定まらない.そのため,i−1行目における下方向の統合エネルギーが計算できず,i−1行 目の統合エネルギーを求めることができない.そこで,次のような手順を用いて,動的計 画法を適用する.まず,左右方向の統合エネルギーの和をElr(r),上方向をEu(r),下方 向をEd(r)と置き,統合エネルギーを各接続方向の和E(r) =Elr(r) +Eu(r) +Ed(r)と して表す.i−1行目の統合画素r−mにおけるE(r−m)の計算を行う場合,Ed(r−m) はi−1行目の統合エネルギー計算時には計算できないため,この時点では,Elr(r−m) とEu(r−m)のみを計算する.Ed(r−m)の値は,i行目の統合処理によりrが生じた ときに定まるため,i行目のM(r)計算時にEd(r−m)を加算する.ここで,上下方向の 統合エネルギーはmによって異なるため,シームの接続方向がmの場合のEd(r−m) をEdm(r−m),Eu(r)をEmu(r)と表す.これらを用いると,M(r)は
M(r) =Elr(r) + min (Eum(r) +Edm(r−m) +M(r−m)) (6.11) と表すことができる.例えばm= (1,1)のとき,M(r)の計算に用いる統合エネルギー の位置関係は,図6.4のようになる.以上の手順により,動的計画法を用いた最適シーム の計算が可能となる.
6.3.3 画像拡大への応用
本項では,提案法を用いた画像拡大手法について述べる.画像拡大は,2.2.4項で述べ たシームカービングを用いた画像拡大法と似た手順で行う.まず,提案法を用いて,所望 の拡大幅と同じ幅だけ画像幅を縮小し,この時に選択されたシームを記録する.次に原画 像に対して,選択されたシームの要素を結合するのではなく,要素の間に画素を挿入す る.例えば,縮小処理においてriとriが統合された場合,riとri の間に,その平均値 を画素値とする新たな画素を挿入する.
また一定量以上の拡大を行う場合は,画像上重要な部分がシームとして複製されてオブ ジェクトの構造を壊すことを避けるために,一定量(提案法では拡大前の画像サイズの30
%)で拡大処理を一度打ち切り,拡大された画像に対して再び拡大処理を行う.以上によ り,提案法を用いた画像拡大を行う(図6.5参照).
(a)原画像 (b)従来法 (c)提案法 図6.5 原画像(a)の横幅を従来法(b)と提案法(c)を用いて2倍に拡大した結果.
り,距離が短いほどひずみが少ないリサイズ結果であることの目安となる.
BDW距離と最大BDW距離の結果をそれぞれ表6.1,表6.2に示す.これらの表に示 されるように,均一に画像をひずませるスケーリングは,極端なひずみが発生しないため 最大BDW距離は比較的短いが,BDW距離は長い場合が多い.一方でシームカービング をベースとしたリサイズ手法は,ひずみの発生を全体的に抑えたリサイズが行えている.
しかし,リサイズによる極端なひずみが発生することも多く,スケーリングに比べ最大 BDW距離が長い場合も見られる.そのような中でも提案法は,他の手法に比べ,多くの 画像においてBDW距離および最大BDW距離が短い.
次に,いくつかの画像のリサイズ結果から,提案法が有効に働く場合とそうでない場 合について考察を行う.図6.6,6.7,6.8,6.9,6.10,6.11に,リサイズ結果の一部を示 す.提案法は原画像の持つ接続関係を維持しようとするため,特にエッジのように隣接画 素との輝度差分が大きな領域において,他の手法に比べひずみの少なさが目立つ.提案法 を用いた画像(21)のリサイズ結果(図6.6)を見ると,画像全体にわたる複数の線は縮小 されているが,他の手法と比べ大きなひずみとして表れていない.これは,線の一部のみ を縮小し続けようとすると多くの統合エネルギーが必要となり,エネルギーを最小に抑え るために,結果的にほぼ均一に縮小されたためであると考えられる.図6.7に示されるよ うに,画像(13)におけるシームカービングをベースとした他の手法のリサイズ結果では,
画像中央の人物の背面が右下下がりから左下下がりに変化するという,視覚的な違和感が 強いひずみが表れた.一方で提案法は,そのような極端な変化が表れないリサイズ画像を 生成した.これは,エッジの方向を極端に変える縮小は,その統合エネルギーが非常に大 きくなるため,そのような縮小が抑制されるためであると考えられる.人間の視覚はエッ ジ領域に敏感であるため,エッジ領域の接続関係の変化は視覚的な違和感に繋がりやすい と考えられる.提案法は,特にエッジ領域について他の手法に比べひずみの少ないリサイ ズが可能であるため,視覚的な違和感を抑えたリサイズが行えている.
