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図IV−2,500mレースの50m通過地点における,決勝・準決勝チームと目本の,1ストロークにおけるプロペリング期

(写真1〜4)とリカバーリング期(写真5〜13)について(オープン・女子)

おける漕フォームの改善を行うことによって,リカバーリ ング期に掛かっていた時間を短縮し,ピッチ数を上げ ることに利用する必要がある。

前述したように,両チームの瞬間ピッチ数は,カナダ が100.Op/mになるのに対し,目本チームは77。9p/m で,平均ピッチ数で見たものと同様の差が認められた。

したがって,日本チームは,リカバーリング期に要する 時間を短縮できるように漕フォームを改善することによ って,ピッチ数を高め,タイムを向上させ得る可能性が 示唆された。

以上のことから,目本の改善ピッチ数を推定すると,

95.2p/mに高めることができ,現状のストローク長2.94m であっても,500mの各区間で維持できたとすれば,平 均速度を現状の4.02m/sから4.36m/sに高め得ること になる。このタイムは世界選手権で7位に相当する。

(表皿一1参照)

2.女子

(1)プロペリング期について

50m通過地点における1ストロークの所用時間をコマ 数から算出すると,目本:0.73秒,中国:0.60秒,ドイツ 0.67秒で,目本と準優勝した中国の間には0.13秒の差 が認められた。1ストロークにおける所要時間から算出 した瞬問ピッチ数は,目本:82.2p/m,中国100.Op/m,

ドイツ89.6p/mとなった。プロペリング期に要した時間 は,日本・ドイツが0.20秒であったのに対し,中国は 0.14秒であった。

中国は,リカバーリング期だけでなく,プロペリング期 に要する時間を目本より0.06秒短縮することによって 大幅にピッチ数を高め,速度を高めている特徴が見ら

れた。

(2)リカバーリング期について

リカバーリング期における日本女子チームのパドル の動きは,ドイツと近似していた。しかし,図IV−2Bの10 に見られるように,上方に上げた地点で体が一且止ま るという,オープンの日本代表と同様の傾向が見られ

た。

 日本は,パドルを上方に上げた地点qAPAN−10)で 0.06秒ドイツのリカバーリングに遅れをとっていることが 認められた。

さらに,目本の瞬間ピッチ数は,822p/mで,リカバ

一リング期に0.53秒要していたのに対し,中国のそれ は,100.Op/mで,リカバーリング期に0.46秒,ドイツは,

89.6p/mで,0.47秒要していた。日本は,リカバーリン グ期に,パドルを上方に上げた地点で0.06秒止まって いたことから,これを解消し,リカバーリング期に掛かる 時間を抑え,ピッチ数を上げることがオープンと同様に 課題と言える。

すなわち,リカバーリング期における漕フォームを改 善することによって,リカバーリング期の所要時間を短 縮し,ピッチ数を高める必要がある。

ちなみに,上述したタイムロスと考えられる時間を除 くように漕げたとすれば,瞬間ピッチ数を89.6p/mにす ることができることになる。したがって,日本チームは,

リカバーリング期に要する時間を短縮できるように漕フ ォームを改善することによって,現状のストローク長で,

ピッチ数を82,19p/m高めることができれば,タイムを22 秒(平均速度で3.40m/sから3.93m/sに〉向上させ得る 可能性が示唆された。

IV.要約

1)推力を生み出すプロペリング期に要する時間は,

オープンでは,カナダと目本は共に,0.20秒であった が,水中へのパドルの差し込みはカナダの方が深かっ た。すなわち,カナダは,パドルを水中深くに差すこと によって水を捉える面を大きくし,さらに,その捉えた水 を速く漕ぐことによって高い推進力を生み出していた。

2)目本のオープンでは,プロペリング期直後とパドル を上方に上げた地点で,女子ではパドルを上方に上げ た地点で,世界のトップチームのリカバーリングに遅れ をとっていることが認められた。すなわち,負荷の殆ど ない空中でパドルを前方に返すリカバーリングタイムに ロスのあることが大きな課題と考えられた。

3)目本チームは,オープン・女子のいずれにおいて も,リカバーリングタイムを短縮できるように漕フォーム を改善することによって,ピッチ数を高め,タイムを向上 させ得る可能性が示唆された。ちなみに,リカバーリン グタイムのロスを除いたオープンのピッチ数を推定する と,95.2p/mと計算され,現状のストローク長2.94mであ っても,平均速度を現状の4.02m/sから4.36m/sに高 め得る可能性が示唆された。

 4)各国ともに,プロペリング期の所要時間は,オープ ン・女子のいずれのカテゴリーにおいても,0.20秒以内 であるが,リカバーリング期の所要時間はその倍以上

であった。

       (注)

 注1)VTR撮影を行うにあたり,シャッタースピードの 設定ミスで,自動撮影となっていた。したがって,定性 的な動作分析に耐えるクリアーな静止画像が,分析装 置に取り込めなかった。よって,スロー再生により,何 度もVTRを繰り返し見ることによって,定静的観察によ る結果を記述した。

