第 8 章 実験調査結果の分析
8.5 インターネット利用者と非利用者の比較
8.5 インターネット利用者と非利用者の比較
補正しない原数値を用いている。
そこで、調査
X
ネット利用者と実験調査の異同を解釈する際の参考データとして、調査X
のネット利用者の年齢、性、学歴構成の特徴をまず確認しておく。年齢構成は、調査
X
ネット利用者のほうが2000
年国勢調査(すなわち実験調査の性・年 齢補正値)よりも30
代、40
代が多く60
代が少ない。男女比は調査X
ネット利用者は国勢 調査よりもやや男性が多い。学歴は、調査
X
ネット利用者は、実験調査回答者と比べて小学・中学卒、高校卒が多い一 方、大学卒、大学院卒が少なく、全般的に学歴が低い。図表 8-5-2-1 調査Xネット利用者・非利用者の年齢・性別・学歴構成比の比較
〔年齢〕 (%)
合計 20代 30代 40代 50代 60代
調査Xネット非利用者 100.0 4.6 10.9 16.9 31.0 36.5 調査Xネット利用者 100.0 20.2 25.4 26.1 20.0 8.3 2000年国勢調査 100.0 21.2 19.6 19.5 22.4 17.3
〔性別〕 (%)
合計 男性 女性 調査Xネット非利用者 100.0 35.6 64.4 調査Xネット利用者 100.0 54.4 45.6 2000年国勢調査 100.0 49.9 50.1
〔学歴〕 (%)
合計 小学・
中学
高 校 ・ 旧 制 中 学
専門 学校
短大・
高専 大学 大学院 不明 無回答 調査Xネット非利用者 100.0 24.4 52.4 6.6 7.2 7.1 0.1 2.2 0.0 調査Xネット利用者 100.0 6.3 41.6 11.2 12.8 25.0 1.9 1.1 0.0
調査A 100.0 2.4 29.3 10.0 14.2 39.3 4.5 0.1 0.2 調査B 100.0 1.3 28.6 10.4 13.1 41.6 4.6 0.2 0.2 調査C 100.0 1.4 24.4 8.4 16.0 44.4 5.0 0.0 0.5 調査D 100.0 1.3 21.9 10.4 13.1 44.1 3.8 0.2 5.2 調査E 100.0 1.4 25.3 7.5 16.2 44.4 2.8 0.2 2.1
(注)調査A~Eは性・年齢による補正値(「2000年国勢調査」にあわせたもの)。
8.5.3 分析結果
(1)
日本型雇用慣行の評価〔問3〕終身雇用、年功賃金、福利厚生の給与化の3項目については、調査
X
ネット利用者と調 査X
ネット非利用者の回答結果の差が大きい。調査X
平均と比べて、調査X
ネット非利用者は実験調査との乖離が大きく、ネット利用者は実験調査との乖離が小さい。すなわち前述 の仮説が成り立つ。ただし、調査
X
ネット利用者と実験調査回答者の水準にはなお乖離があ る。また、組織との一体感、自己啓発型能力開発については仮説があてはまらない。図表 8-5-3-1 日本型雇用慣行の評価(性・年齢による補正値、ネット利用者・非利用者のみ原数値)
(「良いことだと思う」と「どちらかといえば良いことだと思う」の合計)
77.8 77.1
53.1 72.0 71.7
82.5
57.6 74.7 77.2
72.1 78.6
74.7
55.9 81.0
59.7 73.4
65.9 56.2
68.9 70.7 75.6
54.6
66.9 69.2 69.3
76.4
55.2
65.8 74.1
52.7 65.1
71.8 66.1
51.6 69.3
68.5 67.9 76.5
65.8 68.8
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0
終身雇用 年功賃金
組織との一体感
福利厚生の給与化
自己啓発型能力開発
調査X 調査X
(ネット非利用者)
調査X
(ネット利用者)
調査A 調査B 調査C 調査D 調査E
(2)
望ましい分配原理〔問2〕調査
X
ネット利用者の回答は、調査X
平均に比べて実績原理への支持が高く、必要原理、平等原理への支持が低い。すなわち、調査
X
ネット利用者の回答は、調査X
平均よりも実験 調査に近く、仮説と符合する。ただし、調査X
ネット利用者の回答内容は、実験調査よりは 調査X
のほうにずっと近い。図表 8-5-3-2 望ましい分配原理(性・年齢による補正値、ネット利用者・非利用者のみ原数値)
(「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」の合計)
86.1
90.9 88.1 92.4 91.7 89.7
84.1 80.784.2
81.8 75.4
79.0 70.7
75.3 83.6 83.6
28.5 25.9 30.4 32.6
27.4 34.7 31.9
33.5
8.2 8.1 7.9 7.4 8.1
15.8 18.8 23.0
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0
調査X 調査X
(ネット利用者)
調査B 調査D
実績原理 努力原理 必要原理 平等原理
(3)
生活充実感〔問13
〕生活充実感についての質問では、「調査
X
ネット利用者は実験調査回答者に近い」という 仮説はあてはまらない。「生活全体」、「家庭生活」、「社会活動」の項目ではネット利用者と非 利用者の回答結果にあまり差がない。また、「仕事」については、仮説とは逆にネット利用者 よりネット非利用者のほうが実験調査結果に近い。図表 8-5-3-3 生活充実感(性・年齢による補正値、ネット利用者・非利用者のみ原数値)
(「充実感がある」「ある程度充実感がある」の合計)
56.2
50.9
33.9 77.6
18.1 67.8
57.1
23.2
70.1 73.4
30.1 28.8 61.0 60.6
