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第4章 イギリスの大学における学生生活費の動向

P.83 表4-11

(1) 両年度とも、フルタイム学生の約半数が、「常勤労働」・「非常勤労働」の別を問 わなければ、学期期間中に、「アルバイト・定職」に従事している。

(2) しかし、「常勤労働」従事者の比率は減少し、2007年度とは逆に、「非常勤労働」

が「常勤労働」を上回るようになった。

(3) しかも、「非常勤労働」従事者に限った平均、つまり有額平均でみた場合の「ア ルバイト・定職」収入額が減少していることから、「非常勤」の「アルバイト・

定職」における労働条件(労働の質)の低下がみられる。

(4) 以上の(2)と(3)とがあいまって、実額平均、つまり非従事学生を含めた平均値で みた場合の「アルバイト・定職」収入額は減少している。つまり、「アルバイト・

定職」全般について雇用条件(労働の質)の低下が浸透している。

(5) 一方、パートタイム学生については、「常勤労働」従事者の比率には多少の減少 がみられるものの、有額平均、つまりそれら従事者だけを取り出した平均値でみ た場合の「アルバイト・定職収入」額は増加している。それが一大要因となって、

非従事学生を含めた平均、つまり実額平均でみた場合の「アルバイト・定職」収 入額は増加している。

5 学生生活費支出、預貯金額・負債額

学生生活費支出、および預貯金額・負債額の年度比較の結果を示したものが、表 4-11・表4-12である。ただし、そこにみられる変化は基本的には、調査方法の変更に よって生じた可能性が高いとされる(PP.351-353、PP.355-356、P.370)。そこで、こ こでは、参考として表だけ提示することにして、知見の提示は行わないことにした。

表4-11 学生生活費支出の年度比較

(1)フルタイム学生

      支出額(£)        比率

2011/12 2007/08 2011/12 2007/08

総支出 13095 14158 100.0% 100.0%

生活費 6375 7250 48.7% 51.2%

住居費 2837 2401 21.7% 17.0%

学費(Participation Costs) 3957 4323 30.2% 30.5%

  うち、授業料 3085 3258 23.6% 23.0%

  うち、修学費(書籍購入費、設備利用費など) 489 514 3.7% 3.6%

  うち、交通費(facililitation costs:

   通学費、および学習のための旅行等を含む) 342 551 2.6% 3.9%

有子者の子どもの養育費 306 185 2.3% 1.3%

(2)パートタイム学生

(1) フルタイム学生のサンプルは、第1学年に限定。

(2) パートタイム学生のサンプルは、フルタイム学生の平均就学時間の50%以上修学者に限定。

(3)(出 典) STUDENT INCOME AND EXPENDITURE SURVEY ENGLISH-DOMICILED STUDENTS(2012)P.352, P.355より作成。

表4-12 預貯金額・負債額の年度比較 (単位:£)

*「授業料ローン」、「生活費ローン」など。

(1) フルタイム学生サンプルは、第1学年に限定。

(2) パートタイム学生サンプルは、フルタイム学生の平均就学時間の50%以上修学者 に限定。

      支出額(£)        比率

2011/12 2007/08 2011/12 2007/08

総支出 18408 18292 100.0% 100.0%

生活費 10881 11711 59.1% 64.0%

住居費 3983 3625 21.6% 19.8%

学費(Participation Costs) 2438 2104 13.2% 11.5%

  うち、授業料 1512 1120 8.2% 6.1%

  うち、修学費(書籍購入費、設備利用費など) 426 353 2.3% 1.9%

  うち、交通費(facililitation costs:

   通学費、および学習のための旅行等を含む) 513 631 2.8% 3.4%

有子者の子どもの養育費 1085 853 5.9% 4.7%

フルタイム学生     パートタイム学生 2011/12 2007/08 2011/12 2007/08

預貯金 1314 2580 1918 2797

借金総額 6831 6494 3515 3097

  うち、政府貸与奨学金

     未払い債務 6194 5823 845 479

純負債総額

「学期終了時点の預貯金」)

5576 3916 1608 299

(3)(出典) STUDENT INCOME AND EXPENDITURE SURVEY

ENGLISH-DOMICILED STUDENTS(2012)PP.356-357より作成。

P84 (2)パートタイム学生

      支出額(£)        比率

2011/12 2007/08 2011/12 2007/08

総支出 18,408 18,292 100.0% 100.0%

生活費 10,881 11,711 59.1% 64.0%

住居費 3,983 3,625 21.6% 19.8%

学費(Participation Costs) 2,438 2,104 13.2% 11.5%

  うち、授業料 1,512 1,120 8.2% 6.1%

  うち、修学費(書籍購入費、設備利用費など) 426 353 2.3% 1.9%

  うち、交通費(facililitation costs:

   通学費、および学習のための旅行等を含む) 513 631 2.8% 3.4%

有子者の子どもの養育費 1,085 853 5.9% 4.7%

P84 表4-12

フルタイム学生     パートタイム学生 2011/12 2007/08 2011/12 2007/08

預貯金 1,314 2,580 1,918 2,797

借金総額 6,831 6,494 3,515 3,097

  うち、政府貸与奨学金

     未払い債務 6,194 5,823 845 479

純負債総額

「学期終了時点の預貯金」)

5,576 3,916 1,608 299

6. まとめ

最後に、まとめとして、BIS調査報告書で、主要な知見として列記されている点(P.14) を、抜粋する形で以下に示しておこう。

(1) フルタイム学生については、2004 年度調査から 2007 年度調査を経て継続する 傾向として、収入全体に占める比率でみれば、「政府による奨学金などの学生へ の経済支援」による収入の比率が高まり、「アルバイト・定職」(paid work)収 入、「家庭からの給付」(親戚を含む:family accounts)の比率は、減少している。

(2) パートタイム学生については、「常勤職」収入の上昇を受け、今回の調査では、

「定職・アルバイト」収入額は、調査開始以来の史上最高値を記録している。そ れを反映して、2007年度調査よりは、「定職・アルバイト」収入の、収入全体に 占める比率は拡大している。

(3) 学生全体でみれば、「政府による奨学金などの学生への経済支援」による収入は、

インフレ率と同程度に推移しており、長期的にみれば、それほど変化はみられな い。

(4) 半数以上のフルタイム学生が、時間・日数の長短を問わなければ、通常学期期間 中に「アルバイト・定職」に従事しており、多くのフルタイム学生にとって、そ れは重要な収入源になっている。この点は、2007年度調査から継続する傾向であ る。ただし、雇用・労働条件(労働の質)が低下した影響を受け、その収入額は、

少なくとも2007年度調査よりは、減少している。

(5) ほとんどの学生が、政府貸与奨学金(「授業料ローン」・「生活費ローン」)を借り ている。民間ローン(commercial loan)を借りているフルタイム学生はほとん どおらず、2007年度調査と比べても減少している。

(6) 学生生活費支出については、フルタイム学生・パートタイム学生のいずれでも、

細目でみれば、「住居費」支出が増加し、通学費・教科書代・設備利用費などの

「修学費」(participation costs)、および「日常生活費」(living costs)が減少し ている。

(7) 借金(政府貸与奨学金を含む)と貯蓄額の差で表される「純負債総額」(‘Net debt’) は、学生全体でみれば、2007年度調査に比べると、貯蓄額の減少が原因となって 増加している。

(8) 「純負債総額」は、最終学年のフルタイム学生では、授業料上限額が 3,375ポン ドに設定されているなかで、10,299ポンドにのぼる。パートタイム学生の場合は、

1,495 ポンドである。