しかし提案法において,目立つひずみが発生する場合もみられた.画像(2)のリサイズ 結果(図6.10)に見られるように,シームカービングをベースとしたリサイズ手法ではひ ずみが多く生じ,スケーリングが最も短いBDW距離となった.これは,細かな輝度変化
表6.1 BDW距離[10−2]
Bi-cubic [93] [97] [100] 提案法
(1) 0.276(5) 0.167(4) 0.152(3) 0.136(2) 0.124(1) (2) 0.363(1) 0.485(5) 0.458(4) 0.396(3) 0.386(2) (3) 0.810(5) 0.762(4) 0.623(3) 0.385(1) 0.496(2) (4) 0.627(4) 0.778(5) 0.623(3) 0.511(1) 0.523(2) (5) 0.446(5) 0.264(3) 0.268(4) 0.251(2) 0.224(1) (6) 0.292(3) 0.415(5) 0.356(4) 0.181(2) 0.176(1) (7) 0.369(5) 0.336(4) 0.236(3) 0.223(1) 0.227(2) (8) 0.669(3) 1.35(5) 0.788(4) 0.519(1) 0.571(2) (9) 0.471(5) 0.275(4) 0.239(3) 0.214(2) 0.209(1) (10) 1.77(5) 1.66(3) 1.76(4) 1.62(2) 1.56(1) (11) 0.885(5) 0.866(4) 0.832(2) 0.861(3) 0.779(1) (12) 0.436(5) 0.352(4) 0.341(2) 0.341(2) 0.331(1) (13) 0.349(4) 0.357(5) 0.303(3) 0.273(2) 0.250(1) (14) 0.812(2) 0.968(5) 0.966(4) 0.895(3) 0.778(1) (15) 0.694(5) 0.367(3) 0.357(2) 0.408(4) 0.336(1) (16) 0.454(5) 0.399(4) 0.365(3) 0.349(2) 0.311(1) (17) 0.0934(5) 0.0718(4) 0.0574(2) 0.0581(3) 0.0373(1) (18) 0.315(5) 0.129(1) 0.151(2) 0.159(4) 0.154(3) (19) 0.514(2) 0.957(5) 0.717(4) 0.690(3) 0.455(1) (20) 0.424(5) 0.173(1) 0.193(2) 0.241(4) 0.197(3) (21) 0.694(5) 0.458(1) 0.513(2) 0.530(4) 0.517(3) (22) 0.984(5) 0.845(3) 0.863(4) 0.822(1) 0.828(2) (23) 0.718(4) 0.761(5) 0.628(3) 0.584(2) 0.575(1) (24) 1.22(5) 0.960(1) 1.16(4) 1.12(3) 1.03(2)
を持つ局所的な領域の影響であると考えられる.大域的な構造を保持した方がひずみは抑 えられるが,エネルギーが局所的な構造から定義されているため,局所的なひずみを抑え ることを優先し,大域的なひずみとなって表れた.また,画像(18)における提案法のリ サイズ結果(図6.10)では,不要な背景領域の縮小量が少なく,重要領域である前景の 人物をある程度削除している.画像(18)の背景のように細かな変化が続く領域では,統 合による接続関係のずれにより統合エネルギーが増加するため,大幅な縮小が起こりにく い.先ほどの例と同様に,局所的な構造の維持が優先されたため,ひずみとなって表れた と考えられる.大域的な構造や接続関係を考慮することで,これらのひずみを抑えたリサ
表6.2 最大BDW距離[10−1]
Bi-cubic [93] [97] [100] 提案法
