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ニンジンジュースの製造・貯蔵における収量・品質に 及ぼす電気原形質分離とマイクロ波加熱の影響

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海外技術情報

(Yield and Quality Effects of Electroplasmolysis and Microwave Applications on Carrot

  Juice Production and Storage)

( )p.C598(ʼ11・5)文献 №5694

た。各種の加熱処理したニンジンジュースを4℃

で4カ月間貯蔵し,1カ月毎に品質変化を検討し た。

 結果

 電圧20〜60V,処理時間30〜90秒の電気原形 質分離(EP)処理により得られたデータを応答 曲面法(RSM)を適用し,収率が最大となるよ う統計処理した。その結果,最適EP処理条件と して電位勾配22.2V/cm,処理時間60秒間が得 られ,この条件を適用した。マイクロ波(MW)

加熱においては,出力540W,  720W,  900W,流 速90〜287mL/minで検討した結果,ペクチンメ チルエステラーゼ活性(PME)が最小となる条 件 と し て は, 出 力900W, 流 速90mL/min,加 熱時間は4分間であり,MW加熱後のニンジン ジュースの出口温度は99℃であった。EP処理,

MW加 熱, 加 熱 殺 菌(PAS),EP+MW,EP+

PASの処理方法の違いによる品質特性,4℃貯 蔵期間中における品質特性を検討した。

 電気原形質分離(EP)の収率に及ぼす影響   ジ ュ ー ス 収 率 は, コ ン ト ロ ー ル で は50.90±

1.50%であったが,EP処理ではコントロールよ りも収率が9.7%増加し55.84±1.41%であった。

これまで,野菜ジュースにEP処理を適用した報 告は見当たらない。リンゴジュースではEP処理 の適用により収率が1.5〜4.5%増加し,ゴール デンデリシャスリンゴでは収率が4.39〜6.95%

増加し,ブドウジュースでは0.5〜2%増加した。

オ レ ン ジ ジ ュ ー ス で はEP処 理 に よ り 収 率 が 8.74%増加した。これらのことから,EP処理は 細胞の浸透性に影響を与えるため,抽出効率が向 上した。

 ニンジンジュ−ス貯蔵中の品質に 及ぼす電気的方法の影響

 コントロールとEP処理した果汁 中のペクチンメチルエステラーゼ

(PME) 活 性 は, そ れ ぞ れ8.24,

14.38μmol/min/mLで あ っ た( 第 1 表 )。PAS加 熱 で は,1.98μmol/

min/mL  のPME活 性 が 残 存 し た が,MW加熱では完全に失活した。

電気的方法を組み合わせた場合の酵素活性は,

EP+MWで は2.18μmol/min/mL,EP+PASの 場合では2.03μmol/min/mLであった。

 EP処理を組み合わせた試料では,高い酵素活 性が残存した。EP処理は植物組織に影響を与え ることから酵素活性を高め,加熱処理後も不活化 しにくかったものと推察される。PME活性は1 カ月,2カ月貯蔵後には減少し,3カ月以降は残 存しなかった。

 ト マ ト で は,36V/cm交 流 電 場 で80秒 間  EP 処理後,98℃加熱するとPME活性は完全失活し,

48V/cm交 流 電 場 で 5 秒 間 のEP処 理,36V/cm 交流電場で5,  10,  15,  30秒間のEP処理では,無 処理よりも活性が増加することが報告されている。

このことは,電場処理と加熱処理により,PME が活性化されたり,あるいは結合型PMEから可 溶型PMEへの変換割合が失活よりも大きいもの と考えられた。

 ニンジンジュースにおいて,25kV/cm,  200μs,  1Hzの パ ル ス 電 場(PEF) 処 理 に よ り37.35%

のPMEが失活し,オレンジ−ニンジン混合ジュ ースでは,25kV/cm,  340μs,  63℃のPEF処理に より79%のPMEが失活したとの報告がある。

 オレンジジュースにおけるPME失活 の D6 0

( 6 0 ℃ で P M E 活 性 が1/10と な る 時 間 ) やZ 値(D値を1/10にする温度差)は,MW加熱では D60=7.37秒,Z=13.4℃,加熱処理ではD60=154秒,

Z=17.6℃であったと報告されている。

 ニンジンジュース貯蔵中における全ペクチン量

(無水ガラクチュロン酸に換算)を測定した。

EP処理では,細胞膜の分解が要因となりペクチ

第1表 貯蔵期間中における PME 活性(μmol/min/mL)の変化

サンプル 0 1 2 3 4

Control 8.24 EP 14.38

MW 0.001,a 0.33b 0.00a 0.00a 0.00a PAS 1.982,c 0.25b 0.10a,b 0.00a 0.00a EP+MW 2.183,d 0.38b 0.17b 0.00a 0.00a EP+PAS 2.032,c 0.35b 0.11a 0.00a 0.00a    1〜 3 の異なる数値は有意差有り(p < 0.05)

