作製と評価
3-1 緒言
前 章 で は 、 人 工 網 膜 の 基 本 的 な 構 成 と 視 覚 再 生 の 原 理 に つ い て 述 べ 、 従 来 か ら 提 案 さ れ て き た 人 工 網 膜 に つ い て 説 明 し た 。 そ し て 、 現 在 我 々 が 研 究 開 発 を 推 進 し て い る 3 次 元 積 層 人 工 網 膜 チ ッ プ を 用 い た 完 全 埋 め 込 み 型 人 工 網 膜 の 構 成 に つ い て 述 べ た 。 前 章 で 紹 介 し た ど の 人 工 網 膜 に お い て も 、 残 存 す る 網 膜 細 胞 を 適 切 に 電 流 刺 激 す る こ と が 非 常 に 重 要 と な る 。 し か し な が ら 、 人 工 網 膜 で 用 い ら れ る 刺 激 電 極 は 直 径 が 100 µm以 下 と 非 常 に 小 さ い た め 生 体 内 で 長 期 的 に 安 全 な 刺 激 を 行 う こ と が 難 し い 。
本 章 で は 、 上 記 の 問 題 を 解 決 す る た め に 従 来 の 人 工 網 膜 用 刺 激 電 極 に 比 べ 低 イ ン ピ ー ダ ン ス か つ 高 電 荷 供 給 能 力 を 有 す る 刺 激 電 極 付 き フ レ キ シ ブ ル ケ ー ブ ル の 作 製 と 評 価 に つ い て 述 べ る 。
3-2 人 工 網 膜 に お け る し き い 値 電 荷 密 度 と 刺 激 電 極 材 料 の検討
前 節 で 述 べ た 我 々 の 3 次 元 積 層 人 工 網 膜 チ ッ プ を 用 い た 完 全 埋 め 込 み 型 人 工 網 膜 を 実 現 す る た め に は 、 微 細 化 し た 刺 激 電 極 を 高 密 度 に 配 置 す る 必 要 が あ る 。 Humayun ら は 32×32 ピ ク セ ル で 視 野 角 10 度 の 場 合 、 人 の 顔 を 認 識 で き る 確 率 は 80 %以 上 で あ る と 報 告 し て い る[2-1]。 人 工 網 膜 の 埋 め 込 み に 最 適 な 場 所 は 、 中 心
窩 と 呼 ば れ る 網 膜 細 胞 が 最 も 密 集 し た 領 域 で あ る 。中 心 窩 は 直 径 約 2 mmの 円 と い う 限 ら れ た 領 域 で あ る た め 、 ピ ク セ ル 回 路 及 び 刺 激 電 極 を 高 密 度 に 配 置 す る 必 要 が あ る 。我 々 は 、Humayun ら の 報 告 を も と に 1000 画 素 で の 網 膜 刺 激 を 目 標 と し て お り 、こ の た め に は 1 つ の 刺 激 電 極 の 直 径 を 100 µm 以 下 に す る 必 要 が あ る 。し か し な が ら 、 刺 激 電 極 を 微 細 化 す る こ と で イ ン ピ ー ダ ン ス が 増 加 し 、 消 費 電 力 の 増 加 や 刺 激 電 流 生 成 回 路 の 出 力 回 路 抵 抗 の 増 大 を 招 く 。 ま た 、 現 在 人 工 網 膜 の 刺 激 電 極 材 料 と し て 広 く 用 い ら れ て い る Pt や 酸 化 イ リ ジ ウ ム(Iridium Oxide: IrOX)は 電 荷 供 給 能 力 に 乏 し く 、 微 小 刺 激 電 極 と し て 使 用 し た 際 に 、pH の 変 化 や 活 性 酸 素 の 発 生 に よ り 神 経 細 胞 を 損 傷 す る こ と が 報 告 さ れ て い る[3-1]。
