カンボジア
タイ湾
トンレサップ湖 トンレサップ湖
トンレサップ川 トンレサップ川
メコン河 メコン河
バサック川 プノンペン プノンペン タイ ラオス
ベトナム 国土面積(km2) 18万1,035(2008)
総人口(人) 1,410万(2010)
名目GDP(米ドル) 112億(2010)
一人当り名目GDP(米ドル) 795(2010)
平均降水量(mm/年) 1,904(2009)
水資源量(km3) 476.1*(2009)
年間水使用量(10億m3) 2.2(2006)
セクター別 水資源使用率
農業用水 94%(2006)
工業用水 1.5%(2006)
都市用水(生活用水を含む) 4.5%(2006)
13,000km2にまで拡大し、水深は平均で8~10mとなる。
この独特な水文システムにより、雨季のカンボジアで は、主にメコン河、トンレサップ川、バサック川及びその他 の支流から水が豊富に供給される。しかし乾季には、貯 水槽や貯水池、用水路や灌漑システムといったインフラ が未整備のため、各地で生活用水や灌漑用水等の不 足に直面する。カンボジア国内の水資源はほんの一部 が管理されているにすぎず、水供給量が雨季には過剰と なり、乾季には不足する。
地下水の利用可能量は176億m3と推定されており、
主として生活用水と灌漑用水に使われているが、近年、
首都郊外及び地方に立地する工業部門の取水量が増 加している(Sokha、2005)。トンレサップ及びメコン氾濫 原/デルタの沖積層は、地下水涵養量が大きい最良の 浅部帯水層であると考えられている。地下水及びその 利用に関するデータ及び情報は依然として不足している が、浅井戸が利用可能な面積は全国で48,000km2と推 定されている(Sokha、2005)。
4. 水質状況
カンボジアの表流水質は概ね国家水質環境基準を満 たしており、汚染されていないとみなされている。しかし、
地域によっては水質が脅かされているところがある。ま た、農業排水に加え、都市部での活動からの排水が未 処理のまま公共用水域に流入しており、水質汚濁はとり わけ乾季に顕著となる。さらに、水質は各種開発活動に よっても悪化している。例えば、湿地や森林の農地転用 により、農薬残留物を含む農業排水による水質汚濁のリ スクが高まっている(MoE、2009)。他にも水質に大きな 影響を与える汚染源は、製造業・鉱業、サービス・観光業 からの未処理排水、屠殺場や畜産場、さらには水運か ら排出される固形及び液体廃棄物等多種多様である。
河川水
カンボジア環境報告書2010年版によれば、公共用水 域の水質は全体として良好であり、水質汚濁は大きな問 3. 水資源の現状
メコン河の集水域はカンボジア国土面積の約86%を占 める。乾季にはトンレサップ湖の水がメコン河に流入し、
雨季にはメコン河の水がトンレサップ湖に流入する。トン レサップ湖の面積は約2,500km2で、乾季の水深は1~
2mである。しかし雨季には湖の面積が大きく変化し、メ コン河からの流入水量の増加に伴っておよそ面積は
1. 国別情報
2. カンボジアの主な流域
*推計値(参考文献参照)
図3.1.1. カンボジアの主要河川 表3.1.1. 基本指標
年 BOD値(mg/L)
BOD水質環境基準値
最大値 最小値
2006 3.62 1.77
01-10mg/L
2007 不明 不明
2008 3.43 0.53 2009 3.80 0.20 2010 4.80 0.27 表3.1.2. メコン河のBOD計測値
pH
2004 2006 2008 2010
8.2 8 7.8 7.6 7.4 7.2 7 0
基準値:6.5〜8.5
BOD(mg/L)
2004 2006 2008 2010
7 6 5 4 3 2 1 0
基準値:1〜10(mg/L)
導電率(μs/cm)
2004 2006 2008 2010
メコン河上流(Chroy Changvar)
メコン河下流(Kien Svay)
バサック川(Ta Khmao)
Phnom Penh港(トンレサップ川)
TSS(mg/L)
2004 2006 2008 2010
基準値:25〜100(mg/L)
700 600 500 400 300 200 100 0
1000 800 600 400 200 0
図3.1.2.図3.1.6.
図3.1.4.
図3.1.5.
DO(mg/L)
2004 2006 2008 2010
8 7 6 5 4 3 2 1 0
基準値:2.0〜7.5(mg/L)
図3.1.3.
