第 4 章 結果と考察
4.1 ステンドグラスの影の生成結果
本節では、第3 章で述べた手法を実装した結果を示す。図4.1は東京の四ツ谷 にある聖イグナチオ教会のステンドグラスである。図4.2は図4.1の影の画像であ
る。また図4.3は図4.1を模写して用意したテクスチャである。図4.3を使い本手 法で生成した影が図4.4である。
図4.1: 聖イグナチオ教会のステンドグラ
ス 図4.2: 図4.1の影
図4.3: 図4.1を模写したテクスチャ 図4.4: 図4.3を使い本手法で生成した影 画像
以下の4.1.1項では本手法と既存手法との比較検証の結果を示す。また4.1.2項、
4.1.3項、4.14項ではステイニングによる調子付け、塗り、剥がし表現について、
本手法で生成した結果がステイニングによる遮光を表現出来ているか拡大画像を から比較検証する。
4.1.1 既存手法との比較検証
図4.5は本手法で生成したステンドグラスとその影画像である。図4.6はステイ ニングを考慮せずレイトレーシング法で生成したステンドグラスとその影画像で ある。図4.7はステイニングを考慮せずフォトンマッピング法で生成したステンド グラスとその影画像である。このフォトンマッピング法の影は本手法にて生成さ れる影に近い明るさになるように生成した。図4.5と図4.6、図4.7はそれぞれ同 じステンドグラスモデル、ステイニング用のテクスチャ使っている。
図4.5と図4.6、図4.7を比較すると影に違いがある。ステンドグラスモデル自 体の明るさはどれも同じであるが、現れる影の明るさには差がある。ステイニン グによる遮光を考慮した本手法の影は、既存手法であるレイトレイーシング法や フォトンマッピング法で生成した影より全体的に暗い印象となっている。フォトン マッピング法にて生成した影は、本手法の影に近い明るさで生成しているが、影 が明るくなる部分と暗くなる部分の差は明確になっていない。本手法ではこの影 の明暗が明確になっている。これは実際のステイニングを施したステンドグラス とその影の出来方と同じ現象を本手法が考慮し、表現出来たことを意味する。
図4.5: ステンドグラスモデルと本手法で生成した影の画像
図4.6: ステンドグラスモデルとステイニングを考慮しないレイトレーシング法で 生成した影の画像
図4.7: ステンドグラスモデルとステイニングを考慮しないフォトンマッピング法 で生成した影の画像
4.1.2 調子付け表現の検証
図4.8は実際のステンドグラスの影のグリザイユを多く施した部分の拡大画像で ある。図4.9は本手法を用いたステイニングの調子付け部分の影画像である。また、
図4.10はレイトレーシング法で生成した調子付け部分の影画像、図4.11はフォト ンマッピング法で生成した調子付け部分の影画像である。各画像中の赤い円で囲っ た部分が調子付け表現の部分である。
実際のステンドグラスでは、調子付けを茶色のグリザイユで行っている。レイ トレーシング法やフォトンマッピング法等の既存手法の場合、図4.10のようにス テイニングの基となっているテクスチャの色を影として反映してしまうため影は 茶色となる。本手法で生成した影画像は、実際の影と同じくステイニングに応じ て光量が落ち、調子付け部分の影は暗くなっている。
図4.8: 実際のステンドグラスの影の調子 付け部分の拡大画像
図4.9: 本手法を用いた調子付け部分の影 画像
図4.10: レイトレーシング法で生成した
調子付け部分の影画像
図4.11:フォトンマッピング法で生成した
調子付け部分の影画像
4.1.3 塗り表現の検証
図4.12は実際のステンドグラスの影の塗りを多く施した部分の拡大画像である。
図4.13は本手法を用いたステイニングの塗り部分の影画像である。また、図4.14 はレイトレーシング法で生成した塗り部分の影画像、図4.15はフォトンマッピン グ法で生成した塗り部分の影画像である。各画像中の赤い円で囲った部分が塗り 表現の部分である。
実際のステンドグラスでは、ステイニングで顔を表現している部分に肌色の塗 りと茶色の調子付けを施している。レイトレーシング法のみで生成した図4.14は 顔部分に塗った色のみを強く出してしまい、ハレーションを起こしたような結果 が出る。これに対し、フォトンマッピング法や本手法で生成した影画像は、実際 の影と同じくステイニングに応じて光量が落ち、顔部分の影が暗いものとなって いる。
図4.12: 実際のステンドグラスの影の塗
り部分の拡大画像 図4.13:本手法を用いた塗り部分の影画像
図4.14: レイトレーシング法で生成した
塗り部分の影画像
図4.15:フォトンマッピング法で生成した
塗り部分の影画像
4.1.4 ハイライト表現の検証
図4.16は実際のステンドグラスの影の剥がしを多く施した部分の拡大画像であ る。図4.17は本手法を用いたステイニングの剥がし部分の影画像である。また、図 4.18はレイトレーシング法で生成した剥がし部分の影画像、また、図4.19はフォ トンマッピング法で生成した剥がし部分の影画像である。各画像中の赤い円で囲っ た部分が剥がし表現の部分である。
実際のステンドグラスでは、ハイライト部分に剥がしを施している。本手法で 生成した影画像は、既存手法の影画像に比べると実際の影と同じように光量が周 囲の影より増し、影が明るくなっていることがわかる。
図4.16: 実際のステンドグラスの影の剥
がし部分の拡大画像
図4.17: 本手法を用いた剥がし部分の影
画像
図4.18: レイトレーシング法で生成した
剥がし部分の影画像
図4.19:フォトンマッピング法で生成した
剥がし部分の影画像
4.1.5 アンケートによる検証
本手法の有効性を検証するために、複数人によるアンケートを行った。まずス テイニングの簡単な知識と、本物のステイニングの施したステンドグラスの影の 画像を提示し、ステイニングを施したステンドグラスの影がどのようなものにな るのか、簡単に知識としてアンケート内に提示する。その後、既存手法による影 画像と、本手法による影画像を見比べどちらが本物のステイニングを施したステ ンドグラスの影に近い表現が出来ているかを設問とした。
以上のようなアンケートの結果、13人中10人が本手法を選択し、有効性がある という結論が得られた。本手法を選んだ理由で最も多かった回答は「影の明るい 部分と暗い部分が本物に近いから」というものであった。これにより本手法では、
ステイニングによる遮光度合いが本物に近く表現出来てよりリアルな影であると 言える。
反対に本手法を選ばなかった場合の理由として多かったのが「はっきりとした 影が映っているから」という意見が多かった。ステイニングによって調光する現 象はアンケート内に知識として提示したが、そもそもステイニングを施したステ ンドグラスの影が暗くなることが一般的ではないことが関係していると推測した。
これは、既存手法によるはっきりした影のほうを選んだ人の多くが、アンケート内 で提示しているはずの本物の影画像を本物の影と認識していなかったようで、「本 物の影と比較したかった」と述べていることからも裏付けられる推測である。