   同一行における異なるアルファベットは有意差有り(p < 0.05)

ン 含 量 は コ ン ト ロ ー ル に 比 べ 13.07%増加し,統計的に有意差が 認められた(P<0.05)。加熱処理後 の ペ ク チ ン 含 量 は,EP+MWで 一 層増加した。4カ月貯蔵後における ペ ク チ ン 含 量 はEP+PASで 最 小 で あった。

  オ レ ン ジ ジ ュ ー ス で はEP処 理

(27V/cm,  10秒)によりペクチン が18.3%増加するとの報告がある。

トマトの交流電界加熱では,36V/cm,  8 0 秒 間 の 処 理 に よ り P M E は 完 全 失 活 し ,108V/cm,  12秒 間 の 処 理 で は ペ ク チ ン 含 量は3.56±0.04%

であった。全体としては,2.89±0.02%のペクチ ン含量であり,75%以上のPME活性が失活した との報告がある。450nmの吸光度から求めた全 カロテノイド含量(分子吸光係数は2505を適用)

を第2表にまとめた。電気的処理によりジュー スへのカロテノイドの移行が増加し,βカロテ ン 含 量 は コ ン ト ロ ー ル で は6.90mg/Lであるが EP処理では11.74mg/Lと増加した。組み合わせ 処理での最高値は,EP+MWの10.87  mg/Lであ った。通常の加熱殺菌では49.42%のロスがあっ たが,MW加熱でのロスは15.36%と少なかった。

このことは,機能性成分の最終製品への移行に MW加熱が有効であるとするこれまでの報告と一 致した。加熱処理によりカロテノイド含量が減少 するとの多くの報告があり,90℃,30秒の加熱 処理により6.25ppm  から5.70  ppmに減少した との報告もある。オレンジジュースでは95〜105

℃,10秒間の加熱によりカロテノイド含量は13

%減少したと報告されている。

 3カ月の貯蔵期間中に,カロテノ イド含量の増加が認められ,βカロ テンの異性化がその一つの要因と 推察された。10週間貯蔵したトマ トジュースでも,同様の増加が報 告 さ れ て い る。PEF処 理(35kV/

cm)したトマトジュースでは,貯 蔵4週,6週で増加した。これらの 報告において,増加の原因はカロテ

ノイドの異性化であるとしている。通常の加熱 殺菌(90℃,90秒)したオレンジジュースでは 4.5℃,7週間貯蔵後にはカロテノイド含量が6.65

%減少した。ニンジンジュースで100℃,30分加 熱処理後に148.03μg/mLであったカロテン含量 は2カ月貯蔵後に一旦増加した後,減少したとの 報告もある。本実験でも同様な結果が得られてお り,3カ月間βカロテン含量は増加し,その後減 少した。

 コントロールとEP処理の全フェノール含量は,

そ れ ぞ れ166.73,203.30mg/Lで あ り, 統 計 的 に有意な差が認められた(P<0.05)。EP処理に よ り 果 汁 へ の フ ェ ノ ー ル の 移 行 が 有 意 に 増 加

(21.93%)し,栄養上の価値が増加した。加熱 処理後,最も多く増加したのはEP+MWであり 184.47 mg/L(P<0.05,10.63%増 加 ),最 小 は PASの146.66  mg/L(P<0.05) で あ っ た。 フ ェ ノール含量は1カ月貯蔵後に減少し,貯蔵2カ月 以降はさらに減少した。電気処理したものは通常 の加熱処理したものよりも,貯蔵中における全フ ェノールの減少は抑制された。

第3表 貯蔵期間中における抗酸化活性(トロロックス当量 /mL)の変化

サンプル 0 1 2 3 4

Control 23.2

EP 25.72

MW 39.943,c 19.91b 18.18b 11.09a 8.42a PAS 13.802,a,b 18.48c 20.16c 14.57b 12.30a EP+MW 37.384,b 34.29b 31.46b 15.26a 16.01a EP+PAS 16.011,b 18.99c 17.86b,c 10.33a 8.98a    1〜4の異なる数値は有意差有り(p < 0.05)

   同一行における異なるアルファベットは有意差有り(p < 0.05)

第2表 貯蔵期間中における全カロテノイド量(mg/L,β カロテン)の変化

サンプル 0 1 2 3 4

Control 253.38

EP 286.52

MW 232.041,b 351.71c 479.63e 394.83d 208.04a PAS 258.134,a 337.58b 562.23e 438.67d 382.33c EP+MW 444.463,e 390.13c 377.67b 306.08a 393.63d EP+PAS 359.212,d 327.67b 404.92e 343.04c 325.88a    1〜4の異なる数値は有意差有り(p < 0.05)

