ジベ レ リンは植物ホルモ ンの一つで あ りぅ高等植物の生活環 を通 して
,茎
部 の伸長,種
子発芽 の誘導,花
芽形成な ど重要な生理現象 を制御 して いる (神谷ぅ1994;豊増,2004).ジ
ベ レリン は,イネ馬鹿苗病 の病原菌 (♂力うθFθノカ/L/ブ″′/θデ)が
生産す る毒素 として単離,構
造決定 された物質で あ り,現 在,136種の同族体 が天然型ジベ レリンとして登録 されて いる(Plant hormones, 2007).高等植物 にお けるジベ レリン生合成経路 には
,ジ
ベ レリン骨格 に水酸基が導入 される時 期 の違 う2つの主要な経路,早期 13位水酸化経路 と早期非水酸化経路が存在す る(神谷,1994;豊増,2004)。 前者で は,GA12の 13位に水酸基が導入 されてGA53とな り
,20位 ,3位
が順次酸化されて活性型ジベ レリンG☆1とな る。後者では,GA12の 13位に水酸基が導入 されない以外 は早期 13位水酸化経路 と同様 に生合成が進行 し
,活
性型 ジベ レリンGAJが生成す る。また,GAIと同程 度 の生物活性 を示すCrA3は'高 等植物 での検 出例は少な いが,ト ウモ ロコシにお いてGA20か らGA5を経て生合成 され る ことが報告 されている (Fuiiokaら ,1990).
栄養成長か ら生殖成長への移行 は
,植
物の発育 にお ける重要な段階である。一般 に,花
成 に伴 う茎伸長 には,ジベ レリンが関与す る ことが定説 となっている (Chouard,1960;Pharis・ King,1985)。 また
,モ
デル植物 のシ ロイヌナズナをは じめ とす る幾つかの低温要求性 の植物では,低
温 による花成誘起がジベ レリンによって代替で きる ことが報告 されている (Mouradowら ,2002,
Pharis・ King,1985;Wittwer・
Bukovac,1957).そ
の一方で,ジ
ベ レリンを投与 して も花成 の 誘導がで きな い事例,ジベ レリン生合成阻害剤 によって抽苔が抑制されて も花成が抑制されない 事例 もある (Zeevaart,1983).こ のよ うに,ジ
ベ レリンの花成誘起への関与は,植
物種 によっ て異な る もの と推察 され る.ネギ において は
,分
げつ発生 にジベ レリン投与が及 ぼす影響 を調査 した事例 (村井 ら,1981;
山崎 ら
,2006,2007)が
ある ものの,花
成および抽苔 についての報告 はない.ま
た,〃
ノデr/2属における内生ジベ レリンは
,タ
マネギ (Noitriら,1993),ワ
ケギ (YamaLakiら,2002)に
お い て報告 されているが,ネ
ギにお いて は未調査である.本章で は
,ネ
ギ の生育,花
成 にお けるジベ レリンの機能解 明の第一歩 として,ネギの内生ジベ レリンの同定および定量,ジベ レリン関連の候補遺伝子 のクローニ ングおよび発現解析 を行 った.第
1節
初夏 ど り栽培 におけるジベ レリンおよびジベ レリン生合成 阻害剤が 抽苔 に及 ぼす影響ネギの生育,花成 にお けるジベ レ リンの役割 を明 らか にす るために,初夏 ど り栽培 にお けるジ ベ レリンおよび ジベ レリン生合成阻害剤の処理が生育,抽苔率,抽苔発 生の時期 に及 ぼす影響 に つ いて検 討 を行 った.
