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本節では、日本の生命保険市場を概観し、家計の資金を接続・抽出する営業職員の役割に関係のある 項目について同業界の特徴や趨勢を整理する。

2−1 家計の金融資産と生命保険市場

日本における家計の金融資産は増加している。日本銀行「資金循環統計」で 1979 年から現在までの 家計の金融資産の推移をみると、80 年代から 90 年代初めにかけて大幅に増加、90 年代後半から 2000 年代にかけては増減を繰り返し横ばい傾向にあった(図1参照)。しかし、2011 年以降再び増加基調に 転じ、2015 年6月末時点で 1717 兆円と過去最高を記録し、9月末時点でも 1684 兆円となっている。

中でも保険・年金準備金は、現金・預金とともにこの間一貫して増加している。

家計の金融資産の内訳をみると、現金・預金の割合が常に最も高くほぼ 50%を超えている。次いで 高い比重を占めているのが保険・年金準備金であり、常に家計の金融資産構成第2位の位置を占め、

2015 年9月末時点では 26.4%となっている。第3位は株式・出資金の 9.7%で、現金・預金および保険・

年金準備金とは規模が大きく異なる。現金・預金および保険・年金準備金で8割近くを占めているのが 日本の特徴である。欧米と比較するとこの特徴はさらに際立つ(図2参照)。日本では、金融資産を投 機的に保有する者は圧倒的に少数であり、安全資産としての預貯金や生命保険・年金に集中している。

では、日本の生命保険市場はどのような特徴があるのであろうか。表1からわかるように、2014 年 の世界の市場占率をみると、アメリカの 19.9%に次いで日本は 14%と第2位で規模が大きい。収入保 険料の対 GDP でみても、日本では 8.4%と世界的にみて極めて大きく、1人当たり収入保険料もアメリ カの2倍近い。これほど大きな市場であるにもかかわらず、会社数はアメリカの 850 社と比較して 41 社と非常に少なく、大きな市場を数少ない会社が占有している。

この日本の市場規模の大きさを支えているのが、第1に生命保険の普及率の高さだといえる。日本に おける生命保険の世帯加入率は、1994 年の 95%をピークに徐々に減少しており、2012 年では 85.8%と 約9ポイント減少したが、国際的にみれば驚異的な加入率を誇っている。世帯平均の生命保険の加入件 数をみると、1991 年の 5.3 件をピークに減少し、2012 年では 3.6 件となっている。

世帯主と世帯主の妻の加入状況がわかる 1979 年以降の推移をみると、男性世帯主の加入率は 80%台

後半をほぼ横ばいに推移し近年は低下傾向にあり 2015 年で 85.4%となっている(図3参照)。一方、妻 の加入率は 1979 年には男性世帯主の半分程度の 43.7%だったが、90 年代初めまで急上昇、その後も緩 やかに増加し、2015 年調査で初めて低下したものの男性世帯主との差は8ポイント程度に縮小してい る。男性世帯主への普及が飽和状態となった後、妻の加入が大きく進んだことがわかる。

(%)

図1 家計の金融資産の推移(1979 ~ 2014 年度)

注)「その他」は、金融資産合計から、「現金・預金」、「債券」、「投資信託」、「株式・出資金」、「保険・年金準備金」を 控除した残差。

(出所:日本銀行『資金循環統計』各年度版より作成)

図2 日本、アメリカ、ヨーロッパ諸国における個人金融資産の内訳(2015 年)

注)日米は 2015 年 6 月末、ユーロエリアは 2015 年 3 月末現在

(出所:日本銀行(2015)『資金循環の日欧米比較』より作成)

世帯主の普通死亡保険金額(全生保)の平均は、97 年の 2732 万円をピークに減少傾向が続き 2015 年に 1509 万円である。一方、妻の普通死亡保険金額の平均も 97 年の 1223 万円をピークに減少傾向が 続いているが、2015 年で平均 807 万円とほぼ世帯主の金額の半分近い金額となっている(生命保険文 化センター調べ)。日本社会における男性世帯主と妻の家族に対する責任の規範や考え方の違いが影響 していると思われる。

世帯の平均年間払込保険料(全生保)は、97 年の 67.6 万円をピークに減少傾向にあり 2015 年では 38.5 万円となっている(図4参照)。生命保険(個人年金保険を含む)加入世帯における年間払込保険 料の世帯年収に占める割合も 97 年の 10.1%をピークに減少し、2015 年では 7.4%となっている。世帯 年収自体が減少している中でも、常に家計の一定の割合を生命保険料に割いていることがわかる。

以上のように、日本の生命保険市場は、男性世帯主に対する加入が飽和状態となると、その家族であ る妻や単身者等、男性稼ぎ主以外の者たちの加入を積極的に進めてきたといえる。90 年代半ばをピー

表 1 主な国の生命保険主要業績統計(2014 年)

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14.00 19.90 8.86 4.46 6.51 5.47 1.96 3.83

2 1 3 7 5 6 12 8

8.40 3.00 8.00 3.10 5.90 6.50 2.90 7.20

2,926.0 1,657.0 3,638.0 1,437.0 2,552.0 2,332.0 1,469.0 2,014.0

41 850 387 87 109 69 99 25 ୡ⏺ᕷሙ㡰఩

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注) 会社数は、米国、英国、カナダは 2013 年度末時点、韓国は 2013 年 12 月末時点、日本、フランス、ドイツ、イタリ アは 2014 年度末時点の数値。

