前章では、クラウド・コンピューティングについて先行研究サーベイを行い、クラウド・
コンピューティングのサービスの市場動向や、その優位性及び各国の導入動向について明 らかにした。本章では、そのクラウド・コンピューティングのサービスが実際の企業でど の程度利用されているのか、『情報処理実態調査』の公表データを用いて明らかにしていく。
まず、第1節では、時系列に企業の情報処理関係支出総額の推移をみる。第2節では、ク ラウド・コンピューティングの利用実態、第3節ではクラウド・コンピューティングの利 用形態、第4節では、クラウド・コンピューティングのサービス利用業務領域、第5節で は、情報処理関係支出総額に占めるクラウド・コンピューティング関連費用を分析する。
この後、第6節では、クラウド・コンピューティング利用のメリット、第7節では、クラ ウド・コンピューティングのサービス利用について今後の予定についてみていく。
第1節 情報処理関係支出総額の推移
日本企業のクラウド・コンピューティングのサービス利用実態をみるための基礎的な情 報整理として、企業の情報処理関連支出の推移をみてみよう。
『情報処理実態調査』では、企業の情報処理関係支出を、以下の用途別に分類している。
① ハードウェア関連支出
コンピュータ・周辺機器関連支出
電子計算機本体(汎用コンピュータ、パソコン、サーバなど)、印刷装置(プリンター、
プロッタなど)、外部記憶装置(FDドライブ、DVD-Rドライブ、DVD-RWドライブなど)、 表示装置(ディスプレイなど)、その他電子計算機付属装置(スキャナ、OCR、ハブ、ル ータ、端末装置など)が含まれる。
通信機器関連支出
有線電機通信機器(固定電話機、FAX、交換機など)、無線電機通信機器(携帯電話機、
携帯情報端末など)、ラジオ・テレビ受信機、ビデオ機器、デジタルカメラ、電気音響機器
(ICレコーダ、マイクなど)が含まれる。
- 32 - その他の情報機器関連支出
コピー機(複合機を除く)、その他の事務用機械、電子応用装置、電気計測器、カメラ(デ ジタルカメラ除く)、その他の光学機械、理化学機械器具、分析機、試験機、計量器、測定 器、医療用機械器具が含まれる。
② ソフトウェア関連支出
パッケージソフトや委託開発ソフト関連の支出の他、自社開発ソフト関連の支出、無形 固定資産増加額として計上されないソフトウェアの買い取り額、ソフトウェアのレンタル
/リース料、システムの機能変更・拡張等の改善費用、情報システムの企画・設計コンサ ルタント料が含まれる。
③ サービス関連支出
データ作成/入力費、教育・訓練費用、運用保守委託料、外部派遣要員人件費、処理サ ービス料(例、SaaS・ASP使用料など)が含まれる。
④ その他支出
コンピュータに接続されている通信回線の年間使用料、情報システム部門等の社内要員 人件費、コンピュータ室の借室料又は償却費、電力料、消耗品費、輸送費、共益費又は補 修費、データセンターの利用料が含まれる。
平成18年度から平成25年度までの情報処理関連支出総額の推移をみたのが図 3-1(大 規模企業)と図 3-2(中小規模企業)である。なお、図にある1社当たりの情報処理関係 支出総額は、回答があった企業の情報処理関係支出総額の平均値を表記している。情報処 理関係支出総額の百万円単位、ハードウェア関連支出、ソフトウェア関連支出、サービス 関連支出、その他支出については、それぞれ情報処理関係支出総額に占める割合をパーセ ント単位で示している。
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図 3-1 1社当たり情報処理関係支出総額の推移とその内訳(大規模企業)
出所)経済産業省『情報処理実態調査』の公表データから筆者作成
図 3-2 1社当たり情報処理関係支出総額の推移とその内訳(中小規模企業)
出所)経済産業省『情報処理実態調査』の公表データから筆者作成
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① 大規模企業
まず、大規模企業をみると、1社当たりの情報処理関係支出総額は、平成20年度の2,233 百万円をピークに、平成21年度は減少をしており、平成25年度では1,565百万円となっ ている。ハードウェア関連支出は、平成 18 年度は情報処理関係支出総額に占める割合が
21.0%であり、平成 19 年度は 23.0%となったが、その年度をピークに割合は減少傾向に
推移し、平成25年度では18.1%と7年間で2.0%減少している。ソフトウェア関連支出
は、平成18年度は31.6%であり、平成20年度は37.3%まで増加したものの、平成23年
度は35.7%から減少に転じ、平成25年度は31.3%となっている。一方、サービス関連支
出は、平成18年度では情報処理関係支出総額に占める割合が30.0%であったが、緩やか ではあるものの増加傾向を示し、平成25年度では33.2%と7年間で 3.2%ポイント増加 している。
② 中小規模企業
つぎに、中小規模企業をみると、1社当たりの情報処理関係支出総額は、平成20年度の 91.7百万円をピークに、平成21年度から減少傾向が続いており、平成25年度は42.6百 万円となっている。
ハードウェア関連支出は、平成18年度では情報処理関係支出総額に占める割合が26.6%
であり、増加傾向を示し平成22 年度は 41.1%まで達した。その後その割合は減少の一途 をたどり、平成25 年度では23.9%にまで減少している。ソフトウェア関連支出は、平成
19年度では14.8%であったがその後増加傾向をたどり、平成21年度では24.0%まで達し