材料および方法
実験 は鳥取県 園芸試験場 弓浜砂丘地分場(鳥取県境港市 中海千拓地)の 砂畑 回場(砂丘未熟土)
において行 った。2001年 10月 10日 に ̀長悦
'を
264穴チ ェー ンポ ッ トに1穴当た り2粒
と3粒 を交互 に播種
,H月
28日 に条問lmで
深 さ 15 cmの 植 え溝 を切 り,簡
易移植機 「ひっぱ りく ん」(日本甜菜製糖)で
移植 した後,12月
18日か ら翌年3月 28日 まで有滴ポ リエテ レンフィル ム(厚さ0.03 mm,積水化学)で トンネル被覆 (トンネル幅 50 cmぅ 地面か ら25 cmの高 さに2Ⅲ 間隔で両サイ ドに直径8 cmの換気穴 をあけた)した。総施肥量 は NI P205:K20こ20.5:28.5:203kg・ 10a とした.処理 は,ジベ レリン(協和発酵,商品名:ジベ レ リン液剤)5 ppⅢ および25 ppⅢ,
ウエコナゾール
P(ア
グ ロス,商
品名 :ス ミセ ブ ンP)0 5 ppmお よび l ppmを 2月 18日お よび 27日 の計 2回,l
当た りlL潅
注処理 した.無
処理 区は同量の水 のみ とした。実験規模 は各 区4∬
ぅ反復な しとした.3月
28日 に各区10株について,草
丈,葉
身長,葉
鞘長,葉
鞘径,葉
数および地上部 の新鮮重 を測定 した
.4月
17日 か ら6月 6日 まで 1週間お きに,各
区3ご
につ いて葉鞘か ら花茎が 15 cm以上伸長 した個体 を抽苔株 として計数 した,‑85‑
結果および考察
ジベ レリン (GA区
)お
よび ウニ コナゾールP(UZP区 )が
ネギの生育 に及 ぼす影 響 を表611
に示 した。草丈は,無処理 区に対 してGA区およびUZP区で短か った。葉鞘長 は,無処理区の
175
cmに対 して,UZP区
で約 12 cmとかな り短 く,CIA区で約 16 cmと やや短 くな った.地
上部の新 鮮重 は,無
処理 区の41.8gに
対 して,GA区
およびUZP区ともに約30gと
生育が抑制 された. 処理が抽苔率 に及 ぼす影響 を表612に
示 した。抽苔率 は,無処理 区の5%に対 して,GA区
で30%以上
,UZP区
で60%以上であった。抽苔発 生 を1週間おきに調査 した結果,抽
苔発 生はGA区で早 くな り,UZP区
で遅 くなる傾向が認 め られた (図 611)。前述 したよ うに
,花
芽誘起,そ
の後 の花芽発達お よび花茎仲長 (抽苔)に
お けるジベ レリンの 役割 は,植
物 の種類 によって異なる (Evans,1971,Pharis・King,1985).本
実験 の抽苔率が無 処理 区に対 して,GA区
とUZP区の両方で高まった ことは,こ
れ までの知見 では説 明が難 しい実 験結果であるが,花芽誘起 に対す るジベ レ リンの関与の可能性 を示唆す る結果である と考 え られ る.一
方,抽
苔 (花茎仲長)に
関 して,GA区
で発生が早 まったのに対 し,UZP区
では発生が遅 く なった.こ
の結果か ら,ネ
ギ にお ける花茎仲長 にはジベ レリンが機能 している と推察 され る.本実験では,ジベ レリンおよびジベ レリン生合成阻害剤の処理 によってネギの形態への影響 も 認め られた。一般 に
,植
物 にジベ レ リンを処理す る と,茎
葉 の伸長が認め られ る (神谷,1994) が,本
実験 のGA区では草丈がやや短 くなる傾向が認 め られた。その様子は,葉
身が細 くな り,全体的に生育が抑制 された状態で あ り,UZP区とは明 らか に異な る形態で あった(図
