82
胡 (20 18) は 、 大 学 の ピ ア ・ リ ー デ ィ ン グ に お け る 学 生 の 発 話 を コ ー デ ィ ン グ し 、 進 行 表 明→解 答 提 示→解 答 議 論→解 答 整 理→合 意 形 成( 表 3. 1 8) と い う段 階 を 経 て 合意形成がなされていることを 明らかに した。
表 3. 1 8 グループ・ディスカッションの合意形成の五段階 (胡 2 01 8:83)
進行表明 どの課題について話 し合うか確認す る。
解答提示 解答は何か質問した り、解答を述べ たりする 。
解答議論 な ぜ そ の 解 答 が 正 し い か 意 見 を 言 っ た り 、 そ れ に 同 意 し た り 否 定 し た りする。
解答整理 多様な意見を整理す る。
合意形成 解答について全員が 納得したことを 確認する
その上で、答えがある問題(例 えばクロ ーズド テスト)に関する 議論を分析したとこ ろ、以下の傾向があることを明 らかにし た。
1. 解 答整 理 が 発 生す る 場 合 と 発生 し な い 場合 が あ る が、 解 答 整 理が 発 生 す る と 議論 が効率 よく進む。
2. 解 答整 理 、 あ るい は 合 意 形 成が な さ れ た後 に 、 新 たに 解 答 議 論が 発 生 す る 場 合が ある。
例えば事 例 3. 12 では、「 なので 」 「で す か ら」「だ から」 「 にもかか わらず」と い う接続表現に関する議論の中で 、Hが、 これら 4 つ の接続詞のうち、3 つ が因果 関係 の接続詞であることに気づき、 「因果関 係」対 「逆説関係」の二 者択一の問題である と整理する発言を行っている。 胡は、こ の発言 により論点が絞り 込まれ、議論が効率 化され、再度議論が発生したと 報告し ている。
事例 3. 12 解答整理が現 れ、論点が絞り込まれる例 (胡 20 18:8 6、一部略)
Q:ああ、じゃ、3番はみんな どうです か。( 解答提示)
H:なので(解答提示)
M:ですから(解答提示)
Q:にもかかわらず(解答提示 )
H:考え方全然ちがうよ。(解 答整理)
M:どうですね。(解答議論)
Q:でも(解答議論)
83
H:「だから」「ですから」と 「なので 」、ま あ因果関係ってう 感じ(解答整理)
Q:え 、これな ん で 、3 番 って前 の文 章と 違う 話じ ゃ ないで すか。1 つし か選 ば な ければならないのに。(解答議 論)
H:いやいや、1つを選ばなけ ればなら ないの で。(解答議論)
3.2.4.6 岡田(2018)
岡 田 (20 18) は 、 非 母 語 話 者 で あ る 留 学 生 と 日 本 人 学 生 で 構 成 さ れ る グ ル ー プ で の活動におけるメンバー同士の 対話につ いて、 以下の①~③の点 より分析を行った。
①他者の発言を受け止める「聴 く」、教 材と学 習者、学習者と別 の学習者、知識と別 の知識、経験と別の 経験、教室の学び と社会 のできごと、学習者の現在 と未来をつ なげる「つなぐ」、 進行を止めてグル ープ活 動の話し合いにもどす「も どす」(佐
藤 20 1 2: 1 24)という行為 、
②他者との つながり方 (他者と つ ながる 質 問の種類 や回数、 あるいは「 発信者―聴 き 手」というタテや「 聴き手同士」とい うつな がりの方向
③理解の深まり・共有
そして、それを「対話のうねり 度合い」として「小、小 ~中、中 、大」とスケール化
した(表 3. 1 9)。
表 3. 1 9 対話のうねり度合い(岡田 2 01 8)
小
発信者に対する相槌や賛同はあ るがそれ で終わ り。あるいは Y e s- N o の 質問があり、 それに対 して発信 者が「は い、いい え」で答え る対話が1 度あり、終了する。
小~中 発信者に対する Y e s - N o の質問が あり、それに対して発信者 が「は い、
いいえ」で答える対話が2~3 度あり、 終了す る。
中
発信者の意見 について 、考えや 意見が出 る。発信 者に対し疑 問詞が含ま
れる o pe n q u es t i o n が出る。発信者が使った不明な 言葉につ いて発信者
に聞く。質問に対する発信者の 答えに対 し、更 に質問や意見が出 る。
中~大
聞き手同士の やりとり が生まれ る。(発 信者の内 容に関連す る質問。発 信者が使った 不明な言 葉につい て、他の メンバー に説明を求 める。)し かしメンバー全員を巻き込んだ 対話には ならな い。
大 聞 き 手 同 士 の や り と り が 他 の メ ン バ ー を 巻 き 込 む 対 話 へ 発 展 す る 。
(例:発信者 が使った 不明な言 葉につい て、全員 でその言葉 を調べたり
84
考えたりする 。対発信 者、対聞 き手では なく、や りとりの内 容に対する 意見が出る。)
その上で岡田は、発信者に対す る考えや 意見が 出るようになり( 中)、そのやりとり の中でヨコのつながりが生じ( 中~大) 、それ が他のメンバーを 巻き込む対話に発展 する(大)ことにより、学習者 同士の多 元的で 多層的なつながり が折り合わされてい くと主張している(事例 3. 1 3、3. 1 4)。
事例 3. 1 3 う ねり度が中~大の やりとり (岡田 201 8:69)(留:非母語 話者留 学生、
日:日本人学生)
留1:(毎日欠かせない時間は )昼寝の 時間で す。
留2:昼寝?
