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A.2 民営化・PFI の実施・検討状況

2.4 トラムの現状と契約内容

2.4.1.トラムの現状

トラム事業の概要が表 C- 9に示されている。

54 Central Train 社の運行する長距離路線は CENTRO から補助金を受けておらず、フランチャイズ契約も交 わしていない。従って、CENTRO は Central Train 社のサービス水準や料金を規定できない。

55 franchisee と the Franchising Director との間の同意。鉄道法(the Railways Act)の下で指名され た、旅客鉄道のフランチャイズ契約における責任者(The Director of Passenger Rail Franchising)で ある Franchising Director とフランチャイズに関する同意の契約を結んだ会社である the franchisee は、

その同意が反映される期間、TOC によって供給される旅客鉄道サービスに対して責任を持つことを保証す る。

また、ほとんどの franchise agreements の期限は 7 年間である。その後については、the Franchising Director が期間を延長することで必要とされる投資が促進されると考えた場合に、更なる期間の同意がな される。

表 C- 9 トラム事業の概要

大マンチェスター都市圏57 ウェスト・ミッドランド都市圏

年次 1992 年 1999 年

路線 4路線

①Altrincham

‐ManchesterCity Centre - Bury

②Altrincham

-Manchester Piccadill Rail Station

③Bury

-ManchesterPiccadilly Rail Station

④Eccles

-Manchester Piccadilly Rail Station

1路線

①Midland Metro Line One

:Snow Hill Station

(バーミンガム市中心部)

-Wolverhampton St George’s

総延長 31km 21km

拡張予定 5 路線を予定 拡張第 1 段階~第 3 段階の計 3 路線

出所:参考資料から筆者作成

GMPTA によって Metrolink trams と名付けられた大マンチェスター都市圏のトラムは、そ もそも次のように不足する地域の鉄道サービスを充実させることを目的に 1992 年に運行を 開始した(31km)ものである。

① Greater Manchester 市の中心街(国鉄の駅は中心街の端にある)及びその他の主 要商店街への公共交通機関の不足。

② 老朽化した信号機その他のインフラ、地方列車、快速列車、貨物列車の競合によ る運行の不確実さ。

③ 投資不足と古い車両による魅力の欠如。

④ 赤字の増大。

また、建設・デザイン・維持管理に関する入札は 1989 年に行われ、GMA group によって 落札され、GMML(Greater Manchester Metrolink Limited)社によって運行されていたが、

現在はシステム及び車両を GMPTE が所有し、第1段階路線(PHASE1)の運営を運営委託と いう形で Serco Metrolink 社に委託している。トラムは朝早くから、夜遅くまで頻繁に運 行しサービスを提供している。そして、旅客に時刻表なしで停留所にやってきてすぐに乗 車できるようになっている。現在、以下の4ルートがある。

① Altrincham - Manchester City Centre – Bury

② Altrincham - Manchester Piccadilly Rail Station

③ Bury - Manchester Piccadilly Rail Station

④ Eccles - Manchester Piccadilly Rail Station

委託期間中も時刻表及び最低旅客輸送数は、GMPTE が決定(ただし、運賃は、Serco Metrolink

システム及び車両を GMPTE に返還(その際、施設の維持・管理状況については、GMPTA によ る承認が必要)することになっている。その際、GMPTA は、再度 Serco Metrolink 社に委託 することも可能な仕組みとなっている(この委託契約は、Serco Metrolink 社に契約締結後 の延長路線に係る運営権を自動的に付与するものではない)。ちなみに、第1段階路線

(PHASE1)の建設費は、1989 年 10 月に 1 億 4 千 5 百万ポンドにのぼる第一期事業(インフ ラ整備及び車両の購入を含む)に係る予算の承認が行われた。そのうち 4 千 8 百万ポンドに ついては、1968 年交通法(The Transport Act 1968)第 56 条に基づき、政府から補助金が 交付されている(今後の拡張に係る予算については現在更に検討中)。詳細については、