(1) 1.18(5) 0.919(4) 0.422(1) 0.523(3) 0.422(1) (2) 0.968(1) 1.44(4) 1.56(5) 1.14(3) 1.02(2) (3) 1.78(3) 2.80(4) 2.82(5) 1.76(2) 1.54(1) (4) 0.942(2) 1.79(5) 1.29(4) 1.08(3) 0.935(1) (5) 1.37(3) 1.39(4) 1.41(5) 1.15(2) 0.861(1) (6) 0.709(1) 1.82(5) 1.34(4) 1.28(3) 1.07(2) (7) 1.11(4) 2.06(5) 0.785(3) 0.569(2) 0.444(1) (8) 1.76(1) 3.13(5) 2.56(4) 2.18(3) 1.84(2) (9) 1.16(5) 1.12(4) 0.955(3) 0.689(2) 0.556(1) (10) 2.00(3) 2.52(5) 2.18(4) 1.96(2) 1.55(1) (11) 1.61(2) 3.15(5) 1.73(3) 2.34(4) 1.49(1) (12) 1.27(1) 1.97(5) 1.81(3) 1.91(4) 1.35(2) (13) 1.29(2) 2.00(5) 1.62(4) 1.50(3) 1.18(1) (14) 2.35(1) 3.99(4) 3.84(3) 4.22(5) 3.16(2) (15) 3.35(5) 3.05(4) 1.65(2) 2.42(3) 1.64(1) (16) 1.16(5) 0.839(4) 0.723(3) 0.661(2) 0.519(1) (17) 1.01(4) 1.15(5) 0.459(2) 0.559(3) 0.264(1) (18) 1.42(5) 0.502(1) 0.514(2) 0.736(4) 0.526(3) (19) 1.37(3) 2.38(5) 1.17(2) 1.63(4) 0.977(1) (20) 0.917(3) 1.24(5) 0.778(2) 1.00(4) 0.621(1) (21) 1.31(4) 1.44(5) 1.19(2) 1.24(3) 1.07(1) (22) 1.90(3) 2.26(5) 1.90(3) 1.31(1) 1.32(2) (23) 1.59(3) 1.97(5) 1.75(4) 1.29(2) 1.05(1) (24) 1.50(2) 2.06(5) 1.54(3) 1.57(4) 1.32(1)
イズが行えると考えられ,これが今後の課題である.
6.5 まとめ
本章では,シームマージングと呼ばれる新たなリサイズ手法を提案し,これを用いて画 像の構造を保持したリサイズが行えることを示した.シームマージングは隣り合う画素を 統合することにより画像幅を縮小する.また,画素の接続関係を隣接画素間の輝度差で定 義し,原画像に対して最も接続関係の変化が少ない統合の組み合わせを求めることによ
り,統合する画素を決定する.提案法を用いることで,従来法に比べ,ひずみの少ないリ サイズ画像が得られた.さらに本論文では,接続関係により定まるエネルギーの逐次的解 法,動的計画法を用いた最適シームの計算方法および提案法を用いた画像拡大手法を示 した.
原画像 スケーリング
手法[93] 手法[97] 手法[100] 提案法
図6.6 各手法を用いたリサイズ結果の比較.使用画像は(21).
原画像 スケーリング
手法[93] 手法[97] 手法[100] 提案法
図6.7 各手法を用いたリサイズ結果の比較.使用画像は(13).
原画像 スケーリング
手法 [93] 手法 [97] 手法[100] 提案法
図6.8 各手法を用いたリサイズ結果の比較.使用画像は(11).
原画像 スケーリング
手法 [93] 手法 [97] 手法[100] 提案法
図6.9 各手法を用いたリサイズ結果の比較.使用画像は(5).
原画像 スケーリング
手法[93] 手法[97] 手法[100] 提案法
図6.10 各手法を用いたリサイズ結果の比較.使用画像は(2).
原画像 スケーリング
手法[93] 手法[97] 手法[100] 提案法
図6.11 各手法を用いたリサイズ結果の比較.使用画像は(18).