653参
照).以上のよ うに,ジベ レリンおよびジベ レリン生合成阻害剤は,ネギの抽苔率,抽苔発生の時期ぅ 草姿 に影響 を及 ば した。この結果
,ネ
ギの生育,花
成 にジベ レリンが何 らかの重要な役割 を果 た して いる と考え られる ことか ら,以降の実験 にお いてネギのジベ レリンの同定,ジベ レリン関連 の候補遺伝子 のクローニ ングを行 った。r l l
表6‑1‑1 初夏 ど り栽培 にお けるジベ レリンおよび ジベ レリン生合成阻害剤が 生育 に及 ぼす影響
Z(2002)
実験 区 処理剤
濃 度
草丈 (cm)
葉身長 (cm)
葉鞘長 (cm)
葉鞘径 (mm)
葉数 (枚)
新鮮重
(g)
無 処 理
GA3
UZP
47.2a 39,Ob 36.5b 41.2b 41.9b
17.5a 16.Ob 16.lb 12.2c ll.9c
13.9 ab 13.5b 14,9a 13.4b 14.8a
3.7b 4.la 4.la 2.5c 2.7c
41.3a 33.9b 30,2b 29,4b 28.4b
‑ 64.7a y 5 ppm 54.6b 25 ppm 51.5b O.5 ppm 53.4b l.O ppm 58,7b
7処 理は
,2月
18日,27日
に行 い,3月
28日 に調査 したy同一列 内の異なるアル ファベ ッ トは
,多
重比較法 (Tukey法)に
お いて5%水準で有意差が ある ことを表す表 6‑卜
2
初夏 ど り栽培 におけるジベ レリンおよびジベ レリン生合成 阻害剤が 抽苔率 に及 ばす影響 (2002)実験 区
処理斉
J
濃度 調査株 数 抽 苔株 数抽 苔 率 (%)
5 ppm 25 ppm O.5 ppm l.O ppm
5.0 30.3 ** ツ
35。8 **
69.3 **
61.0 **
7 43 59 97 72 無 処 理
GA3
UZP
139 142 165 140 118
Z**は無処理 区に対して1%レベルで有意差があることを表す
‑87‑
4/17 4/24 5/1 5/8 5/15 5/22 5/29 6/5 調査 日 (月′日)
図6‑卜
1
初夏 どり栽培 におけるジベ レリンおよびジベ レリン生合成阻害剤が 拍苔発生の推移に及ぼす影響 (200掛第
2節
ネギの内生 ジベ レリン前節 にお いて ネギの花芽分化
,花
茎伸長 (抽苔)に
ジベ レ リンが何 らかの関与を している可能 性が示唆 された。 また,村
井 ら (1981),山崎 ら(2006,2007)は ,ネ
ギにお いて,外
生ジベ レリンによって分 げつ数が増加 し,ジベ レリン生合成阻害剤 によって分 げつ数が減少す ることを報 告 して いる。これ らの ことか ら,ネギの花成
,分
げつ にはジベ レリンが重要な役割 を果た して い る と考 え られ るが,こ
れ まで にネギの内生 ジベ レ リンにつ いての報告 はない。本節では
,ネ
ギの内生ジベ レリンについて,第
l項で内生ジベ レリンの検 索・同定,第
2項で 内生ジベ レリン含量の品種 間差,第 3項で葉鞘・葉身の伸長 を制御す る活性型ジベ レリンについ て検討 を行 った。第
1項
内生 ジベ レリンの検索・同定本項では
,抽
苔および分げつの特性が異なる ̀長悦'お
よび ̀晩中太'(̀坊
主不知')を
供試し (表 6‐ 2‐
1),両
品種の地上部 (葉鞘・葉身)に
おける内生ジベレリンの検索 。同定を行った。材料および方法 (1)植物材料
̀長悦
'お
よび ̀晩中太'(鳥
取県 園芸試験場 弓浜砂丘地分場維持系統)を