以下のようにまとめられる。

第1段階路線(PHASE1)の建設費等財源内訳(単位:百万ポンド)58

財源 金額

GMPTA による借入金 69

運輸省 48

欧州地域開発基金 13 欧州投資銀行(借入) 15

合計 145

また、第2段階路線(PHASE2)は、1999 年から運行を開始している。運行を請け負うのは Altram 社であり、1997 年に競争入札によって決められている。2000 年には計画された路線 が全線(6.4km)開通し、第2段階における建設費は、1億 6000 万ポンド以下のようにま とめられる。

第2段階路線(PHASE2)の建設費等財源内訳(単位:百万ポンド)59

財源 金額

GMPTA による借入金 17

GMPTA による現金資金 26

住宅開発業者 12

欧州地域開発基金 10

ALTRAM 社 95

合計 160

運賃体系については、7段階のゾーン制をとっており、乗車駅と降車駅がどのゾーンに 位置するかによって料金が決まる。基本料金の他に、子供(5 歳~15 歳)には子供割引(5 歳未満は無料)、年金受給者及び重度歩行困難者にも一定の割引制度があるほか、精神障 害者及び視覚・聴覚障害者については無料となっている。

また、メトロリンク導入の結果としては、マンチェスター中心部への国鉄の利用回数が年 間 750 万件から今や 1 千 2 百万件に増え、いまだに増え続けていることが見受けられる。

さらにメトロリンクは、どのような身体的障害を持った人も利用可能であることを理念と して設計されているために、各駅において客車へのアクセスをできる限り実用的かつ簡易 な造りとなっている。駅と歩道や車道をつなぐ直接的な通路が作られない場合は、斜道も しくはエレベーターを設けている。

58 GMPTE,a netwaok for the twenty-first centry(2003)より著者邦訳

今後の延長計画60については、メトロリンクの路線距離を3倍に延長する計画が国会の承 認を受けている。新たに建設される路線は、次のとおりである。

①East Manchester and Ashton-under-Lyne ②Oldham and Rochdale

③Trafford Park and The Trafford Centre ④East Didsbury and Stockport

⑤South Manchester and Manchester Airport

①East Manchester and Ashton-under-Lyne は 6 マイル(10 ㎞)の路線であり、年間 600 万人の輸送を予定しており、200 万人の自動車の利用を抑える効果を計算している。駅数は 11 である。②Oldham and Rochdale は 15 マイル(約 24 ㎞)の路線として 1994 年に工事着 工の許可が出ている路線である。19 の駅があり、年間 1000 万人の利用を予定している。

③Trafford Park and The Trafford Centre は 3.7 マイル(6 ㎞)の路線と 8 つの駅を予定 している路線である。④East Didsbury and Stockport は 4 マイル(6 ㎞)の路線である。

駅数は 4 駅を予定している。⑤South Manchester and Manchester Airport は 14 マイル(約 22 ㎞)の路線であり、年間 800 万人の輸送を予定している。駅数は 25 である。新線の建設 によって、沿線地域の商店街や他利用者がかなり多くなると見られる地域への利用の便が 向上すると見込まれている。

ウェスト・ミッドランド都市圏においては、Midland Metro と呼ばれる地下鉄が 1999 年 から運行が開始されており、当時の最新式の light rail system であった。その車両は CENTRO が所有し、運行を競争入札によって決定された、合弁会社である Altram 社が行っている。

地下鉄の運行に際して、Midland Metro Line One Concession Deed という証書が CENTRO と Altram 社で交わされており、CENTRO の立てた企画書に対して、Altram 社が Midland Metro Line One の設計、建設、運行、管理を行う、コンセッション契約になっている。ちなみに、

サービスの最初に提供された路線は Line One と呼ばれ、英国第 2 の都市 Birmingham の中 心地 Snow Hill Station から、 West Midlands の北西部にあり発展しつつある Wolverhampton まで West Bromwich や Wednesbury を経由して結んでいる。また、その路線の総延長は 12.7-mile (20.1km) である。

全てのトラムは、障害を持つ人々や乳母車を押す人々も簡単に利用できるデザインにな っている。また、営業時間は月曜日から土曜日までが、朝 6 時 30 分から夜 23 時 30 分まで、

日曜日が朝 8 時から夜 23 時までとなっている。月曜日からと曜日までは 8 分おきに運行さ れている。

Line One の建設費用は約 1 億 5 千万ポンド(£144.8 million)であり、そのうち 4 千 5 百万ポンドの補助金を WMPTA は 1968 年交通法第 56 条に基づく補助金として中央政府に申 請し、承認されている。内訳は以下のようになっている。

