デマンド
調整ガイダンス(
図 -C)は,エネルギーの
需給状況と
機器の
運転状態の
変化を
検出することで,
運用 管理者への
推奨操作ガイダンスを
作成することができる。
“いつ”
“
何が
発生” “
把握すべき
情報” “
推奨する
行動と
効 果”を
運用管理者に
通知し“
気づき”を
即時に
与えるもの である。
電力料金単価
が
上昇する
時間帯となる
前に
通知される,
デマンド
調整ガイダンスの
例を
次に
示す。
いつ:
30 分後何
が
発生:
電力料金単価の
上昇時間帯到達 把握すべき
情報:
需給計画・
実績と
料金情報推奨
する
行動と
効果:
共有部の
照度設定を
100%から
75%に
変更(
削減効果:
200 kW)
画面上
で“
把握すべき
情報”を
選択すると,
関連する
機 能を
表示する
画面へ
切り
替わることにより,
操作性の
向上を
図っている。
⑷ 省
エネ
行動支援省
エネ
行動支援(
図 -D)は,
エネルギーの
消費動向や
需給状況を
表示することで,
省エネ
行動を
促すことを
目 的としている。
大型商業施設では,テナントのエネルギー
消費量
が
多くの
割合を
占めている。そのため,
最適なエネ ルギーコントロール(
省エネ,ピークカット,ピークシフ トなど)の
実現には,テナントの
従事者(
人)に“
意識改 革”を
促し,
需給逼迫時などに
具体的な“
省エネ
行動”を
実行できるようにする
ことが
重要であ
る。
省エネ
行動支援の
内容を
次に
示す。
⒜
テナント
情報端末の
設置各
テナントにタブレット
型の
情報端末を
設置し,テナ ント
従事者自身がテナントのエネルギー
消費動向をいつ でも
把握できる
機能を
構築した。
図に,テナント
情報 端末の
画面例を
示す。スマートメータと
連携することに より,テナント
単位で
用途別(
照明,
空調,
動力)
実績を
収集するとともに,テナントの
規模や
特性に
応じた
表 示項目,
表示スケールで
見える
化を
実施し,テナント
情 報端末の
視認性の
向上を
図っている。
⒝ 省
エネ
行動の
依頼メッセージの
表示各
テナントで
実施できる
省エネ
行動は,テナントの
業 種特性,
規模,
操業時間帯によってさまざまな
種類があ る。
大型商業施設向け
EMSでは,テナントの
従事者が
実際に
行動できる
具体的な
依頼メッセージと
省エネ
目標 値をテナントごとに
管理・
計算し,
需給逼迫時などにテ ナントの
情報端末にアラームとともに
通知する。
需給逼迫時間帯
などは,
1 分間隔で
実績の
表示を
更新することで,
省エネ
行動の
効果をその
場で
確認・
実感で きる
画面構成としている。これは
施設全体の
省エネの
取予測・計画機能
エネルギー供給設備 つくる 設備
エネルギー バッファ設備
ためる 設備
調整負荷設備 へらす 設備 気象
事業者
気象 予報
エネルギー系統
他基幹系 システム など
運用 計画 最適運用
計画
モデル化
(シミュレー ション)
制御系 アプリケー
ション
予測機能 計画機能
気象予測
操業実績 発電量予測
(太陽光,
風力)
需要予測 発電量 予測値 発電量 予測値
需要 予測値 需要
予測値 制御
スケジュール 需給 計画値
図 最適運用計画の入出力情報
需要特性に応じて 施設全体をエリア分割
エリア選択で
所属テナントの状況表示 テナント詳細表示
図 施設全体画面
冷温水 受電電力
ガス タービン
燃 料
排ガス ボイラ
ボイラ
スチーム タービン
蒸気 ヘッダ
蒸気吸収式 冷凍機 ガスだき 冷温水器
コンプ レッサ
蒸気 空気
電力
蓄熱槽
空気負荷 電力負荷
蒸気負荷
熱負荷
図 エネルギー系統のモデル
施設全体の需給計画 購入電力量
発電設備(太陽光・蓄電池など)の発電量 などの計画値を積み上げ表示 購入
電力量
発電設備の 発電量
図 最適運用計画による3日分の供給計画
大型商業施設向け EMS
特集 エネルギーマネジメントシステム︵EMS︶
組
みが,テナント
従事者にとって“やらされ
感”ではな く“
納得感” “
達成感”を
感じてもらうための
工夫であ る。
⒞
テナントの
協力度の
定量評価大型商業施設向
け
EMSでは,
省エネ
行動に
対する
効 果を
定量的に
管理し,テナントごとの
協力度を
分析でき る。また
将来,
省エネへの
協力度に
応じた,インセン ティブ
制度の
運用への
展開も
可能としている。
⒟
デジタルサイネージとの
連携
デジタルサイネージとの
連携は,
施設全体の
省エネ
状 況や
取組みを
来場者(お
客さま)に
見せることで“
企業ブランド
価値”を
高めることに
貢献している。
また,スマートコミュニティに
参画している
施設にお いては,
需給が
逼迫して
地域内の
電力料金が
高くなる
時 間帯にセールなどを
告知し,
地域全体から
集客すること で
地域全体のエネルギー
効率の
向上を
目指している。
⑸
エネルギー
見える
化エネルギー
見える
化(
図 -E)
は,
エネルギー
情報の
参照や
集計を
容易にできるようにすることで,エネルギー
管理者の
効率的・
効果的な
分析・
評価を
実現することがで きる。
次に
示す
二つの
工夫を
実施した。
⒜ 知
りたい
情報にたどり
着くまでの
迅速化図
に,
見える
化の
階層集計画面を
示す。エネル ギー
情報を
検索するための
情報構造をテナントの
業種(
物販,
飲食,サービスなど)を
軸とし,
