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はじめに

本章は、公共サインデザインとサインシステムの概要把握を目的としており、サイ ンコミュニケーションとして公共サインデザインとサインシステムについて述べる。

公共サインデザインにおいては、その目的と構成要素、種類と機能について理論的 整理を行う。

3.1. 公共サインデザイン

公共デザインとは、公共のあらゆる場所と情報などをデザインするものである。ま た、公共サインデザインとは、ものという意味ではなく情報そのものをデザインする ことで、目に見える実態が人間との関係の中で記号化され情報として適用させるが、

商業性が排除された公共の利益のみを提供する目的でデザインされているものだと言 える。

人類が最初に居住したと思われる洞窟で、今でも見ることができる壁画、遺跡地な どからみると、サインは先史時代から存在してきたと考えられる。

しかし、このような壁画などは、ある目的があるため描かれているものではなく、

単なる宗教であり、呪術的行為での意味が強かった。時間と共に象徴化されたサイン は、徐々に抽象的意味の表現では最早不可能だとの認識が持たれ始めた。また、社会 組織もより複雑化したため、象形文字が考案されることになった。

サインから発生した言語の使用が増加されてからその重要性は益々大きくなり、人 類の文明は、この文字の使用から始まったと言っても過言ではない。古代のサインが 持つ本来の意味が、現代に至って多少薄くなったが、実用的でより合理化された現代 のサインは、国際的コミュニケーションの手段としての役割が重要視されると共に活 用範囲と価値も一層高くなってきた。

英語の「Sign」とは、記号、符号、徴兆、配慮、信号、看板、掲示、標識、表紙な どと解釈される。しかし、英語の語源辞書では「Sign」はラテン語である「Signore」

又は「Signum」と説明されている。その意味は「to mark」、表、表紙、象徴若しくは シンボルをつくることだと説明されている。

Signal, Signature, Signify, Assign, Consign, Resign など語根である「Sign」を 共有する数多い単語がある。サインとは、人と人、人ともの、ものとものとの関係を 知らす、また指示する大衆コミュニケーションの手段として象徴的性格をあらわすコ ミュニケーション道具とも言える。すなわち、人間若しくは環境の理解とその行動を 補助する情報伝達手段をあらわすものである。

情報伝達能力などが落ちるサインは、コミュニケーションと視覚的に障がいを齎す ため、サインの設置環境との調和を考慮し、審美性を図り、曖昧性が排除された意味 での正しい認識のため、一貫性と客観性を保つことが必要である。

3.1.1. 目的

数多い情報から目的を達成するためには、その中で必要な情報のみを選ぶ必要があ る。現代人の欲求は、何よりも早めにその目的を達成することである。サインに関連

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して今まで数多く研究されてきたが、その中で、より良いサインをつくるための条件 として 1967 年ニューヨークの近代美術館で開催された交通標識会議で「明確性」、「最 小限の意味」、「標準性」、「反復性」などが議論された。勿論、交通標識は直接生 命とかかわりが強いため、移動する車の中で読まれる標識と駅の区域内でのサインは

、お互いに相違があると思われる。

空港若しくは地下鉄での内部の誘導サインにおいて、視認距離と文字の高さとの関 係は、日本のユニバーサルデザインの特集記事で(株)I DESIGN の代表取締役である 兒山啓一の発表による基準(図 3-1)によると、ユニバーサルデザインを考慮した研究 であることで高い意味を持っている。また、この条件は、サインが如何なる場面にお いても有効であり、基本的条件が充足されると言われている。また、国際航空運送協 会(IATA)は、国際空港において乗客と一般人の流れをよりスムーズに誘導するサイ ンの一般プリンシプルを(表 3-1)のように提案している。

このような条件としては、サインを機能的側面から分析すると「可読性」、「単純 性」、「統一性」、「連携性」の 4 つの一般原則がある。さらに、これに心理的要素 である「信頼感」、「美しさ」、「快適性」などが含まれることで、サイン環境とし ての満足感は高くなると考えられる。

サイン環境を総合的に整理するためには、視覚的情報に関するすべてにおいて検討 を行い、建築、照明、通信、各種設備などと密接な提携を持つ必要がある。

表示内容の決定と共に、表現方法についても広い視野での状況把握が重要である。

その為には(図 3-2)のような公共デザインを設置する側(情報を送る側)の明快な技 法が必要である。簡単に言えば、「何を」=(表示内容)、「どこに」=(設置場所)