神 経 細 胞 へ の 電 気 刺 激 は 、 体 内 に 挿 入 し た 刺 激 電 極 と 対 向 電 極 間 に 刺 激 電 流 を 印 加 す る こ と で 行 う 。 神 経 細 胞 近 傍 に 設 置 し た 刺 激 電 極 か ら 電 解 質 溶 液 に 注 入 し た 電 荷 は 、 神 経 細 胞 に 脱 分 極 を 引 き 起 し 、 活 動 電 位 を 生 じ さ せ る 。 一 般 的 に 神 経 細 胞 へ の 電 気 刺 激 は 図 2-2 に 示 す よ う に 負 電 流 と 正 電 流 の 電 荷 量 が 等 し い 電 流 刺 激 に よ っ て 行 わ れ る[2-1]。図 2-2 に お い て 負 電 流 は 、電 子 が 刺 激 電 極 か ら 電 解 質 溶 液 に 移 動 す る 還 元 電 流 で あ り 、 正 電 流 は そ の 逆 の 酸 化 電 流 で あ る 。 負 電 流 の 役 割 は 神 経 細 胞 を 脱 分 極 さ せ 、 活 動 電 位 を 生 じ さ せ る こ と で あ る 。 ま た 、 正 電 流 は 負 電 流 の 印 加 に よ り 生 じ た 刺 激 電 極 の 分 極 を 中 和 し 、 刺 激 電 極 が 過 剰 に 分 極 し て 電 極 - 電 解 質 溶 液 界 面 で 不 可 逆 な 化 学 反 応 が 生 じ な い よ う に す る 役 割 を 有 す る 。 電 極 界 面 で の 不 可 逆 な 化 学 反 応 と し て 代 表 的 な も の は 、 水 の 電 気 分 解 で あ る 。 刺 激 電 極 界 面 で 水 の 電 気 分 解 が 生 じ た 場 合 、刺 激 電 極 近 傍 の 電 解 質 溶 液 の pH が 変 化 す る 。ま た O2、H2な ど の 気 体 が 発 生 す る こ と で 電 極 近 傍 の 神 経 細 胞 に 損 傷 が 生 じ る 。 さ ら に は 、 刺 激 電 極 が 酸 化 し 、Pt な ど の イ オ ン に 水 溶 性 が あ る 電 極 は 溶 解 す る と い っ た 問 題 が 生 じ る[3-1]。
人 工 網 膜 に お け る 電 気 刺 激 に お い て も 、 こ の よ う な 正 負 の 刺 激 電 流 を 用 い て 、 目 標 部 位 へ の 刺 激 に 対 し て 生 理 的 な 応 答 が 得 ら れ る し き い 値 以 上 の 電 荷 量 を 継 続 的 に 印 加 す る 。表 3-1 に 代 表 的 な 人 工 網 膜 研 究 機 関 に お け る ヒ ト の 網 膜 を 電 気 刺 激 し た 際 の し き い 値 電 荷 密 度 を 示 す 。表 3-1 の Target の 部 分 に は 我 々 が 目 標 と し て い る 1000 画 素 で の 刺 激 を 想 定 し て 他 の 研 究 機 関 の 臨 床 試 験 の 傾 向 か ら 算 出 し た 目 標 値 を 記 載 し て い る 。 表 中 に 記 載 し て い る CIC(Charge Injection Capacity)と は 、 電 荷 供 給 能 力 と 呼 ば れ 、 刺 激 電 極 か ら 1 回 の 負 の 矩 形 波 電 流 で 、 不 可 逆 な 化 学 反 応 を 生 じ ず に 供 給 可 能 な 最 大 電 荷 密 度 を 示 し て い る 。CICを 超 え た 電 気 刺 激 を 断 続 的 に 行 う と 、 先 に も 述 べ た よ う に 電 極 近 傍 で 不 可 逆 な 化 学 反 応 が 起 こ り 、 神 経 細 胞 の 損 傷 や 電 極 の 溶 解 を 引 き 起 す 可 能 性 が あ る 。 表 中 の 赤 字 で 記 載 し て い る 電 荷 密 度 に つ い て は 、 電 極 の CIC を 超 え て お り 電 極 近 傍 で 不 可 逆 な 化 学 反 応 が 起 こ っ て い る と 考 え ら れ る 部 分 で あ る 。刺 激 電 極 か ら は 、上 記 の し き い 値 以 上 の 電 荷 密 度 を 、
