1975年,RichとBendan97)は,分光学的および磁気学的実験手法を用い,種々の高等植物組織においても,
哺乳動物肝等で詳しく研究されているチトクロムP−450をはじめとするミクロソ・−ム電子伝達系の成分が広範 に存在することを示した.−・方これと相前後して,高等植物の二次代謝系には,チトクロムP−450が関与して
−41−
いる反応が存在することが示唆されたそしてその後,つぎつぎと類似した数多くの研究結果が報告され,高等 植物におけるチトクロムP−450の存在意義が日増しに強くなってきている・・しかし,こ・れらの研究はミクロ
ソ・−ムを用いてチトクロムfし450の存在ないしその関与を示唆する程度にとどまっている‖ そして,これらの チトクロムP−450が関与していると思われる反応が,哺乳動物肝と同じような電子伝達系によって起こってい ると直接的に確証づけるまでにはいたっていない.
1979年,MadyasthaとCoscia39)は,Ca伽ranthusrose錐S幼苗のチトクロムPT450関与のgeraniolhydroxylase に着目し,まず高等植物としては初めて,NADPH−CytOChI・OmeCreductaseを,その租ミクロソ1−ム画分より界 面酒性剤で可溶化し,部分精製した.−・方,チトクロムP−450も同じ租ミクロソ・−・ム画分より可溶化し,
DEAE一セ)t/ロpスカラムクロマトグラフイ一により分画した(ただし,この画分はger・ami01hydroxylase活性を 僅かながら呈している)..さらに,クロロホルムーメタノ−ル(2:1,Ⅴ/v)で粗ミクロソ1−ム画分より脂質を抽 出し,これら3者を混合することにより,有意なgeranl01hydroxylase活性の出現を観察しているlこれは,高 等棉物におけるチトクロムP−450に関する研究としては画期的な再構成実験として注目に催する・・しかし,理 想的にはそれぞれ完全に精製した酵素標品が用いられるべきである・最近,東らはチューリップの球根より,電 気泳動的に単・一・なまでにチトクロムP−450を精製した,また,BonnerotらI17)はジャガイモより,ミクロソ−
ムの電子伝達系の構成成分の一つであるチトクロム∂5を電気泳動的に主要なバンドを呈するまでに精製した‖
前章までに述べたように,病傷害サツマイモ塊根組織には,基質特異性を異にする2種のチトクロムP−450 関与の水酸化酵素−ipomeamarone15−hydr・0Ⅹylas与とchmicacid4−hydroxylase−が存在し,それらは細胞 内局在性においても明白な違いを示し,前者はendoplasmicreticulumに,後者は未知のオルガネラ膜に局在して いることが示された∴ 高等相物の同一組織において,複数種の区別されるチトクロムP−450関与の水酸化酵素 が同時に検出されている例はまだ少なく,しかも局在性において相互に異なっている例はまだない..そこで,こ れらの水酸化反応の分子機構を明らかにし,ひいては両水酸化反応に関与している電子伝達系の相同相違性を明 らかにすることは高等植物におけるチトクロムト・450関与の水酸化酵素の研究に新しい方向性を与えるものと 考えられる.そこで,NADPH−CytOChromecreductaseとチトクロムP−450を分離精製し,その性質を明らかに することを試みた.,チトクロムP−450の精製については成功しなかったが,NADPH−CytOChromecr・eductaseは 電気泳動的に均一・なまでに精製することができた.本研究によって,サツマイモNADPH−CytOChromecreduc−
taseは,哺乳動物において詳しく研究されているNADPH−CytOChr・OmeP−450reductaseと酷似していることが示 された..例えば,この酵素は分子量が約6,000の膜結合ドメンと分子鼠が約75,000の親水性ドメンからなってい ることが示唆された.こうしたことから,本酵素は本来チトクロムP−450を還元する酵素であると判断され,
高等植物としては初めて,NADPH−CytOChromeP−450r・eductaseを完全精製したとみなすことができる‖
第2節 材料および実験方法
〔植物材料〕
名古屋大学附属農場で秋収穫されたサツマイモ塊根(Ipomoeabatatas,品種.農林1号)を使用直前まで13〜
150cで貯蔵しておいたり使用に際して,サツマイモ塊根を水で十分洗い,その乗組織から輪切り切片(厚さ5 m)を調製した.その切断面に第2章で述べたように黒斑病菌の内生分生子懸濁液を塗抹し,湿潤条件下300c で1日間インキエペ・−卜したこの輪切り切片より感染部を除去し,残りの非感染部を病害組織として使用し
た.
