表 16 100Experiences と成田 TP の活用可能性
57 5-3. 結果と考察
インバウンドプロモーション全体としての成田 TP の特徴
成田 TP のコンテンツの主要なテーマで分類すると、主に伝統、食、まちに分類される。その他に自然、
アート、アウトドア、ショッピング、ポップカルチャーでも提供コンテンツがあることが分かりテーマと してのカバレッジは広いといえる。基本的観光行動では、体験する、観る、学ぶを中心に造成されている。
成田 TP は海外経験が豊富なガイドによる外国視点からの魅力的なプログラムの提供が行われているこ とが、利用者の高い評価に繋がっていることが特徴として挙げられる。特に成田 TP はガイドの存在か ら、伝統の「知る・学ぶ」に関するコンテンツが豊富であり、利用者評価も高い。
コンテンツのほぼ全てに高評価のコメントがあり、数多くの評価を集めたコンテンツは成田山新勝寺 と表参道である。これは空港から電車で 20 分ほどとアクセスが良く時間制限のある乗り継ぎ客にとって 選択肢しやすいことが影響している。一方参加人数は少ないがコメントの分量や評価内容に注目すると、
多古町の田園地帯をサイクリングのコンテンツは日本の田舎的景観として高評価を得ていた。低評価に 関するコメントは 5 件と少なく、バスツアーの値段、観光時間の短さ、悪天候、担当ガイドの英語力不 足、担当ガイドがチップを貰わなかった、などが挙げられておりコンテンツに対するコメントは無かっ た。観光時間や天候に関しては、改善することは出来ないが、バスツアーの値段やガイドの対応方法は改 善することが可能であると考えられる。
伝統、食、リラクゼーション、アウトドアのテーマにおいては、ガイドや周辺自治体の要望から周辺地 域の観光施設の状況、田園・自然景観を生かした潜在的なコンテンツの存在を示した。ボランティアガイ ドからは華道体験、餅つき体験、水引体験など伝統をテーマとしたコンテンツ拡大が挙げられていた。香 取市からは、宿泊施設(NIPPONIA、ザ・ファーム)を活用したステイプログラムの充実、芋掘りなどの 農業体験が挙げられた。成田市は、ステイプログラムの充実を目指して、ナイトタイムコンテンツのバー や居酒屋の活用。また成田駅前以外も活用したいとして成田ゆめ牧場、公津の杜の観光施設、下総町、大 栄町では農業体験が挙げられた。多古町からは、地元のブランド米である多古米の収穫体験や、多古米を 田んぼで食べるなどのアクティビティが挙げられた。芋掘りや稲刈りなどの農業体験は、乗り継ぎ時の 数時間内という制限、作業時の汚れを懸念、自治体バランスを理由に実現ができていない。宿泊施設や観 光施設の活用は、運営上協賛会員でない民間企業に成田 TP として送客することが難しい。
地域プロモーションに対する成田 TP の可能性
観光コンテンツの代表事例である 100 Experiences と比較し、成田 TP のインバウンドプロモーション におけるカバレッジと、提供施設や体験内容の類似性について考察する。100 Experiences はコト消費を メインに作成されたことから基本的観光行動の「買う」にはコンテンツはなかった。成田 TP は、テーマ のカバレッジとしては広いが、細分化されたコンテンツのテーマとアクティビティの尺度からの類似性 では、伝統、アート、食が中心であり、一部コンテンツでまち(岡山県倉敷美観地区)とアウトドア(滋
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賀県琵琶湖周辺のサイクリング)に類似性がある。成田 TP では、コアコンテンツではない盆栽鑑賞、芝 山はにわ博物館と、Trip Advisor には評価が無かった DIC 川村記念美術館は、100Experiences のアート
「観る」に類似性が高いコンテンツが多いことが分かった。伝統、食、リラクゼーションは、拡張次第で 類似性のあるコンテンツが存在する。例えば、成田 TP 内では護摩の見学や和菓子作りの見学などの「観 る」コンテンツは、100 Experiences に類似コンテンツは存在しないが、施設面で食と伝統の「体験する」