不 可 逆 な 化 学 反 応 の 発 生 に よ る 神 経 細 胞 の 損 傷 や 電 極 の 溶 解 が 生 じ な い よ う に 供 給 す る 必 要 が あ る 。 し か し 、 我 々 が タ ー ゲ ッ ト と し て い る 直 径 90 µm の 微 小 刺 激 電 極 を 従 来 の 刺 激 電 極 材 料 で あ る Pt や IrOXで 作 製 し た 場 合 、刺 激 電 極 か ら 1 回 の 刺 激 電 流 で 神 経 細 胞 を 損 傷 せ ず に 1.44 mC/cm2の 電 荷 を 供 給 す る こ と が で き な い 。 よ っ て 、 我 々 が 目 標 と し て い る 1000 画 素 で の 網 膜 刺 激 を 実 現 す る た め に は Pt や IrOXよ り も 高 い CIC を 有 し 、1 回 の 矩 形 波 電 流 で し き い 値 電 荷 密 度 以 上 の 電 荷 を 供 給 可 能 な 電 極 材 料 が 必 要 と な る 。 次 に 、 高 解 像 度 で 網 膜 を 刺 激 可 能 な 微 小 刺 激 電 極 を 実 現 す る た め に 高 CICを 有 す る 刺 激 電 極 材 料 に つ い て 検 討 を 行 う 。
表 3-1 人 工 網 膜 研 究 機 関 に お け る し き い 値 電 荷 密 度
電 極 材 料 CIC (mC/c m2)
研 究 機 関
刺 激 電 極 の サ イ ズ 及 び 数
(µm)×数
刺 激 面 積 (µm2)
し き い 値 電 荷 量
(nC)
し き い 値 電 荷 密 度 (mC/c m2)
参 考 文 献
Pt 0.1 5
セ カ ン ド サ イ ト 社
Φ2 60 ×8
530 00
[Φ260×1] 233 0.4 4
3-2 3-3
大 阪 大 学 Φ5 00 ×4 9
196 250 [Φ50 0×4]
350 0.1 8~0.23 2-8
IrOX 0.2 5
フ ィ リ ッ プ ス
大 学 Φ1 00 ×2 5
392 50 [Φ10 0×5]
7.2 ~1 00 0.0 2 ~0.26 3-4 2-6
TiN 0.8 7
レ テ ィ ナ
イ ン プ ラ ン ト 社 (10 0 ×10 0)×16
400 00 [(100 ×100 )×4]
80 ~2 40 0.2 ~0 .6 3-5 2-4
Ta rge t 1.4 4以 上 本 研 究 室 Φ90 ×100 0
635 8 [Φ90 ×1]
91.5 1.4 4 -
こ れ ま で 述 べ て き た よ う に 網 膜 細 胞 刺 激 用 の 電 極 に 求 め ら れ る 条 件 は 、 ① 低 イ ン ピ ー ダ ン ス 、 ② 高 CIC で あ る 。 加 え て 、 刺 激 電 極 は 長 期 的 に 生 体 内 に 埋 め 込 め る た め に ③ 良 好 な 生 体 適 合 性 を 有 す る 必 要 が あ る 。
イ ン ピ ー ダ ン ス と CIC に つ い て 詳 し く 述 べ る に あ た り 、 刺 激 電 極 か ら 電 解 質 溶 液 へ の 電 荷 供 給 の メ カ ニ ズ ム に つ い て 説 明 す る 。 図 3-1 に 刺 激 電 極-対 向 電 極 間 の 単 純 化 し た 等 価 回 路 を 示 す 。 等 価 回 路 か ら わ か る よ う に 刺 激 電 極 か ら 対 向 電 極 へ の 電 荷 供 給 経 路 は 2 つ に 分 け ら れ る 。1 つ 目 は 電 気 二 重 層 容 量 Cdの 充 電 電 流 で あ り 、 非 フ ァ ラ デ ー 電 流 と 呼 ば れ る 。2 つ目 は刺 激 電 極 界 面 の酸 化 還 元 反 応 によるファ ラデー電 流 である。電 荷 移 動 抵 抗 RC の小 さな電 極 材 料 ほど電 極 界 面 での酸 化 還 元 反 応
が生 じやすく、大 きなファラデー電 流 を流 すことが可 能 である[3-6]。よって、電 気 二 重 層 容 量 が大 きく、電 荷 移 動 抵 抗 が小 さい材 料 ほど大 きな電 流 を流 しやすく高 い CIC と低 いイン ピーダンスを示 す。また、CIC を決 定 には電 位 窓 が大 きく関 わる。電 位 窓 とは、電 極 近 傍 で 水 の電 気 分 解 が生 じない電 位 範 囲 のことをいう。電 極-電 解 質 溶 液 界 面 で水 の電 気 分 解 が発 生 すると、前 述 したように神 経 細 胞 の損 傷 や電 極 の溶 解 を招 く。 電 位 窓 の正 端 は、水 の電 気 分 解 によって酸 素 の発 生 する電 位 で限 られる。この電 位 を酸 素 過 電 圧 という。また、
