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(2) 離が長い土地では,賞味期限の短い生牛乳の. 随 想. 冷蔵輸送のミルクを毎日の食卓で口にするこ とは容易なことではない。庶民の口に入るの. 缶詰 雑感. は,缶入りでレトルト殺菌をした濃縮された ミルクで,これを水やお湯で薄めて飲むのが 一般的らしい。 ○中近東では,オリーブを原料とするベジタブ あき. ルオイルの用途が多い。宗教上の制約から,. 島 田 芳 明. 動物性油脂は不適であり,日本ではお馴染の. しま. だ. よし. 新日本製鐵株式会社 ブリキ営業部長 . ( . ). 菜種油も,乾燥した環境では育ちにくい。ヨ ーロッパでは瓶入りのオリーブオイルも中近. ブリキという容器用鋼材を販売する部署に異動. 東では輸送ハンドリング時に割れてしまうこ. してきて半年余りが経った。これまでの間,お客. とから丈夫なスチール缶が使われている。. 様である内外の製缶メーカーなどとのお付き合い. ○米国では,エアゾール缶(スプレー缶)に入. を通して,今まで余りにも身近で考える機会のな. ったホイップクリームや食用油のような食品関. かった缶詰について改めて考える機会が増えた。. 連の用途が多い。日本では殺虫剤やカセット. 言うまでもなく,食品容器としての缶詰は,そ. コンロのガスボンベの印象があるせいか,食. の機能面で完成度の高い素晴らしい容器であるが,. 品用エアゾール缶には一瞬違和感を感じるが,. その缶詰の周辺にある様々なことに思いを致すと,. ダイエット対策のため油を使いすぎないよう. 多くのことに気づかされている。. フライパンに油をシュッと吹きかけて使われ. その一例を紹介する。. て,必要な量を過不足なく加減しながら噴出 することができるので,非常に合理的な容器. 缶詰を通して知る異文化. と言える。. 海外での容器用鋼板(ブリキ)の用途はほとん. ○中東のイエメンでは日本製のサバフレーク缶. どが食缶であるが,海外では日本国内では思いも. が家庭の味として定着している。韓国にはキ. よらないような缶詰商品が生産・販売されている。. ムチ,中国にはお粥の缶詰がある。. ○中米では唐辛子の一種であるハラペーニョや チリの缶詰がある。缶詰工場に足を踏み入れ. 各国・地域には様々な食生活があり,様々な内. た途端,充満する辛さのエキスで目も鼻もヒ. 容物があるのは当然としても,こうして見てみる. リヒリするほどだ。そのような缶詰が大量に. と,缶詰にはその土地の食生活のみならず,各国. 消費されているようで,スーパー等で棚一面. の文化や生活習慣も映し出されているといったら. に唐辛子の缶詰が陳列されているさまには驚. 大袈裟であろうか。. かされる。中米系移民が多く住むアメリカに. 海外を訪れた際には,スーパーマーケットを訪. も大量に輸出されている。. ねてどのような缶詰製品が売られているかを見て,. ○南米ではコンデンスミルク用の缶も多い。日. その食生活に思いを馳せるだけでも,興味深い発. 本国内では牛乳と言えば紙パックや瓶入りの. 見があると思う。異文化理解につながるし,お土. 冷蔵輸送が一般的だが,冷蔵インフラ整備が. 産にしても面白い。さらに缶詰の素晴らしいとこ. 充分でなく,生産地から消費地までの輸送距. ろは,これらの世界各国の食材を日本にいながら. 食品と容器. 722. 2011 VOL. 52 NO. 12.
(3) 味わうこともできるということである。各国で流. にはプラスチック以外の異物が混入されているた. 通している缶詰は文句なしの本場の味でもある。. め,人間による手作業で選別せざるを得ない。こ れに対して缶詰の素材である鉄素材は磁力選別で. 経済発展と缶詰. 手間(コスト)をかけずに磁石で簡単に分別が可. 缶詰は,一次産品である農産物や魚介類を加工. 能である。. して作られるが,そのプロセスには多くの人手が. また,リサイクルは単にリサイクル=再商品化. 必要であり労働集約的である。丈夫な容器に入っ. されれば良いということだけでなく,持続可能性. ているため,商品は外国への輸出にも適している。. という観点では,質(再商品化される向け先制約. そのため,缶詰は多くの途上国で外貨獲得の手段. やコスト)も重要である。スチール缶のスクラッ. として生産・輸出されている。. プは再資源化する際に酸素を吹き込んで成分を調. 日本でも1878年に英国・米国に初めて缶詰が. 整するのだが,その際にマンガンやアルミ等の鉄. 輸出されたとの記録があり,その後多くの外貨を. 以外の成分は酸化除去(酸化物という形で分離さ. 獲得する日本の主力輸出産業であった。その後,. れ,比重差を使って取り除かれる)により簡単に. 経済成長とともに国内消費もされるようになり,. 寄り分けられるため,合金成分が含まれていても. 更に経済の発展とともに缶詰の輸入国に転じるケ. 純度の高い鉄になる。そのため,スチール缶は建. ースも多い。食缶用のブリキの消費量は経済発展. 材製品のみならず,高純度が要求される自動車や. 段階との相関がある。. 家電製品,スチール缶にも生まれ変わっているの である。. 缶詰と食糧問題. 磁力選別といい酸化除去といい,鉄という素材. 農産物や魚介類は,収穫(収獲)される季節が. はリサイクルの観点からは最適の素材である。. 決まっている。収穫・獲されて生食用として流通・. こうして述べていると,改めて缶詰の素晴らし. 消費される量には限りがあり,消費されない食品. さに気づくばかりだが,それにしても寂しいのは. が人の口に入らずに廃棄されることも少なくない。. 諸外国と比較した我が日本国内での缶詰生産と消. 缶詰は収穫・獲と消費のタイムラグを解消し,貴. 費量の少なさである。. 重な食糧を活かす大事な手段でもある。保存料等. 震災を契機に保存食としての缶詰の存在は注目. がなくても安全で長い賞味期限を保証できる缶詰. されたとは言え,需要喚起には程遠い状況にある。. は世界の食糧問題を解決する可能性を秘めている。. 節電の夏を経て,常温保存できる缶詰が省エネル ギーという観点からももっと見直されても良いと. 缶詰と環境保護. 思う。保存料なしでも長期間保存できるという点. スチール缶の缶詰に使われている鉄という素材. は,添加物に不安を感じる消費者にも安心である。. は実にリサイクルに向いている。. 日本人の長寿を支えてきた魚は調理の手間から若. あらゆる素材のリサイクルにおいて素材別に分. い世代に敬遠されがちであるが,缶詰であれば手. 別することが極めて重要である。きちんと分別さ. 軽に摂ることができる。いわゆるLOHASなラ. れた素材は高品質の資源となり,その品質に見合. イフスタイルにもぴったりである。. った価格で取引され,無駄なく再資源化される。. 異文化交流,食糧問題,環境,健康・・・。缶. 高品質の分別を行う上での課題は手間である。新. 詰が,今日的かつ重要なテーマに関連し,その課. 日鉄ではプラスチック製品のリサイクルも行って. 題解決にも資する存在であることに気づいていた. いるが,引き取ったプラスチック製品(ベール). だけると思う。実に奥が深い存在である。. 食品と容器. 723. 2011 VOL. 52 NO. 12.
