マンチェスター都市圏では、バスの品質改善計画として”The Quality Regime”と呼 ばれる方策が行われている。これは自発的にバス会社が行っているものであり、一切の課 徴金もインセンティブも存在しない。

GMPTE がバス会社に課す品質改善計画は特に存在していない一方で、GMPTE は業績不振に 陥っている民間バス会社を交通委員会(the Traffic Commissioner)に報告することがで きる。交通委員会は調査を行い、その結果、罰金を課すか運行免許を取り上げ他の会社へ 渡すことになる。また、奨励金交付の契約を結ぶことで、GMPTE は費用の割合に基づいてバ ス会社に罰金を課すことが出来る。そして、もし必要ならば、契約を終了することもでき る。

ウェスト・ミッドランド都市圏における Bus Showcase46はバス移動の全ての面における質 の改善を目指した、イギリスで始めて導入された画期的な改善計画である。これはまず CENTRO によって始められ、その後協力関係にあるバーミンガム市議会やウォルソール

(Walsall Borough)市議会、地域の大手バス会社である Travel West Midlands 社そして ウェスト・ミッドランド警察署が参加するようになった。この計画は、400 万ポンドをバー ミンガム市中心部の混雑するバス路線の改善のために投資するものである。現在、低床バ スの導入や利用しやすい明るいバス待合所の増加、音声や映像を用いた情報提供、接客の 仕方を学んだバス運転手の育成等で効果を発揮している。

また WMPTA はバス事業に関して、地域の議会とともに West Midlands Statutory Bus Strategy(West Midlands Local Transport Plan の一部)を作成している。この Bus Strategy を補助するために、バスサービス、情報、バスの設備の供給に対する基準を設定している。

また、鉄道事業に関して、West Midlands Five Year Rail Strategy を作成する。これは、

地域鉄道サービスと設備に対する調整の枠組みの働きをしており、フランチャイズ契約47の 同意に関する情報を与えている。

2.3 (地域内)鉄道の現状と契約内容

2.3.1 鉄道の現状

鉄道事業の概要が表 C- 7に示されている。

46 CENTRO.Getting around: A guide to accessible public transport in the West Midlands. April 2005 ed.CENTRO,2005.を参照。

47 franchisee と the Franchising Director との間の同意。鉄道法(the Railways Act)の下で指名され た、旅客鉄道のフランチャイズ契約における責任者(The Director of Passenger Rail Franchising)で ある Franchising Director とフランチャイズに関する同意の契約を結んだ会社である the franchisee は、

その同意が反映される期間、TOC によって供給される旅客鉄道サービスに対して責任を持つことを保証す る。また、ほとんどの franchise agreements の期限は 7 年間である。その後については、the Franchising Director が期間を延長することで必要とされる投資が促進されると考えた場合に、更なる期間の同意がな

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