階層ツリーか ら
検索できるインタフェースとした。
管理者
は,
階層ツリー
配下の
細分化されたエネルギー
情報(
業種別,
用途別使用量,
原単位,ランキングな ど)を
容易な
操作でさまざまな
切り
口で
参照・
集計でき る。
⒝ 知
りたい
情報を
加工する
時間の
短縮化参照
・
集計しているエネルギー
情報は,
表計算用ソフ トウェアで
使用できるファイル
形式で
管理者用 PCにダ ウンロードし,
任意に
報告用帳票などを
作成することが できる。
. 今後の技術的展開について
施設全体
のエネルギー
効率と
投資コストの
最適化には,
維持管理
コストも
含め
横断的に
評価できる
仕組みの
導入が
必要である。
例えば,
配管異常を
検知した
場合,
維持管理コストとトレードオフ
関係にあるエネルギーロスコストと リスクとを
勘案し,
最適な
時期が
決定される。
今 後
,
富 士 電 機が
持つ セ ン サ
技 術,
設 備 維 持 管 理ソ リューションおよび
EMSソリューションを
融合し,
業務 情報を
横串で
評価できる
分析環境を
追加することにより,
大型商業施設
のさらなるビルエネルギー
最適化を
実現する
EMSを
目指している。
あとがき
大型商業施設
において
エネルギー
の
見える
化と
最適運用を
行う
EMSについて
,
その
機能・
特徴を
述べた。
これまでの
成果を
生かし
,さらなる
機能強化を
実施する ことで,
最適なエネルギー
運用を
実現させるととも
に
,
電 力需給調整に
寄与し,
効率的かつ
合理的にエネルギーの
利 用を
推進するスマートな
社会の
実現に
貢献していく
所存で ある。
参考文献
⑴ 一般財団法人 省エネルギーセンター.“商業施設(百貨 店・総合スーパー・ショッピングセンター)の省エネルギー”. p.2, http://www.shindan-net.jp/pdf/commercial̲bldg.pdf,
(参照 2013-07-19).
⑵ 経済産業省 資源エネルギー庁. 各種商品小売業省エネル ギー実施要領作成検討委員会. “各種商品小売業における省 エネルギー実施要領”. 平成20年3月版, p.2, http://www.
enecho.meti.go.jp/topics/080804/3.pdf ,(参照 2013-07-19). ⑶ 東谷直紀ほか. 省エネルギー活動を支援するエネルギー
マネジメントソリューション. 富士時報. 2011, vol.84, no.4, p.234-238.
⑷ 堀口浩ほか. 統合エネルギーマネジメントシステムプラッ トフォーム. 富士時報. 2011, vol.84, no.3, p.214-218.
テナント向けの具体的な
省エネ行動メッセージの表示
図 テナント情報端末の画面例
ビジュアライズイメージ テナントごとの実績 原単位
ランキング表示 など
エネルギー管理情報階層構造の選択 物理階層(建家,フロア,部屋など)
業種別 用途別
条件表示
図 見える化の階層集計画面
大型商業施設向け EMS
特集 エネルギーマネジメントシステム︵EMS︶
小松原 滋
エネルギー管理システムの企画 ・ 開発 ・エンジニ アリング業務に従事。現在,富士電機株式会社発 電・社会インフラ事業本部社会システム事業部電 力流通システム部担当課長。情報処理学会会員。
項 東輝
製造管理 ・エネルギー管理システムの企画 ・ 開 発 ・ 技術取りまとめに従事。現在,富士電機株式
会社産業インフラ事業本部機電システム事業部
FEMS 技術部担当課長。工学博士。計測自動制御 学会会員,電気学会会員。
山田 康之
エネルギー管理情報システムの企画 ・ 設計 ・ 開発 に従事。現在,富士電機株式会社産業インフラ事 業本部東京事業所システム技術センターエネル ギーシステム部。
特集 エネルギーマネジメントシステム︵EMS︶
特集
エネルギーマネジメント システム(EMS)まえがき
昨今
の
国内の
電力需要 家を
取り
巻くエネルギー
環境は
,
原子力発電設備の
再稼動が
不透明な
中,
燃料費の
急増を
背 景に
電力各社の
料金値上げが
相次いでいる。また,
従来レ ベルの
供給体制に
復帰する
ことは
当面望めない
中で
需給バ ランス
を
維持するためには,
省エネ
ルギー(
省エネ)
の
徹 底が
必要である。
しかし,
電力需要から
見た
大口需要 家については,
省エ ネ
活動の
継続的な
努力を
続けているものの,
電気料金の
値 上げが
改善力を
相殺している
状況にある。
一方
,
中小口需要 家については,
総合 的な
省エネの
要望は
強くなっているが,
電力消費が
小規模のため,
投資対効 果が
ネックに
な
り,エネルギー
管理の
強化,
省エネ
設備の
導入など
のエネルギーコスト
削減のための
設備 投資が
進ん でいない。
富士電機
は,これらの
課題や
ニーズに
対し
,
大口需要 家 向けエネルギーマネジメントシステム(
EMS:
Energy Management System)の
多数の
導入実績とエネルギー
管 理運用支援で
蓄積した
省エネ
分析ノウハウを
集約し,クラ ウド
技術を
活用した
EMSの
基盤技術の
開発を
進め
,
2012 年からエネルギー
管理支援サービスとして
提供を
開始した。
エネルギー管理のあるべき姿と EMS の活用
. エネルギー管理のあるべき姿
エネルギー
管理の
第一歩は
, “
どれくらいエネルギーを
消費しているか
?”