(4) シリーズ解説:米の話(第16回) ●解説●. 米の加工利用(5)発芽玄米 ひ う ら・ た く や 上智大学文学部教育学 科卒業。大手鉄鋼メー カーを経て,㈱ファン ケルに入社。2009年, 一般㈳日本発芽玄米協 会事務局長に就任。秋 田県湯沢市米政策戦略 会議委員。. 日 浦 拓 哉 上がりも長くは続かず,需要は緩やかな減少曲線. ●1.はじめに●. を描きながら現在に至っている。. 2011年,芥川賞受賞作家の村上龍が描く新連. しかし,私は発芽玄米の可能性について全く諦. 載小説の一場面には,健康的な食事にこだわるキ. めていない。. し. ャストの嗜好を象徴するものとして,発芽玄米が. 今回この誌面をお借りして,発芽玄米とは何か,. 登場する。発芽玄米が商品化されてから12年の. そして今後発芽玄米がどのような需要に対応する. 歳月が経過し,随分認知度や知名度も上がった。. 使命を持つのかを掘り下げながら,もう一度発芽. 1999年の発売当時,テレビでは様々な健康情報. 玄米の価値について以下に書き置きたい。. 番組が乱立していた。各メディアもこぞって「ダ. ●2.発芽玄米とは何か●. イエットには何が効く」 「何を食べると健康を阻 害する」「何という成分が肥満を防止する」など,. 発芽玄米は文字通り,玄米がほんの少しだけ芽. 専門家を交えて連日にわたり一般生活者にメッセ. を出した状態の玄米をいう。普段日本人が主食と. ージを送っていた。当時発芽玄米も一連の波に乗. している白米は,甘みとふんわりとした食感で馴. り,デビューまもなく数々のメディアで取り上げ. れ親しまれているが,搗精して胚芽や糠を取り除. られた。発芽玄米の特徴成分であるGABA(γ. いているために,玄米の持つ栄養をほとんど摂取. −アミノ酪酸)の機能性は,瞬く間に市場に知れ. できない。一方で玄米は糠の表層が固く,普通炊. 渡り,食後の急激な血糖上昇を抑える効果や,ダ. 飯ではボソボソして食感が悪いため,主食として. イエットへの効果がメディアに取り上げられるこ. 継続するには浸漬に数時間かけたり,圧力釜で炊. とで「発芽玄米ブーム」を呼んだのだ。ブームを. 飯したりと手間を要する。. 辞書で引くと「あるものが一時的に盛り上がるこ. 発芽玄米は,胚芽から芽を出そうとする際に外. と」とあるが,発芽玄米は発売後わずか数年でま. 皮が柔らかくなるため,白米と混合して炊飯する. さにそのブームを体験することとなったのである。. ことも可能であり,手間なく主食として毎日継続. その後は「一時的」な人気であったがゆえに盛り. しやすいのが特徴である。. とう. はい. ぬか. がま. 食品と容器. 724. 2011 VOL. 52 NO. 12.
(5) 米の加工利用(5)発芽玄米. また玄米の3倍含まれているGABAはアミノ. (1994年)になってからである。中国農業試験場. 酸の一種であり,人体における神経伝達物質とし. (現,近畿中国四国農業研究センター)が,玄. て重要な役割を果たしているほか,血圧上昇抑制. 米を水に漬けて発芽させると胚芽部分でGABA. 効果などいくつかの効能で知られている。他にも. が顕著に増加すること2)を発見したのだ。この研. ビタミンB1や,食物繊維,γ−オリザノールな. 究結果によって発芽玄米に注目が集まる中,平成. ど,健康維持や疾病予防に効果が認められている. 10年(1998年)に「γ−アミノ酪酸を富化した. 成分が含まれている。. 食品素材」3)として基本特許が取得されたことに よって,玄米を発展進化させ機能性を携えた「発. ●3.発芽玄米の歴史●. 芽玄米」は正式に誕生したのである。. 水田稲作農業がわが国に伝来してからおよそ. その後基本特許の使用許諾を得て,1999年に. 3,000年の歳月が経過しているが,現在主食とし. は東証一部上場企業である大手化粧品メーカーの. て食べている白米の歴史は意外に浅い。白米の偏. ㈱ファンケルが満を持して市場に参入。通信販売. 食によりビタミンB1が欠乏し,町民に至るまで. 市場と一般流通市場において,7割という圧倒的. 「江戸患い(脚気)」が蔓延した江戸末期以降,現. な市場占有率を持って業界を牽引した。その後も. 在のような本格的な白米の普及は戦前から戦後に. 急激な需要の高まりに供給が追い付かず,食品メ. かけての70年程度である。. ーカーや米穀卸などがこぞって参入した2000年. 白米は糠を取り除いた白い米と書いて「粕(カ. 度から2002年度にかけて,業界全体で1万6千t. ス)」と読ませる。玄米を覆う「糠(ヌカ)」は健. (推定)の製造量に到達した。しかし2003年から. けん. 康な米と書く。. は右肩下がりの状況に歯止めがかからず,2009. 玄米食の効用について昭和16年(1941年)か. 年度から2010年度はついに1万tを割り込む結. ら1年間,山形県の山村で疫学調査が行われてい. 果となっている(第1図)。. る。 調 査 を 行 っ た 伝 染 病 研 究 所 は, 昭 和17年. ●4.利用者から見た発芽玄米の特徴●. (1942年)12月に「玄米主食化が農村民の生活 に及ぼした影響について」1)との表題でレポート. 利用者にとって,発芽玄米はどのような特徴の. を発表した。そのレポートには玄米食によって小. 食材と理解されているのだろうか。仕事柄食品に. 食になったこと,体調も良くなり仕. 㪈㪏㪇㪇㪇. 事の耐久力が上がったこと,被験者. 㪈㪍㪇㪇㪇. の医療費が1/17に減少したこと. 㪈㪋㪇㪇㪇. などが書かれている。栄養が必ずし. 㪈㪉㪇㪇㪇. も万全とはいえない戦前における国. 㪈㪇㪇㪇㪇. 民の食事の中で,当時主食の玄米に 健康効果を期待していたことを示す 貴重な資料である。 発芽玄米が誕生するきっかけとな った重要な研究成果が発表されたの. ⽼ᄁ㊂䋨䌴䋩. 㪏㪇㪇㪇 㪍㪇㪇㪇 㪋㪇㪇㪇. . 㪉㪇㪇㪇 㪇 㪉㪇㪇㪇ᐕᐲ. 㪉㪇㪇㪍ᐕᐲ 㪉㪇㪇㪋ᐕᐲ 㪉㪇㪇㪉ᐕᐲ 㪉㪇㪇㪏ᐕᐲ 㪉㪇㪈㪇ᐕᐲ 㪉㪇㪇㪈ᐕᐲ 㪉㪇㪇㪊ᐕᐲ 㪉㪇㪇㪌ᐕᐲ 㪉㪇㪇㪎ᐕᐲ 㪉㪇㪇㪐ᐕᐲ. は,戦後49年が経過した平成6年. 食品と容器. 第1図 発芽玄米の販売量の推移. 725. 2011 VOL. 52 NO. 12.
(6) シリーズ解説:米の話. 携わる方々へ取材する機会が多いのだが,その取. 大量調理には適さないが,家庭用であれば十分な. 材時に学校給食や事業所給食の現場で必ずといっ. 注意の下,使用可能である。. ていいほど上がる声は,白米と同様に取り扱える. 一方,ドライタイプは,発芽後,水分を白米や. ため特別な調理が不要という点である。. 玄米と同じ15%程度まで乾燥させた製品である。. 例えば病院給食の現場では,食事によって免疫. 非常に取り扱いがしやすく,保存もしやすいなど. 力を高めたい入院患者から,玄米食を要望する声. ウェットタイプより利点が多い。さらに,ウェッ. が増加しているという。しかし玄米を炊飯する場. トタイプでは困難な発芽玄米の精選(異物,着色. 合は,糠層が固いため一般的には浸漬を数時間要. 米,砕米の除去など)ができるので,製品の品質. する。また炊飯も圧力釜のように気圧の高いもの. 向上が可能になる。現在,市場はほぼドライタイ. が求められる。日々忙しく炊飯や調理の失敗が許. プのものになっている,㈱ファンケルが市場に初. されない現場において,玄米を扱うことは極めて. めて投入するまでは,その製造の実用化はなされ. 困難であり,要望はあっても二の足を踏んでしま. ていなかった。発芽のために30∼35%まで吸水. うのが現実である。一方で発芽玄米は,芽を出す. させた玄米粒を,15%まで乾燥させるのに技術的. ために糠表層の外皮全体が柔らかくなるので,玄. に困難な部分が多く,工業生産レベルでのプロセ. 米より吸水性も増す。そのため白米とほとんど同. スが構築できなかったからである。. 様の扱いが可能になり,白米との混合炊飯も難な. ●6.発芽玄米の製造方法●. く実現できるので,給食の現場などでも採用しや すいのである。また玄米で想起されるボソボソ感. 現在メジャーとなったドライタイプの発芽玄米. や固さがないため,食感も柔らかく比較的食べや. の製造工程を概略で示すと,①玄米の選別,②発. すいという点も利用者にとっては利点といえる。. 芽処理,③乾燥処理,④製品選定に分けられる。. 栄養面でも玄米の栄養はもちろんのこと,さら. 先ず玄米の選別を慎重かつ丁寧に行うことから. にGABAが玄米の3倍以上含まれており,毎日. 始まる。大容量サイズで受け入れた玄米には,異. 継続して食べることで,思わぬ健康効果も期待で. 物が相当量混入しているからである。金属片を強. きる。. 力な磁力で絡め取り,小石やガラス片等を石抜き 機で抜き取る。異物を除去した後に,今度は玄米. ●5.ウェットタイプとドライタイプ●. そのものの選別に入る。割れ粒や未熟粒などを粒. 発芽玄米には,製品の水分含量により「ウェッ. 選別機で弾き,最後に色彩選別機によって害虫に. トタイプ」と「ドライタイプ」に二分される。発. よる被害粒等を取り除いて行く。. 芽玄米の販売開始当初は,そのほとんどがウェッ. 一方で受け入れた玄米については,製造各社社. トタイプの製品であった。玄米を選別・洗浄した. 内の品質管理部署が厳しく検査を行っている。不. のち,温水中で発芽させる工程までは,ウェット. 良米の混入率は,製造歩留りに直結する。玄米自. タイプとドライタイプで差はない。ウェットタイ. 身が保有する菌数をチェックすることで,衛生度. プでは,発芽後の玄米をそのまま真空パックして. を測ることも必須である。鮮度もまた重要な指標. レトルト処理を行う。この発芽玄米は,水分が. であり,玄米自身のにおいや味についても事前に. 30∼35%と高いため,カビが生えやすく,開封. 測定する。また受け入れたロットの玄米を発芽処. 後は直ぐに使い切る必要がある。業務用のような. 理することで,十分な栄養付加ができるかどうか. 食品と容器. 726. 2011 VOL. 52 NO. 12.