コンテンツに類似性があるコンテンツがある。NIPPONIA、ザ・ファームなど宿泊コンテンツが実現す ればリラクゼーションに類似するコンテンツは存在する。以上のことから成田 TP は、伝統(神社仏閣、
祭り)、アート(日本庭園、美術館、博物館)、食(地場料理)、まち(伝統景観)、アウトドア(サイクリ ング)をテーマに訴求が可能であり、地方にも類似性の高い観光コンテンツが存在する(表17)。ポテ ンシャルとしてリラクゼーション(田園体験・宿泊)と食(文化)にも訴求ができる潜在的コンテンツが ある(表18)。
以下に親和性の高いコンテンツリストを示す表17では、成田国際空港のホームページを参照し、成田 から LCC 等の直行便がある就航都道府県は●、直行バスがあるものは◎、直行移動が現状できないもの は・をプログラム番号の前に表した。
100Experiences に類似性のあるコンテンツがないものの、成田 TP で高評価を得ていた成田 TP 独自 のプログラムとしては、神社仏閣やまちの歴史を対象とした「知る・学ぶ」のコンテンツと、房総のむら や着物体験などの伝統やまち(エンタメ)をテーマとした文化体験コンテンツであった。歴史を対象とし た「知る・学ぶ」のコンテンツには、ボランティアガイドが外国視点からの質の高い情報・プログラム提 供が寄与している。
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表 17 100Experiences と類似性が高い成田 TP のコンテンツ
成田TPのコンテンツ テーマ 100 Experiences で類似性が高いコンテンツ 伝統 ●2 【山形県】出羽三山で修行体験をする 伝統 ◎8 【山梨県】身延山久遠寺で僧侶体験をする 伝統 ・10【和歌山県】高野山で宿坊体験をする 伝統 ・11【福井県】大本山永平寺で座禅体験をする 伝統 ●2 【山形県】出羽三山で修行体験をする 伝統 ◎8 【山梨県】身延山久遠寺で僧侶体験をする 伝統 ・10【和歌山県】高野山で宿坊体験をする 伝統 ・11【福井県】大本山永平寺で座禅体験をする 伝統 ●2 【山形県】出羽三山で修行体験をする 伝統 ◎8 【山梨県】身延山久遠寺で僧侶体験をする 伝統 ・10【和歌山県】高野山で宿坊体験をする 伝統 ・11【福井県】大本山永平寺で座禅体験をする 伝統 ●2 【山形県】出羽三山で修行体験をする 伝統 ◎8 【山梨県】身延山久遠寺で僧侶体験をする 伝統 ・10【和歌山県】高野山で宿坊体験をする 伝統 ・11【福井県】大本山永平寺で座禅体験をする
【成田市】祇園祭で山車を引っ張る 伝統 ◎6 【栃木県】鹿沼秋まつりを観る 伝統 ◎7 【福島県】大内宿を訪れる
まち ・53【岡山県】倉敷美観地区を散策する 伝統 ◎7 【福島県】大内宿を訪れる
まち ・53【岡山県】倉敷美観地区を散策する
【成田市】三味線演奏を聴く 伝統 ●1 【石川県】芸子の歌や踊りを観る
【成田市】芸者の踊りを観る 伝統 ●1 【石川県】芸子の歌や踊りを観る 伝統 ●14【鹿児島】仙巌園を見学する
アート ・79【島根県】足立美術館で日本庭園を観る
【成田市】日本庭園の池で鯉を鑑賞 伝統 ●15【新潟県】多彩な錦鯉を観る
【多古町】田園地帯でサイクリング アウトドア ・22【滋賀県】琵琶湖を周辺をサイクリング
【成田市】和菓子作りを見学する 食 ●40【香川県】和菓子作り体験をする
【成田市】茶道体験をする 食 ◎42【静岡県】旅ノ舎で緑茶づくり体験を
【香取市】地元食材で日本料理を作る 食 ・44【岐阜県】小瀬木料理教室で日本料理づくり
【成田市】ラーメンを食べる 食 ◎46【神奈川県】ラー博でラーメンを食べる
【成田市】酒蔵見学をする 食 ◎49【茨城県】須藤本家で日本酒造りを学ぶ アート ・81【青森県】十和田市現代美術館でアート鑑賞 アート ◎84【神奈川県】岡田美術館で美術鑑賞
アート ●87【大分県】Comico Art Museum で芸術鑑賞
【香取市】盆栽を鑑賞する アート ◎83【埼玉県】大宮盆栽美術館で盆栽を鑑賞
【成田市】日本庭園を散策する
【成田市】表参道を散策
【佐倉市】DIC川村記念美術館で美術鑑賞
【芝山町】観音教寺で鐘つき体験をする
