実運用
に
入る
前に,
運用計画値の
妥当性を
検証するため,
複数
の
運用ケースで
運用計画を
計算し,
画面上に
表示する。
また,
最適運用計画機能構築フレームワーク
には
含まれ ないが,
運用計画を
立案する
上で
重要となる
機能として,
電力需要予測
や
太陽光発電の
発電量予測などを
行う
予測機 能群と
,
最適運用計画 立案機能や
予測機能に
関連する
各種 Web 画面がある。
. 統一エネルギーネットワークモデル
消費電力
を
含むエネルギーコストまたは
CO 2 排出量を
最小化する
運用計画は,
最適化アルゴリズムを
用いて
立案する
。
その
ためには,
計画立案対象のエネルギーの
伝達関 係を
数式で
記述する
必要がある。
従来は,
最適化を
熟知し た
エンジニアが
,
アルゴリズムに
適したモデル
表現方式を
選んで
,
直接数式を
記述することでモデリングを
行ってき た。このよう
な
方式では,
プラント
内の
設備の
増減や
,
経 年劣化などによる
特性変化が
生じ
ると,その
都度,
数式モ デル
を
修正しなければならなかった。
この
問題を
解決するため,
一般の
ユーザがシンプルな
作 業によりプラントを
定義し
,プラントの
モデル
を
自動で
生 成する
統一エネルギーネットワークモデル
を
開発した。
統一
エネルギーネットワークモデルでは,
グラフ
により プラントのエネルギーフローを
表す。ここで
木構造の
接点(ノード)
が
設備を
表し,
枝が
設備間の
接続関係を
表す。
図
に,
統一エネルギーネットワークモデルの
定義画面の
例を
示す。ユーザは,ノードを
画面右端のシンボルリス トから
選択して,
画面中央のモデル
定義ウィンドウに
配置し,プロパティ
入力ウィンドウを
開いて,
変換効率の
係数や
上下限特性などの
値を
入力する。
機器の
接続関係は,
配 置されたノードの
入出力を
信号線で
結ぶことで
定義する。
このようにして
定義されたモデルは
XMLデータとして
出力
され,
モデル
解析部により
最適化計算部が
要求するファ イル
形式に
変換される。
. 最適化計算部
最適化計算部
は,
計画立案アルゴリズムの
核となる
機能である。
統一エネルギーネットワークモデルに
記載された プラントの
情報と,
実績データおよび
予測データに
基づい
て,エネルギーコスト
あるいは
CO 2 排出量を
最小化する プラント
内の
各種ユーティリティの
運用計画を
出力する。
ユーティリティ
設備の
運用計画の
最適化は,
各エネル ギーの
需給バランス,
機器の
機械的制約および
運用制約を
考慮した
上で,
運用コスト
あるいは
CO 2 排出量の
最小化を
達成する
機器の
起動・
停止(
離散量)と
機器の
出力(
連 続量)を
同時に
決定する
最適化問題となる。
従来,このよ うな
運用計画の
最適化問題では
,
機器の
特性や
制約などを
線形近似した
上で,
混合整数計画問題として
定式化して
解いていた
。
しかし,より
省エネ
性が
高く,
実運用に
耐える だけの
運用解を
得るためには,
厳密な
機器の
特性や
現場の
運用ルールなどの
制約条件を
考慮する
必要がある。
これら を
考慮しない
場合,エネルギー
消費量の
計算値が
実際の
値と
異なった
値となること,ならびに
運用ルールを
守らない
運用計画値を
出力し,
必ずしも
狙った
通りの
省エネにつな がらない
こと
などの
問題が
発生する。
したがって,
機器お よび
運用ルールの
非線形特性を
考慮した
,
混合整数非線形 計画問題として
定式化して
解く
必要がある。
一般的に,こ のような
問題は
効率的に
最適解を
求めることが
難しいとさ れている。
富 士 電 機
で は,
こ の
問 題を
解 決す る た め に
独 自の ア ルゴリズムを
開発した。
最適解の
探索方法として,
PSO⑻
(
Particle Swarm Optimization)
手法や
D⑼ ,
E
⑽
(
Deff erential Evolution
)などの
最新のメタヒューリスティクス
最適化 技術⑾
を
核とし,ユーティリティ
設備の
運用計画の
立案に
関するさまざまなノウハウを
加えたものである
。これにより,
従来
は
実用的な
計算時間で
解くことが
困難であった
混合整 数非線形計画問題の
高精度な
解を
,
30 分以内(
30 分同時 同量を
想定)
で
求める
ことを
可能とした。
また,
上述のアルゴリズム
以外にも,ユーティリティ
設 備の
入出力特性や
制約などが
1 次もしくは
2 次関数でモデ ル
化できる
場合には
,
より
短時間で
問題を
解くことができ る
数理計画アルゴリズム
も
用意している。
なお,
計算機に
搭載される
CPUは,クロック
数で
処理 性能を
上げる
方針から,コアを
複数にすることで
計算性能を
上げるように
設計方針が
変化してきており,マルチコア
CPUが
一般的なものになってきている。このため,
大規 模な