負 端 は水 素 の発 生 する電 位 で限 られ、この電 位 を水 素 過 電 圧 という。 よって、電 位 窓 の広 い材 料 ほど電 極 に大 きな電 圧 を印 加 でき、より多 くの電 流 を流 すことができる。
図 3-1 刺 激 電 極-対 向 電 極 間 の単 純 化 した等 価 回 路
従 来 は、刺 激 電 極 材 料 として良 好 な生 体 適 合 性 を有 する Pt が広 く用 いられてきた。しか し、Pt は電 極 の酸 化 還 元 反 応 が起 こりにくく電 荷 移 動 抵 抗 が大 きいためファラデー電 流 が 流 れ に く い 。 近 年 、 電 荷 供 給 能 力 の 高 い 電 極 材 料 と し て IrOX や 窒 化 チ タ ン(Titanium Nitride: TiN)が用 いられ始 めている。IrOXは電 荷 移 動 抵 抗 が小 さく、式(3-1)に示 す可 逆 な 酸 化 還 元 反 応 により大 きなファラデー電 流 を流 すことが可 能 である[3-7][3-8]。また、TiN は 表 面 を粗 く作 製 することが可 能 であり、大 きな電 気 二 重 層 容 量 と広 い電 位 窓 を示 すと報 告 されている[3-5]。しかしながら、Pt、IrOX、TiN の CIC は表 3-1 に示 されるようにそれぞれ 0.15、0.25、0.87 mC/cm2となっており、我 々が目 標 としている 1.44 mC/cm2以 上 の電 流 刺 激 を実 現 することができない。
そこで、我 々は CIC の範 囲 内 で 1.44 mC/cm2以 上 の電 流 刺 激 を実 現 するため新 たな 2 つの電 極 材 料 を人 工 網 膜 の刺 激 電 極 材 料 として検 討 した。1 つ目 は、ポ リ 3,4-エ チ レ ン ジ オ キ シ チ オ フ ェ ン(poly(3,4-ethylenedioxythiophene): PEDOT)と 呼 ばれ る導 電 性 高 分 子 材 料 である。 導 電 性 高 分 子 は電 解 重 合 によって電 極 上 に繊 維 状 に成 長 するため電
極-電 解 質 溶 液 界 面 の接 触 面 積 を増 大 させ、電 気 二 重 層 容 量 を増 加 させることが可 能 で
あるため高 い電 荷 供 給 能 力 を示 す。しかしながら、ポリピロールやポリチオフェンなどの導 電 性 高 分 子 は水 溶 液 中 で電 圧 印 加 を行 うと、ヒドロキシルイオンや塩 素 イオンの求 核 攻 撃 に よって酸 化 反 応 が生 じ、導 電 性 が徐 々に低 下 していくという問 題 を抱 えている[3-9]。これに 対 して、PEDOT は図 3-2 に示 すような構 造 をしており、求 核 攻 撃 を受 けやすいヘテロ 5 員 環 の 3、4 位 を 置 換 基 で 塞 い で い る た め 、 優 れ た 化 学 的 安 定 性 を 示 す[3-10]。 ま た 、
PEDOT は電 荷 移 動 抵 抗 が小 さく、大 きな電 気 二 重 層 容 量 を有 しているため大 きなファラデ
ー電 流 と非 ファラデー電 流 を流 すことが可 能 である。加 えて、PEDOT が優 れた生 体 適 合 性 を示 すという報 告 もなされている[3-11]。2 つ目 は、液 相 成 長 法 により 形 成 される微 細 な凹 凸 を有 する Pt である。この表 面 に微 小 な凹 凸 を有 する Pt電 極 を RagPt(Ragged Platinum) 電 極 と呼 ぶ。RagPt 電 極 は電 極 表 面 の微 細 な凹 凸 により、電 極-電 解 質 溶 液 界 面 の接 触 面 積 を増 大 させ、電 気 二 重 層 容 量 を増 加 させることが可 能 であるため 低 いインピーダンスと 高 い電 荷 供 給 能 力 を見 込 める。また、Pt が良 好 な生 体 適 合 性 を有 するため、Pt で形 成 さ れた RagPt 電 極 も良 好 な生 体 適 合 性 を有 する。
