第3章 学生への質問紙調査を元にしたクロス・トレーニング・プログラムの
第2節 調査結果の考察
本節では,前節の調査結果を踏まえ,考察を述べる。
1.世代間交流への支援について肯定的な認識
CTP
参加者と⾮参加者の認識の違いとして, 表5 に⽰した結果の中にその相違が⾒られ た。その相違とは,学⽣の姿の捉え⽅であった。例えば,
CTP参加者の場合,「同じ⽬線に なるように座って話している学⽣の姿勢がいいな」や「学⽣が⼦どもと⾼齢者のどちらに も⾔葉をかけ,両者を結び付ける役割をしている」等,世代間交流を⽀援する姿に対して 肯定的な捉え⽅が確認された。
CTP⾮参加者の場合は,「学⽣は,⼦どもや⾼齢者の⽅の⽬
線に⽴って語りかけるように接している」というように肯定的に受け⽌める記述もある⼀
⽅で,「学⽣はそれに気付いて話しているのかなと少し残念に思う」や「⼦どもと⾼齢者両 者といる時に,慣れていない感じ(学⽣の緊張が分かる)」という否定的な捉え⽅が確認で きた。以上のように,世代間交流を⽀援する学⽣の姿を肯定的に捉えるのか,批判的に捉 えるのかという認識の差が,CTP 参加の有無によって⽣じた可能性が考えられる。また,
否定的な捉え⽅に関しては,抽出語として上位には出てきていないが, 「どちらか⽚⽅ばか りになっていた」や「バラバラな感じが⾒られていた」という記述も⾒られた。
また,世代間交流への⽀援として「関わり」についてまとめた 表6 においても,CTP 参 加者と⾮参加者に認識の差が認められた。それは「⼦ども−⾼齢者−学⽣」間における学⽣
の姿に関する読み取り⽅の違いであった。例えば,CTP 参加者の場合,抽出語「⼀緒」に
⾒られた⼦どもの主体的な動きとそれに関連する⾼齢者と学⽣の姿や抽出語「教える」に
⾒られた⾼齢者と⼦どもの相互に教え合う姿等のように対象者を⼀体として捉える記述の
傾向に特徴付けられる。また⼀⽅で,CTP ⾮参加者の場合は,抽出語に関する記述例の多
くが「学⽣」を主語としたものであり,「⼦どもと⾼齢者」の姿と「学⽣」の姿を分けて捉
える記述の傾向に特徴付けられる。これらの結果は, 図 1-1 , 1-2 において確認された傾向
とも⼀致しており,対象者を捉える視点や認識の差が,CTP 参加の有無によって⽣じた可
能性が考えられる。つまりこの視点や認識の差は,活動(交流)を通して「⼦ども−⾼齢
者−学⽣」のまとまりが⾒えているか,⾒えていないかという,世代間の捉え⽅というよ
第3章 第2節
りも多世代間の捉え⽅の相違であると考えられる。
2.高齢者への支援に対する肯定的な認識
⾼齢者への⽀援に対する肯定的な認識に関しては,
CTP参加者のみに認められた「教材 を通して世代間を捉える視点と評価」の中に窺うことができる。 表8 の抽出語「話す・⽬
線・合わせる」の記述例では「⾼齢者と⼦どもの⽬線の⾼さに合わせて,ジェスチャーも 交えながら話していた」,「⾼齢者と同じ⽬線になるように座って話している学⽣の姿勢」
等のように世代間交流活動中における学⽣の⽀援の姿に対して肯定的な認識が窺える。
また, 表5 における学⽣の姿を通した⾼齢者への⽀援に対する認識に関しても,前述と 同様に
CTP参加者は肯定的に捉えている。さらに,「学⽣が⼦どもと⾼齢者どちらにも⾔
葉を掛け,両者を結びつける役割をしている」という記述にも⾒られるように,活動の中 で両者を繋ぐため,⾼齢者に対してどのような⽀援が必要なのかという具体的な⽅策が分 かった上で学⽣の姿を捉えていることが考えられる。
