第Ⅳ章 Catherine の家庭および家庭での養育をめぐる思想の特徴
3. まとめ 4. 参考文献
2.3. スモールビジネス経営における重要経営指標
スモールビジネス経営における経営指標としては,売上,粗利(売上総利益),営業利益,
経常利益,最終利益など,売上や利益に関する指標がある。また,経費についても,人件費 などの固定費,および販売促進費,広告宣伝費,事務用品費,消耗品費,旅費交通費,研修 費,新聞図書費,支払手数料,ウェブ制作費,雑費などの変動費が存在している。
これらの売上関連指標と経費関連指標の中でも,最も重要性の高い指標が,1 人当たり 粗利である。粗利(売上総利益)とは,販売価格から原価を引いた指標のことである。この 粗利は,製造業や小売業など業種によって計算の方法が異なる。製造業では,製品の原材 料費を基本的に原価として扱う。また,小売業では,商品の仕入れ価格を原価として扱う。
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製造業における事例として,例えば,洋服を 8000 円で販売する場合,この洋服を生産 する際の,布地の原価が 1000 円とすると,この商品販売時の粗利は,8000 円- 1000 円=
7000 円となる。この場合,7000 円はこの洋服を生産する際の,デザインを考えたり,実際 にそのデザインに対応した型版を作ったりする洋服の付加価値に対応している。つまり,
布地という原価の費用に付加価値を加えたものが,8000 円の洋服に対応している。
小売業における事例として,例えば,果物のメロンを 5000 円で販売する場合,このメロ ンを 1000 円で仕入れた際の商品販売時の粗利は,5000 円- 1000 円= 4000 円となる。この 場合,4000 円は品質の良いメロンを卸売業者から厳選して仕入れる作業が,メロンの付加 価値に対応している。つまり,仕入れたメロンという原価の費用に付加価値を加えたもの が,5000 円のメロンに対応している。
すなわち,製造業,小売業という業種によって,計算方法は若干異なるが,その本質は「原 価」に対しどれだけの「付加価値」を与えられたかが,粗利(売上総利益)に対応している。
特に,日本のような資源の乏しい国家においては,いかに付加価値を商品に対して与えて いくかが極めて重要となる。
上記の内容をまとめると,粗利(売上総利益)が付加価値そのものに対応しているため,
いかなる経営においても,まず検討すべきは,高い粗利が得られているかどうかである。
仮に,粗利が低い場合,十分な付加価値を商品に対して与えていないということになり,
経営の方針を改善する必要性があると言える。
特に,スモールビジネス経営においては,粗利が経営者の手元に残る現金となるため,
粗利を確保することは死活問題であると言えよう。手元に残る現金がなければ,人件費な どの固定費や,販売促進費や広告宣伝費等の変動費に投資することが不可能になる。いず れにしても,経営者がまず考えるべき経営指標は,粗利といえる。
粗利(売上総利益)が経営指標として重要な理由は,上記の「付加価値」である以外にも 存在している。その理由とは,経営における決算において粗利が最も変更不能な指標と なっていることである。
上記の製造業の場合においては,洋服の販売価格が決定している場合,布地の原価は変 更不能であるため,粗利の価格も変更不能である。また,上記の小売業の場合においては,
果物のメロンの販売価格が決定している場合,仕入れたメロンの原価も変更不能であるた め,粗利の価格も変更不能である。
変更可能な経営指標としては,人件費などの固定費,および販売促進費,広告宣伝費,事 務用品費,消耗品費,旅費交通費,研修費,新聞図書費,支払手数料,ウェブ制作費,雑費 などの変動費などを,売上から減じた利益,例えば営業利益などが存在するが,これらの
経費はどこまで直接的に経営用に使用されたのか,判別しにくいことがある。そのため,
粗利の価格が重要となっている。
上記の内容をまとめると,粗利(売上総利益)が決算上最も変更不能な経営指標である ため,経営者が自社の状況を把握しやすい。
粗利を使ってスモールビジネス経営と大企業経営の経営指標を比較可能にすることが,
可能である。その方法とは,会社全体のある年度の粗利を社員数で割ることにより,「1 人 当たり粗利」を計算することである。上記の例でも,粗利が経営上の付加価値に対応する ことを述べた。その付加価値を作り出しているのは,会社の社員である。よって,粗利を社 員数で割ることにより,社員一人一人の平均的な付加価値付与力を計算することが可能と なる。この方法を用いることによって,スモールビジネス経営と大企業経営は比較可能で あり,優れたスモールビジネス経営においては,「1 人当たり粗利」が大企業より高くなる 場合が存在する。ゆえに「1 人当たり粗利」は,スモールビジネス経営において,一般的に 最も重要な経営指標となることが多い。