(留2が留3にプライベートス ピーチで 「昼寝 」の意味を聞き教 えてもらう)
留1: (毎日欠 か せ ない 時 間は) 昼寝 の時 間で す。 昼 寝をし たら、午 後が 元気 に な ります。
留2:悩ましい。昼寝の時間が ないです 。眠い です。
日1:難しいですよね。学校の とき昼寝 。して ます?
留2:中国の学校ではある。1 時間。
事例 3. 14 うねり度が大 のやりとり(岡田 2 01 8:大)
日1:(音楽が好きという話)
留1:どんな音楽が好きですか ?
日 1 : い ろ ん な 音 楽 が 好 き で す が 、 元 気 な 音 楽 だ っ た ら サ ル サ ・ ・ て 分 か り ま す か?
留2・3・4・5: サルサ?
日1:南米?の音楽
留2:英語の?知りません。( 笑)
日1:とても元気な音楽があり ます。
留1:スペインの?
(留3が「サルサ」をスマホで 検索する )
留 3 : あ 、 こ れ で す か ? ( ス マ ホ 画 面 を 見 せ る 。 全 員 で サ ル サ の 理 解 を 共 有 し た。)
85 3.2.5 自律的協働学習発生の流れ
3. 1. 5 で 示 した 「 経 験 交換ケ ー ス 」の 対 話 が 自律 的 協 働 的対 話 で ある と い う 点 と、
3. 2. 4 で 示 した 先 行 研 究の 説明 を もと に 、 自 律的協 働 学 習発 生 ( 成 立) の 流 れ を 示 す。
自律的協働学習が発生するに は、まず そのき っかけとなる働き かけが必要となる。
本研究 では これ を 「 始め る 」とす る。v a n Li e r(2 00 8) の 示す a u to no mo us(困 って いるクラスメートを助け教える 。困って いるク ラスメートから頼 まれて助ける)のや りとりの場合には、「助けを求 める働き かけ」 「相手を(説明型 ・質問型・誘発型で)
サ ポ ー ト す る 働 き か け 」 ( 川 筋 ら 20 11) が 「 始 め る 」 の 働 き か け と な る 。 一 方 、
v a n Li e r(200 8)の示す co m m it t e d(クラスメートと疑問点についてわか るまで議 論
する。)のやりとりの場合には 、「要約 」(自 分や相手の考えを 述べたり、まとめた りすること)や「意見提供」( 意見、指 摘、評 価、観点などコメ ントを提供すること)
( 神 村 2 01 1) 、 ある い は「 解答 提 示」( 解 答は 何 か 質 問し た り 、解 答 を述 べた りす ること)(胡 2 01 8)が「始める 」とな る。
「始める」の働きかけを受け 、適切な 情報を 得ることが出来た 場合には、「わかっ た 」 な ど の 「 理 解 の 表 明 」 ( 問 題 が 解 決 し た こ と を 示 す こ と ) ( 神 村 2 01 1) や 、
「ありがとう」などの感謝の言 葉が発生 しやり とりが終了する。 本研究では、これを
「終える」とする。
一 方、a u t o no mo us(v a n Li e r 20 0 8) の やりと り に おいて 、 「 始め る 」 による 情 報 提供を受けても、学び手の疑問 がとけな いとき もある。この場合 は、学び手より、理 解できないことを示す働きかけ 、あるい は「明 確化要求」(相手 が話した内容につい て 相 手に 明 確 化 を要 求 す るこ と ) (神村 20 1 1) な どの 発 言 が 生じ、 更 な る説明 を 求 める動きが生 じる。また、c omm i t t e d(va n Li er 2 00 8) のやりとりにおいても、課 題 達成の立場より「意見提供」や 「解答提 示」に 対し疑問に思う点 や納得がいかない点 が あ れ ば 、 中 レ ベ ル の 対 話 の うね り 度 合 い の やり と り ( 岡田 2 01 8) が 始ま る 。 そ し て、「明確化要求」や「意見要 求」、「 意見提 供」、そして「同 意」「非同意」(神