供試 し,鳥
取県 園 芸試験場 弓浜砂丘地分場の砂畑 圃場で栽培 した.̀長
悦'は
2002年 10月 3日 に264穴チェー ンポ ッ トに1穴当た り2粒と3粒を交互 に播種
,H月
28日 に条間lmで
深 さ 15 cmの 植 え溝 を切 り,簡
易移植機 「ひ っぱ りくん」(日本甜菜製糖)で
移植 した後,12月
18日か ら翌年3月 28日 までポ リエテ レンフィルム(厚さ0,03 mm,積水化学)で トンネル被覆 (ト ンネル幅 50 cm,地面 か ら25 cmの 高 さに2m間
隔で両サイ ドに直径8 cmの換気穴 をあけた)した.̀晩中太'は ,2002 年9月 19日 に移植 した。肥培管理等は現地慣行 とした。両品種 とも2003年 3月 28日 にサ ンプ‑89‑
リング し
,‑20℃
で凍結保存 した。(2)ジベ レリンの抽出および精製
地上部(凍結試料 200g)を 約5倍量の80%メ タ ノール を加え破砕 し,室温で30分静置 した後,
減圧濾過 し
,濾
液 を減圧濃縮 した.濃
縮液 をヘキサ ンと分配 し,水
層 を回収 した。溶媒分配 によ る精製操作 は繰 り返 し3回とした。水層のpH 3以下 に した後,酢
酸エチル と分配 し,酢
酸エチ ル層 を回収 した.酢
酸エチル 層 を リン酸緩衝液 (0 5M K″HP04:0.25M KH2P03=100:3)と 分配 し, 水層 を回収 した。これ にPVPP(Polyvinylpolypyrrolidone)10gを混和 し,減
圧濾過 した.濾
液をpH 3以下 に調整 した後
,酢
酸エテル と分配 し,酢
酸 エチル層 を回収 した。 これ に無水硫酸ナ トリウム を加 え脱水 した後,減圧乾 固 した。試料 を80%メ タ ノールで溶解 して C18カ ラム(VARIAN) に通 し,80%メタ ノールでジベ レリンを溶 出 し減圧乾 固 した。試料 をメタ ノールで溶解 して DEA カ ラム (VARIAN)で粗精製 した.(3) ODS―HPLC
粗精製 した試料 をさ らにHPLCによって精製 した。カ ラムはODS 4253 D(内 径 15mm,長さ250 mln,セ ンシュー科学
),カ
ラム温度 は40℃とした.移
動相 は 1%酢酸 を含 む30%メ タノール溶液, 流速は2Ⅲ卜min Jと し,溶
出プ ログラムは,当初2分間を1%酢酸含有 の30%メ タノール,そ
の後 28分を 1%酢酸含有 の30%メ タノールか ら100%メ タ ノール との直線勾配,そ
の後,20分
を 100%メタノール とした
.注
入の4分
後 か ら1分毎 に32画分 を得た. (4)イ ネ生物検定矮性イネ ̀短銀坊 主'を用 いた改 良点滴法 (Nishit ima・ Katsura,1989)に よる生物検定 を行 つた。種籾 を1%次亜塩素酸ナ トリウムで30℃
,1時
間殺菌後,ウ
ニコナ ゾールP(ア
グロス,商
品名 :ス ミセ ブ ン
P液
剤,)の
20ppm水溶液 に浸 し,30℃
・ 暗黒条件下 に1日静置 した。ウニ コ ナ ゾールP水
溶液か ら取 り出 してよ く洗浄 した後,蒸
留水 に浸漬 し30℃・暗黒条件下 に 2日 間 置 き催芽 させた.0.8%寒 天 を入れた管瓶(内径28mm×深 さ 58mm)に 6個体 を植え付 けた後,30℃・ 連続照明下で 2日 間生育 させ た.HPLCで
得 られた各画分 を200μ lの 50%アセ トンに溶解 し,1
μlずつ葉鞘 と第 1葉の間 に点滴 した.30℃・連続照明下で 3日 間生育 させた後