4.3 評価
4.3.3 サーバ利用方針ファイルの書式の実用性
実際のグリッド利用を想定した場合の,サーバ利用方針ファイルの書式の妥当性 を調べた.具体的には,産業技術総合研究所のグリッドアプリケーション長時間実 行実験[24]における予約ベースのサーバ利用方針を,本書式で記述した.
結果として,本書式で当該実験のサーバ利用方針を記述できることを確認した(付
録C).具体的には,11日間に対して4個の利用方針が定義され,全体で23行を要
した.
これにより,提案するサーバ利用方針ファイルの書式が,現実的なサーバ利用方 針を記述する書式として有用であるといえる.
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5 今後の課題
5.1 ライブラリ自動配置の枠組みにおける今後の課題
グリッドアプリケーションの自動配置の枠組みに関して,今後解決すべき課題を 短期的課題,中長期的な課題に分け,整理する.
1. 短期的な課題
(a) ライブラリのオンデマンド自動配置
(F-Omegaで想定するような)サーバが動的に決まる状況のために,サー バへのライブラリの配置がオンデマンドに,かつ自動的に行うことを可 能とする必要がある.このためには,動的にサーバを管理する機構と連 携するようにライブラリ自動配置システムを設計・実装する必要がある.
(b) ライブラリ可搬化・最適化の支援
不均質な計算機群の各々に対してライブラリを最適化するコストが大きい ため,ライブラリの可搬化と同時に最適化を支援する有用性の高いライブ ラリ配置システムを構築するべきである.実現方法の一つとして,Relis-G のライブラリ可搬化機能と,ソフトウェア自動チューニング機構のライブ ラリ最適化機能を併用することが考えられる.ソフトウェア自動チュー ニング機構は,ライブラリの性能関連パラメータ(ループのアンローリ ング段数等)に関して,計算機毎に最適と推定される値を自動的に設定 する[63][64].
(c) 自動分散化コンパイラOpenGR[65]との併用
自動分散化コンパイラOpenGRはプラグマ指示子で指定した関数呼び出
しをGridRPCに自動的に変換する.Relis-G のライブラリ自動配置シス
テムと併用することにより,ユーザはアプリケーションの開発から配置・
実行までを位置透過に行うことができ,グリッドの計算資源をより容易 に利用可能となると考えられる.
(d) 各種定義ファイルの作成支援
現時点の Relis-G では,ユーザがインストール環境定義ファイルを作成
しなければならないが,この作成を支援することで,配置における位置
5.1 ライブラリ自動配置の枠組みにおける今後の課題 54
透過性をさらに高めることが必要と考える.作成支援方法として,たと えば,グリッドポータルの資源管理機構を用いたインストール環境定義 ファイルの自動作成[54] が挙げられる.
2. 中長期的な課題
(a) 数千・数万ホストを対象とした評価
本論文では複数のクラスタ型計算機で構成されるグリッドで評価を行っ たが,PCグリッドのような数千〜数万台の計算機で構成されるグリッド においても枠組みの有効性を評価する必要がある.特に,ライブラリ自 動配置機能のスケーラビリティが課題となると考えられる.
(b) データ構造の不均質性への対処
本論文ではソースコード中のシステムライブラリAPI関数の呼び出しに 関する汎用的な自動可搬化方法を提案している.一方,計算機構成によっ てエンディアンや構造体のパディングといったデータ構造の不均質性があ る.API関数呼び出しの変更のみでこれらに対処することは通例困難で あるため,データ構造の不均質性を隠蔽するデータアクセスインタフェー スが別途必要である.
(c) サードパーティライブラリの自動配置
一般にソースコードが公開されないサードパーティライブラリについて もグリッドのサーバ上へ自動的に配置するシステムが必要である.実現方 法として,たとえば,配布されているバイナリパッケージを管理し,サー バ毎に合致するパッケージを自動的に配置するなどが考えられる.
(d) 一般ユーザのフィードバックに基づく改良
より実践的な有用性を高めるべく,著者以外の一般ユーザの意見に基づく 枠組みの改良が必要である.現在,Relis-Gのミドルウェア実装は公開さ れているが6,ダウンロード件数は少ない.ユーザを多く獲得し,フィー ドバック情報から課題の抽出を行うことが今後の課題である.
6http://sourceforge.net/projects/relis-g/