IT の発展に伴う言語教育の「不可避」の未来:言語教育の非標準化 (“de- (“de-standardization”) と言語教師の専門性 (“professionalization”) に向けて
3 テスト設計図
OJAEは、Cambridge ESOLのO’Sullivan教授にご教示いただき、コミュニケーション場
面理論に基づく「テスト設計図(機能群全53項目のCEFR準拠段階化)2」を持つ。OJAE のテスト設計図とは、コミュニケーション場面に於いて言語が果たす機能を、言語行為別 に分けた上で、その言語使用者の能力が発達していく段階に沿って配置したものである。
全ての口頭表現能力(例えば反対意見が言える、交渉ができるなど)が一貫した難易度の
尺度の下に序列化されていて、コミュニケーションの各場面で発揮されるべき機能がテス ト・評価できる。
4 テスト問題作成が自身の評価力アップに
4.1 OJAEテスト制作
OJAEテストは、上記OJAEテスト設計図から、OJAEレベル評価基準表、テストスクリ プト、プロンプトを用いてテスト施工図を作り、「設計図➡施工図➡テスト問題」の過程を 経て制作されている。
4.2 プロンプト作成
ここでは、特にプロンプトを用いたテスト課題作成に取り組むうちに各レベルの評価の 特徴点やそのレベルの典型的なプロンプト問題作成に関し、自身の評価力アップに繋がっ た点についてレベル毎に紹介する。
4.2.1 A1:自分のこと・身近なことなら習った構文で話す
例えばA1レベルのプロンプト1を使って、被 験者Bに「この人は被験者Aさんです。」と言っ て、被験者Bに、この写真を見て、被験者Aにた くさん質問するように指示する。被験者Aはそれ に答える形である。
これらのプロンプト作成や実際の試験を施行し て分かったことは、A1レベルでは、一問一答の質 問に答えるばかりでなく発問できることが大切で ある。また、A1レベルから一問一答の質問形式で はなく、相槌や応答表現の練習を取り入れること の大切さに気づけた。特に応答表現の「そうです か」の使用が大事である。
4.2.2 A2:疑問詞を使って発問し、過去・未来について話す
A2レベルになると、今・ここから少し離れて、
過去のことや未来のことに話題が広がる。「休みの 日は何をするのが好きか」「前の休みの日はどう だったか、何をしたか」「住んでいる町について」
「一番好きな国について」など、身近な話題につ いて相槌や応答表現を使って対話者との共通基盤 確立が必要になってくる。このプロンプト2は、
疑問詞を使って発問し、過去の出来事について訊 いたり答えたりすることが課題である。
4.2.3 B1:直線的であるが、比較・描写・理由づけができる
図1 プロンプト1
図2 プロンプト2
B1 レベルの課題作成過程では、コミュニケー ション場面の機能として、更に詳しく描写したり、
意見を言うためには、比較したり、理由づけたり することが必要になってくる。ストレートではあ るが、とにかく、いろいろな理由づけができるこ とがB1レベルの特徴であることが分かった。
このプロンプト3を使っての課題は以下のよう なものである。まず、それぞれの絵について、1 分ずつ話す。次に、二人は仲の良い友達で、今、
一緒に住むアパートを探していて、被験者Aは町 の中のアパートが、被験者Bは、町の外のアパートがいいと思っているとする。そして二 人で話し合いどちらにするか決める。時間は3分で、ある被験者は、町の外のアパートが いいという理由として、野菜や動物を育てて、それを売ることもできるということまで表 現した。
4.2.4 B2:抽象的な話題でも、自分のことばで表現する
B2レベルでは、インタビューして相手を試験者 に紹介するなど短時間でまとまりのある発話が必 要になってくる。もう1点は、このプロンプト4 を使って、まず、世界のさまざまな儀式から、話 したい儀式を一つ選んで、自分の国や生まれた町 では、その儀式をどのような形で行うかを1分半 で説明してもらう。
更に、人はどうしてこのような儀式を必要とす るのか、どうしてこのような儀式をするのか、と いうことを二人で3分間話し合う。B2レベルでは、
このような抽象的な話題でも、自分の言葉で表現 できる、ということが特徴的だということにテスト作成過程で気づいた。更に時間内に発 話をまとめて終わらせることも必要になってくる。また、このプロンプト4の問題は中級 から上級へのクラス分けのプレースメントテストとしても有効であることが、勤務機関で のテスト実施によって分かった。
4.2.5 C1:適切な前置き表現などを使う。
C1レベルでは、二人の被験者に今、ある小さな 町の老人デイケアセンターで働いているという状 況で、介護する側と介護される側からと両方の立 場から、一つだけ買うのなら、どのロボットが一 番必要だと思うか、またなぜそのロボットが必要 なのかという理由をそれぞれ1分で述べてもらう。
そして、予算がないからと言って反対している センター長にどちらのロボットの購入をお願いす るか決める。Cレベルの被験者二人が話し合って、
図3 プロンプト3
図4 プロンプト4
図5 プロンプト5
一つに決めるときは、Bレベルのようにとにかく一方的に理由付けができればよいのでは なく、一つ上の洗練された発話が必要になる。そのためには、「確かにそうですが、」「おっ しゃることは分かりますが、」など適切な前置き表現を使い、違和感なく反対意見を述べた り、自分の話を相手の話に関連付けたりすることができ、言語の文化度が上がってくる。
プロンプト5は、そのような点を評価できる課題になっている。
4.2.6 C2:どんな話題でも、自然体で楽々と話せる
C2レベルでは、寿司職人を目指して2年半も修 行しているが、相変わらず、同じ作業しかさせて もらえないので、もう辞めてしまいたいと言って いる友人に、友達としてどんな助言ができるか、
二人で2分話し合う。次に被験者の国でも、日本 の寿司職人のように長い修行が必要な職業又は伝 統工芸産業があると思うが、①それは何か、②そ のどこが日本の職人の修行に相当するかについて 話すという課題である。C2レベルでは、どんな話 題でも自然体で楽々と話せることが必要で、ここ では、敢えて日本の文化に関連する題材を課している。自国の文化との比較や逆に共通点 を見つけることから、異なる言語と文化との対話が始まる課題となっている。また、慣用 句やメタ言語を駆使できる能力が必要である。
5 まとめ
OJAE テスト制作(レベル相違の明確化)そのものが自己の評価力向上に役立っている ことが、改めて内省できた。
パネル発表2:OJAEテスト法・評価法採択
―ドイツ大学に於けるBA修了試験―
酒井 康子
(Spracheninstitut an der Universität Leipzig e.V.)
要旨
ドイツの大学日本学科に於ける日本語口頭試験のあり方とその評価について模索してき た一過程について述べる。試験は信頼性と妥当性を持ったものであるべきで、その評価も 透明性を持ったものでなければならない。また、これからの進むべき方向を学習者に示す ことができ、更にその力を伸ばしていくことに貢献できるものでなければならない。良い 試験は学習者を育てていけるものである。こうした精神で取り組んだ実践例を紹介する。
他の機関、大学での一例となれば幸いである。
図6 プロンプト6
【キーワード】口頭試験、評価、CEFR、協働作業、つながり
Keywords: Oral examination, Evaluation, CEFR, Teamwork, Networking