 注2)オープンの500mで優勝したロシアの漕フォー ムの撮影が,他チームと映像が重なってしまい,分析 できなかったため,準決勝に進出したフィリピン(200m レース準優勝),決勝で2位のカナダ(200mレース優勝)

の漕フォームと目本の比較を行った。女子についても 同様の事象がおこったため,準優勝した中国(1000mレ ース優勝)と決勝に進出したドイツ(3位〉と目本女子の比 較を行った。

 注3〉ドラマーの太鼓を叩くリズムが,兵庫県相生市で 行われているぺ一ロン競漕独特のリズムで,ぺ一ロン では,全員のパドルを合わせるために,プロペリングに 入る直前に息を合わせるための「間」のようなものが生 じる。世界大会でも我国にしかみられない特異のもの

であった。

第V章総括

本研究では,ドラゴンボート競技力向上のための基 礎資料を得ようとした。

まず,第1章において,国内のドラゴンボートレース を対象に,記録としての運動成果だけでなく,速度経 過のパターンを明らかにした。

すなわち,レースにおける加速期・最高速度到達地 点等を明らかにするとともに,速度・ピッチ・ストローク長 の関係を明らかにした。

さらに,第H章において,世界選手権におけるドラゴ ンボートレースの速度変化の実態と,速度とピッチ・スト ローク長の関係を明らかにするとともに,世界と目本の 相違点を見い出そうとした。

第1章の目本選手権のオープン準決勝・決勝に進 出した18チームの各地点通過平均タイムから見た速 度変化は,0−25m地点で最高速度の57%に,25−50m 地点では95%(0−50mでみると83%)に達し,50−100m地 点で最高速度(4.42m/s)を示した。また,100−200m地 点までほぼ最高速度(98%)を維持していた。しかし,200

−250m地点で,最高速度の91%に低下し,250−300m地 点(3.59m/s)で最高の落ち込みを示した。これは,体 力・技術的な要因ではなく,川の流れによる影響が大き かった。その後わずかに速度を回復し,400m以降は 最高速度の87%の速度を維持してゴールしているという 速度経過パターンを示した。

同様に,世界選手権では,オープン500mレース決 勝進出6チームの各地点通過平均タイムから見た速度 変化は,50m地点で最高速度の75%に達し,50−100m 地点で最高速度(4.74m/s)を示した。また,200m地点ま でほぼ最高速度(97%)を維持し,それ以降は92%の速度 でゴールしているという日本選手権と近似した速度変 化の実態が認められた。

オープン200mレースの決勝進出6チームの各地点 通過平均タイムから見た速度変化は,50m地点で最高 速度の77%に達し,100m地点では82%を示し,200m地

点で最高速度(5.03m/s)を示した。

しかし,200mレースのゴールタイムは,500mレース の200m通過タイムよりも遅いという予想に反した結果 を示すチームが数多く認められた。すなわち,オープ

ンの500mレースの200m平均通過タイムは46秒70±

0.69で,200mレースのゴールタイム46秒72±2.09よ りも速かった。これには,両レースの50−100m区間のタ イムの相違が関係していた。したがって,両レースの速 度曲線は,50−100m地点での平均速度に大きな差が 見られ,200mよりも,500mレースの方が高いという結 果を示した。すなわち,200mレースの方が,一般には ピッチ数が高いという傾向を示したが,ピッチ数を高め 過ぎることによってストローク長を短くし,結果的に 200mレースのタイムを,500mレースの200m通過タイ ムよりも,低下させているチームの多い傾向がみられ

た。

速度経過パターンを比較すると,目本チームは,最 高速度課題とともに,加速度課題が,オープン,混合,

女子の,いずれのカテゴリーにおいても共通して認め られた。また,女子では速度維持も大きな課題として指 摘された。

また,ゴールタイムと各地点通過タイムの間には,い ずれの大会においても有意な相関関係が見られ,その 関係は,ゴールに近づくにつれて高くなることが認めら れた。

 目本選手権では,レース中盤の250m地点通過タイ ムとゴールタイムの決定係数は,各カテゴリーとも0.95 以上を示し,250m地点でレースの95%が説明出きるこ とが示唆された。

世界選手権のオープン500mレースにおける各地点 通過タイムとゴールタイムの間にも,いずれも有意な相 関関係が認められた。また,その関係は,ゴールに近 づくにっれて高くなるという目本選手権と同様の傾向が みられた。この関係は,レース距離の異なる200・

1000mレースにおいても同様に認められた。

速度とストローク長,速度とピッチ数の相関分析の結 果,兵庫カップでは,ピッチ数を高めることが必ずしも 速度の向上に貢献していないチームの多いことが示唆 された。しかし,世界選手権では,200mレースにおい ても,500mレースにおいても,平均速度と平均ピッチ 数の間には,いずれにおいても有意な相関関係が得ら れた。しかし,速度とストローク長の間にはいずれにお いても有意な相関関係は得られなかった。

なお,オープン500mレースにおける,優勝したロシ

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