   同一行における異なるアルファベットは有意差有り(p < 0.05)

 すり潰しリンゴのMW加熱において,処理温 度が上昇すると,ジュース中の全フェノール含量 と全フラボノイド含量は増加したとの報告があり,

フジでは全フェノール含量は41mg/Lにまで,マ ッキントシュでは65mg/Lにまで増加した。グレ ープジュースでは,75V/cm,70℃の電気処理に よ り 全 フ ェ ノ ー ル 含 量 は3,672か ら4,702mg/L に増加したとの報告がある。

 抗酸化能の変化を第3表に示した。コントロー ルとEP処理ニンジンジュースの抗酸化能は,そ れ ぞ れ 1mLあ た り23.20,25.72ト ロ ロ ッ ク ス 当量であった。EP処理により抗酸化能を示すカ ロテノイドやフェノール化合物が果汁に移行した ため,増加した。加熱処理後,最大の抗酸化能は MW処理の場合であり,39.94トロロックス当量 /mLであった。他のグループよりもPASでの損 失が大きかった。ニンジンジュースでは,加熱処 理 が 抗 酸 化 能 に 及 ぼ す 影 響 は, 有 意 な 差(P 

<0.05)が認められた。貯蔵中にフェノール含量 が減少することから,抗酸化能も貯蔵中に減少し た。4カ月貯蔵後における減少割合は,MW加 熱よりもEP+MWにおいてより少なかった。高 い抗酸化能を示す点においては,従来の加熱に代 わる手法としてEP+MWが適している。

 コ ン ト ロ ー ル と E P 処 理 の ブ リ ッ ク ス 値

(20 ℃) は, そ れ ぞ れ7.4 %,8.6%で あ り,EP 処 理 に よ り 可 溶 性 固 形 分 が 増 加 し た。MWと EP+MWでは,同じ8.6%であった。貯蔵中の可 溶性ペクチンの変化に伴い,ブリックス値も変化 した。

 ニンジンジュースのコントロールとEP処理の 滴定酸度は,それぞれ0.83%(クエン酸酸度)

と1.09%であり,EP処理により果汁へのイオン の移行が促進され酸度が増加した。3カ月貯蔵後 に一次的に酸度が微増したが,これはペクチンの 分解によりガラクチュロン酸が生じたためと思わ れる。加熱処理間における酸度の相違は認められ なかった。

 リンゴジュースでは,83℃,30秒間加熱処理 し た も の が 0 . 3 6 ± 0 . 1 1 で あ っ た が , M W 加 熱

(900W,40秒 ) し た も の は0.40±0.15に 増 加

したと報告されている。オレンジとニンジンのブ レンドジュースでは,コントロールにおける酸度 は0.568%であったが,PEF処理,通常の加熱殺 菌では酸度が,それぞれ0.626%,0.599%と上昇 したとの報告がある。

 L*a*b*表色系における2色間の直線距離を示 す Δ E 値 は , そ れ ぞ れ M W 加 熱 と P A S で は 10.63と10.30で あ り,EP+MWとEP+PASで は8.98と8.56で あ り,MW加 熱 とPASの 加 熱 処理間では顕著な相違は認められなかった。コン ト ロ ー ル と 比 較 し てEP処 理 のΔE値 は0.65で あることから,加熱処理により色調が大きく変化 した。いずれの処理においても,貯蔵中のΔE値 は減少した。オレンジジュースでも同様な結果が 報告されており,a*値増加(緑が減り,より赤 くなる)の原因としてはフェノールの酸化あるい は褐変反応と推察されている。また,ニンジンジ ュース貯蔵中のb*値減少(黄色が減り,より青 くなる)はβカロテンの減少が要因であるとの報 告もある。

 結論

  電 気 原 形 質 分 離(EP) 処 理 と マ イ ク ロ 波

(MW)加熱がニンジンジュースの収率と品質に 及ぼす影響を明らかにした。EP処理では収率が 顕著に増加(9.49%)した。ニンジンジュースの ペクチンメチルエステラーゼ活性は,MW加熱 により通常の加熱処理よりも迅速,かつ完全に失 活した。EP処理は細胞膜を破壊することから,

ペクチン含量とβカロテン含量が増加した。最大 の カ ロ テ ン 含 量 はEP+MWで 認 め ら れ た。EP 処理によりフェノール含量も増加し,加熱工程で のフェノール含量の低下も少ないことから,抗酸 化能を増強するための改良法となり得る。EP処 理により,ブリックス値や酸度も増加した。これ らの結果,製造ラインに適応しやすいドラム型 EP装置を使用すれば,ニンジンジュースの品質 や収率の向上が可能である。従来の加熱殺菌よ り もEP処 理 やMW加 熱 の 電 気 処 理 の 方 が, ニ ンジンジュース貯蔵中の品質特性が長く保持され

た。  (林 清)

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