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コストパフォーマンス

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第 6 章 考 察

6.1 コストパフォーマンス

PC-UNIXをホストコンピュータとするシステムの性能は、従来のワークステー

ションを用いたシステムと比較して引けをとるどころか優れていることが示され た。これは、コンピュータに搭載されるCPUの性能を比較しても同様のことがい える。図6.1にパーソナルコンピュータに搭載されるIntel CPUとワークステー ションに搭載されるSPARC CPUの性能の推移を示した[1]。ここ最近のIntel

CPUは、SPARCCPUとほぼ同等の性能を有している。

Intelのx86CPUは、モトローラの68000CPUなどと共にCISCプロセッ サの典型的なものとして知られている[30]。しかし、現在パーソナルコンピュータ の向けCPUの主力となっているPentiumPentiumPROプロセッサの内部構造 は、RISCプロセッサの技術を採り入れ、処理能力を向上させている[28][31]

Intelの32bitマイクロプロセッサi386のアーキテクチャの流れをくむ第5世代 プロセッサPentiumは、現在のRISCプロセッサは必ず採用しているパイプライ ンとスーパースケーラの2つの技術を導入している。パイプラインとはいわば工場 のベルトコンベアのようなもので、命令の実行を段階的に分けそれぞれの工程(ス テージ)を並行動作させる構造である。命令実行をパイプライン化することにより それぞれのステージは単純になり、ステージを1クロック刻みで動作させることが できるようになるとともに、トランジスタなどの部品点数が減少し結果的に高ク ロックで動作させることができる。もう一つの技術スーパースケーラは、CPU内 部に複数のパイプラインを作り、並行して動作させることで一度に複数の命令の実 行を可能とする仕組みのことであり、i486と内部的に大きく違うところである。

Pentiumでは、整数演算、浮動小数点演算、すべての命令を行うUパイプライン

と整数演算のみを行う パイプラインの 本のパイプラインを実装しており、同

Chapter 6.考 察

SP ECi nt 92

Year SPARC CPU

Intel CPU

0

1996 1995

1994 1993

1992 100 200 300 400

i486

PentiumPRO

Pentium UltraSPARC

SuperSPARC

μSPARC

6.1: IntelCPUSPARCCPUの性能推移

時に複数の命令をパイプラインに投入し、1クロックで2つ命令を実行することが できる。さらに、パイプラインに効率よくスムーズに命令を流すために、メモリ から命令をスムーズに取り込む機構が必要であり、Pentiumでは2ウェイセット アソシエティブと呼ばれる機構を持つL1キャッシュメモリを命令用、データ用に それぞれ8KByte内蔵し、外部へのデータバス幅を64bitにしている。L1キャッ シュメモリは、CPUのクロックと同じ速度で動作するため、L1キャッシュメモ リにあるデータなら、非常に高速にCPU内部に取り込むことが可能であり、デー タキャッシュとメモリキャッシュが独立であるのでデータアクセス中にも命令を フェッチできる。

Intelの第6世代プロセッサの位置づけとなるPentiumPROは、x86命令を内 部で1個から複数のRISCふう固定長命令にデコードしRISCコアで実行してお り、構造上でいえばRISCプロセッサといえる。このような機構を実現するため、

Pentium同様パイプラインとスーパースケーラを導入しているが、PentiumPRO のパイプラインは、Pentiumの単純に仕分けされた5つのステージで構成するパ イプラインと比べると、命令変換部分も含め14ステージという長大なものにな り、汎用パイプラインが1本と命令実行に制限のある2本の計3本が実装されて

いる。PentiumPROのスーパースケーラでは、複数のパイプラインで同時に連続

して命令を実行させるため、動的な命令の解析を行っている。これはアウトオブ オーダーと呼ばれる方式で、プログラムを実行時に動的な命令で依存性を解析し、

6.1. コストパフォーマンス 先に実行できる命令を順次実行する1。このような方式をとるにはRISCのような 単純命令のほうが効率がいいのである。さらに、PentiumPROは処理速度の向上 を図りL2キャッシュメモリ(256KByteもしくは512KByte)をも内蔵する。L2 キャッシュメモリは4ウェイセットアソシエティブという効率が更に向上した機構 を持ち、CPUと専用バスで接続されるため、外部バスインターフェイスにアクセ ス中(例えばメインメモリアクセス)であっても、L2キャッシュ上にあるデータ にL1キャッシュメモリと同様高速にアクセスできる。