(7) 米の加工利用(5)発芽玄米. も事前に測定する。. 発芽玄米は自宅で簡単に作れる。自宅で作る場. 発芽処理工程では,玄米自身に発芽する上で必. 合の発芽玄米は1∼2晩漬ければよいのだが,た. 要な水分を行き渡らせる。主に発芽タンク内で浸. だし芽が伸びすぎてしまうと,今度はその芽の成. 漬する方法が一般的である。浸漬する水の温度が. 長に玄米自身の栄養を吸い取られてしまう。また. 重要であり30∼40℃に保ちながら,菌の増殖を. 発芽にあたり,微生物が増殖し酵母臭を発生させ. 防がなければならない。また発芽処理が施された. るため,そのにおいが食欲を減退させる可能性も. ものに関しては,発芽が十分になされているかの. ある。発芽玄米は胚から0.5mm程度芽が出た状. 測定が行われる。. 態で止めるのが理想であり,適度な状態で発芽促. 乾燥工程では吸水した発芽玄米を80℃前後の. 進を留めて殺菌し酵母臭を抑えるなど,食べられ. 熱風で乾燥する。乾燥直後には官能検査で味やに. る美味しい発芽玄米を作るのであれば,やはり専. おいを確認し,発芽処理の際に30∼35%程度吸. 門の発芽玄米製造メーカーの技術に委ねて戴く方. 水している玄米を白米の水分値(13∼16%)に. が得策だろう(第3図)。. いただ. まで乾燥できたかどうかを測定する。. ●7.発芽玄米の豊富な臨床データ●. 玄米はそれ自体に雑菌を多く含むため,発芽条 件によっては雑菌が増殖してしまう。そこで常に. 発芽玄米の機能性についての臨床試験や研究報. 各工程の中で一般生菌数や,各種雑菌(耐熱性芽. 告は,発芽玄米の販売シェアNo.1の㈱ファンケ. 胞菌,セレウス菌,黄色ブドウ球菌等)の増殖を. ルが豊富な研究陣を擁して行って来た。. 抑える工夫を施している。. メタボリック症候群に端を発した動脈硬化が進. こうした玄米の受け入れから製造工程において,. 行すると,心筋梗塞や脳卒中など重篤な疾病を引. 常に玄米自身の品質やクセまでも見抜き個別に調. き起こす恐れがある。発芽玄米食は,動脈硬化を. こうそく. お. い. べることで,美味しさを特徴とする,栄養価も付. 促進する糖尿病,脂質異常症,高血圧に対する有. 加され衛生上も安全な発芽玄米という商品をお客. 意な軽減効果があることが立証されている。. 様に提供することができるのである(第2図)。. 2型糖尿病患者に発芽玄米か白米を主食として. ⋖⡷ུථࡿ. Ⰳ⡷ࡡΊථ⋙㸡ᠺฦฦᯊ㸡ᏻ⬗᳠ᰕ㸝ずࡒ┘࣬࡞࠽࠷࣬㸞 ᦅ⢥ᗐ ⾪㟻ࡡⲠࡿරྙ㸞㸡㩥ᗐ࣬Ⓠⰾ⋙ム㥺 Ⳟᩐῼᏽ ⾠⏍ᗐ
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(10) シリーズ解説:米の話. 㻟㻚㻡. ᡂศྵ㔞㻔⋞⡿䜢㻝䛸䛧 䛧䛯┦ᑐ್㻕. ከ䛔. ᡂศྵ㔞. 㻟㻚㻜 ┤᥋㑏ඖ⢾. 㻞㻚㻡. 㻳㻭㻮㻭. 㻞㻚㻜. 䜲䝜䝅䝖䞊䝹. 㻝㻡 㻝㻚㻡 㻝㻚㻜 㻜㻚㻡. ᑡ䛺䛔. 㻜. 㻝㻜. 㻞㻜. 㻟㻜. 㻠㻜. 㻢㻜 (hr). 㻡㻜. ᚎ䚻䛻ⱆ䛜ఙ䜃䛶䛟䜛 㣗Ⰻዲ. ᚎ䚻䛻㣗పୗ. 第3図 発芽状態と成分変動 (カラー図表をHPに掲載 C067). 食べてもらったところ,発芽玄米を主食にした場. 米食を継続することで,疾病予防に重要な役割を. 合の方が血糖値を低く抑えられることが分かった. 果たす可能性が高いことを示している。. 4). (第1表) 。. ●8.新機能成分「PSG」の発見●. また,特定検診による保健指導該当者に3カ月 間,白米,玄米,発芽玄米を食べ続けてもらった. 発芽玄米食が血糖値の上昇の抑制4),中性脂肪. ところ,発芽玄米を食べたグループで明らかに中. の低下5),血圧の低下6)というメタボリック症候. 性脂肪が減少した(第4図)5)。. 群対策に明確な効果がある点については前述の通. 6). や,ウェストサ. り明らかにされて来たが,玄米の有用性との差異. などの結果も出ており,発芽玄. については,長年の研究でも明確にはされていな. その他にも高血圧の改善効果 7). イズの減少効果. かった。例えば白米や玄 第1表 発芽玄米または白米食における血液中の糖代謝および脂質代謝指標の比較 発芽玄米食 糖代謝指標 空腹時血糖値(mg/dL) インスリン(μU/mL) フルクトサミン(μmol/L) ヘモグロビン A1c(%) 脂質代謝指標 総コレステロール(mg/dL) HDL- コレステロール(mg/dL) 中性脂肪(mg/dL). 白色米. 含まれる特徴的成分であ るGABAは, そ の 成 分. 134.5±24.7 ∮ 7.7± 3.2 303.0±31.4 ∮ 7.3± 0.9 ∮. 149.9±29.0 7.6± 4.6 315.2±34.8 7.7± 1.0. 220.1±17.4 ∮ 57.8±11.2 ∮ 137.7±90.8 ∮. 237.0±21.9 51.5±10.6 149.3±93.8. め,発芽玄米で摂取した. (n=11 名,平均値 ± 標準偏差). 床結果に関与しているこ. 自体が私たちの体内に既 に存在しており,保有す る量にも個人差があるた. *発芽玄米食により,血糖,フルクトサミン,ヘモグロビン A1c,総コレステロール, HDL- コレステロール、中性脂肪の値が白米食の場合よりも改善した。 Wilcoxon's signed-rank test, ∮ p< 0.05. 食品と容器. 米よりも発芽玄米に多く. 728. GABAが, 取 り 分 け 臨. とを証明しづらい。 しかし長年の謎を解く. 2011 VOL. 52 NO. 12.