【多古町】日本寺で鐘つき体験をする
【成田市】写経体験をする
【成田市】護摩を見学する
【香取市】佐原の歴史的地区を散策
成田TPで実現要望のあるコンテンツ テーマ 100 Experiences で類似性が高いコンテンツ
【香取市】ザファームでグランピング リラクゼー
ション 【長崎県】五島列島でグランピング
【香取市】芋掘りなどの農業体験
【多古町】稲刈りなどの農業体験
【成田市】大栄町で芋掘り体験
【香取市】NIPPONIA 佐原に泊まる リラクゼー
ション 【兵庫県】篠山城下町ホテルNIPPONIAに宿泊
【成田市】バーや居酒屋を楽しむ 食 【宮城県】居酒屋の雰囲気を体験
【秋田県】日本の田舎暮らしを体験する リラクゼー
ション
表 18 実現要望のあるコンテンツ
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6 章 考察
6-1. 訪日インバウンドプロモーションに対する成田 TP の活用可能性
Tang(2017)は、TP による満足度がその国の再訪意欲を高めることを検証しており、現状成田 TP では 外国人目線を理解したボランティアガイドによるコンテンツの磨き上げを通じ、満足度の高いプログラ ムが提供されている。TripAdvisor の評価に関する文言抽出作業では、日本への再訪意思を示すコメント が複数見られ、参加者へのヒアリングでも同様に参加者は日本への再訪意思が高まる結果となっていた。
以上のことから訪日無関心層に成田 TP によって日本への関心・興味を引き起こし再訪に繋げることが 可能であるといえる。成田 TP 参加者へのヒアリングの結果からは、東京などの都市部への関心だけでな く地方部への興味関心を生み出しており、成田 TP を通じた地方誘客の可能性が見られた。Martincejas
(2006)は到着空港がその国全体のイメージ形成に与える影響を検証している。観光プロモーションに おいて、観光局や DMO、旅行会社などのプロモーターは観光客にパンフレットや動画、SNS を用いて 2 次情報で情報発信を行い、目的地のポジティブな DI 形成を促す。
成田 TP で、成田 TP の提供するコンテンツと類似する地方コンテンツにポジティブなイメージを与え ることができれば、成田 TP を地方中心に訪日インバウンドプロモーションに活用できる。そのため成田 TP を日本の地方観光のプロトタイプとしての役割を果たすことができるかどうか、類似性・親和性の高 いコンテンツがあるか、インバウンドプロモーションにおいて訪日無関心層へ訴求力のコンテンツがあ るか、利用者評価も合わせてコンテンツ分析を行った。結果として、成田 TP は、伝統(神社仏閣、祭 り)、アート(日本庭園、美術館、博物館)、アウトドア(サイクリング)、食(地場料理)、まち(伝統景 観)をテーマに訴求が可能であり、かつ利用者評価を得ている。主要テーマと主要行動によるマトリック ス図を用いて地域の観光コンテンツを集めた 100 Experiences と成田 TP の細分化した重なりと類似性と 利用者評価から 21 のプロモーションに活用できる親和性の高いプログラムがあることが分かった(表1 7)。21 はプロモーションの代表事例であり、今後さらに展開は可能ある。つまりはトランジット旅客が 成田 TP を通じて一時情報よって形成された日本のカントリーイメージ、再訪意欲、地方への興味を、再 訪時に向けてコンテンツ分析を基に親和性の高い地域コンテンツに接続することで、プロトタイプの機 能を持たせて地方部のインバウンドプロモーションに活用可能であるといえる。その為には、成田 TP で 単に満足度の高いプログラムを提供するだけでなく、プログラム設立目的でもある再訪促進に向けて地 方の情報発信をする必要がある。
6-2. プロモーション活用する際に直面する課題
満足度の高いプログラム提供ができている一方で、自治体単位のプログラムの提供のため、空港の周辺 地域のエリア的なプロモーション要素が希薄であり、またインバウンド事業の訪日無関心層に対するテ ーマごとの効果的なアプローチや空港周辺地域としてのイメージ発信がされにくい。そのためガイドツ