本論文において,起業初心者または起業準備者にとって,重要かつ本質的な経営要因に ついての考察を 3 つの角度から行ってきた。
まず,「2.1. スモールビジネス経営における情報収集の重要性と特殊性」においては,起 業初心者が成果の裏付けのない経営メソッドに時間や経費やパワーを浪費しないための方 策について,論じてきた。すなわち,(1)ある経営メソッドが提唱者によって検証されてい ること,(2)ある経営メソッドが提唱者以外での人物によって検証されていること,(3)あ る経営メソッドが,どれくらいの量行動された場合上手くいくのかという「閾値に関する 情報」を知っているか,という 3 つの重要ポイントについて述べてきた。
これら 3 つの重要ポイントは,起業初心者にとっては基本的に経験や体験がないため,
時間や経費やパワーを無駄に投入する危険性が高い。
よって,経営上本当に集めるべき情報とは,インターネットや書籍に書いてあった情報 ではなく,インターネットや書籍に書いてあった情報を実行してみて,その結果,上手く いったかいかなかったかという情報である。
この経営についての情報収集方法を知らずに,安易な情報収集に基づいて経営を行うこ とは極めて危険であるため,十分な注意を要する。
上記(1)~(3)において,最も重要な情報を獲得が困難な要因は,(3)ある経営メソッ ドが,どれくらいの量行動された場合上手くいくのかという「閾値に関する情報」である。
なぜなら,広告や広報において,どの程度の情報拡散に対し,どの程度の反応率を見込客 から得られるのかを,前もって知ることは極めて困難だからである。例えば,親からの事 業承継を行う場合を考えてみれば,「閾値に関する情報」を親から教えてもらうことが可能
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となる。しかしながら,親が経営者ではなく,自分が創業を行う起業家である場合,親から の「閾値に関する情報」を得ることはできない。よって,自分が創業を行う場合は,「閾値 に関する情報」を自分で試行錯誤して獲得するか,もしくは経営者の学習会や経営コンサ ルティングによって獲得することが重要となる。
以上が,「2.1. スモールビジネス経営における情報収集の重要性と特殊性」についての考 察のまとめである。
「2.2. スモールビジネス経営における経営リソース配分」においては,起業初心者が時 間や経費や労力を浪費しないために,経営リソース配分を行うことについて論じた。経 営リソースとは,大別すると,資金調達(Finance),組織運営(Management),商品販売
(Marketing および Selling),商品開発(Product)である。スモールビジネス経営は,基本 1 名による経営形態と,本論文では定義しているため,組織運営(Management)は基本的に 必要ないし,学習する必要性も低い。経営に関する文献の多くが組織運営に関するもので あるため,1 名で経営を行う起業家は,注意する必要がある。
また,スモールビジネス経営においては,資金調達(Finance)にも経営リソースを極力 投入すべきではない。つまり,他者から資金を調達するのではなく,まとまった自己資本 を用いて起業を行うことが推奨される。
次に,スモールビジネス経営においては,商品開発(Product)には経営リソースを投入 すべきである。ただし,商品開発を行うのは基本的に商品販売を行った後に実行すべきで ある。この手法をマーケットインと呼ぶ。起業初心者にとっては,マーケットインの考え 方や実行方法を理解することが,最初は難しい。なぜなら,商品ができていないのに,先に 商品を販売するからである。しかしながら,時間や経費や労力が少ないスモールビジネス 経営においては,売れるかどうかわからない商品を先に開発することは,大きなリスクと なる。よって,マーケットインの手法に極力基づいた商品開発を行うことが望ましい。
最後に,スモールビジネス経営においては,商品販売(Marketing および Selling)に最大 の経営リソースを投入すべきである。商品販売(Marketing および Selling)は,見込客の問 題を解決する行為であるため,最重要の経営要因と言える。見込客にとって,提供される 商品とは,自分がどうなれるのかという,顧客にとっての最重要事項であるため,販売者 にとっても販売行為が経営における最重要事項となる。よって,商品販売(Marketing お よび Selling)に対し,最も優先的に経営リソースを投入すべきである。
「2.3. スモールビジネス経営における重要経営指標」においては,「1 人当たり粗利の重要 性」が大きいことについて論じた。粗利は,以下の 2 つの理由で重要である。まず,粗利が,
経営における商品の付加価値そのものに対応していること。次に,粗利が,他の経営指標 と比べて最も変更不能な経営指標であること。これら 2 つの理由により,粗利が経営にお いて重要であることが理解できるであろう。