図3.1.2.~図3.1.6. 主要モニタリング地点における各水質項目のモニタリング結果
(出典:Sokha 2011)
題とは考えられていない(MoE 2010)。カンボジア環境 省環境汚染管理局(DoEPC/MoE)は、メコン河の指 定モニタリング地点(例えば、Chroy Changvar、Phnom Penh 港、Stoung Chouv、Kien Svay)で毎月、サンプ ル採取を行っている。表 3.1.2は、最近のメコン河水質 モニタリング結果の生物化学的酸素要求量(BOD)を 示しており、河川の水質はBODの国家水質環境基準
(10mg/L 未満)を満たしていることが分かる。他の水 質項目に関する各モニタリング地点の結果は、図3.1.2 から3.1.6に示す通りである。
(出典:MoE 2010)
湖沼及び貯水池
複数の文献によれば、トンレサップ湖の汚染レベルは 概して低いとされているが、水上集落及びその周辺で は局地的に水質の低下が見られている。環境省は2009 年以来、サンプルを採取して湖の水質を検査している が、2010 年の化学的酸素要求量(COD)のモニタリン グ結果では、最大値が水質環境基準を上回っている
(表3.1.3)。
年 Chhnok True(トンレサップ湖)
COD水質環境基準 最大値(mg/L) 最小値(mg/L)
2009 4.80 1.27
8mg/L未満 2010 8.57 1.0
表3.1.3. トンレサップ湖の水質(2009年及び2010年)
(出典:MoE 2009及び2010)
沿岸水域
カンボジアの海岸線はタイ湾に沿って435kmあり、沿 岸水域の海側境界は同国の排他的経済水域の外境に よって区切られ、沿岸域面積は55,600km2になる。陸 側境界に関しては、未だ十分には定められていないが、
現在は海岸から約5kmと考えられている。沿岸水域は、
Koh Kong、Kmapot、Sihanoukville及びKep各州に またがっている。沿岸水域の水質は概して良好であると 考えられているが、経済特区や海港等における開発活 動によって排出される固形及び液体廃棄物が適切に管 理されていない場合、沿岸水域や沿岸生態系に悪影 響が生じている可能性がある。ただ、2005~2006年の モニタリングでは、全浮遊物質(T S S)、溶存酸素
(DO)、BOD、全窒素(TN)、全リン(TP)すべてにお いて水質に問題はなかった(MoE、2006)。
地下水
地下水の水質に関するデータは非常に限られている が、メコン河、バサック川及びトンレサップ川各流域に位 置し、生活用水源としての地下水への依存度が62~
100%と高い州(MoWRAM、2008)において、地下水 がヒ素に汚染されていることが2000年の全国飲料水質 評価で判明している(Arsenic Center of Cambodia、
2010)。
5. 水環境管理の枠組み
法整備
カンボジアの水環境に関する現行の法的枠組みは、
図 3.1.7に示す通りである。水を含む天然資源管理の 目的は、環境の質及び公衆衛生の保護ならびに増進で ある(環境保護と天然資源管理に関する法律、第1条)。
水資源管理法(2007年)にも水質管理に関連する条項 があり、水質及び人間や生態系の健全性に悪影響を及 ぼす恐れのある活動に対して、排水に関する認可書ま たは許可の取得を義務付けている(第22条)。また、水 質、水量及び生態系のバランスが脅かされている地域 を、水利用の危険/制限区域として指定している(第23 条)。
水環境保全については、環境保護と天然資源管理 に関する法律の下で1999 年に制定された、水質汚濁 の管理に関する政令で詳細に述べられている。同政令 の目的は、公共用水域(例えば、河川、湖、地下水、海 水等)を汚染する恐れがある、もしくは既に汚染している 各種活動を規制することにある。同政令により、人間の 健康及び生物多様性のための水質環境基準(第7条)
や、汚染源の排水基準(第4条)が定められている。他 には、汚染源及びその排水のモニタリング(第4章)、公 共用水域のモニタリング(第5章)ならびに検査規則(第 6 章)も同政令に含まれる。また、環境保護と天然資源 管理に関する法律の下で定められている、固形廃棄物 の管理に関する政令、環境影響評価(EIA)手順に関 する政令等にも、水環境保全に関わる条項が含まれて いる。
2011年現在、水質管理に関する2つの法案が起草さ れている。環境省による環境汚染防止法案と、水資源 気象省(MoWRAM)による水質に関する政令案であ る。環境汚染防止法案は、水、大気及び土壌の汚染に 対するモニタリングと対策について規定するものである。
水質汚濁の管理に関する政令(1999年4月)
固形廃棄物の管理に関する政令(1999年4月)
環境影響評価プロセスに関する政令(1999年8月)
環境保護と天然資源管理に
関する法律(1996年12月) 水資源管理法(2007年)
カンボジア王国水供給及び 衛生に関する法案
国家水供給及び衛生に関する政策
(2003年2月)
カンボジア王国国家水資源政策
(2003年1月)
カンボジア王国水供給及び衛生に 関する政策枠組み(2001年2月)
飲料水基準(2004年)
制度的措置
環境省は、環境保護と天然資源管理に関する法律 に基づき、カンボジアの環境及び天然資源*1の保護と管 理を所管している(第9条)。詳細については、Box3.1.1 に示す。同国の環境法制に基づき、環境省は化学物質 やその他の汚染源を使用する工場に対し、排水を処理 してから放流水域に排出するよう命令することができる
(MoE 2009)。地方及び都市の環境部局は、水質モニ タリング等の水環境管理に責任を負う。
1999 年に設立された水資源気象省も水環境管理に 従事し、水質をモニタリングしている。原則として、環境 省は水質汚濁に関連する業務を所管し、水資源気象省 は水質に関する業務を所管する。
図3.1.7. カンボジアの水環境管理に関する法的枠組み
(出典:MoEJ 2009)
*1 天然資源に含まれるのは、土地、水、空域、大気、地質、生態系、鉱物、石油・ガス、岩・砂、貴石、森林・林産物、野生生物、魚類及び水産資源等である
(環境保護と天然資源管理に関する法律、第8条)。
天然資源に対する環境影響の調査及び評価(第9条)。
天然資源の保全及び合理的利用を担保するため、他関連省庁に対し勧告を行う(第9条)。
汚染源をすべてリストアップする(第12条)。
汚染を防止し、緩和するための政令を策定する(第13条)。
汚染源及び天然資源の開発活動をモニタリングする(第14条)。
汚染源の立ち入りを行い(第15条)、違反した場合には改善を命令する(第20条)。
国民の要請にしたがい、同省の活動に関する情報を提供する(第17条)。
Box 3.1.1. 環境保護と天然資源管理に関する法律に基づくカンボジア環境省の所管事項