本 研 究 では従 来 の 人 工 網 膜 用 刺 激 電 極 に 比 べ 低 イ ン ピ ー ダ ン ス か つ 高 電 荷 供 給 能 力 を 有 す る 刺 激 電 極 の 作 製 を 目 的 と し 、PEDOT 電 極 と RagPt 電 極 の フ レ キ シ ブ ル ケ ー ブ ル 上 へ の 作 製 と 評 価 を 行 っ た 。 ま た 、 従 来 の 刺 激 電 極 と の 比 較 を 行 う た め に Pt電 極 及 び IrOX電 極 の 作 製 と 評 価 に つ い て も 行 っ た 。
Ir
4++e
-⇄ Ir
3+(3-1)
図 3-2 PEDOT の 構 造 式
3-3 刺激電極付きフレキシブルケーブルの作製
本 節 では、Pt、IrOX、PEDOT、RagPt 電 極 を有 するフレキシブルケーブルの作 製 工 程 に ついて述 べる。図 3-3 に作 製 するフレキシブルケーブルの断 面 構 造 を示 す。フレキシブルケ ーブルは眼 球 内 に埋 め込 むため、高 い生 体 適 合 性 と柔 軟 性 が求 められる。本 研 究 では、
ケーブル材 料 に感 光 性 コート材(Photosensitive coating material : PCM)とポリイミドを用 い る。ケーブルの主 材 料 としてはポリイミドを用 い、配 線 保 護 に PCM を用 いる。本 研 究 で用 い た PCM は吸 水 率 が0.9 %と非 常 に低 く生 体 内 への埋 め込 みに適 している。フレキシブルケ ーブルの長 さは約40 mm、厚 さは約20 µmである。ケーブルの長 さはヒトの眼 球 への埋 め込 みを想 定 して決 定 した。図 3-4 にフレキシブルケーブルの作 製 工 程 を示 す。まず、Si 基 板 上 に犠 牲 層 としてSiO2を堆 積 する。次 にPCMをスピンコートし、ケーブル形 状 にパターニン グした後 に 350 ℃で硬 化 を行 う。硬 化 後 のPCM の厚 さは約 3 µmである。その後 、Ptもし くは Ir を用 いてリフトオフ法 により刺 激 電 極 を作 製 する。Pt 電 極 については PEDOT 電 極 と
RagPt電 極 の下 地 としても利 用 する。Ir電 極 についてはIrOX電 極 を作 製 するために使 用 す
る。そして、ポリイミドをスピンコート、ケーブル形 状 にパターニングし、350 ℃で硬 化 する。硬 化 後 のポリイミドの厚 さは約 15 µm である。その後 に Cr/Au 配 線 をウェットエッチングにより 作 製 し、配 線 を PCM で覆 いケーブルが完 成 する。最 後 に試 料 をフッ酸 溶 液 に浸 すことで 犠 牲 層 を溶 かし、ケーブルをSi基 板 から剥 離 する。図3-5に作 製 したフレキシブルケーブル の全 体 写 真 及 び刺 激 電 極 アレイの拡 大 写 真 を示 す。IrOX、PEDOT、RagPt 電 極 について はケーブル剥 離 後 に追 加 工 程 を行 うことで作 製 する。作 製 方 法 については、3-3-1、3-3-2、 3-3-3 で説 明 する。作 製 した Pt、IrOX、PEDOT、RagPt 電 極 の拡 大 写 真 を図 3-6 に示 す。
PEDOT、RagPt 電 極 の下 地 は Pt であるが、Pt 電 極 とは明 らかな違 いが見 られ、PEDOT の
成 膜 とRagPtの成 長 が確 認 できる。次 に、図 3-7に各 刺 激 電 極 の電 極 表 面 の原 子 間 力 顕 微 鏡(Atomic Force Microscope: AFM)測 定 結 果 を 示 す。Pt 電 極 と IrOX 電 極 に 比 べ
PEDOT電 極 とRagPt電 極 の表 面 が非 常 に粗 くなっていることがわかる。また、表 3-2に示 し
た各 刺 激 電 極 の平 均 二 乗 粗 さでも PEDOT 電 極 や RagPt 電 極 が Pt 電 極 や IrOX電 極 の 10 倍 から 20 倍 の表 面 粗 さを有 していることが確 認 できる。本 測 定 により、PEDOT やRagPt 電 極 の電 極-電 解 質 溶 液 界 面 の接 触 面 積 の大 きさを確 認 することに成 功 した。