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第 4 章 励磁区間可変シングルパルス制御によるスイッチトリラクタンスモータの効率

4.4 インダクタンスの最大空間変化率

図4.5に図4.3の鎖交磁束波形をリマッピングした図を示す。供試SRMの固定子極が飽 和し始める電流 15A の鎖交磁束曲線を青点線で示す。固定子極端と回転子極端が重なり始 める位置である重なり角θolpから対向位置45°(mech.)までの鎖交磁束は,回転子位置および 電流に対して大きく変化している。重なり角θolpは次式で与えられる。

1 2

 

olp 2 s r

Pr

      

  ··· (4.3) ここで,Prは回転子極数,βsは固定子極弧,βrは回転子極弧である。本研究で使用した供 試SRMの重なり角は13.66˚(mech.)である。重なり角θolp近傍から鎖交磁束が増加するため,

重なり角から対向位置までを中心に励磁することによって,少ない電流で有効にトルクを 発生できると考えられる。

図4.5 FEMにより計算された鎖交磁束 Fig. 4.5. The flux linkage calculated by FEM.

図 4.6 に磁束鎖交数より算出した各回転子位置における線形と見なした場合のインダク タンスを示す。非対向位置では,どの電流値でもインダクタンスの値が同じになる。逆に対 向位置では,電流が変化するとインダクタンスの最大値は減少する傾向にある。

図4.6 線形とみなした場合の自己インダクタンス

Fig. 4.6. Self inductance which assumes linearity

図4.7に自己インダクタンスの空間変化率を示す。図4.7(b)は磁極が飽和しだす電流15A のときの自己インダクタンスの空間変化率の波形である。つまり,この電流以下は線形領域 となる。自己インダクタンスの空間変化率の波形は,波高値がほぼ平らは形状となっており,

自己インダクタンスの空間変化率が最大となる位置は54.64°(elec.)である。しかし,図4.7(c) のようにヨークが飽和しだす電流40A(磁極が十分に飽和)流では,自己インダクタンスの空 間変化率が最大となる位置は 89.05°(elec.)となり,線形領域よりも遅れる。図 4.7(d)のヨー クが飽和する電流では,61.43°(elec.)となり,全体的に線形領域よりも小さくなる。特に,対 向位置近傍の自己インダクタンスの空間変化率は大きく減少する波形となる。これらの比 較から,電流により自己インダクタンスの空間変化率が最大となる位置は変化するが,大き さはほとんど変化しないことから,54.64°(elec.)を中心に励磁を行うことにより,効率よく トルクを発生させることができると考えられる。

0 0.0005 0.001 0.0015 0.002 0.0025

0 40 80 120 160 200 240 280 320 360

Self-inductance [H]

Rotor position [°(elec.)]

0 A

100 A

図4.7 自己インダクタンスの空変化率 Fig. 4.7. Self inductance derivative

4.4.1 励磁モード

図 4.8 に励磁区間可変シングルパルス制御の各励磁モードを示す。低負荷トルク域では,

図4.2に示した正トルク領域のみで励磁することとし,これを励磁モード1とする。中負荷 トルク域では正トルク領域と無効トルク領域で励磁を行うこととし,これを励磁モード2と する。高負荷トルク域では正トルク,無効トルクおよび逆トルクのすべての領域で励磁を行 うこととし,これを励磁モード3とする。

励磁モード1は正トルク領域のみに電流が流れるように,転流角 θcのみを制御するモー ドである。ターンオン角θ0は重なり角θolpで固定する。転流角θcは,重なり角θolpから最適 転流角θcopt(消磁角θqが対向位置θaと一致するときの転流角)の間で,通電角指令値θcon*

に応じて可変させる。励磁モード1のターンオン角指令値θ0*と転流角指令値θc*は次式で与 えられる。

 

0*olp ··· (4.6) c* 0con* ··· (4.7) この制御モードでは,インダクタンスの傾きが最も大きい区間であり,他のモードに比べ て一番効率がよい。なおθcoptは動作点によって変化するものである。

-0.00008 -0.00006 -0.00004 -0.00002 0 0.00002 0.00004 0.00006 0.00008

0 40 80 120 160 200 240 280 320 360

Inductance derivative [H(elec.)]

Rotor position [°(elec.)]

0 A 100 A maximuminductance derivative

54.64°

(a) Inductance derivative

-0.00008 -0.00006 -0.00004 -0.00002 0 0.00002 0.00004 0.00006 0.00008

0 40 80 120 160 200 240 280 320 360 Inductance derivative [H/°(elec.)]

Rotor position [°(elec.)]

54.64°

(b) Saturation point of stator pole (15A)

-0.00004 -0.00003 -0.00002 -0.00001 0 0.00001 0.00002 0.00003 0.00004

0 40 80 120 160 200 240 280 320 360 Inductance derivative [H/°(elec.)]

Rotor position [°(elec.)]

8905°

(c) Saturation point of yoke (40A)

-0.000015 -0.00001 -0.000005 0 0.000005 0.00001 0.000015

0 40 80 120 160 200 240 280 320 360 Inductance derivative [H(elec.)]

Rotor position [°(elec.)]

61.43°

(d) Saturation point of yoke (100A)

励磁モード1において,消磁角θqが対向位置θaまで達した場合は,励磁モード2に移行 する。励磁モード2では,転流角θcは常に対向位置θaで零電流となるように,最適転流角 θcoptに固定される。ターンオン角θ0は非対向位置θuから重なり角 θolpの間で,通電角指令 値θcon*に応じて可変させる。励磁モード2のターンオン角指令値θ0*と転流角指令値θc*は次 式で与えられる。

0*ccon* ··· (4.8) c* copt ··· (4.9)

この制御モードではインダクタンスの傾きが小さい領域で電流が増加する。従って,制御 モードIと比べて,トルクの増加はわずかである。しかし,逆トルクによる効率の低下はな い。

励磁モード2において,ターンオン角θ0が非対向位置θuと一致した場合は,励磁モード 3へ移行する。ターンオン角θ0は非対向位置θuで固定し,転流角θcは最適転流角θcoptから 対向位置θaの間で可変させる。励磁モード3のターンオン角指令値θ0*と転流角指令値 θc*

は次式で与えられる。

0* u ··· (4.10) c* con* ··· (4.11) 本モードではインダクタンスの傾きが負の区間に電流が流れるため、逆トルクが発生し 効率が著しく低下する。本モードは,効率を犠牲にしてでも高負荷を駆動する必要があると きに用いられる。

(a) 励磁モード1 (a) Excitation mode 1

Blue line : Phase voltage Orange line : Flux linkage Red line : Phase current

θ0 θc 180° 360°

Exc itation region

Variable inter val for θc

Rotor position [°(elec.)]

θcopt

θolp

θcon*

θq

(b) 励磁モード2 (b) Excitation mode 2

(c) 励磁モード3 (c) Excitation mode 3

図4.8 励磁モード Fig. 4.8. Excitation mode.

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