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タイプ 拮抗薬 1 ARB カルシウムチャネル拮抗薬 CCB プロテインキナーゼ ( C PKC )阻害薬の効果

つづいて 私たちは、 ARB、CCB、PKC阻害薬の プロスタシンによるアルドス、 テロン産生に対する効果をH295R細胞において検証した。400µg/mlのプロスタ

シンを、100nM のバルサルタンまたは 100nM のエホニジピンまたは 1µM の

ε阻害薬である と共に 細胞に 時間または 時間投

PKC Ro-31-8220 H295R 24 48

与した。投与24時間後の細胞をCYP11B2発現量の測定に、48時間後の培養液 をアルドステロン産生量の測定に使用した。Figure 10Aと10Bに示すように、

バルサルタンはプロスタシンによる CYP11B2 発現およびアルドステロン産生 にまったく影響を与えなかった 一方 エホニジピンは明らかに。 、 CYP11B2発現 とアルドステロン産生を減少させた。Figure 10C と 10D に示すように、

は 発現をコントロールレベルにまで減少させ アルドステ

Ro-31-8220 CYP11B2 、

ロン産生を明らかに抑制した。

Figure 10

Effect of angiotensin II type 1 receptor blocker (AKB), calcium channel blocker (CCB), or protein kinase C inhibitor on prostasin-induced CYP11B2 expression and aldosterone production in H295R cells

Effect of angiotensin II type 1 receptor blocker (A, B), T-type/L-type Ca2+ channel

blocker (A, B), or PKC s inhibitor (C, D) on the prostasin-induced CYP11B2 expression and aldosterone production in H295R cells. Cells were treated with prostasin (400^g/mL) in the presence or absence of valsartan (lOOnM), efonidipine (lOOnM), or Ro-31-8220 (l^M). CYP11B2 mRNA expression (A, C) was

determined following 24 h treatment, and aldosterone production (B, D) was evaluated following 48 h treatment. Values are means ± SD (n = 6). *P < 0.001 vs.

vehicle, n.s.: not significant.

考察

今回の研究において、私たちは以下の知見を得た。

① H295R細胞においてプロスタシンにより、CYP11B2プロモーターの転写活

性は増加した。

② H295R細胞においてプロスタシンにより、CYP11B2 mRNA発現とアルドス

テロン産生は、濃度および時間依存的に増加した。

③ CYP11B2 mRNA発現とアルドステロン産生亢進は プロスタシンの持つ蛋、

白分解酵素活性に依存しない。

④ CYP11B2 発現およびアルドステロン産生誘導は、カルシウムチャネル拮抗

薬またはPKC阻害薬により抑制される。

これらの結果は、プロスタシンは副腎でのアルドステロン産生を調整する役 割を担っている可能性を示唆している。

以前に私たちはラットおよびヒトにおいて、アルドステロンがプロスタシン を増加させることを報告した(14)。Wang らはラットにおいてヒトプロスタシン 遺伝子を、アデノウイルスを用い強制発現させた際、血漿プロスタシンおよび 血漿アルドステロン濃度が上昇したことを報告している(13)。これらの結果よ り、アルドステロン産生においてプロスタシンが正のフィードバック作用を有 する可能性が示唆される。副腎におけるアルドステロン産生に循環血漿中のプ ロスタシン濃度の上昇が影響を及ぼすかを確かめるため、私たちは組換えプロ スタシン蛋白を作成し、プロスタシンのH295R 細胞でのアルドステロン産生に

対する効果を検討した。

年代初頭の研究において、トリプシンはラット副腎球状層からのアルド 1980

ステロン分泌を増加させることが報告されている(21-23)。さらに、トリプシン

は PAR-1 を活性化させることにより、副腎球状層からのアルドステロン分泌を

促進させていることが示されている(24)。これらの研究は プロスタシンなどの、 トリプシン様セリンプロテアーゼが、副腎でのアルドステロン産生を促進する 可能性を示唆している。今回の私たちの研究では、プロスタシンを作用させた 細胞での 発現とアルドステロン産生の有意な増加をプ

H295R CYP11B2 mRNA

ロスタシン濃度依存的に認めた。

今回、私たちが作成した組換えプロスタシンの合成基質に対する特異活性値

、 、 、

は ヒト精液より精製した天然のプロスタシンに比べ 約30分の しかなく1 今回の研究にて使用した組換えプロスタシン濃縮液はMokらにより報告された 血清プロスタシン濃度より比較的高濃度であった。しかしながら、私たちの予 (25;29) 想に反して、プロスタシンの強力な阻害薬であるメシル酸カモスタット

をプロスタシンと共に作用させた際、メシル酸カモスタットはプロスタシンに よるアルドステロン合成に全く影響を及ぼさなかった。さらに、蛋白分解酵素 非活性型の変異プロスタシンによっても CYP11B2 発現とアルドステロン産生 が有意に促進された。これらの結果より、H295R 細胞において、蛋白分解酵素 活性はプロスタシンによるアルドステロン合成に必須ではないことが示唆され た。今回の研究で、私たちは昆虫発現システムにより組換えヒトプロスタシン を作成した。私たちの組換えプロスタシンは、非哺乳類・強制発現システムに よって、天然のプロスタシンとは異なる糖化修飾を受けている可能性や蛋白の ミスフォールディングが存在する可能性が予想される。私たちの組換えプロス タシンは特異活性が低いものであり、結果として生物学的効率の低い蛋白であ