(11) 米の加工利用(5)発芽玄米. 鍵となる発見が,アメリカの研究グループによっ. って導かれた,発芽することによって増加する,. て成された。そこでは,1型糖尿病ラットの神経. 玄米自身との差別優位性を示すこの研究結果は,. 障害の症状を玄米よりも発芽玄米の方が抑制する. 発芽玄米の将来性に大きな光を当てるものとなっ. 8). という結果. から,成分を調査したところ,発芽. た。. 玄米の糖脂質にたどり着き,脂質研究で権威ある. また,欧米型の食事パターンによる脂肪摂取の. 科学雑誌「ジャーナル・オブ・リピッドリサーチ」. 過剰や,それがもたらす肥満が,うつ病の症状を. 9). に発表された 。. 誘発する可能性が注目されており,その症状の改. それがアシル化ステロール配糖体という発芽玄. 善に「PSG」が有効であることが,肥満マウス. 米の米糠に存在する植物ステロール配糖体. を用いた高知県立大学の研究グループによって報. (Steryl glucoside)の一種である。この成分は,. 告された11)。うつ病や慢性疲労症候群などの気分. 玄米に比して発芽玄米で多いことから発芽玄米の. 障害は,わが国で年々増加してきており,先進国. 英 名 のP(Pre-germinated brown rice) を 冠 し. で断トツの自殺率を有するわが国の大きな社会問. て「PSG」と呼ばれる。. 題となってきている。加えて発芽玄米は,授乳期. 「PSG」とは,動物のコレステロールに相当. の女性のメンタルに好ましい作用を及ぼすという. す. する生命活動に必須の成分で,発芽という植物の. ことも報告12)されており,「PSG」の最新知見を. 生命現象により増加すると考えられている。植物. 含めて考えても,「PSG」の抗肥満作用は大変意. 中での「PSG」の存在意義は解明されていない. 義あるものである。. が,発芽玄米から抽出した「PSG」を含有する. 業界団体である一般(社)日本発芽玄米協会で. エキスによって生体への作用を調査したところ,. は,社会的重要性を鑑みて,2009年10月15日読. 高脂肪食を与えた肥満マウスに摂取させると,エ. 売新聞朝刊全国版の1面新聞広告によって. ネルギー代謝を上げ,内臓脂肪量を低減させたり, 血糖やコレステロール,中性脂肪を改善したりす. んだ。. 10),11). ることが報告された. 「PSG」の驚くべき研究成果を発表し反響を呼. 。遠く米国の研究者によ. 現在では健康商品メーカーによって,発芽玄米. 第4図 主食の違いによる中性脂肪値の変化の比較 #p=0.06,白米vs発芽玄米. 食品と容器. 729. 2011 VOL. 52 NO. 12.
(12) シリーズ解説:米の話. から「PSG」のみが抽出され,医療関係者向けに. 有機肥料や減農薬など独自の栽培方法について相. 次世代高付加価値サプリメントとしても供給され. 応の要求をする。そうしたプロセスの中で共に成. ている。. 長しながら,一体となって取り組む必要があるだ ろう。現地生産から製造販売までを一気通貫で行. ●9.今後の展望●. う,いわゆる6次産業化の流れができれば,高齢. 発芽玄米は浮き沈みの激しかった第1ステージ. 化によって疲弊しつつある地域も活性化されるの. を終えて,今第2ステージに入ろうとしている。. ではないだろうか。. 第1ステージでは発芽玄米を需要者にとってより. さらにはコストに関しても言及すべきであろう。. 食べやすく,より扱いやすくということへの挑戦. 第1ステージにおいて,普及がある一定の時期. であった。そして何故発芽玄米を食べた方が良い. から進まなかった背景には,白米との価格差が関. のかを説明すべく,その健康効果に対する科学的. 係していたことは明白である。価格は発売当初よ. データの裏付けに歳月を費やして来た。第2ステ. り業界全体で2割程度廉価になったものの,末端. ージでは,発芽玄米の元となる玄米自身の持つ可. ではいまだ白米の販売価格に対して1.5∼2倍の. 能性をさらに深く掘り下げるアプローチが必要と. 価格差がある。米菓原料や酒米に適応される加工. なって来るであろう。. 用途米が発芽玄米に適用されれば,減反でやむな. 発芽玄米は製造技術さえ確立されれば,どのよ. く転作に踏み切った水田や休耕田の有効活用にも. うな品種でも製品化することは理論上可能である。. 繋がる。そうなれば原料価格の低減も図られ,結. そのため原料玄米に関しては,本当にその品種が. 果として需要者への還元も進むのではないかと考. 発芽玄米に相応しいのかどうかという明確な指標. えている。. つな. がなかった。発芽玄米用に開発された品種に巨大. ●10.おわりに●. 胚芽米が数種あるが,GABAの値を通常の発芽. み. ぞ. う. 玄米より増加させるだけでは今後説得力に欠ける。. 戦後奇跡の経済成長を遂げたわが国は,未曽有. やはり食べものである以上,美味しさは必要不. の超高齢社会のただ中にある。充実した医療と豊. 可欠である。国の研究機関と共同で,発芽玄米の. かな食生活を実現した結果,すでに20年以上も. 美味しさに関する基準値と,混合炊飯における白. 前から日本人は世界一の平均寿命を誇っている。. 米との相性等について,利用者の立場に立ったデ. 一方でその長寿と引き換えに保健診療と合わせ. そろ. ータを揃える必要がある。. て上昇し続ける医療費は,わが国において重要な. またこれからの時代は,一般消費者の口に入る. 財政上の問題として横たわっている。医療機関の. まで,生産者から製造メーカー,販売者に至るま. お世話になる前に,各人が自覚と責任を持って健. でが,共通したプロ意識と目的意識を持って臨ま. 康を維持することが,必要不可欠であり義務とい. なければならない。. う時代となった。ただ生き長らえるだけではなく, めい. そのためには,製造や販売に従事する者達がリ. 冥途に向かう直前まで健康でありながら長生きし. スクを負って,生産者に対して販売数量分を確実. たいという健康長寿願望を叶えるためには,バラ. にコミットする必要がある。製造販売に携わる者. ンスの取れた食事と適度な運動が最低限必要であ. かな. たんしゅう. は,契約栽培によって反収の補償を十分に行いな. ることは最早いうまでもない。. がら,一方で発芽玄米に相応しい品種の活用と,. 私たち人間は自らの寿命を本来コントロールで. 食品と容器. 730. 2011 VOL. 52 NO. 12.
(13) 米の加工利用(5)発芽玄米. きないが,近年になって,栄養補助食品の普及や. 生産者の手によって大事に育てられ,無事収穫. もう. 食育の啓蒙,低カロリーメニューの開発等,栄養. された玄米という種が,さらに今一度芽吹かんと. 学上でも理にかなった毎日の食事で,健康状態を. する命のエネルギーを丸ごと食す贅沢は,他の食. コントロールできる可能性は飛躍的に増えた。. 物では得られない発芽玄米固有の価値だ。その命. そ の 中 で も 注 目 す べ き こ と は, 食 事 中55∼. を毎日いただくことの喜びに心から感謝しながら,. 60%が理想といわれる炭水化物摂取総量を,豊. 国民一人一人が豊かで穏やかな健康長寿社会を実. 富な水田を有するわが国では,他国に頼らずお米. 現すべき時に来ている。発芽玄米を毎日のご飯に. によって摂取できるという点である。そしてさら. ただ混ぜて食べる。その単純だが深い意味を,私. に発芽玄米には発芽という生理現象で増える成. はこれからも訴え続けなければならないと考えて. 分である「PSG」によって,白米や玄米よりも優. いる。. ぜい. れた健康価値が証明されている。. 参 考 文 献 床成人病,31(5):638(2001).. 1)矢追秀武ら,玄米主食化が農村民の生活に及ぼした影. 8)Usuki S et al., Effect of pre-germinated brown rice. 響について,医界週報第407号別冊,1-7(1942).. intake on diabetic neuropathy in streptozotocin-. 2)Saikusa, T. et al., Distribution of free amino acids in. induceddiabetic rats.. the rice kernel and kernel fractions and the effect of. (. ).,4:25. (2007).. water soaking on the distribution.. 9)Usuki S et al., Structural analysis of novel bioactive. , 42, 1122-1125(1994).. acylated steryl glucosides in pre-germinated brown. 3)三枝貴代ら,「γ−アミノ酪酸を富化した食品素材」特. rice bran.. 許第2590423号公報(1997).. . ,49(10):2188-96(2008).. 4)Hsu TF et al., Effects of pre-germinated brown rice. 10)奥原康英ら, 発芽玄米で生成する植物ステロール配糖. on blood glucose and lipid levels in free-living. 体画分が高脂肪食マウスに及ぼす影響(第一報), 日 本肥満学会会誌,15(Suppl.): 225(2009).. patients with impaired fasting glucose or type 2 diabetes.. 11)渡邊浩幸ら, 発芽玄米で生成する植物ステロール配糖. (Tokyo).54(2):163-. 体画分が高脂肪食マウスに及ぼす影響(第二報), 日. 8.(2008).. 本肥満学会会誌,15(Suppl.): 225(2009).. 5)奥原康英ら, 主食の違いが肥満者の健康状態に及ぼ. 12)Sakamoto S et al., Pre-germinated brown rice could. す影響, 成人病と生活習慣病, 39(5):585-586(2009) .. enhance maternal mental health and immunity. 6)水口彩ら, 発芽玄米摂取における高血圧患者の血圧に. during lactaton.. 及ぼす影響, 成人病と生活習慣病, 34(5):735(2004) .. .,46(7):391-6(2007) .. 7)土田隆ら, 発芽玄米摂取が脂質代謝に及ぼす影響, 臨. 食品と容器. 731. 2011 VOL. 52 NO. 12.
