第 4 章 セイファート 1 型銀河の幅の狭い 鉄輝線に関して鉄輝線に関して
4.1 セイファート 1 型銀河の鉄輝線
第 4 章 セイファート 1 型銀河の幅の狭い
et al. 1995[52])。図4.1はその時の鉄輝線のプロファイルを示している。この結果から 、
Tanaka et al. 1995は鉄輝線がシュバルツシルト半径の3-10倍の領域から出ているものだ
と計算し 、降着円盤の最も内側を観測していると考えた。
一方、6.4 keVの幅の狭い鉄輝線はブラックホールからずっと遠方の中性物質から散乱
されたものであると考えられ 、その散乱体の候補として、
• 降着円盤(の外縁)
• 可視光のBroad Line Region (BLR)
• 分子雲トーラス
• 可視光のNarrow Line Region (NLR) などが考えられている。
例えば 、セイファート1型銀河Mrk 841はXMM-NewtonとBeppo SAXで同時観測さ れた時、∼10時間の間に幅の狭い鉄輝線の強度が数倍変わっていることが分かり、低温 物質からの反射モデルでは簡単に説明できないことが分かった(Petrucci et al. 2002[44])。
またYaqoob et al. 2003[62]では、Chandraで狭輝線1型セイファート銀河NGC 7314を 観測し 、急激な時間変動を起こす幅の狭い6.4 keVの輝線の存在を報告している。これら の観測結果は降着円盤起源を示唆している。
一方Awaki et al. 1991[2]では 、Gingaで16個のセイファート 1型銀河と9個のセイ ファート2型銀河を観測し 、NGC 7674を除く全ての天体で鉄輝線が見付かったと報告し ている。Awaki et al. 1991ではモンテカルロシミュレーションを行い、その結果から、一 様な分布をしたガス内からX線が等方的に放射したのでは観測結果を説明することが出 来ないと報告している。そして、鉄輝線は分子雲トーラスから出ているものであり、1型 と2型の違いは天体をトーラスを通して見るかど うかである、と結論付けている。
幅の狭い鉄輝線に関して、最も精度の高い観測は、ChandraのHigh-Energy Transmission Grating (HETG)による観測である(Yaqoob & Padmanabhan et al. 2004[63])。Yaqoob
& Padmanabhan et al. 2004は18個のセイファート1型銀河のデータを解析して、輝線の ピークエネルギーが∼ 6.4 keVであること、輝線の幅(半値全幅、FWHM)が約2400 km s−1になることを報告している。この結果から、幅の狭い鉄輝線は降着円盤の外縁部から か、あるおいはそれよりも遠くにある分子雲トーラスに起因すると結論付けている。
可視光BLRを起源とする考えも存在する。例えば S. Bianchi et al. 2008[48]では 、 ChandraのHETGで1型セイファート銀河NGC 7213を観測し 、鉄輝線の半値全幅(Full
Width Half Maximum:FWHM)が可視光のHαのFWHMと一致していることを見出し
た。よって、この天体の幅の狭い鉄輝線の起源は可視光BLRと結論付けている。
以上の様に、幅の狭い鉄輝線の起源にはいくつが説が唱えられているが、どれが正しい かは未だにはっきりしていない。
また、6.4 keVの幅の狭い鉄輝線は、光度が大きくなる程、等価幅の値が小さくなる傾向
があることが知られている。これはX線天文衛星Gingaによる37個のAGNの6.4 keVの 幅の狭い鉄輝線の等価幅を調べた時に初めて発見された。「X-Ray Baldwin Effect」あるい は、発見者にちなんで「Iwasawa-Taniguchi Effect」とも呼ばれる(Iwasawa & Taniguchi
et al. 1993[22])。その後、同様の傾向はASCAやXMM-Newton等の過去のX線天文衛星 による観測でも確認されているが 、Radio Loud 活動銀河核の影響やサンプルのとりか たなどに関して議論が続いている。
このような傾向が起こる原因として、Nayakshin et al. 2000[39]では、降着円盤表面が X線で照らされたことによって6.4 keVのX線強度が影響されることをあげている。しか し 、Page et al. 2004[41]は、幅の狭い輝線はX線発生源からずっと遠方の物質から出てい るため、照射された反射体の電離の度合によらないはずだと反論している。 ここでは、
すざ くで観測されたセイファート1型銀河のデータを解析して、幅の狭い鉄輝線の起源や その性質について調べる。