このようにして処理能力を高めているIntelCPUは、ワークステーションに搭載 されるRISCプロセッサと対等なものとなった。つまり、パーソナルコンピュータ とワークステーションの性能は、ほぼ互角またはそれ以上ということになる。

6.1に、 本 デー タ 収 集 シ ス テ ム に 用 い て い るIBM PC互 換 機 (

GATE-WAY2000)と、実際のデータ収集システムに用いられているVMEボードコン

ピュータ(FOURCE CPU-5CE)の内部仕様と価格を示す。これからわかること は、IBM PC互換機の性能はハードウェア的にみて優れており、価格を比較する とIBM PC互換機の価格はVMEボードコンピュータに比べ、半分以下であり周 辺機器等の価格も考慮するとそれ以上に低く抑えられている。これより、パーソナ ルコンピュータがいかにコストパフォーマンスに優れているがわかる。

Computer GATEWAY2000 FOURCE CPU-5CE

CPU(CPU Clock) Pentium(150MHz) SPARC(85MHz)

SPEC int92 181 64

SPEC fp92 125 54

メインメモリ 64MB 32MB

拡張バス(スピード) ISA (8MB/s) S-Bus(66MB/s)

PCI (133MB/s)

価格 35万円 96万円+α(周辺機器)

6.1: GATEWAY2000FOURCECPU-5CEの内部仕様と価格

CPUの向上にともない、一つのCPUアーキテクチャーは多くのOSにサポー トされるようになってきている。IntelアーキテクチャーをサポートするOSの代 表的なものとして、DOSWindows95NT、さらにLinux386BSDSCO

UNIXなどのUNIXOSと多くのものをあげることができる。この中で本データ

1

Pentiumのスーパースケーラはインオーダと呼ばれプログラムに記述された順番に命令をパイ プラインに投入する。

Chapter 6.考 察

収集システムのOSとしてLinuxを採用した理由はその性能にある。

Linuxの性 能を み るた めにDAQBENCH[21]評 価 プロ グラ ムを 実行 し、現 在 データ収集システムに使用されているUNIXとの比較を行った。図6.2がその結果 であり、メモリコピー、コンテクストスイッチサイクルのスピードを棒グラフに示 したものである。

0 10 20 30 40 50

Linux 386BSD HP‑RT ULTRIX SunOS

Me mor y Co py [ MB/ s]

0 5 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 5 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 2 5 0 0 0 0 3 0 0 0 0 0

Co nte xt S witc h [C ycl e/s ]

M e m o r y   C o p y C o n t e x t   S w i t c h

6.2: システムのメモリコピーとコンテクストスイッチ性能

Linuxは、他のUNIX OSと比較してコンテクストスイッチの処理スピードが非 常に早いことがわかる。コンテクストスイッチとは、実行プロセスを切替える際、

プロセスが持っている状態(コンテクスト)を、現在実行中のものから次に実行す るものへ切替える処理のことで、これが速く行われるということは、プロセス実行 のオーバヘッドが短縮されることを意味する。すなわち、コンテクストスイッチの 処理が速いOSは、効率のよいOSであるといえる。

また、Linuxと同じようにIBM PC互換機上で動作する386BSDを、Linuxと 同じハードウェア条件でテストを行った。Linux386BSDを比較するとメモリ コピーの速度はあまり変わらないが、コンテクストスイッチの処理スピードは、

Linuxが386BSDの約4倍速いという結果が得られた。

このような結果からLinuxは優れたOSであると判断し、本システムのOSとし

6.1. コストパフォーマンス て採用した。また、Linuxには次のような利点をあげることができる。

資産の継承

UNIX互換のOSであるので、これまでUNIXワークステーションを用い たシステムで培われた技術や多くのソフトウェア資産を継承することができ る。

フリーソフトである

Linuxは、GNUパブリックライセンスに従って配布されているフリーソ フトウエアであり、無償で利用することができる。また、ソースコードも自 由に入手することができるため、プログラム開発においてそれから得られる 情報は有益である。

関連した文書、書籍が豊富である

Linuxはフリーソフトであるため、それを取り巻く環境は非常にオープン

である。ユーザーは世界中に広がっており、多くのボランティアグループに よって日夜開発が行われ、多くの情報が交換されている。これらの情報はド キュメントとしてまとめられており、情報の入手が容易である。また最近で は書籍も多く発行されている。

豊富なアプリケーションが利用できる

Linuxは、多くのフリーソフトと共にパッケージングされた形で配布され

るのが普通であり、インストールするとすぐにシステムを運用できる環境が 整う。プログラム開発、文書処理などの多くのツールも移植されており、豊 富なアプリケーションを利用することができる。

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