(14) シリーズ解説:糖質素材の機能と利用(第 15 回). ◆解説◆. キシロオリゴ糖 し み ず・ か ず ま さ 北海道大学農学部林 産学科卒業。農林水 産省森林総合研究所 を経て日本大学生物 資 源 科 学 部 教 授。 2003年退職。. 志 水 一 允. 農学博士. ◆1.はじめに◆. ◆2.キシランの構造◆. キシロオリゴ糖は2∼20個のキシロース残基. キシランの主鎖はβ(1→4)結合したキシロース. がβ-(1→4)結合した構造をもつ。このキシロオ. 残基からなっている。このキシロース残基の一部. リゴ糖はヘミセルロースの1種であるキシランか. は,そのO-2またはO-3あるいはその両方で,グ. ら酵素や酸で部分加水分解することによって製造. ルクロン酸,4- -メチルグルクロン酸,アラビノ. することができる。キシランは樹木,イネ科草本,. ースなどの残基やキシロース,アラビノース,ガ. 穀物,草本,海藻など種々の植物に存在する。キ. ラクトース,グルコースなどからなるオリゴ糖,. シランの構造はその起源によって異なり,多様で. さらには,アセチル基で置換されている。置換残. 複雑であるがゆえに多くの有益な産物を生産する. 基の種類,置換度,置換基の主鎖における分布様. ことが可能で,種々の用途開発が期待される生体. 式などはキシランの起源によって異なり,それら. 高分子原料である。そのうえ,キシランは農林水. の化学的物理的特性を決定している。キシランの. 産業,木材産業,紙パルプ産業の副産物として多. 構造多様性は植物体内における役割・機能と密接. 量にしかも持続的に入手可能である。. に関連している1)。その主要な構造に基づいて,. 昔から,キシランはフルフラールやキシリトー. ホ モ キ シ ラ ン(HX), グ ル ク ロ ノ キ シ ラ ン. ルとして利用されてきたが,近年,酸や酵素によ. (GX) ,アラビノグルクロノキシラン(AGX),. ってキシロオリゴ糖に変換して特定保健用食品と. グルクロノアラビノキシラン(GAX),アラビノ. して利用されるようになり用途が広がっている。. キシラン(AX)などに分類される。ここでは,. サントリーがキシロオリゴ糖を配合した乳酸飲料. これらのキシランの主な構造を,マイナーな構造 を省略して,説明したい。. “ビックル”を1993年,世界に先駆けて上市し て以来,現在では,60社以上が飲料,デザート. 2.1)ホモキシラン(HX). 類,ドラッグなど100以上の食品に利用している。. ホモポリマーとしてのキシランは海藻に分布し ている。キシロース残基がβ(1→3)結合している. 食品と容器. 732. 2011 VOL. 52 NO. 12.
(15) キシロオリゴ糖. か,あるいはβ(1→4)とβ(1→3)結合の混合した. 溶性のものと15%以上が置換されている水可溶性. 主鎖からなっている。それらは細胞壁構造におけ. のものがある。グルクロン酸含量は水可溶性のも. る構造機能を果たしていると推定されているが,. のでおよそ9%,水不溶性のものでは4%以下と. 貯蔵機能も除外できない。. 低い。. 2.2)グルクロノキシラン(GX). GAXはアラビノキシランが主体で,グルクロ. GXは主鎖中のキシロース残基のO-2に単一側. ン酸側鎖の数がアラビノース側鎖の数より10分. 鎖として4- -メチルグルクロン酸残基をもつ。キ. の1以下と少ない。一部のキシロース残基O-2と. シロースと4- -メチルグルクロン酸の比は平均し. O-3の両方がアラビノースで2重に置換されてい. て10:1である(第1図) 。天然状態では,一部. る。GAXはムギ,トウモロコシ,コメ糠 のよう. のキシロース残基のO-2またはO-3あるいはそれ. な穀粒の非胚乳部に含まれている。ムギ麩から冷. らの両方がアセチル化されている。GXのアセチ. 水,蒸煮,希アルカリで抽出される。冷水と蒸煮. ぬか. ふすま. 2). ル基含量は3∼13%である 。. により抽出されるGAXの収率はそれぞれ1.5およ じん. GXは広葉樹材のほか,アサやケナフの靭 皮と. び19∼28%で,希アルカリでの収率は10∼30%。. てん. 繊維,ヘチマの果実繊維,ナツメヤシ種繊維,甜. 2.4)アラビノキシラン(AX). 菜パルプ,ホウホウバ実殻,落花生外殻,綿実殻,. AXは一部のキシロース残基のO-3またはO-2. ヒマワリ実殻,オリーブの種子,西洋ナシの種皮,. あるいはO-2およびO-3の両方がアラビノース残. ブドウ皮,ナタネの茎などに含まれる。. 基で置換されている。ムギ,エンバク,コメ,ア. 2.3)アラビノグルクロノキシラン(AGX)と. ワ,トウモロコシ,ソルガムのような穀物やタケ. グルクロノアラビノキシラン(GAX). ノコなどの植物に分布している。デンプン質の内. AGXとGAXはβ(1→4)結合したキシロース残. 胚乳の細胞壁や穀粒の麩の主要なヘミセルロース. 基のO-2とO-3に4- -メチルグルクロン酸残基と. である。AXはアラビノースによる置換度や置換. アラビノース残基をそれぞれもち,わずかにアセ. パターンによって水に不溶のものと可溶のものに. チル化されている (第2図)。 AGXは イ ネ 科 牧 草や穀草のリグニン 化された支持組織の 細胞壁中の主なヘミ セルロースである。. 第1図 広葉樹材4- -メチルグルクロノキシラン(GX)の構造. サイザル麻,トウモ ロコシ穂軸,麦わら から単離される。ト ウモロコシ穂軸の AGXに は, キ シ ロ ース残基の95%が置 換されていない水不. 食品と容器. 第2図 イネ科草本のアラビノグルクロノキシラン(AGX)の構造. 733. 2011 VOL. 52 NO. 12.
