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第5章 事例検証

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検証方法

本研究では,パロハンドラーによるケア実施という実験を行った.事例検証では,そ の実験で行われたケアにおける価値共創の障壁分析を試行する. 事例検証の流れ

(Figure5-3)と実験の概要を以下に述べる.

Figure 5-3事例検証の流れ

実験の概要

 パロを用いた高齢者ケアを5分間実施する.ケアは,パロハンドラー1名:高齢者 1名によって実施される.

 分析対象者:パロハンドラー(以下,ハンドラー)

 今回は作業療法学科の学生 3 名(ハンドラーA/ハンドラーB/ハンドラーC),3 名とも21歳女性

 高齢者:Mさん,84歳女性,認知症の症状は見られない

 パロは,現場では基本的には認知症の方へのセラピーとして用いられる.その実情 を再現するために,高齢者の方にはいくつかの演技を依頼した.

分析対象の選定

パロを用いたケアの実施

(5分)

パロを用いたケアの観察と 行為の主観評価(4段階)

観念モデルの記述

分析者 パロハンドラー

(分析対象者)

step0

step1

step2

step3

ヒアリング(15分) ・ライフライン図の記入

・ヒアリング(15分) ・・・

・・・

実験

第5章 事例検証

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 演技は,「遠慮がちで控えめな方/パロには興味があり好意的」という設定のも と,「集中の持続が難しい・徘徊の症状がみられる」という認知症の代表的な症 状を再現している.

 実験(5分間)の流れ

 高齢者が部屋の中で座っている状態で開始.ハンドラーは,パロを持って部屋 に入り,ケアを開始する.

 高齢者は,基本的にハンドラーの勧めに従って,自由にパロとの触れ合いや会 話を行う. ただし,以下の演技を行う.

 はじめ,パロに対して「この子怖くない?噛みつかないの?」と少し不安 そうにする.そして,ハンドラーから促されるまで,パロに触らないよう にする.

 パロとの触れ合い中は,手を止めて他のものを見るなど飽きた素振りをし,

「そろそろお買い物の時間だわ」などと言って席から立ちあがる素振りを する.

 4分30秒経過後,ハンドラーに対してケア終了の合図が出される.その合図を 確認したら,ハンドラーはパロを回収し,部屋の外へ退出する.退出したとこ ろで,ケアが終了となる.

以下では,各stepについて4章との対応により述べる.

第5章 事例検証

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事例検証

step0:分析対象の選定

今回の分析対象は,以下として規定した.

 分析対象とする,製品/サービス

 「パロ」を用いた高齢者ケアサービス

 分析対象とする,行為主体

 パロハンドラー3名(ハンドラーA/ハンドラーB/ハンドラーC)

 製品/サービスの使用・消費過程において,行為主体がとる代表的・典型的な行為

 パロハンドラーがケア中に行う以下の6つの行為[パロ手引き]とする

①パロを紹介する

②パロを高齢者に見える場所に置く

③触れ合いを促す声掛けをする

④重そうにしていたら「机の上に置いて良いですよ」と声掛けをする

⑤触れ合いの終了を促す

⑥パロを預かって,退出する

以上のように,「パロ」を用いた高齢者ケアサービスの価値共創における「パロハン ドラーの資源投入」は,①~⑥の行為によって構成されるものとして捉える.これによ り,価値共創の障壁は①~⑥の行為に潜んでいるものとして仮定し,価値共創の障壁分 析を行う.

step1:製品/サービスの使用・消費の観察と主観評価

次に,ハンドラーA~Cの3名それぞれについて,パロを用いたケアの観察を行った.

この観察で,①~⑥の行為に着目し,行為の様相および行為の主観評価を記録した結果

第5章 事例検証

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をFigure5-4~Figure5-6として示す.ここでの主観評価は,「◎〇△✕」の 4 段階にて行

った.

Figure 5-4 step1:ハンドラーAの結果

行為の主観評価 着目する 行為

①パロ を 紹介する

自然な声掛け

・声掛けの内容:

Mさんこんにち は。寒いですね。Mさ んに触っていただきたいものを 持っ てきました。動物お好きですか?

・視線の方向: 高齢者

・パロ の見せ方: 自分の腕の中

・その他気づいたこと: 双方向な会話の中で紹介した

②パロ を 高齢者に見える場所に置く 自分の膝の上に,

自然に置いた.高 齢者はパロ を 見て いる

・声掛けの内容: こうやって撫でてあげる と気持ち い いんですよ

・視線の方向:

・パロ を 置いた場所: 自分の膝の上

・パロ の向き: 高齢者の向き

・その他気づいたこと:

③触れ合い開始の声掛けを する

聞かれたことにも 自然に回答してい

・声掛けの内容: 触ってみますか?

・視線の方向:

・声掛けの相手(なぜその相手か/パロ の位置/向き):

・ハン ドラ ーの動作: 自分が撫でて見せる

・その他気づいたこと:

「噛みついたりしない?」という問い かけ,すぐ に「大丈夫ですよ.いい 子なのでね」と回答

(④重そうにしていたら、「机の上に置いてもいいですよ 」)

適切なタイ ミン グ で気付いて,声掛

・声掛けの内容:

少し重たいですよ ね,こうやって机 においていただいても大丈夫です

・重そうという判断の根拠: パロ を 両手で抱えている,撫でるの を やめた

・ハン ドラ ーの動き: パロ を 机に移動

・その後のパロ の位置/向き: 高齢者の向き

・その他気づいたこと:

⑤触れ合いの終了を 促す

会話の中で,終了 を 匂わせるような.