た。その後は増加及び減少を繰り返し、平成 25年度は22.0%となっている。一方、サー ビス関連支出は、平成18年度では、情報処理関係支出総額に占める割合が26.4%であり、
平成21年度では21.6%にまで減少したものの、その後増加傾向に推移し、平成25年度で
は38.5%にまで達している。
大規模企業と中小規模企業を比較すると、大規模企業、中小規模企業とも情報処理関係 支出総額は年度によって増減はあるものの、減少傾向が続いている。
ハードウェア関連支出では、いずれの年度においても大規模企業よりも中小規模企業の ほうが情報処理関連支出総額に占める割合が高く、平成 22 年度あたりから情報処理関連
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支出総額に占める割合は減少傾向である。ソフトウェア関連支出では、いずれの年度にお いても大規模企業のほうが中小規模企業よりも情報処理関連支出総額に占める割合が高い。
サービス関連支出では、大規模企業は平成18年度の30.0%から平成25年度にかけて、緩 やかに増加傾向を示しているが、中小規模企業は平成 22年度の 26.7%から増加傾向が続 いている。また平成 24 年度の情報処理関係支出総額に占めるサービス関連支出の割合は 大規模企業で32.6%、中小規模企業で 37.9%、平成 25年度の情報処理関係支出総額に占 めるサービス関連支出の割合は大規模企業で33.2%、中小規模企業で38.5%となり、情報 処理関係支出総額に占める割合が中小規模企業のほうが大きくなっている。これは中小規 模企業において、急速にITのサービス導入が進んでいることがわかる。
第2節 クラウド・コンピューティング利用実態
表 3-1 は、クラウド・コンピューティングのサービスを利用している企業を総従業者規 模別にみたものであり、表3-1は、その集計対象企業の分布である。クラウド・コンピュ ーティングの利用状況についての設問は平成21年度の調査から始まっており、クラウド・
コンピューティングを利用するためにサービス提供事業者など外部への支払いが発生した かどうかを答えさせる質問がある。ここでは、費用が発生したと回答した企業はクラウド・
コンピューティングのサービスを利用した企業と見なして分析を進めていく。なお、平成 21年度以前はSaaSの利用状況についての設問である。
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表3-1 集計対象企業の分布
表3-2 クラウド・コンピューティングのサービス利用企業の割合
注) 上段は、クラウド・コンピューティングのサービスを利用している企業の数を表し、下段は、上段の利用 している企業数を表3-1の集計対象企業数で割ったものを表している
出所)経済産業省『情報処理実態調査』の公表データから筆者作成
① 大規模企業
まず、大規模企業をみると、クラウド・コンピューティングのサービス利用企業の割合
は、平成18年度は7.7%であったが、毎年その割合は増加し、平成25年度は44.9%と集
計対象企業の半数近くの企業がクラウド・コンピューティングのサービスを利用しており、
クラウド・コンピューティングのサービスを利用している企業は7年間で37.2%も増加し ている。
② 中小規模企業
つぎに、中小規模企業をみると、クラウド・コンピューティングのサービス利用企業の 割合は、平成18年度は5.6%であったが、毎年その割合は増加し、平成25年度は24.9%
の企業がクラウド・コンピューティングのサービスを利用しており、クラウド・コンピュ ーティングのサービスを利用している企業は7年間で19.3%も増加している。
大規模企業と中小規模企業のクラウド・コンピューティングのサービス利用企業割合を、
カイ二乗検定を用いて統計的に検定した結果、いずれの調査年度においても1%水準で統 計的に有意差が認められた。
平成18年度から平成25年度にかけて、クラウド・コンピューティングのサービスの利
総従業者規模 平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成21年度 平成22年度 平成23年度 平成24年度 平成25年度 大規模企業(301人~) 1,911 2,161 2,193 2,190 2,218 2,274 2,224 2,527 中小規模企業(~300人) 2,180 2,319 2,622 2,542 2,375 2,501 2,447 2,387
全体 4,091 4,480 4,815 4,732 4,593 4,775 2,224 2,527
総従業者規模
カイ二乗値 7.631 *** 14.362 *** 19.673 *** 88.434 *** 119.305 *** 157.279 *** 268.945 *** 214.992 ***
大規模企業(301人~)
中小規模企業(~300人) 全体
平成25年度 平成24年度
平成23年度 平成22年度
平成21年度 平成20年度
平成19年度 平成18年度
8.4%
405 6.8%
178 10.4%
227
7.1%
320 5.7%
133 8.7%
187
6.6%
268 5.6%
121 7.7%
147 1,135
9.7%
461 6.0%
152 14.1%
309
16.0%
734 10.3%
244 22.1%
490
35.2%
1,730 24.9%
595 44.9%
675
28.2%
1,319 17.9%
439 39.6%
880
21.8%
1,042 14.7%
367 29.7%