を
“
見える
化”
することである
。しか しながら,
一部の
電力の
大口需要 家を
除き
,
夏季・
冬季の
消費ピーク
時の
節電対策などをするための, “
今”
の
利用 状況の
把握にとどまっている。
今後
ますます
厳しくなるエネルギー
利用環境へ
柔軟に
対 応するためには,より
積極的なエネルギー
管理が
必要であ る
。このため,
次に
示す
点に
着目した
。
⒜ 上昇傾向
にあるエネルギーコストに
対する
継続的な
省コスト
対策の
推進⒝ 安定
しないエネルギー
供給に
対するリスクの
見極め と
対策の
事前準備の
実施
また,
このようなエネルギー
管理をする
には
,
次に
示す
分析を
可能とする
運用基盤の
整備が
必要である。
⑴
コスト
対策,
省エネ
観点での
分析⒜
エリア
別の
用途と
消費傾向の
把握によるピーク
電力 時間帯の
特定や
電力消費の
無駄・ロス
消費の
抽出 ⒝ 同一期間(
前日,
前週,
前季,
前年)の
比較による
省
エネ
活動の
緩みの
監視⒞
エネルギー
消費と
生産活動などの
因果分析による
仕 事の
実施順序の
見直し
⒟ 重点設備
の
効率監視による
運転パターンの
効率分析⒠ 老朽化
および
点検・
清掃不備によるロス
防止 ⑵ 停電・
節電時のリスク
観点での
分析⒜ 施設
,エリアおよび
設備の
重要度による
仕分け
⒝ 重要度が
高いエリア・
設備の
停電による
人的,
経済的被害
リスクの
分析⒞ 被害
リスクの
分析に
基づく
対策の
検討と
監視. EMS の活用
エネルギー
管理のあるべき
姿を
実現する
一つ
の
手段とし て,
EMSの
活用がある。
EMSは
,
日常のエネルギー
利用 状況(
供給と
消費)の
把握や
,
課題の
顕在化,
対策実 施時の
想定効果算出を
支援することで,エネルギーに
関する
情 報の
把握と
管理を
行う。
EMS
は,
次に
示す
装置で
構成される(
図) 。
クラウド型 EMS によるエネルギー管理支援サービス
東谷 直紀 AZUMAYA Naoki
Energy Management Support Service with Cloud-based EMS
国内
の
電力需要家を
取り
巻くエネルギー
環境において,
需給バランスや
利用コスト
面で
大きな
変化が
起きており,エネル ギー
管理の
強化,
省エネルギー(
省エネ)
設備の
導入などのエネルギーコスト
対策が
急務となっている。
富士電機
は,
大口需要家向け
EMSの
導入実績と,エネルギー
管理運用支援で
蓄積した
省エネ
分析ノウハウを
集約し,ク ラウド
技術を
活用した
共同利用型 EMSによるエネルギー
管理支援サービスの
提供を
開始した。
自社でのシステム
導入・
維 持・
管理が
不要なため,
中小口需要家における
EMS 導入の
促進が
期待できる。
In the energy environment surrounding customers of electrical power in Japan, major changes are underway in regards to the supply-demand balance and the cost of energy usage, and energy cost-reducing measures such as strengthening energy management and introducing energy-saving equipment are urgently needed.
With a proven track record for successfully installing EMSs at major customers of electrical power, Fuji Electric has aggregated energy-saving analysis know-how accumulated in energy management operational support, and has begun supplying an energy management support service based on a shared-use EMS that utilizes cloud technology. Because a company will not have to install, maintain or manage the system, the introduction of EMSs to small and medium sized power customers is expected to accelerate.