75.6 79.178.8
74.4
31.2 67.8
63.6 80.8
20.3 47.4
61.8
61.3 63.9
18.7 46.4
61.3 62.5 62.6
44.1 62.3
62.3 62.3 66.6 67.4
51.3 61.4
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0
生活全体 家庭時間 自由時間 仕事 社会活動
調査X 調査X
(ネット非利用者)
調査X
(ネット利用者)
調査A 調査B 調査C 調査D 調査E
(4)
リストラのルール〔問16〕
リストラのルールについては、「調査
X
ネット利用者は実験調査回答者に近い」という仮 説があてはまる。ただし、日本型雇用慣行の評価や分配原理に関する回答と同様に、調査X
のネット利用者の回答内容は、実験調査結果とはなお乖離がある。図表 8-5-3-4 リストラのルール(性・年齢による補正値、ネット利用者・非利用者のみ原数値)
(「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」の合計)
57.5
48.6
62.6
73.5 74.3
70.9 74.2
70.3
46.8 46.5 49.4 51.6
52.8 47.5
41.4 45.7
20.1 22.8 16.9
18.6 21.6 25.6 22.6
23.0
10.5 9.8 11.3 12.0
12.2 11.1
12.9 13.6
8.8 7.1 7.9 6.8
8.8 8.0
9.1 10.3
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0
調査X 調査X
(ネット非利用者)
調査X
(ネット利用者)
調査A 調査B 調査C 調査D 調査E
職業能力 担当業務 高齢者 勤続年数 若年者
(
5
)生活不安〔問15
〕調査
X
のネット利用者とネット非利用者では、「勤務先での人間関係」を除けばネット非 利用者のほうが不安感が強い。健康や収入、老後については年齢が高いほど不安が強い(今 田・池田(2004
))とされていることから、ネット利用者とネット非利用者間の年齢構成の 違い(後者のほうが年齢が高い)が影響していると考えられる。図表 8-5-3-5 生活不安(性・年齢による補正値、ネット利用者・非利用者のみ原数値)
(「感じている」「やや感じている」の合計)
67.5
77.0
64.4
38.7
21.0 55.8
61.3 62.2
34.2 35.3
72.7
32.5 48.6
34.8 75.2
29.2 69.0
78.9
36.1 26.4 35.9
30.1
62.4 64.2
72.2
58.7
27.8 73.1
27.1 70.3
28.6 44.0
75.9 77.6 75.9
28.9 79.2
76.3 76.8 68.8
23.9 40.9
77.2 75.6 68.3
26.2 43.2
73.8 74.7 67.9
75.6
71.0 71.7
45.4
32.7 28.6
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0
自分の健康
家族の健康
収入や資産
老後の生活設計
家族・親族間の人間関係
勤務先での人間関係
地域での人間関係
調査X 調査X
(ネット非利用者)
調査X
(ネット利用者)
調査A 調査B 調査C 調査D 調査E
(6)
望ましい職業キャリア〔問1〕望ましい職業キャリアについては、調査
X
ネット利用者は非利用者に比べてやや実験調査 に近いものの、一企業型が複数企業型を上回るなど全体的な傾向としては調査X
のほうに近 い。図表 8-5-3-6 望ましい職業キャリア(性・年齢による補正値、ネット利用者・非利用者のみ原数値)
39.6 41.7
38.9
29.8 31.4
28.9
25.1
30.7
38.8 40.4 39.6 42.4 43.4
33.7
22.4 29.4
14.4 18.1 19.8
16.4 20.0
13.8 15.0 14.7
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0
調査X 調査X
(ネット非利用者)
調査X
(ネット利用者)
調査A 調査B 調査C 調査D 調査E
一企業型 複数企業型 独立自営型
8.5.4
分析結果のまとめ調査
X
の回答者の中からネット利用者だけを取り出してみると、その回答内容が、調査X
平均よりも実験調査に近づく質問項目(終身雇用、年功賃金、分配原理、リストラルール、職業キャリア)と、そういった関係性がみられない質問項目(福利厚生給与化、生活充実感、
生活不安)があった。しかし、実験調査に近づいてもなお調査
X
ネット利用者と実験調査の 回答内容には乖離があり、概括的にみれば調査X
ネット利用者の回答内容は、実験調査より は調査X
ネット非利用者の回答内容のほうに近い。なお、調査
X
ネット利用者の回答が実験調査に近かった質問項目には、学歴が規定要因と なるもの-今田・池田(2004
)の分析によれば、終身雇用、年功賃金、努力原理などの項 目では学歴が低いほど支持が高く、複数企業型職業キャリア、リストラの基準を職業能力に することなどでは学歴が高いほど支持が高い-が多い。調査X
ネット利用者と実験調査回 答者の学歴の差(前者のほうが学歴が平均的に低い)があり、これらについては、学歴要因 を除けば(実験調査と調査X
ネット利用者の学歴構成が同一になるように補正すれば)、調 査X
ネット利用者の回答がさらに実験調査に近づく可能性がある。(なお、調査X
非ネット 利用者は調査X
ネット利用者よりもさらに学歴が低く、学歴について補正をくわえることで ネット利用者と非利用者間の回答の差が縮小する可能性もある。)ただし、