ー42−
〔ミクロソ・−ム画分の調製〕
病害組織(12Kg)●を04Mスクロース,1mMEDTA,10mMKCl,1%(w/v)アスコルビン酸および80gの ポリクラ−ルATを含んだ16Lの50mMTris−HCl緩衝液(pH85)中でプラスチック製のおろし金を用いてま 砕した.このま砕液を2垂のナイロンガ−ゼでこし,ろ液を300×gで10分間遠心した.その上清を100,000×g で1時間遠心し,沈殿を1mMEDTA(pH85)を含んだ04Mスクロl−ス溶液72mlに懸濁した(100K沈殿画
分)‖ 5mlの100K沈殿画分を1mMEI)TA(pH85)を含んだ3mlの70%,14mlの40%,14mlの60%(w/v)
スクロ・−ス溶液から成る不連続スクロ1−ス密度勾配にのせ,日立RPS27−2ロ一夕一にて24,000叩m,1時間遠 心した.16%と40%のスクロース溶液の境界領域の画分をミクロソ−ム画分として分取した以上の操作は2−
40cで行った.
〔チトクロムP−450の可溶化〕
08mlのミクロソーム画分(115mgprotein/ml)に,最終的にリン酸カリウム(pH75)が50rnM,DTTが1
mM,EDTAが1mM,グリセロ−ルが40%(v/v),コ1−ル酸カリウムが目的とする濃度になるよう加え,その容 量を2OmLに調整した.そして,40cで60分間放置した小 その後,1mMDTTと1mMEDTAを含む50mM7)
ン酸カリウム緩衝液(pH75)で2倍に希釈し,100,000×gで2時間遠心した.この上清を可層化画分とし,沈 殿は1mMDTT,1mMEDTAおよび20%(v/v)グ.)セロ−)t/を含む50mMリン酸カリウム緩衝液(pH75)4 mMに懸濁して不溶画分とした.
〔NAl)PH−CytOChromecreductaseの精製〕
ミクロソ1−ム画分を3倍に希釈し,最終的にTIis−HCl(pH77)が50mM,EDTAが1mM,DTTが1mM,グ
リセロ−ルが20%(Ⅴ/v),タンパク繋が35mg/mJになるように調整した.その後,最終濃度が2%(Ⅴ/v)にな るようにエマルゲン913を添加し,15分間マグネチ・yクスタ・−ラ・−で撹拝した.そして,100,000×gで1時間遠 心し,上晴を可溶化画分とした..
上清画分を,20%(v/v)グリセロl−)t/,1mMEDTA,01mMDTTと05%(v/v)エマルゲン913を含む 50mMTris−HCl横衝液(pH77)で前もって平衡化させておいたDEAE−セルロ1−ス(DE−52,Whatman)カラム
(4×105cm)にかけた.そのカラムを270mlの平衡化緩衝液と同じ緩衝液で洗い,03MKClを含んだ同じ緩 衝液で酵素を溶出し,活性画分を回収した(DEAE−セルロ1−スカラムからの溶出画分)
この溶出画分を,20%(v/v)グリセロ一)L/,002mMEDTA,01mMDTTおよび02%(v/v)エマルゲン913 を含む10mMリン酸カリウム横衝液(pH77)に対して透析し,続いて透析に使った緩衝液と同じ緩衝液で平 衡化させておいた2′,5′−ADP−セファロ1−ス4Bカラム(2×67cm)にかけた 酵素の溶出はYasukochiと Mastersl18)の方法に多少改変を加えて行った.まず,20%(v/v)グリセロ・−ル,04mMEDTA,01mMDTT および02%(Ⅴ/v)エマルゲン913を含む200mMリン酸カリウム薇衝液(pH77)200mJで洗い,次に平衡化耗 衝液150mLで洗った後,5mM2′−AMPを含んだ平衡化緩衝液で酵素を溶出した(アフィニティ1−カラムからの 溶出画分).