第1段階路線(Line One)の建設費等の財源内訳(単位:百万ポンド)61

財源 金額

政府からの補助金と借入金(Department of Transport) 80 地域内の過去の産業遺産を認められての欧州地域開発基金から 31

and the Black Country development corporation.Bus/train operator Centro contributed)と Centro の資産売却、法定請負人からの資金

合計 144.8

また、バス、鉄道、地下鉄については、包括的な範囲で共通切符の調整・促進を行って いる。今後の延長計画については、3 段階62での整備が計画されている。

2.4.2 トラム運行のリスクと官民の契約内容

大マンチェスター都市圏では、バスや鉄道と違い、トラム(Metrolink trams)のみ GMPTE が車両、線路、駅といった資産の全てを保有している。その理由は、トラムのシステムは 特に高価であり、民間企業では金融費用を満たすことが期待できないからである(現在の 協定の下では、経営赤字を出すべきではないという意味で採算が取れるよう運営されるこ とが期待されている)。したがって、価格について規制を受けることになる。そして、トラ ムの運行・管理のみを委託された Serco Metrolink 社が行っている。また、リスクについ ては GMPTE と Serco Metrolink 社63で分けられ、決められた収入(価格×乗客数)のうち 90%

の部分は、GMPTE が保証する。

また、トラムの業績はトラムの走行距離(mileage)計画でもって測られている。98%の 計画達成で課徴金は発生しないが、それ以下だと達成できなかっただけスライド制で課金 されることになっている。

時刻表及び最低旅客輸送数は委託期間中も GMPTE が決定(ただし、運賃は、Serco Metrolink 社が決める)することになっている。また、Serco Metrolink 社に対して GMPTE は、サービスの内容を監督している。そして、もし旅客輸送キロ等 Serco Metrolink 社が 設定した基準を満たしていない場合、Serco Metrolink 社は GMPTA に違約金を支払わなけれ ばならない契約となっている。また、サービスの質が低い場合、GMPTE は、運行の契約を解 除し、他の会社に委託することが可能である。ちなみに、契約が満了したとき、Serco Metrolink 社はシステム及び車両を GMPTE に返還(その際、施設の維持・管理状況について は、GMPTA による承認が必要)することになっている。その際、GMPTA は、再度 Serco Metrolink 社に委託することも可能な仕組みとなっている。

トラムは建設の際に詳細な評価を受け、計画・手続きの際に政府による調査を受けねば ならない。GMPTE では PFI による手法も行ってきた。しかし、民間部門がリスクをとるに消 極的であることにより、現在この方法の更なる改善を検討中である。

ウェスト・ミッドランド都市圏では、トラムの路線、車両ともに WMPTA が所有している。

そして、Altram 社64とのコンセッション契約のもと、Trabel Midland Metro 社が運行して いる。その契約下では, 収入リスクを営業許可取得者である Altram 社が負うことになって いる。トラムシステムの所有者として、WMPTA(CENTRO)は Altram 社と共同で施設の状態 に責任を持つのみである。

当初トラムのシステムの建設・運行・管理の入札は、土木作業請負業者である Taylor Woodrow 社 と 車 両 製 造 業 者 で あ る Ansaldo Trasporti 社 の 合 弁 会 社 Anglo-Italian consortium 社によって落札された。しかし、計画の初期段階に Taylor Woodrow 社が脱退し たこと によ り工事 は大 きく遅 れる ことに なっ た。そ こで 、Ansaldo 社は John Laing

62 第 2 段階の整備(Phase2)について、歳入や乗車人数の計画をまとめた資料「Mindland Metro Phase 2a:

Network P Economic Business Case Study Summary Report」が存在する。

63運営委託は、当初第1段階路線の運営をグレーター・マンチェスター・メトロ(株)(GMML)に 1992 年から15年契約で委託していた。この会社の主要な株主は、会社を設立したGECアルストム、モーレ ム、AMECの3社(その他、旅客輸送事業局及びグレーター・マンチェスター・ロードカー社(旅客輸 送事業局のバス部門を担当する子会社)が一部株を所有)であった。

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