つまり
CTP参加者のみが捉えた「⾼齢者への⽀援」に対する肯定的な認識は,
CTPにお いて実際に⾼齢者と接し,世代間交流活動を実施運営した「経験知」から,活動の⽂脈に 沿った⽀援の在り⽅が理解できるということに影響していることが考えられる。
3.高齢者に対して親しみやすい印象
量的分析の結果から,⾼齢者観に関する質問項⽬の内,因⼦1「親しみやすさ」の「か わいい」「尊敬できる」「あたたかい」において,CTP の参加者は⾮参加者よりも得点が⾼
かった。つまり,CTP の参加によって,⾼齢者に対して親しみやすいという印象を抱いた 可能性が⽰唆された。さらに, 表6 の⾼齢者が⼦どもに教える様⼦や 表7 の⾼齢者が学⽣
に説明をする様⼦の記述からは,⾼齢者を⽀援されるだけの存在としては捉えておらず,
むしろプロダクティブ
11な有⽤な存在として捉えているように⾒受けられる。このような 捉え⽅は
CTP⾮参加者には確認できず,
CTP参加者のみに⾒られる傾向であった。このよ うな傾向に関しては,吉津ら(2012)
12の結果とも⼀致しており,CTP で実際に⾼齢者と
11
ここで使⽤する「プロダクティブ」とは,R.バトラーによって提唱されたプロダクティブ・エイジングで いうところの「⾼齢者は⽣産的(プロダクティブ)で有⽤な存在である」という考え⽅を⽤いている。
12
吉津晶⼦・溝邊和成・⽥⽖宏⼆,2012,前掲
関わる中で得られた「正の⾼齢者観」と⾔える。つまり,CTP の参加経験の中で得られた
⾼齢者⽀援の「経験知」が,⾼齢者の捉え⽅にも影響を及ぼした可能性が考えられる。
4.総括
以上の考察を元に,
CTPが保育者養成課程に所属する学⽣の世代間交流に関する認識に 及ぼす影響について総括する。
量的分析によって,(1)世代間交流への⽀援について肯定的な認識,(2)⾼齢者への⽀
援に対する肯定的な認識,(3)⾼齢者に対して親しみやすい印象,以上の3点について,
CTP
が学⽣の世代間交流に関する認識に影響を及ぼす可能性が導出された。さらに質的分 析によって,これらに関する学⽣の具体的な認識が⽰された。
(1)世代間交流への⽀援についての肯定的な認識に関しては,CTP に参加した学⽣は世 代間交流を⽀援する学⽣の姿を肯定的に捉え, 他⽅で⾮参加の学⽣は批判的に捉えていた。
さらに,参加学⽣は「⼦ども−⾼齢者」という世代間だけではなく,「⼦ども−⾼齢者−学
⽣」という多世代のまとまりを捉えていた。
(2)⾼齢者への⽀援に対する肯定的な認識に関しては, CTP 参加者のみにおいて活動の 具体を捉えたり,活動の⽂脈に沿った⽀援の記述が⾒られたことから,
CTPにおいて⾼齢 者と接し,世代間交流活動を実施運営した「経験知」が影響している可能性が⽰唆された。
(3)⾼齢者に対する親しみやすい印象に関しては,CTP で実際に⾼齢者と関わる中で得 られた「正の⾼齢者観」である可能性が⽰唆された。
以上の3点が,CTP が学⽣の世代間交流に関する認識に影響を及ぼしたと考えられる。
さらに本研究で明らかになったのが, 図 3-1 , 3-2 に⾒られた多⾓的な視点をもって活 動全体の中で「⼦ども−⾼齢者−学⽣」と「教材」を有機的に捉える⼒を養う可能性である。
この可能性に関しては,世代間交流における保育者の専⾨性と合わせた今後の検討課題で
あると捉えている。
ドキュメント内
世代間交流実習プログラムの導入による保育者養成のモデル構築
(ページ 141-144)