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2. 各種統計データの利用に関する運用ルール等の把握・整理

2.1 教育分野事例

2.1.4 スウェーデン

スウェーデンの教育庁は、1994年から、全国的な学力調査として、第3学年(8~9 歳)、

第6 学年(11~12 歳)、第9 学年(14~15 歳)の全員を対象とし、年に一度National Test

(以下、ナショナルテスト)を実施している。ナショナルテストの結果は、その他複数の統 計データとともに、インターネット上のサイトである「学校の各種成果・質に関する情報シ ステム(Skolverkets Internetbaserade Resultat- och kvalitets Informations System:

SIRIS)」及び「学校情報の相関分析ツール(Skolverkets Arbetsverktyg för Lokala Sambands Analyser:SALSA)」にて教育庁及び統計局により公表されている。

また、統計局では、個人レベルの学力データを、ミクロデータ・オンライン・アクセス

(Microdata Online Access:MONA)というシステムを通じて、一部の研究者等に提供し ている。

(1) データベース運用・管理一般について

1)目的・実施経緯(開始時期、準備期間)

スウェーデンでは、国が定めた情報公開に関する方針のもと、公的機関は可能な限り透明 性を高めて説明責任を果たすために多くの情報を公開することが求められている。特に教育 分野は、保護者や児童生徒が学校選択をする上で、有用な情報を得られるようにすることが 重要との考えに立ち、教育庁においても各学校から集約した諸データは、極力公表する形で 整備している。

このような目的の下に、SIRISは2001年9月から運用が開始された。また、統計局がMONA を利用して個人レベルのデータを提供し始めたのは、2004年からである。MONAのプラッ トフォームの開発には約1年間を要した。

2)利用状況(利用者数、利用者属性)及び規定違反実績

MONAによるデータ提供を開始した2004年から2013年までの間、計234件の研究にお いて個人の学力データが利用された。2013年の間には、45件の研究が行われた50

これまでの違反事例として、複数回MONA内にあるデータを外に取り出した事例が挙げ られる。また、これらの違反事例の多くは、利用ルールの誤解等によるものであった。利用 者が統計局からの忠告に従わずルール違反を続け、MONA の利用の禁止に至った事例もあ る。

3)管理体制(組織位置づけ、人数)

ナショナルテストの結果の集約及び関連ウェブサイトでの公表は、教育庁及び統計局が行 っている。本結果等を含むデータベースの管理・運用を実施しているのは、ナショナルテス トを所管している教育庁及びスウェーデンにおける各種統計を整備・管理する公的機関の統 計局である。

50 https://publikationer.vr.se/wp-content/uploads/2014/12/VR_1415.pdf

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ナショナルテストを実施した学校は、その採点結果を統計局に送付し、統計局はデータを 集約した上で教育庁に提出する。それを受けた教育庁は、ナショナルテストの結果を含む複 数の統計データをインターネット上のサイト(SIRIS及びSALSA)で公表している。

4)利用プロセスの全体像(工程別業務内容と期間)

申請者は、まず統計局に対し、研究目的と必要なデータ項目等について記載した申請書を 提出する。それを受けた統計局は、提供の可否を判断し、提供が許可された場合、貸与の時 期及び価格について利用者に通知する。その後、研究者が価格等の条件を承認し、データの 貸与が行われる。

図表 2-19 利用プロセスの全体像(スウェーデン)

5)経費(工程別概算工数、直接経費)

個人データの提供を行うMONAの開発及び運営費用は、全て統計局により賄われた。統 計局のスタッフ(4~5人の正規職員)は、年間(2013年実績)約7,600時間をMONAの運 営管理に時間を費やした51。システムは定期的(月1度のペース)にメンテナンスされてい る。

MONAのシステム修理等の費用の約7割は、教育庁の傘下にあるSwedish Research Council が助成している(2013年には、約960万クローナ(約1.36億円:2015年10月28日レート)

がCouncilより助成された)52

6)構築・運用上の課題・留意点

2013年に、Swedish Research Councilは政府の委託を受け、MONAの利用課題等について

51 これらの数値は飽くまで概算であり、統計局は正確な数値を保証することはできない。

52 https://publikationer.vr.se/wp-content/uploads/2014/12/VR_1415.pdf

利用者 管理者

利用申請

①規定類の作成

DBの作成・管理

③利用受付・周知

④申請審査・利用許諾

利用

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研究を実施した。その結果、今後更に個人データの利用を促進させるには、①分析データの 保存キャパシティの拡大、②利用可能な分析ソフトウェアの拡大、③研究者が自身のサーバ を利用できるようにすること、④海外からのMONA利用、⑤学生による利用が改善すべき 課題であると分析した53

(2) 規程類の作成

1)利用指針の有無/内容

統計局は、MONAの利用に関する指針(Instructions for connecting to Microdata access at

Statistics Sweden)を、オンライン上に掲載している54

2)関連規定の種類・概要

個人データの提供は、「個人データ保護及び公的データのアクセスに関する法律(Public Access to Information and Secrecy Act and Personal Data Act)」に基づいて行われる。本法は、

個人データの提供は審査委員会により許可された人しか認められないことや、統計局では匿 名化されたデータしか提供してはならないことを定めている。さらに、本法は、取得したデ ータをEUや欧州経済領域(EEA)地域以外にあり、個人情報のセキュリティ体制が十分で ない国で利用することを禁止している5556