ったことが示唆される。それゆえ、H295R 細胞でのアルドステロン合成促進を 得るためには、比較的高濃度の蛋白濃度が私たちの組換えプロスタシンでは必 要であったものと考えている。組換えプロスタシン液中の不純物がアルドステ ロン合成を促進している可能性を除外するため、私たちは残渣物質にて同様の 実験を行った。私たちは感染させていないカイコ体液を感染させたカイコ体液 と同様に精製し、コントロールとして使用したところ、H295R 細胞のアルドス テロン合成に何ら変化を来さなかった。

または のノックダウンで プロスタシンによる 発現亢

PAR-1 PAR-2 、 CYP11B2

進が全く影響を受けなかったという今回の結果は、蛋白分解酵素作用とは異な る作用をプロスタシンが有していることが認められ、プロスタシンと未知の膜 貫通型受容体の様な膜分子とが、直接蛋白―蛋白で相互に作用していることが 推測される。セリンプロテアーゼには、非触媒作用にて生物学的機能を持つも のがあり、代表的なものに肝細胞増殖因子や、マクロファージ刺激蛋白ホルモ ンなどがある。この両者は触媒機能を失っているが、膜貫通型チロシンキナー

、 。

ゼ受容体と相互作用し 受容体を介して細胞内シグナル伝達を引き起こす(30) また Chen らは、PC-3 ヒト前立腺癌細胞において、プロスタシンの蛋白分解作 用によらない作用によって、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター

や 合成酵素 の 発現を調整すること

(uPA) inducible nitric oxide (iNOS) mRNA

を報告している(31)が プロスタシンのシグナルを細胞内標的物質に伝える詳細、 なメカニズムに関しては明らかにされていない。細胞外プロスタシンのシグナ ルを、アルドステロン合成を引き起こす細胞内分子へ伝達する標的分子の同定 には、さらなる研究が必要である。

正常なヒト副腎皮質細胞では アルドステロン合成は主にアンジオテンシン、 II

1 AT1-R II (32;33) タイプ 受容体( )を介してアンジオテンシン により調整される

ため、まず私たちはAT1-R を標的分子として検討した。私たちは何らかの機序 によりプロスタシンがAT1-Rを活性化し、CYP11B2発現亢進につながる可能性 について検討した。しかしながらバルサルタン投与にて、プロスタシンによる アルドステロン合成は消失しなかったことより、アンジオテンシン II 伝達系は このメカニズムに関与していないものと想定された。H295R 細胞において、細 胞膜を通過するカルシウムイオンの流入により CYP11B1 および CYP11B2、特

にCYP11B2 の mRNA 発現が調節されることは以前より報告されている。これ

ら酵素のmRNA発現がL型カルシウムチャネル拮抗薬によって抑制され、 型L カルシウムチャネルが副腎皮質細胞においてステロイド生合成に関与している ことが示唆される(34-36)。さらに ウシ副腎細胞において、 、T型カルシウムチャ ネル活性がアルドステロン合成に関与していることが以前の研究で示唆されて いる(37)。最近では、T型およびL型カルシウムチャネルの両者に拮抗するカル シウムチャネル拮抗薬であるエホニジピンやベニジピンが、H295R 細胞におい てアルドステロン合成を抑制し それらの抑制効果は、 、L型カルシウムチャネル 拮抗薬であるニフェジピンよりも強力であったことが報告されている(38;39)。 今回の研究で、T 型/L 型カルシウムチャネル拮抗薬であるエホニジピンが 細胞におけるプロスタシンによるアルドステロン合成を抑制することが H295R

判明し、プロスタシンにアルドステロン産生において、これらのチャネルが関 与していることが示唆された 数種類の。 PKCアイソザイムが細胞内PKCµ 活性

Romero PKC

を調節することが報告されている。 らは、ヒト副腎細胞において ε はPKCµの活性化に関し重要な役割を果たしており、H295R細胞においてア ンジオテンシンII による PKCµ の活性化はアルドステロン合成酵素遺伝子発現 の著明な亢進を引き起こすことを報告している(40)。また、彼らは PKC ε阻害

薬であるRo-31-8220がPKCµ のリン酸化を抑制したことを示している。私たち は、プロスタシンによるアルドステロン合成をRo-31-8220が有意に抑制したこ とを確認し、プロスタシンによるアルドステロン合成系に PKC ε が関与して いることが示唆される。

今回、私たちは、プロスタシンがH295R 細胞においてアルドステロン産生を 増加させる作用を示し、このアルドステロン産生誘導はプロスタシンの蛋白分 解作用に依存しない作用である可能性が示唆された。プロスタシンによるアル ドステロン合成に少なくとも T 型/L 型カルシウムチャネルと PKC εが関与し ている。細胞外プロスタシンのシグナルを細胞内分子へ伝達する詳細なメカニ ズムは不明であるが、私たちの今回の成績は、プロスタシン、特に循環血液中 のプロスタシンの、副腎におけるアルドステロン産生調節メカニズムで果たす 役割に関する新たな機序を提示するものである。また、以前の私たちの報告と positive 今回の知見を考え合わせると、プロスタシンとアルドステロンとの間に

が存在する可能性が示唆されるが 循環血液中のプロスタシンの生理学

feedback 、

的役割を解明するためにin vivoでのさらなる研究を行う必要がある。

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