(16) シリーズ解説:糖質素材の機能と利用. 分かれる。AXはコムギ粉の製パン挙動に影響す. または化学的相互作用によって左右される。木材. るが,水不溶のAXは水可溶AXに比しより強い製. やイネ科草本などのリグニンで固められた(木化. パン改質特性をもつ。. した)細胞壁からキシランを定量的に単離するに. 2.5)Complex Heteroxylan(CHX). は,リグニンとの物理的(3次元ネットワーク). 穀類,種子,ガム浸出物や粘質物中に存在する. 化学的(エステル,エーテル,水素結合)結合が. CHXは構造的に複雑である。それらの主鎖中の. 阻害となる。. キシロース残基が単一のグルクロン酸残基やアラ. 広葉樹材はおよそ20∼30%のキシランを含む. ビノース残基のほかに種々の単糖やオリゴ糖で修. が,木粉を脱リグニンせずに直接10%程度のアル. 飾されている。. カリ水溶液で抽出すると,キシランの一部が溶出 してくる。抽出量は樹種間で異なり,シラカンバ,. ◆3.キシラン資源と単離◆. モリシマアカシアのように80%以上のキシランが. キシランの主な供給源は広葉樹材とイネ科草本. 抽出される樹種もあれば,逆に,ケヤキ,トチノ. で,それらの20∼35%がGXまたはAGXである。. キ,ハルニレ,クスノキのように,抽出量が30%. また,種子や穀粒はAX, GAX, CHXを30∼50%. 前後の樹種もある。リグニン含量の高い樹種ほど. も含む。バガス,ムギワラ,イネワラ,ヒマワリ. 抽出可能なキシラン量は少ない傾向にある3)。キ. かす. しん. 種子殻(油搾り粕),トウモロコシ芯,スイート. シランを高分子状態で抽出し,工業的に利用する. ソルガム茎,グアル種子殻,綿実殻など多量に入. 場合には,原料となる樹種は抽出効率からみて限. 手できる繊維作物も代表的なキシラン資源である。. られてくる。. また,ササ,ラミー繊維,オリーブ,ケナフ,ア. 広葉樹キシランを定量的に抽出するには,酢酸. サ,アマなども豊富にキシランを含む。トウモロ. 酸性下亜塩素酸ソーダで脱リグニン後10%前後の. コシからのデンプン生産時の副産物である皮や麩. KOHで抽出する。広葉樹や草本からのキシラン. (コーンファイバー)は高度に分岐したキシラン. の実用的単離法として第3図に示した. を50%余含む。. NaOH/H2O2による2工程法方法が提案されてい. キシランの抽出性は他の細胞壁成分との物理的. る2)。この方法は樹木のアスペンやブナあるいは 一年性植物(ムギワラ,. ේ ᢱ ࠈㆊ. テンサイパルプ,オオム. 㨪㧑. ギワラ,トウモロコシ穂. 1D2++2. 軸,ソバ,バガス)の木. 㨪㧑1D2+&O . 化組織からキシランを単 ᱷᷲΣ. 離するのに応用されてい. ‛Σ. ᳓นṁᕈࠠࠪࡦ. (W2+ ࠕ࡞ࠞ. ᴉᲚㅘᨆ. 類からは,リグニン含量. ㆙ᔃಽ㔌. が少ないことからキシラ. ಓ⚿ੇ῎ ᱷᷲΤ. ᳓ਇṁᕈࠠࠪࡦ. ‛Τ. ンはかなり温和な条件で 抽出可能である。トウモ. 第3図 木質系資源からのキシランの単離法. 食品と容器. る。木材に比べて,草本. 734. ロコシ穂軸やムギワラか. 2011 VOL. 52 NO. 12.
(17) キシロオリゴ糖. らは希アルカリでキシランの85%を抽出するこ. アラビノキシロオリゴ糖を生成する。このエンド. とができる。トウモロコシ芯をアルカリで抽出す. 型キシラナーゼは疎水性クラスター解析やアミノ. る際,超音波を当てるときわめて効果的で,より. 酸配列の相似性に基づいてグリコシド加水分解酵. 低温,より短い抽出時間でキシランの収率が増え. 素のファミリー5,7,8,10,11,43に分類され. る。. る8)。. 内胚乳,麩,種子殻,種子皮などに含まれるキ. これらのうちでもっともよく知られているのが. シランの単離法はさまざまな量のタンパク,フェ. ファミリー10と11に属するもので,この二つは. ノール性化合物やデンプン,ペクチン,アラビノ. 三次元構造,分子量,等電点などの物理化学的特. ガラクタン,キシログルカン,ガラクトマンナン. 性で異なり,作用機作が異なる。ファミリー10. のような可溶性多糖類が存在するため複雑である。. に属するキシラナーゼは高い等電点をもつ低分子. 穀粒からのAG調製法として多くの多段階抽出・. 量の酵素で,その作用機作は低分子量のセルロー. 精製法が提案され,パイロットスケールでの試験. スにも作用するなど比較的ルーズである。しかし,. 4,5). 。コムギ粉,麩,ライムギ,. 側鎖やβ-1,3-結合の非還元性末端側のキシロシド. ソ ル ガ ム 内 胚 乳 か らAXを 分 別 抽 出 す る 上 で. 結合を解裂するが,還元性側では1番目と2番目. が行われている. 6). BaOHが効果的であることが報告されている 。. のキシロシド結合とβ-1,3-結合の隣のキシロシド 結合は解裂できないので,GXに作用させると最. 7). ◆4.キシランとキシラナーゼ ◆. 小の酸性オリゴ糖としてはGlcA3Xyl3(第5図). 多くの微生物は物理化学的特性,構造,作用機. を産出する。ファミリー11に属するキシラナー. 作の異なる多様なキシラナーゼを産生する。例え. ゼは等電点が高く,低分子量で,極めて作用機作. ば,. は15種類の, は13種類のキシラナーゼ. を菌体外に分泌する。 エンド型のβ-1,4-キシラナーゼ(EC 3.2.1.8) はキシラン主鎖をランダムに解裂するが,側鎖 (4- -メチルグルクロン酸,アラビノノースな ど)による立体障害を受けて,直鎖のキシロ オリゴ糖(第4図)のほかに,グルクロノキ シロオリゴ糖(アルドウロン酸,第5図)や. 第4図 キシロオリゴ糖の構造. *;. *;. 第5図 酸性オリゴ糖:アルドテトラオウロン酸(G3X3)とアルドペンタオウロン酸(G3X4). 食品と容器. 735. 2011 VOL. 52 NO. 12.
(18) シリーズ解説:糖質素材の機能と利用. の特異性が高い。置換基の影響を強く受け,GX. しては,柑橘類から果汁を搾汁した残りの粕のじ. に作用させると最小の酸性オリゴ糖として. ょうのう膜に. 3. のキシラナーゼを作用さ. GlcA Xyl4(第5図)を産出する。. せてキシロビオース,キシロトリオース主体のか. ファミリー5のキシラナーゼの作用機作はさま. ゆ状エキスの製造法が開発されている12)。およそ. ざまであるが,. 20%のキシランを含む広葉樹クラフトパルプか. からのキシラナ 9). ーゼはとてもユニークな酵素で ,キシラン主鎖. らは,. 中のキシロシド結合を解裂するにはグルクロン酸. ゼを作用させて中性キシロオリゴ糖(第4図,. 側鎖を必要とし,グルクロン酸側鎖のついたキシ. n=1∼10,2∼10量体)および分子中に少なく. ロース残基から還元性末端側の2番目と3番目の. とも1つ以上グルクロン酸残基を側鎖として有す. 間のキシロシド結合だけを解裂する。一方,. る酸性キシロオリゴ糖(第5図)を製造する方法. 属に由来する中性好熱キシラナー. のそれはエキソ型のキシラナーゼで還元末. が開発されている13,14)。長鎖のキシロオリゴ糖は. 端側から作用してキシロビオースや少量のキシロ. 水に難溶であるが,ウロン酸側鎖をもつキシロオ. オリゴ糖を産出するが主にキシロースを産出する。. リゴ糖は水溶性が高い。. この酵素は側鎖の隣のキシロシド結合を解裂でき. ②の場合には,上述したように,キシランを原. 2. 2. ないためGlcA Xyl3やAra Xyl. 10) 3. を産出する。. 料から直接あるいは部分脱リグニン後,アルカリ. 現在,キシラナーゼは食品,飼料,紙パルプ,. (NaOH,KOH水溶液など)で抽出し,その抽. デンプン,繊維産業で利用されている。キシラナ. 出液にアルコールを加えてキシランを沈殿させて. ーゼの多くは真菌類や細菌類起源のものが多く,. 回収する。回収したキシランにエンド型キシラナ. 中温,中性付近で最適活性を示すものがほとんど. ーゼを作用させてキシロオリゴ糖を生産する。使. で あ る が, 5 ∼ 100 ℃,pH2 ∼ 11,NaCl濃 度. 用するキシラナーゼとしては,キシロースの生成. 30%などの極限状態で安定であるばかりでなく,. を避けるために,エキソ型のキシラナーゼやβ-キ. 活性を示すキシラナーゼも報告され,好熱性,好. シロシダーゼを含まないことが望まれる15,16)。. 冷性,好アルカリ性,好酸性キシラナーゼが研究. シラカバ,ケナフ,ユーカリ,オオムギなどか. されている。. らアルカリで抽出されたGXやAXをエンド型キシ ラナーゼで加水分解して生成するオリゴ糖が詳し. ◆5.オリゴ糖の生産◆. く調べられている16∼21)。GXの場合,直鎖(中性,. 上述のようなキシランを含んでいる原料からキ. 第4図)および分岐(酸性,第5図)のキシロオ. 11). シロオリゴ糖を生産する方法としては3つある 。. リゴ糖が得られる。中性のものはキシロビオース. ①原料を直接酵素で処理してキシロオリゴ糖を生. やキシロトリオースが主になるが,酸性キシロオ. 産する方法。. リゴ糖では,アルドテトラオウロン酸やアルドペ. ②原料からキシランを抽出後,酵素で処理してキ. ンタオウロン酸が主になる。. シロオリゴ糖を生産する方法。. トウモロコシ外皮からは酵素処理,化学的処理,. ③原料を高温高圧の水蒸気,水,希酸で処理して. 物理的処理のいずれかあるいはこれらを組み合わ. キシロオリゴ糖を生産する方法。. せてデンプン質やタンパク質等を除去し,アルカ. ①の場合は,原料中に存在しているキシランに. リ水溶液でヘミセルロース部を抽出し,キシラナ. 酵素がアクセスできる場合に限られる。この例と. ーゼで処理して,キシロオリゴ糖が得られている22)。. 食品と容器. 736. 2011 VOL. 52 NO. 12.