村 20 1 1) に より 構 成 さ れる 「 解 答議 論 」 ( なぜ そ の 解答が 正 し いか 意 見 を言っ た り、
そ れ に同 意 し た り否 定 し たり す る こと) ( 胡 2 01 8)が行 わ れ る 。こ れ ら の やり と り は「経験交換ケース」のやりと りとも言 えるが 、本研究では「深 める」とする。
「深める」が始まると、そこ に第三者 が加わ ることがある。第 三者が「深める」に は直接加わらず、それを聴いて いるだけ の場合 もあるが、第三者 が「深める」に加わ る場合、あるいは「深める」の 当事者が 第三者 に声をかける場合 もある。本研究では 第三者が「深める」に参加し中 ~大レ ベル、あるいは大 レベルの 対話のうねり度合い やりとり(岡田 2 01 8)が始まるきっかけとなる 働きかけ を「広め る」とする。
「深める」「広める」のやり とりの中 で、「 メタ的発話」(自 分の発言内容につい て 再 考 す る こ と ) ( 神 村 2 01 1) の 発 生 や 、 「 考 え る 」 、 「 テ キ ス ト に 戻 り 確 認 す
86
る」、「教師に確認する」とい った内省 や確認 の行動が発生する 場合がある。本研究 で は こ れ を 「 振 り 返 る 」 と す る 。 ま た 「 解 答 整 理 」 ( 多 様 な 意 見 を 整 理 す る こ と )
( 胡 2 01 8) の 発言 が 生 まれる 場 合 もあ る 。 本研究 で は これを 「 まとめ る 」 とす る 。
更に、課題達成からやりとりが ずれたり した場 合には、それを修 正する動きが出てく る。本研究ではこれを「引き戻 す」とす る。そ して、「深める」 「広める」により、
合 意 が 形 成 さ れ る と 「 合 意 形 成 」 ( 解 答 に つ い て 全 員 が 納 得 し た こ と を 確 認 す る )
(胡 2 0 18)が発生し、「 わかった!」などの「理解表明」(神村 2 01 1)や、「あり
がとう」などの感謝の言葉など 「終える 」が発 生する。
やりとりに直接には参加せず 、聴きな がら内 省を行っていた学 習者が理解表明の言 葉を発することもあるし、合意 形成がな されな い場合でも、他者 とのやりとりの中で、
内省が促進されたことで「学ん だ・教え てもら った」と感じる学 習者も現れる(小野 村 ・ 西川 20 06) 。 合 意 形成 が な さ れた 後 も、あ ら たな 疑問 が 生じた 場 合 には、 改 め て 議 論 が 発 生 す る が 、 教 え 手 と 学 び 手 の 役 割 は 固 定 さ れ ず 流 動 的 と な る 。 ( 川 筋 ら 2 01 1; 三崎 2 0 06)
この自律的協働学習 の流れを図式化す ると図 3. 4、表 3. 20 のようになる。
図 3. 4 自律 的協働 学習の流 れ
表 3 2 0 自律的協働学習を 構成する要素
始める
・助けを求める。
・相手を(説明型・ 質問型・誘発型で )サポー トする。
・(要約、意見提供 、解答提示など) 意見や考 えを示す。
(V a n Li e r 2 00 8;神村 2 01 1;川筋ら 20 1 1;胡 2 01 8)
深める ・「対話 のう ねり度 合い」中 レベ ルの解 答議論( 非理 解の 表 明、お よ び