3)利用者制限の有無/内容(申請単位(個人又は組織)を含む)

SIRIS及びSALSAにおいて公表されているデータは、アクセス制限が設けられておら

ず、誰でも自由に閲覧することができる。一方、MONA で提供されている個人データを含 むデータの利用については、原則としてスウェーデンに所在する認知度の高い大学あるいは 研究機関に所属している研究者のみに限られる。また、データの利用は基本的に国内で利用 されなければならない(違反時に、国内法により罰することが可能であるため)57

4)利用者(個人)所属組織異動時の扱い

利用許可は、特定の組織に対し与えられるため、利用者の所属組織が変更になった場合は、

再度申請を行う必要がある。

53 https://publikationer.vr.se/wp-content/uploads/2014/12/VR_1415.pdf

54 http://www.scb.se/sv_/Vara-tjanster/SCBs-data-for-forskning/MONA/

55 利用指針:http://www.scb.se/Grupp/Produkter_Tjanster/Forskare/_Dokument/MONA/Handledning-Eng.pdf

56 http://www.scb.se/Grupp/Produkter_Tjanster/Forskare/_Dokument/MONA/Produktblad-Eng.pdf

57 統計局へのヒアリングより

47 5)利用目的制限の有無/内容58

MOMAで提供される個人レベルのデータ利用に当たっては、利用が研究目的であり、報 道や商用のために利用しないこと(倫理的な観点からも適切な利用を順守することを誓約す る。同時に、データ利用を通じて得られる分析結果については、社会に対して有益な情報を 含むことが求められる)が求められている。

6)利用期間制限の有無/内容

研究者は、MONA のデータに、データの利用目的が達成されるまでアクセスすることが 可能である。統計局へのヒアリングによると、研究者が3-4年間データを利用し続けること は珍しくないとのことである。

7)利用料の有無/内容/支払方法59

SIRIS及び SALSAで公表されているデータには、誰でも無料でアクセスすることができ

るが、MONA を通じて得るデータに関しては、利用希望者は倫理審査委員会に対し、申請

料として1件あたり5,000クローナ~16,000クローナ(約7万~23万円:2015年10月28

日レート)を支払わなければならない。

また、個人データの利用者は、データの取得及び利用料金も支払う必要がある。

8)利用方法/データ管理規定の有無/内容(情報漏えい対策等)60

教育庁では、SIRIS及びSALSAにおいて、児童生徒個人や学校が不利益な状況に置かれ ることを避けるため、データ公表に係る留意点を以下のように定めている。

特定の個人が明らかにされるような内容・形式で公表しない。関連して、学校単位の 情報について、10 人未満のセグメントについては公表しない。

移民の背景を有する児童生徒の割合や保護者の学歴については、SALSA においての み、成績評価と一緒に公表することとし、単独で公表することはしない。

公表データが、意図しない形で解釈・利用されることのないよう、各指標の定義や解 釈の仕方については、できるだけ分かりやすく提示する。(結果公表自体に関する留意 点ではないが)成績が芳しくない学校に対しては、一時点の成績で社会的な批判を受 けたり、学校がモチベーションを下げたりすることがないよう、行政として追加的な 支援を行う姿勢を明確にする。

9)利用終了時のデータ廃棄等規定の有無/内容

利用終了時のデータ廃棄等規定の有無/内容については不明である。

58 昨年度報告書

59 昨年度報告書

60 昨年度報告書

48 10)罰則規定の有無/内容

罰則規定の有無/内容については不明である。

(3) データベースの作成・管理 1)データ項目・数量61

a. SIRIS

SIRISでは、国レベルの集計データに加えて、市(Municipality)及び学校レベルの様々な

情報を公表している。公表情報は、①学校レベルの公表情報、②市レベルの公表情報に分類 できる。

学校レベルの公表情報には、特定の学校の児童生徒数、ナショナルテストの成績評価平均 得点(学年別、科目別)、学習障害を抱える児童生徒数、保護者の学歴、スウェーデン語以 外を母国語とする児童生徒割合等が掲載されている。利用者は、特定の学校のナショナルテ ストの成績の平均値を、同一市の学校平均、同一都市規模の学校平均や全国平均と比較する ことができる。また、特定の学校の成績の平均値の経年変化(グラフ)も見ることができる。

なお、グレード(成績)別の児童生徒割合テスト成績と比較して、グレードが低い児童、同 程度の児童、高い児童の割合も学年別、科目別に見ることができる。

市レベルの広報情報には、図表 2-20のような情報が掲載されている。また、ナショナル テストの結果については、テスト種別ごとに、市の平均を、同一年規模の地域や全国と比較 することができる。

図表 2-20 市レベルでの公表情報

分類 主な内容

就学前教育 学齢期の子供のうち、就学前教育を受けている割合 スタッフ一人当たりの児童数

児童一人当たりの財政支出 義務教育 学校設置者別の児童生徒割合

教員一人当たりの児童生徒数 児童生徒一人当たりの財政支出 後期中等教育 教員一人当たりの生徒数

生徒一人当たりの財政支出 課程別の生徒割合

規定年限以内で修了した生徒割合 1 年以上就学した後に退学した生徒割合 成人教育 20~64 歳のうち、成人教育を受けている割合

成人教育修了後/中断後に後期中等教育を受けている割合 成人教育の生徒一人当たりの財政支出

61 「諸外国における学力調査の結果公表の手法に関する調査研究報告書」2015三菱総合研究所

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