問題に
対しても,
所望の
時間内で
高品質な
解を
得られ るように,
最適化アルゴリズムの
並列化の
研究開発を
進め,
マルチコア
CPUでの
高速演算を
可能としている。
. 起動管理機能
最適運用計画立案機能
は
,
30 分または
1 時間ごとに
定 周期で
起動要求がかかり
,
予測機能が
立てた
需要予測 値あ
図 統一エネルギーネットワークモデルの定義画面の例統合 EMS プラットフォームによる最適運用計画機能構築フレームワーク
特集 エネルギーマネジメントシステム︵EMS︶
るいは
別の
運用計画プログラムが
立案した
運用計画値に
基づいて
,
ユーティリティ
設備の
運用計画を
立案する。
起動管理機能
は
,あらかじ
め
定義された
起動周期(
30 分や
1 時間など)と
起動順序(
発電予測,
需要予測,
運用 計画機能など
)に
従って
,
予測機能ならびに
上述の
最適運 用計画立案機能に
起動要求をかける
機能である。
本機能に より
,
予測演算から
最適運用 計画の
立案までの
一連のタス クが
定周期で
管理・
実行され
る。
. シミュレーション機能
運用計画
システムの
導入の
際や
導入後に
設備に
変更が あった
場合,さまざまな
運用状況を
想定したデータを
用い て
,
立案した
運用計画の
省エネ
性能,
運用可能性の
検 証が
必要となる
。
この
検証には,
運用計画機能をバッチ
処理で
実行し,
立案した
結果を
シミュレーション
機能で
確認する。
シミュレーション
機能は
,
最適運用計画 立案 機能の
入力データを
所望のデータにした
上で
これをバッチ
的に
呼び
出す
機能と,その
結果を
画面で
確認する
機能からなる
。
シミュレー
ション
機能では,さまざまなパターンのデー タを
入力する
手段として,
図に
示す
データ
入力 画面を
用いる。
任意の
時刻を
指定して
,あらかじめ
立案した
予測データ
群から
入力データを
取得する。
この
データが
検証内 容に
不適切な
場合は
,
データ
入力フィールドに
展開された
値をユーザが
任意の
値に
変更することで
調整できる。
運用計画結果
を
確認する
手段は
2 種類あ
る。
一つはデー タ
値を
画面で
確認する
方法,
もう
一つはグラフ
で
確認す
る
方法である。データ
値の
確認は,データ
入力画面で
行う
一 方,
グラフによって
結果を
確認する
場合,
プラント
種別,
評価・
検討を
行う
事象によってグラフ
化するデータや
,
用いるグラフの
種類が
異なる
。
そこで,
シミュレーション
機 能では
,
グラフ
定義という
操作で
あらかじめ
データやグラ フの
種類を
定義して
評 価・
検討を
行う
運用計画データを
ひ も
付ける
ことに
より,さまざまな
グラフを
出力できるよう に
している。グラフ
定義は
図に
示す
グラフ
定義画面で
行う。
グラフ
作成に
関する
一般的な
設定項目を
選択すること
ができる
。
製鉄所向け EMS への適用
最適運用計画機能構築
フレームワークを
用い
て
開発し
た
製鉄所向け
EMSパッケージ「
鉄鋼 EMSパッケージ」
を
適用事例として
説明す
る
(
177ページ“
製鉄所のエネル ギー
管理を
最適化する「
鉄鋼 EMSパッケージ」 ”
参照)
。
「
鉄鋼 EMSパッケージ」は,そのシステム
構成を
図に
示すよう
に
,
最適運用計画 立案 機能群,
起動管理機能, シミュレーション
機能,
予測機能から
構成される。
最適運 用計画 立案 機能 群は,ホルダ
設備最適運用,
酸素設備最適 運用
,
発電設備最適運用,
全体最適運用
からなる。
予測機 能は,
製鉄所内のガス
需要量ならびに
電力使用量を
予測す る
需要予測からなる。
最適運用計画 立案 機能 群におけるそ れぞれ
の
最適化では,
関 連する
予測機能が
立案するエネル ギーの
発生・
使用量の
予測に
基づいて
運用計画を
立案する ため,
需要予測と
連携する。
ホルダ
設備最適運用,
酸素設備最適運用および
発電設備 最適運用には,
5 分に
1 回という
高速な
計算が
要求される。
このため,
酸素設備最適運用と
発電設備最適運用は,
高速 演算が
可能な
アルゴリズム
を
適用して
実現している。
ホル ダ
設備最適運用は
,アルゴリズムに
並列化メタヒューリス ティ
クス
を
用いることで
高速化を
実現している。
全体最適 運用は,
1 日に
1 回定周期で
起動されるが,
運用計画を
立 案する
規模が
大きくなるため,この
機能についてもマルチ
図 シミュレーション機能のデータ入力画面
図 シミュレーション機能のグラフ定義画面
最適運用計画機能フレームワークの範囲 予測
最適運用計画立案機能群 機能
起動管理 機能 全体 最適運用 発電設備 最適運用 酸素設備 最適運用 ホルダ
設備 最適運用
シミュ レーショ
ン機能 需要 予測
各種 Web 画面
統合 EMS プラットフォーム
図 「鉄鋼 EMS パッケージ」のシステム構成