このアフィニティ1−カラムからの溶出画分を,20%(v/v)グリセロ1−ル,002mMEDTA,01mMDTT,01 MKClおよび02%(v/v)エマ)t/ゲン913を含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH77)で前もって平衡化させ ておいたセファデックスG−100カラム(09×53cm)にかけ,同じ緩衝液で酵素を溶出させた.
以上の操作は2−40cで行った.
〔100K沈殿画分の直線スクロ・−ス密度勾配遠心〕
100gの病害組織より調製した5mLの100K沈殿画分を1mMEDTA(pH85)を含んだ3mLの70%(w/v)ス
ー43 − クロ1−スクッションと16−・60%(w/v)までの直線スクロ−ス密度勾配よりなる溶液上にのせ,日立RPS27−2 ロ一夕−中で24,000rpm,4時間遠心した.遠心後その密度勾配を等量に分画した
以上の操作は2〜40cで行った.
〔ポリアクリルアミドゲル電気泳動〕
非変性条件下での電気泳動は,Da−鹿119)の方法に従い,01%(w/v)トリトン‰100を含んだ56%(w/v)
ポリアクリルアミドスラブゲル中で40cにて行った…電気泳動後,ゲルはクマシープリリアントブル1−Rによ るタンパク質染色またはFanとMasteIS120)の方法によって満性染色したすなわち,028mMNADPHと飽和 浪度の塩化ネオテトラゾリウムを含む56mMリン酸援衝液(pH77)中で室温にてインキエペ1−トし,滴性染 色した‖
01%(w/v)のSDSの存在下での電気泳動は,Laemmh121)の方法に従い,10%(w/v)ポ7)アクリルアミド
スラブゲル中で行った.電気泳動の前に,試料を2%(w/v)SDS,5%(w/v)メルカプトエタノ1−)t/と10%
(w/v)スクロ−スを含んだ65mMTris−HCl綾衝液(pH68)中で1000c,2分間加熱した 電気泳動後,ゲルは 上述のようにタンパク質染色した‖
〔NADPH−CytOChromecreductase活性の測定〕
NADPH−CytOChromecreductase活性は2章で述べたように測定した..
〔タンパク質の定蚤〕
タンパク質はLoⅥyら52)の方法に従い,BSAを標準タンパク質として定量した‖ タンパク質定量時生じる エマルゲン913による白濁を㌧抑えるために,SDSを最終濃度が05%(w/v)になるように添加して測定した.
〔チトクロムP−450の定量〕
3章で述べた方法により定量した. へ□■■
第3節 実験結果
〔ミクロソ−ム画分からのチトクロムP−450の可溶 化〕
病害サツマイモ塊根組織からのミクロソ・−ム画分を 用い,pH80での各種界面活性剤(コ1−ル酸,デオ キシコ−ル酸,ルブロールPX,エマルゲン108,810,
950,トリトンⅩ−100,N−101)によるチトクロムP−
450の可溶化状況を比較検討した非イオン性界面病 性剤であるルブロ1−ルPXとトリトンⅩ−100は,デ
オキシコ1−ル酸などのイオン性界面活性剤に比べて,
可溶化率でややよい結果をもたらした.しかし,哺乳 動物ではチトクロムP−450の可溶化によるコ−ル酸 が用いられており,高等植物でもデオキシコ・−ル酸や コ−ル酸が用いられていること,またコ・一ル酸のミセ ルは他に比して小さいことを考慮し,コ・−ル酸によっ て可溶化することとし,さらにその詳しい条件につい て検討した
.〇︶○等よじ己P月UOまU
0 1.00 2,.O Cholate(%,V/v)
Fig20SolubilizationofcytochromeP−450fr・OmSWeet potatorootmicrosomes・Fourmnlilitersofthe microsomalf【aCtionataproteinconcentr ationof ll5mg/mi血・Om diseased tissue was treated
with the indicated concentrations of potassium
cholateinthepresenceof40%(v/v)glycerolas describedin Materials and Methods, then centrifugedatlOO,000xg for2h小(△),prO−
tein in the supernatant in mg/mi;(○),
cytochromeP−450inthesupematantinpmoV
rnl;(●),CytOChromeP−450ina4−misuspen−
sionofthepr・eCipitateinpmol血;(ロ),SumOf cytochr・Ome P−450contentsinthe supernant