(19) キシロオリゴ糖. キシラナーゼは直接反応系に加えられるか固定. ある。それゆえ,酸性のキシロオリゴ糖も生成す. 23,24). 化して利用される. 。. る。この中性と酸性のオリゴ糖は強酸性陰イオン. ③の方法は,原料を直接150℃以上の水や水蒸. 交換樹脂(アセテート型)によるイオン交換クロ. 気で処理(水熱反応)してキシランを加水分解し. マトグラフィーや水を溶媒とするゲルろ過で分離. てキシロオリゴ糖を製造する。高温高圧下の処理. することができる。. で,水素イオンと水分子とが反応してできるヒド. ◆6.キシロオリゴ糖原液の精製◆. ロニウムイオン(H3O+)によってキシランの加. 蒸煮,加圧熱水あるいは希酸処理で得られるキ. 水分解がはじめられる。元来キシランに結合して いたアセチル基の一部が遊離して生じる酢酸によ って加水分解が促進される。このことからこの反 応は自己加水分解(autohydrolysis)と呼ばれ, 水以外の薬品を使わず,副産物の生成が少なく, 装置の腐食がなく,中和する必要がなく,低コス トであるなどの利点をもち,環境的に優しい方法 として多くの研究例がある。また,それぞれの原 料に対して適切な条件を設定すればキシランを定 量的にキシロオリゴ糖として回収することができ る。自己加水分解の助剤として希流酸を添加する 場合もある25)。 これまでに,シラカバ,ユーカリ,ササ,モウ ソウチク,トウモロコシ穂軸,ラッカセイ殻,ム ギワラなどから蒸煮や加圧熱水処理でキシロオリ ゴ糖の生産が試みられている26∼34)。第6図と第 1表に,シラカバ材を200℃で10min蒸煮したと. 第6図 シラカバ材を200℃で10min蒸煮したときに 得られるオリゴ糖. きに得られる中性キシロオリゴ糖のクロマトグラ ムとその重量組成を示した3)。このオリゴ糖部は. 第1表 シラカバ材を200℃で10min蒸煮したときに 得られるオリゴ糖の重量組成. 重 合 度 の 高 い オ リ ゴ 糖 を 含 む の で,. のα-1,2-結合は主鎖中のβ-1,4-キシロシド結合と. フラクション 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10. オリゴ糖 排除限界以上 > Xyl10 Xyl9 Xyl8 Xyl7 Xyl6 Xyl5 Xyl4 Xyl3 Xyl2. 重量比 12.8 4.0 2.3 2.9 3.5 6.0 7.1 9.8 12.0 16.3. 比較して70倍近く酸加水分解に対して抵抗性が. 11. Xyl1. 23.2. や. 菌のエンド型キシ. ラナーゼの処理や膜ろ過で任意の重合度のオリゴ 糖に調整される35,36)。 これらの処理で,コムギ麩,穀物,トウモロコ シ穂軸などのキシラン主鎖のアラビノースは容易 に脱離する。 また,側鎖グルクロン酸も一部分解するが,そ. 食品と容器. 737. 2011 VOL. 52 NO. 12.
(20) シリーズ解説:糖質素材の機能と利用. シロオリゴ糖原液には,揮発性の溶質(酢酸,フ. 機塩や着色物質の除去に有効である。しかし,自. ルフラール,揮発性の抽出成分)と非揮発性の溶. 己加水分解液には着色物質や不純物が非常に多い. 質(種々のオリゴ糖,リグニン分解物,糖分解縮. ため,①活性炭やイオン交換樹脂の使用量が膨大. 合物,非揮発性抽出成分)が含まれる。(第2. になる,②陰イオン交換樹脂への色素の不可逆的. 37). 表) 。これらの不純物の効率的経済的除去法. 吸着が避けられず,従ってイオン交換樹脂の寿命. を開発することが重要な課題で,これまでに多く. が短い,③糖類の一部が活性炭やイオン交換樹脂. のプロセスが提案されている。. に吸着され,オリゴ糖の歩留まりが低下する等の. できるだけ不純物の混入を防ぐため2段階の熱. 欠点を有する。これらの欠点を克服する方法とし. 29,38). 。サトウキビピス. て,強酸性イオン交換樹脂によるクロマト分離が. な ど の キ シ ラ ン 含 有 原 料 を は じ め に110 ℃ ∼. 提案されている。すなわち,自己加水分解液をそ. 140℃の熱水で処理し,第二段階で140∼200℃. のまま,またはpHを6前後に調整した後,Na型,. の熱水で処理するとキシロオリゴ糖精製工程での. Ca型等の塩形にした強酸性陽イオン交換樹脂充. 負荷を削減できる。第一段階の温和な処理では,. 填カラムに通し,次いで水を溶離液として通液す. キシランは分解を受けずそのままで,キシラン以. ることによって,イオン交換樹脂のイオン排除作. 外の化合物を取り除き,第二段階でキシランを選. 用によって不純物がまず流出し,キシロオリゴ糖. 択的に可溶化して不純物の混入を防ぐ方法である。. と無機塩や着色物質が分離される37)。. 水処理法が提案されている. 混入した不純物,いわゆる抽出成分と呼ばれる. ◆7.キシロオリゴ糖の効能◆. 有機化合物,リグニン分解化合物,ヘミセルロー. ヒトの腸内には数多くの種類の細菌がヒトと共. ス分解物などの一部は酢酸エチルでの抽出で取り. そう. 38). 除くことができる 。. 存共栄の関係で生息し,その菌叢(フローラ)は. 限外ろ過膜による重合度分画や不純物除去も試. ヒトの健康と極めて密接な関係にある。ヒトが難. みられている。分画分子量500∼2,000の限外ろ. 消化性のオリゴ糖を摂取すると,口腔,胃,小腸. 過膜を通した後,活性炭,イオン交換樹脂,濃縮. で吸収・消化されず,大腸に達してそこに生息し. 処理により無色透明のシロップが得られてい. ている細菌によって炭酸ガス,水素,メタン,短. こう. る. 36,39). 。あるいは,活性炭,粘土,ベントナイト,. 鎖脂肪酸等に分解される。この腸内細菌の発酵過. けい. アルミナ,珪藻土,チタニウム,シリカ,多孔質. 程が人体にさまざまな生理作用を及ぼすことから,. 合成吸着剤などによる不純物の吸着除去が試みら. 近年難消化性糖類に関する研究が成人病予防を主. れている。また,陰および陽イオン交換樹脂も無. 眼として急速な進展を見せている。 キシロオリゴ糖は変異原性試験. 第2表 蒸煮シラカンバ材水抽出液の性状 蒸煮条件. 200℃, 10min. Brix. 11.0. 230℃, 2min. や急性毒性試験で食品素材として. 5.6. 安全であることが実証されている. pH. 3.12. 3.05. が,次のような理化学的特性をも. 電気伝導率 μS/cm. 2.000. 1.330. っている40)。 ①砂糖に比較して. 7.59. 8.12. 甘味は低い,②増粘性,保水性が. (-logT428. 吸光度 at pH 7, 10mm セル). 全陽イオン(mg as CaCO2/L). 1,200. 770 . あって,食品にしっとり感を与え. 全陰イオン(mg as CaCO2/L). 8,400. 7,050 . る,③水分活性の調節に使用可能. 食品と容器. 738. 2011 VOL. 52 NO. 12.