、「どのような大きさと技法で」=(形状、構造、装置、調整)として表現するかであ る。公共サインを設置する際には、領域の問題、公共機関、施工主、デザイナー、制 作業者など、数多い関係者との調整が必要である。

(図 3-1) サインまで距離と文字高の基準

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(表 3-1) サインの一般プリンシプル

統一性 連携性

国際空港で使用するサインは、世界で通じるよう統一さ せることが必要。

方向指示のサインは、乗客と一般人が必要とするすべて の場所から情報を得ることができ、各サイン間には連続 性が必要。

単純性 可読性

サインは、可能な限り単純でなければならない。搭乗口 側の通路と搭乗口の方向は原則数字と補助的に矢印の み表示を行う。

サインにおいて、文字の大きさは読む位置と距離に関連 があるため、すべての条件もとで明確に判読が可能 な場 所へ設置すべきである。

(図 3-2) 公共デザインを 設置する側の明快な技法

3.1.2. 構成要素

サインを成立させる要素として、グラフィック、制作方式、施工場所及び方法など をあげることができる。具体的サインの計画においてこういうデザイン要件を検討す る必要がある。

1) グラフィック

サインは情報を視覚的に表示するためのものであるため、グラフィックは最も重要 な構成要素である。その要素を(表 3-1)のように分類することができる。

(表 3-2) グラフィック分類 1.表示される情報内容 2.文字

3.ピクトグラム(絵文字)

4.グラフィックシンボル

5.図表類 6.色彩 7.レイアウト 8.表示方式

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ここで最も重要なのは表示される情報の内容である。レイアウトが独創的で美しい 画面になっていても伝える内容が適切でない場合、サインの存在価値は薄くなってし まう。その為、これを考慮して書体、大きさ、背景色と文字色との関係などを設定す る必要がある。ピクトグラムは言語、文化の差を超え、情報を伝える場合又は、書体 としての判読ができない距離から視認したい場合などに活用される。

書体とピクトグラム、図表など、グラフィック要素をレイアウトする場合、視認性 と判読性に留意する必要がある。

2) 制作方式

サインはその周辺条件によって制作方式と仕様などが異なるため、器具の種類は数 多い。便宜上照明方式の違いによって(表 2-2)のように分類することができる。器具 形式を選ぶ際には必ず考慮すべき条件として、建築空間との適合性、サインとしての 注目性、安全性、補修性、経済性などがあげられる(表 3-2)。

(表 3-3) 器具形式

内照式サイン 照明器具を本体に入れて表示面を内部から照らす方式。

外照式サイン

器具の外部に照明器具を設置し、表面を照らす方式。

サイン本体に照明器具を設置する場合と近くの天井若しくは壁に設置する場合があ る。

無灯式サイン パネルなどを利用しつくることで、特別照明を必要としないもの。

最近では、薄型磁光式注 3-1)若しくは可変式表示方式注 3-2)の利用も増加している。

資料:田中直人,サイン環境のユニバーサルデザイン,学芸出版社,2002,p.18

3) 施工場所及び方法

施工場所による分類を(表 3-3)にまとめる。

(表 3-4) サインの施工場所

ハンガー型 天井からぶらさげる方式で、天井に直接設置する方式とペンダント型がある。

突出型 壁、柱などから通路方向へ突出させ設置する方式。

付着型 壁に付着する方式で埋込型、半埋込型、壁の外側に設置する型などがある。

自立型(スタンド型) 床若しくは路面上に設置する方式で固定型と可変型にわけることができる。

資料:田中直人,サイン環境のユニバーサルデザイン,学芸出版社,2002,p.18

ハンガー型と突出型は高い位置に設置されるため、遠距離からも視認性が高く誘導 サイン、位置サインなどで活用される場合が多い。自立型は表示面の高さによって使 用目的が異なる。サインは掲示場所によって効果が大きく異なり、利用者に見せられ

3-1) 液晶パネルなどを使用し、厚みを薄くした形式のサイン。

3-2) 表示面を分割し、伝える情報を変えることが可能なサイン。

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