(資料) Swiss Re 「Sigma No 4/2015 - World Insurance in 2014」ただし、年末資産、会社数については各国協会等発表 の数値による。対米ドル通貨換算率(年末)については国際通貨基金(IMF)「Representative Exchange Rates for Selected Currencies」の各年度末レートによる。

(出所:生命保険協会『2015 年版国際生命保険統計』より作成)

図3 世帯主と世帯主の妻の加入状況の推移

注1)民保(かんぽ生命含む)簡保、JA、県民共済・生協等を含み、2000 年以前は民保、簡保、JA の計 注2)世帯主の加入率=世帯主が加入している世帯数/全回答世帯数× 100

注3) 妻の加入率=妻(男性世帯主の配偶者)が加入している世帯数/本調査に回答した男性世帯主で配偶者のいる世 帯数× 100

(出所:生命保険文化センター『生命保険に関する全国実態調査』各年度版より作成)

クに加入率や加入件数、年間払込保険料の減少が続いているが、それは少子高齢化や未婚率の上昇、単 身世帯の増加など世帯構造の変化、90 年代以降の不況期における家計支出の見直し、生命保険に対す る姿勢の変化などが影響していると考えられる。とはいえ、日本の金融資産における相対的な生命保険 の重要性に大きな変化はないといえよう。

2 − 2 日本の生命保険商品と生命保険に対する考え方の変化

日本では、世界的にみて生命保険の加入率が高いが、なぜ多くの日本人が生命保険に加入するのだろ うか。生命保険文化センターが実施する『生命保険に関する全国実態調査』から、加入目的をみてみよ う(図5参照)。民間生命保険に加入した人の主な加入目的(複数回答)をみると、長らく「万一のと きの家族の生活保障のため」が断トツで1位の割合を占めてきた。しかし、2006 年度調査以降、1位 と2位の順位が入れ替わり、現在では「医療や入院費のため」が最も高く 58.5%で、次いで「万一のと きの家族の生活保障のため」が 53.1%となっている。他には「災害・交通事故などに備えて」は断続的 に減少し、代わって「万一のときの葬式代のため」の割合が増加し、2015 年度調査では 13%と加入目 的の3番目に上がっている。

世帯主に万一のことがあった場合、現在準備されているもののうち家族の生活資金準備手段として期 待できるものは「生命保険」が 52.9%と最も高い(図6参照)。以下、「預貯金・貸付信託・金銭信託」

43.2%、「不動産」19.8%となっており、残された家族の生活資金として生命保険に期待が最も寄せら れている。しかし、1991 年には「生命保険」に期待する者が 73.4%と非常に高かったが、2015 年では 20%以上減少している。一方、期待するものは「特にない」と回答する者が 91 年の 9.6%から 2015 年 には 23.1%に上昇している。稼ぎ主が死亡した後の生活資金として、生命保険の相対的重要性は高いが、

絶対的な重要性は下がってきているといえる。

次に、日本の新契約件数、保有契約件数における商品構成をみてみよう。死亡保険は、被保険者の死 亡リスクを保障するもので、保険金はあらかじめ定められた保険金受取人に支払われる。生存保険は、

図4 生命保険(個人年金保険を含む)の世帯年間払込保険料 注1)全生保は民保(かんぽ生命を含む)、簡保、JA、県民共済・生協等を含む。

注2)世帯年間払込保険料=全世帯員の年間払込保険料の総合計/生命保険に加入している世帯数

(出所:生命保険文化センター『生命保険に関する全国実態調査』各年度版より作成)

被保険者が保険期間満了時に生存していた場合、満期保険金をあらかじめ定められた保険金受取人(通 常は本人)に支払うもので、被保険者の生存リスクを担保するものである。老後生活保障のほか、子供 の学資保険等、目的に応じた必要資金を準備するためにも活用される。生死混合保険とは、定期死亡保 険と生存保険を組み合わせたもので、いわゆる養老保険と呼ばれている。被保険者が保険期間満了時に 生存していた場合は必ず保険金を支払う必要があることから、保障と貯蓄の性質を兼ね備えたものと考 えられる。新契約件数、保有契約件数の商品構成をみると、2014 年度の新契約件数、保有契約件数に おける商品構成は、死亡保険がそれぞれ 79.5%、81.9%、次いで生死混合保険が 11.9%、13.6%と、生 命保険商品の大部分を死亡保険が占めていることがわかる。

しかし、死亡保険が大部分を占める商品構成が日本で従来優勢だったわけではない。1881 年に日本 で近代生命保険制度が創設されて以来、1960 年頃までの約 80 年間は、日本人の特質とされる貯蓄の観 念に適合した養老保険が、毎年の新規加入件数においても金額においても、ときには 90%以上にも達

図5 直近加入契約(民保)の加入目的(複数回答)

(出所:生命保険文化センター『生命保険に関する全国実態調査』各年度版より作成)

図6 世帯主に万一のことがあった場合の家族の生活資金準備手段(複数回答)

注) 2006 年度調査までは民保、簡保、JA の生命保険を対象としていたが、2009 年度調査からはかんぽ生命と県民共済・

生協等も対象に加えている。

(出所:生命保険文化センター『生命保険に関する全国実態調査』2015 年度版より作成)