2005年6月.
2. ニーズ調査
海洋環境観測については、海洋広域観測用探査機のニーズとして、米国を中 心にバーチャルモアリングのコンセプトが提唱されている。これは、図 1 に示 すように、探査機が海洋を移動するエルニーニョの回りを一緒に旋回し、あた かも移動中心に探査機が係留されているかのように航走し(実際にはケーブル 無しの自律型無人探査機) 、定域観測を行うコンセプトである。南氷洋定期観測 等にも同じコンセプトが活用できる。このようなバーチャルモアリングのコン セプトを実現するために長距離航走が可能な無人探査機が必要とされる。
日本での海洋環境観測ニーズとして、国内の海洋気象台(長崎、神戸、舞鶴、
函館)を調査した。結果を表 1 にまとめる。これにより、潜水深度、距離、観
測内容等運用スペックと、海洋機器全般への要望を把握できた。海洋気象台全
体の観測ルートは図 2 に示すようにかなり長距離に渡っており、ケーブル無し
の長距離航走用無人探査機が観測に強く求められている。また、水中グライダー
的要素を取り入れた 3 次元広域観測を行いたいとの強いニーズもあった。
鉱物資源関係のニーズとしては、 (独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構、掘 削エンジニアリング会社より、石油掘削用洋上プラットフォーム(図 3 )の保守 検査、モニタリング、及び、掘削時の海中作業用に、生物運動型潜水機(魚ロ ボット)等を開発運用したいとの大きなニーズがあった。
エルニーニョ定域観測
南氷洋定期観測
図1 バーチャルモアリングのコンセプト
図2 海洋気象台の観測ルート
表 1 海洋気象観測の観点からの潜水機へのニーズのまとめ
海洋 気象台
観測領域、観
測の地域 潜水機に関するニーズ・スペック その他の海洋探査機への要望 備考
長崎
東シナ海 対馬海峡 太平洋(日本 西岸)
●魚ロボット(場を乱さない)
●浅海用小型潜水機:内海(大村湾、
有明海)より始めて外海へ持っていく
●深度: 2000m 以浅(まれに 6000m)
●海中の等温線をトレースするロボット
●長時間航行(連続測定でないとauv の意味が無い)
●海洋ブイ(DSP 付、振動翼)が必要
●観測船に揺れない船の機構要
●ペイロード: アルカリ度計、ペーハ計、採水 装置(最低 2 ㍑)
●高位置精度(上下運動型の場合)
●常時海底に潜んでいるロボット
訪問調査日:
2005 年 1 月 19 日
神戸
太平洋(赤道 まで)
瀬戸内海
●赤道
●深度: 2000m 以浅(最大 4500m)
●地震計、ADCP の設置回収ロボット
●リアルタイム観測
●自走式ドリフティングブイ
●5 ㍑の採水器
●海中での機器トラブルを観測できる装置
訪問調査日:
2005 年 2 月 3 日
舞鶴
日本海 三陸沖 オホーツク海
●日本海固有水の流れの調査
●荒天時の調査に潜水機が有効
●放射能漏れの海中への広がり調査
●深度: 3500m
●経済水域(EZ)を守りながら調査できる機能
●定置網の中に入った魚を確認できるロボット
●AUV の緯度経度の精緻化が必要。 CTD の 較正の良い方法を構築できないか。
訪問調査日:
2005 年 2 月 4 日
函館
太平洋(日本 東岸)
北 海 道 東 南 海域 三陸沖
●港から出て港に帰る機能
●充電に時間がかからない
●回収が簡単であること(観測船のク レーンは 1 トンまで)
●深度:4000m 最大
●3 次元広域観測(例:水中グライダー)
●氷の厚みを計測
●深層流の計測機能(数 cm)
●鉛直方向プロファイル計測
訪問調査日 2005 年 3 月 11 日
その他
●測定データの精度維持(海洋観測では機器 の精度と同オーダの計測を行うので、較正が 重要)
図3 石油掘削用洋上プラットフォーム