第 3 章 FePtCu ナノ粒子の規則化および高保磁力化
3.2 試料作製
3.2.1 ナノ粒子合成条件
ホットソープ法によるFePtCuナノ粒子の基本的な合成法は次のとおりである。ナノ粒子 作製装置の模式図を図3-1に示す。
① 反応溶媒となるジオクチルエーテル、DOE[(C8H17)2O]もしくはジフェニルエーテル、
DPE[(C6H5)2O]にPtの前駆体とCuの前駆体であるPt(acac)2とCu(acac)2をそれぞれ任意 の量だけ丸底フラスコに入れ、PtおよびCuイオンの還元剤となるヘキサデカンジオー ルHDdiolを合成するPtとCu前駆体のモル数の倍量だけ混合し、酸化を防ぐためにN2 ガス中で置換した反応系の中で約100℃に加熱しよく溶解させる。
② 界面活性剤となるオレイン酸とオレイルアミンを注入し、さらに Feの前駆体となる鉄 ペンタカルボニル(Fe(CO)5)を加えた後に、溶媒を任意の温度上昇レートで加熱する。
③ 溶液中でPtイオンおよびCuイオンの還元と、Fe(CO)5の熱分解を同時に起こすことに
よりFePtCu ナノ粒子の核が生成し、溶液の色が黒色に変化する。その後還留を行い、
ナノ粒子を成長させる。
④ ヒーターを外し溶液が室温に冷えたら大気中に開放する。
⑤ 反応後の溶液にエタノールを溶液に対して倍量加え遠心分離を行い、黒色の沈殿物と茶 色の上澄みに分離させ、上澄みを捨てることにより反応溶媒、反応副生成物および余分 な界面活性剤を除去する。
⑥ 沈殿物に無極性溶媒であるノルマルヘキサンを加え、超音波を用いて分散させる。ここ で再び界面活性剤であるオレイン酸オレイルアミンを加えることによってナノ粒子の 凝集を防ぎ、⑧で得られる粒子の収率を向上させることができる。
⑦ ⑥で得られたものにエタノールを加え遠心分離を行い、再び黒色の沈殿物を得る。
⑧ 沈殿物にノルマルヘキサンを加え、超音波で分散させた後、遠心分離を行い、黒色の上 澄み液を得て、沈殿したものは廃棄する。大きすぎる粒子や凝集粒子はここで沈殿し、
結果として粒径の揃ったナノ粒子を得ることが出来る。
⑨ ⑧で得たものにエタノール20mlを加え遠心分離を行い、沈殿物を得る。
⑩ ⑨で得られたものを乾燥させ、粉末状のFePtCuナノ粒子を得る。
以上のような操作で、粒径約2~3nm のFePtCuナノ粒子を得ることが出来る。さらに大き
な粒子を得たい場合には、④で得たものに再びHDdiol、Pt(acac)2、Cu(acac)2を加え、100℃
に加熱し、Fe(CO)5を加え③の操作を繰り返すことによって粒径を成長させることが出来る。
この成長回数を増やすことにより、粒径を3~6nm の範囲で制御することが出来る。ナノ粒 子の化学組成比は、前駆体の比率を変えることによって制御することが出来る。詳細な合 成条件を以下に記す。温度上昇のパターンを図3-2に示す。
前駆体 Fe(CO)5: 0.8~1.25mmol (0.10~0.15ml) 純度90% 関東化学株式会社製 Pt(acac)2: 0.3~0.6mmol (130~200mg)
純度90% Aldrich社製 Cu(acac)2: 0~0.5mmol (40~120mg)
純度99% Aldrich社製
溶媒 DOE: 20ml 純度99% Aldrich社製 還元剤 HDdiol: 2.5mmol (450mg)
純度90% Aldrich社製 界面活性剤 オレイン酸: 0.5mmol (0.16ml)
純度99% Aldrich社製 オレイルアミン: 0.5mmol (0.17ml)
純度70% Aldrich社製
成長時間:図3-2参照 成長回数:1~4回
3.2.2 熱処理
化学合成によって作製したFePtCuナノ粒子は、FePtナノ粒子の場合と同様に高温相であ るfcc不規則構造を示す。これを規則化させるために、熱処理により原子の拡散を促すこと で安定な構造へ結晶構造変態させる必要がある。本研究では、真空(~6×10-6 Torr)排気した石 英管中にFePtナノ粒子を封入し、マッフル炉にて任意の温度で1時間の熱処理を施した。
任意の温度に熱した炉に試料を入れたときから 1 時間経過した後に試料を炉から出し、氷 水で急冷した。
図3-1. ホットソープ法によるナノ粒子作製装置の模式図
図3-2. ナノ粒子合成時の温度チャート