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コンクリートの引張クリープ予測モデルの構築

 第3章で、引張持続応力がコンクリートの微視的構造に与える影響を実験的に 検討4−2)した結果、引張持続応力が作用することによって、コンクリートの細孔 構造は影響を受け、比較的粗大な毛細管空隙の容積が増大することを明らかにし た。さらに、その容積の増分と引張クリープひずみとの間には線形関係が存在す ることも示した。このことは、細孔構造の変化に適切な線形理論を適用すること によって引張クリープひずみを表現できる可能性があることを示している。第2 章で概観したように、引張クリープのメカニズムは、粗大な毛細管空隙を起点と

した微細ひび割れの発生および進展、セメントゲルの粘弾性挙動およびゲル空隙 から毛細管空隙への水分移動など様々な説が提唱されており、実際のメカニズム は、これら微視的現象の集積の結:果であると考えられる。しかしながら、引張ク リープひずみを予測するという工学的な目的における研究の方法論として、支配 的要因に着目することによって問題を単純化することができる。様々な微視的現 象どうしの連成はさらにこの研究を発展させた段階で行うこととして、本研究で は、引張クリープの主たるメカニズムとして、毛細管空隙を起点とした微細ひび 割れの発生および進展を取り扱うことにした。

 このような前提のもとに、本章においては、コンクリートの細孔構造をモデル 化し、線形破壊力学に基づいて引張持続応力が作用した場合の微細ひび割れの進 展によるひずみ増分の数学的表現を検討する。さらに、速度論の概念を用いて微 細ひび割れ進展則の定式化を試みる。つまり引張クリープひずみの予測は、微細 ひび割れの進展則とひずみ増分の算定式を組み合わせることにより行われる。

4.2 コンクリートの空隙構造のモデル化

 本研究においては、引張持続応力下の空隙を起点とした微細ひび割れの発生お よび進展を取り扱う。したがって、モデルは空隙の形状寸法および空間的分布を 考慮したものでなければならない。さらに、コンクリートを対象とした場合、水 和に伴う空隙の変化および微細ひび割れの進展をも取り込んだ形にする必要があ る。つまり、空隙の幾何学的モデルのみならずその時間的変化をモデル化するこ

とが要求されるわけである。しかし、幾何学的に、また時間的に複雑な変化を示 す空隙構造を忠実にモデル化することは現状ではきわめて困難である。従って、

以下のような仮定を設けた上で、第3章で得られた結果を踏まえて、できるだけ 数学的取扱いが簡単で単純なモデルを構築することにした。

(1)空隙構造は空間的に等方的である。

(2)空隙構造は空間的に均質である。

(3)水和の進行は時間の経過とともに空隙の数が減少することにより示され   る。

(4)コンクリート中に含水量勾配は存在しない。すなわち、含水状態に関し   ても等方的で均質である。

 このような仮定のもとに、コンクリートの空隙構造のモデル化として図一4.1 に示すような2次元板に空隙をモデル化したα1、α2およびα3の3種類の長軸半径 をもつ楕円状クラックがランダムな配向で分布している状態を考える。この2次 元板内における水和の進行に伴う楕円状クラックの減少、応力の作用によるある 長軸半径を持つ楕円状クラックからのひび割れの進展の平均的挙動の結果として 引張クリープひずみが観察されると考えたわけである。なお、3種類の楕円状ク

ラックは、第3章で行った引張持続応力下の細孔構造の挙動の観察の結果を参考 にして設けた。図一4.2にモデル化した領域の概念図を示す。α1は0.1μm以下の 毛細管空隙の代表的長軸半径、α2は引張持続応力の影響により細孔容積が増加す る細孔直径0.1〜5μmの毛細管空隙の代表的長軸半径、α3は細孔直径5μm以上の 材齢や引張持続応力の作用によって変化しないエントレインドエアと考えられる 空隙の代表的長軸半径をそれぞれ示している。なお、本論文においては添字匡

(=1,2,3)は、細孔直径によって種類分けした空隙の領域を表すものとする(図

一4.2)。

o︵︶︑

ρ口

  図一4.1 コンクリートの微細構造のモデル化

  0.03

 0.025      N−50−3−0.8

       N−50−3−1.2