(21) キシロオリゴ糖 か. であって,適度の静菌効果を有しているため食品. れており,顆粒,粉末,カプセルまたはタブレッ. の保存性を高める可能性がある,④タンパク質や. ト等の商品形態として利用されている47)。. アミノ酸と加熱によって反応して(メイラード反. ◆8.キシロオリゴ糖の 植物生理への作用◆. 応),食欲をそそる適度な香りと美しい黄金色を 呈する。還元キシロオリゴ糖は,⑤褐変反応(メ イラード反応)を起こしにくく,高い耐熱性をも. 森林土壌のA0 層には,落葉,落枝,枯死根な. つ,⑥上品でクセやくどさのないさらりとしたよ. どが微生物や昆虫によって分解されて形成された. い甘味質を有する,⑦虫歯の誘発因子とならない。. 腐植が堆積している。この腐植が形成される段階. このような効能をもつキシロオリゴ糖を添加し. で微生物によって菌体外に分泌された酵素により. たい. かまぼこ. あめ. た清酒,蒲鉾,ジャム,餡,ハードボイルドキャ. 植物遺体中のセルロース,ヘミセルロースからさ. ンディ,カスタードクリームは良好な風味,適度. まざまなオリゴ糖が生産されている。これらのオ. 40). で上品な甘味,心地よい糖フレーバーをもつ 。. リゴ糖は分解者の養分としてのみならず,その一. また,還元キシロオリゴ糖で作ったこれらの飲食. 部は糞とともに体外に出て,周辺の植物の開花,. 物は上品で適度の甘味,良好な増粘性,保湿性を. 発根,芽の伸長などの分化過程でなんらかの調節. 有し,熱に安定で,保存性も向上したものとなる。. 機能を果たしていると推定される。. その上,キシロオリゴ糖は次のような生理学的. 著者らは,十数年前からキシロオリゴ糖の植物. 特性をもつ。①ヒトにとって難消化性のため,ヒ. の成長・分化に対する調節機能の可能性を検討し,. トの腸内フローラを構成する代表的な有用菌であ. これまでに以下の結果を得た。シラカバ材から蒸. るビフィズス菌がこれを資化し増殖,老化防止等. 煮処理して得られるキシロオリゴ糖がクロマツの. ふん. 41). ヒトの健康に大きく貢献する ,②キシロオリゴ. 芽生えやギンネム苗木の成長を促進すること48),. 糖は胃酸に対する抵抗性が他のオリゴ糖より高く,. シラカンバやマツの組織培養の培地にキシロオリ. 低分子化されることなく腸内に届けられるため,. ゴ糖を添加するとそれらの成長や発根が促進され. 実際に,生体内での整腸効果が確認されるオリゴ. ること49),グルクロン酸を含むキシロオリゴ糖が. 糖の代表格になっている13),③内臓脂肪の蓄積を. ヤマナラシカルスのシュート分化を促進し50),ク. 抑制する抗肥満作用をもつ42),④血圧降下・上昇. ロマツのシュート培養では発根を促進すること51),. 抑制作用をもつ22),⑤脂肪肝抑制作用をもつ44,45),. スギ挿し穂の水耕栽培で発根を促進すること48)を. ⑥耐糖能障害改善作用をもつ46)。. 見いだした。. 酸性キシロオリゴ糖(第5図)はグラム陽性細. 最近,ギリシャの研究グループが,単一にまで. 菌やピロリ菌に対して抗菌性を示す。アルドペン. 精製されたアルドテトラオウロン酸(第5図)を. 46). タオウロン酸がより強い抗菌性を示す 。. コモンマロウやワタの増殖培地に1.6∼16㎎/L加. このようなことから,特定保健用食品として注. えるとカルスや不定胚形成を誘発したことを報告. 目され,はじめに述べたように,その用途は広が. している52)。また,彼らはアルドペンタオウロ. っている。腸内の乳酸菌を積極的に増やすために,. ン酸(第5図)をキュウリの液体培養に5mg/L. プロバイオティクス機能を有する生菌体とともに. 加えると,再生体の平均数や生重に増加が見られ. プレバイオティクス機能を有するキシロオリゴ糖. たことを報告している53)。. を配合したシンバイオティクス商品が広く利用さ. 食品と容器. 739. 2011 VOL. 52 NO. 12.
(22) シリーズ解説:糖質素材の機能と利用. に生産される。キシランの需要が増えつつあると. ◆7.おわりに◆. はいえ,その量は毎年の生合成量や蓄積量に比べ. 上述したように,近年,キシロオリゴ糖に多様. れば微々たる量にすぎない。毎年多くの植物によ. な機能が見いだされて,機能性食品(特定保健用). り生合成され,持続的に入手可能な資源である。. としてばかりでなく,医薬,農薬などとしての応. 今後,より一層の用途が開発されることを期待し. 用の可能性が見いだされている。中性および酸性. たい。. キシロオリゴ糖は種々の農林産物から比較的容易. 参 考 文 献 27)Shimizu K. et al.: , 14, 195-203 (1998) 28)Garrote G., D0minguez H., Prajo J.C.: 74, 1101-1109(1999) 29)遠藤正朗,黒田義人: 特開平12-236899 30)Kabel M.A. et al.: , 50, 47-56 (2002) 31)Kabel M.A., Schols H.A., Voragen A.G.J.: 50, 191-200(2002) 32)安藤浩毅ら,木材学会誌,49,293-300 (2003) 33)Carvalheiro, F. et al.: , 91, 93-100(2004) 34)Nabarlatz D., Ebringerova A., Montane D.: , 69, 20-28(2007) 35)戸枝一喜,川端康之:特開平10-117800 36)武村元宏ら:特開昭61-285999 37)山本以佐雄,田村真紀夫,蕪木ひろみ,特開平1254692 38)V?zquez M.J. et al.: , 96, 889-896(2005) 39)Nabarlatz D. et al.: , 53, 235-243(2007) 40)志水一允,飯島望碩,島田規男: 特開平9-248153 41)Okazaki M., Fujikawa S., Matsumoto N.: , 9, 77-86(1990) 42) 飯 野 妙 子, 中 原 光 一, 西 嶋 泰 史: 特 開 平10290681 43)竹内政保,村松明,丸山厚二: 特開平5-43470 44)川村三郎,竹内政保: 特開平1-242530 45)花井洋行: 特開平7-324036 46)Christakopoulos P. et al.: , 31, 171-175(2003) 47)飯野妙子: 特開2003-93019 48)石原光朗,長尾靖文,志水一允,バイオマス変換計画 研究報告,27巻,20∼32(1991) 49)Ishihara M., Nagao Y., Shimizu K.: 8 ., l2, Helsinki (1995) 50)石井克明,木下勲,重永英年,石原光朗,志水一允, 103回,日林論,485-486,(1992) 51)石井克明,毛利武,木下勲,石原光朗,日林論,609610(1993) 52)Katapodis P. et al.: , 24, 14131416(2002) 53)Katapodis P. et al.: , 95, 630-632(2003). 1)Ebringerová,A.,Hromadkova,Z., Heinze,T.: ., 186, 1-67(2005) 2)Ebringerová,A and Heinze,T.: ., 21: 542-556 (2000) 3)Ishihara,M.et al: ,42,12111220(1996) 4)Bataillon M.et al.: ., 8, 37-43(1998) 5)Delcour J. A., van Win H., Grobet P. J.: J. Agric. ., 47, 271-275(1999) 6)Bergmans E. F., Beldman G., Voragen A.G.J.: , 23, 235-245(1996) 7)Collins T, Gerday C, Feller G: 29 3-23(2005) 8)Puchart V., Biely P.: , 137, 34-43(2008) 9)Nishitani N.,Nevins D.J.: ,266, 6539-6543(1991) 10)Saloheimo M. et al.:US Patent Application 20030054518 11)V?zquez M.J.et al.: , 11, 387-393(2000) 12)山田 隆男,飯島 義男: 特開平8-103287 13)泉可也,安住尚也,特開平13-226409 14)泉可也,特開平15-183303 15)Chen C., Chen J-L, Lin T-Y.: , 21, 91-96(1997) 16)入江利夫ら:特開平2-119790 17)Shimizu K., Ishihara M., Ishihara T.: , 22, 618-625(1976) 18)Nacos M.K. et al: , 66, 126134(126-134) 19)Komiyama H. et al.: , 72, 638-645(2008) 20)Togashi H. et al.: , 78, 247252(2008) 21)Vietor R.J. et al.: , 254, 245255(1994) 22)竹内政保,村松明,丸山厚二,山崎孝,特開平5194241 23)K. Shimizu, M. Ishihara, , 24, 236-241(1987) 24)Ai Z. et al.: , 40, 2707-2714 (2005) 25)Sun H-J. et al.: , 337, 657661(2002) 26)窪田實,青山政和,吉田兼之: 特開平6-197800. 食品と容器. 740. 2011 VOL. 52 NO. 12.
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