ただ,そもそも触 れ合ってはいな かった.

・声掛けの内容:

パロ を かわいがっていただけて嬉し かったです。また今度もパロ ち ゃん 持ってきますね

・視線の方向: 高齢者

・その時のパロ の位置/向き: 高齢者に向いている

・高齢者に促したこと:

・ハン ドラ ーの動き: 自分が撫でる

・その他気づいたこと:

⑥パロ を 預かって、退出する

普通,という印象

・預かる 時の声掛けの内容: それじゃ失礼します

・視線の方向: パロ

・その時のパロ の位置/向き: 高齢者の前

・退出する 時の声掛け内容: 上に同じ

・退出の仕方: 抱えて

・その他気づいたこと:

第5章 事例検証

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Figure 5-5 step1:ハンドラーBの結果

行為の主観評価 着目する 行為

①パロ を 紹介する

なんとなく,たど た ど しい

・声掛けの内容: パロ ち ゃんを連れてきたんですけど、

動物とかお好きですか?

・視線の方向: 高齢者

・パロ の見せ方: 自分の腕の中

・その他気づいたこと: 立ち っぱなし

②パロ を 高齢者に見える場所に置く

「触ってみません か?」に対して,高 齢者が良い反応を した後だった.自然.

・声掛けの内容: ち ょっと重いので、最初撫でてみま しょうか

・視線の方向: 高齢者

・パロ を 置いた場所: 机の上高齢者の目の前

・パロ の向き: 高齢者の向き

・その他気づいたこと:

③触れ合い開始の声掛けを する

元気な明る い声掛 け.ただし,高齢者 とパロ の間は距離 があった.

・声掛けの内容: 触ってみたらかわいい反応する ので.

触ってみませんか?

・視線の方向: 高齢者

・声掛けの相手(なぜその相手か/パロ の位置/向き):

・ハン ドラ ーの動作: 立っている ,パロ を 抱えている

・その他気づいたこと: 声掛け時,パロ は触れない位置にあ

(④重そうにしていたら、「机の上に置いてもいいですよ 」)

気づくのが遅かっ た.遠慮がち な感 じだった.

・声掛けの内容:

・重そうという判断の根拠: 「ど うもありがとう」

・ハン ドラ ーの動き: お預かりします。。預かって、机の上 に置く

・その後のパロ の位置/向き:

・その他気づいたこと:

- ⑤触れ合いの終了を 促す

実験の設定に無理 があった可能性あ

・声掛けの内容: では,終了しますね

・視線の方向:

・その時のパロ の位置/向き:

・高齢者に促したこと:

・ハン ドラ ーの動き:

・その他気づいたこと:

本人が戸惑っていた印象.高齢者は 認知症の演技を している が,会話の 内容的に認知症ではないため

(△) ⑥パロ を 預かって、退出する

遠慮がち だった

・預かる 時の声掛けの内容: じゃあ、、、

・視線の方向: 高齢者

・その時のパロ の位置/向き:

・退出する 時の声掛け内容:

・退出の仕方:

・その他気づいたこと:

第5章 事例検証

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Figure 5-6 step1:ハンドラーCの結果

行為の主観評価 着目する 行為

①パロ を 紹介する ただ紹介した,と

いう感じ.一方通

・声掛けの内容: こんにち は。アザラ シのロボットの パロ っていいます

・視線の方向: 高齢者

・パロ の見せ方: 自分の腕の中

・その他気づいたこと: 横で座って

②パロ を 高齢者に見える場所に置く

唐突な印象.高 齢者も少しびっく りしている よ うな

・声掛けの内容: 抱いてみますか、かんだりしないで す。

・視線の方向: 高齢者

・パロ を 置いた場所: 高齢者の膝の上

・パロ の向き: 横向き

・その他気づいたこと: パロ を 置く/触れ合うよりも先に,

抱いてみますか?

③触れ合い開始の声掛けを する

②と同時.同上

・声掛けの内容: 抱いてみますか?

・視線の方向: 高齢者

・声掛けの相手(なぜその相手か/パロ の位置/向き):

・ハン ドラ ーの動作: ゆっくり高齢者の膝の上に置く

・その他気づいたこと:

(④重そうにしていたら、「机の上に置いてもいいですよ 」)

良い気遣いだが,

少し動作が早い 印象

・声掛けの内容: ち ょっと重いですかね、机の上に.

・重そうという判断の根拠:

重そうというよ り、横に向いていて パロ の反応が分かりづらかったか

・ハン ドラ ーの動き: 机の上に

・その後のパロ の位置/向き: 机の上、高齢者の向き

・その他気づいたこと:

高齢者がパロ の反応を 見ようとし ていたタイ ミン グ.直前には撫でて いたが.

⑤触れ合いの終了を 促す

最低限の声掛け.

唐突に終了した.

・声掛けの内容: じゃ、パロ ち ゃん預かりますね。あ りがとうござ いました

・視線の方向: 高齢者

・その時のパロ の位置/向き:

・高齢者に促したこと:

・ハン ドラ ーの動き:

・その他気づいたこと: 高齢者はパロ と触れ合っていな かった

⑥パロ を 預かって、退出する

素早かった

・預かる 時の声掛けの内容: じゃ、パロ ち ゃん預かりますね。あ りがとうござ いました

・視線の方向: 高齢者

・その時のパロ の位置/向き: 高齢者の前

・退出する 時の声掛け内容: ありがとうござ いました、失礼しま

・退出の仕方:

・その他気づいたこと: ありがとうござ いましたの時にパロ を お辞儀させる ようにして。

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