第 3 章 ペロブスカイト量子ドット
3.3 CsPbI 3 ペロブスカイト量子ドットモデル
図19 CsPbI3ペロブスカイト量子ドットの電荷中性モデルとその構造最適化構造。淡緑色、紫色、
黒色の球はそれぞれセシウム、ヨウ素、鉛を示す。 a) Cs7Pb10I27量子ドットモデルb) Cs8Pb7I11
量子ドットモデルc) Cs8Pb11I30量子ドットモデルd) Cs20Pb8I36量子ドットモデル
表7 各ペロブスカイト量子ドットモデルの全体と1原子当たりの生成エネルギー
生成エネルギー
/eV 1原子あたり
/eV Cs8Pb8I24-85.74 -2.14
Cs7Pb10I27
-94.31 -2.14
Cs8Pb7I11-105.24 -2.15
Cs8Pb11I30-79.30 -2.14
Cs20Pb8I36-144.39 -2.26
ab
c d
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構築したモデルは全て電気的に中性となるようなモデルとなっている。Cs7Pb10I27モデルは鉛及び ヨウ素原子が表面にあり、C3vの対称性を持つ。Cs8Pb7I11は鉛及びセシウム原子が表面にあり、こ の中で最も高いD4hの対称性を持つ。Cs8Pb11I30は鉛及びヨウ素原子が表面にあり、C3vの対称性 を持つ。Cs20Pb8I36はヨウ素及びセシウム原子が表面にあり、C3vの対称性を持つ。これらについて 構造最適化を行った結果が図19である。
示した図の通り構築した4つのモデルのうちCs20Pb8I36のみペロブスカイト構造を維持したまま安定 な構造へと収束した。また生成エネルギーを比較しても同様にペロブスカイト構造を維持することが できたCs20Pb8I36の構造が各原子間に結合が形成され最も安定していることが確認できる。
図20 a) Cs20Pb8I36モデルb) Cs20Pb8I36モデルHOMO c) Cs20Pb8I36モデルLUMO d) Cs19Pb8I36-モ デル e) Cs19Pb8I36-モデルHOMO f) Cs19Pb8I36-モデルLUMO
a b
d e
c
f
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HOMOは鉛のs軌道とヨウ素のp軌道が中心となり、固体のペロブスカイトの特徴と同様に反 結合的な軌道を形成している(図20b)。この構造がC3vであるためにHOMOには軌道の偏りが見 受けられる。一方LUMOは鉛のp軌道とセシウムのs軌道を中心としているが、HOMOと違い単 一のセシウム原子が過大に寄与している(図20c)。このような単一の原子による軌道の形成が実 際の量子ドットに同様に現れるとは考えられず、このセシウムが不純物として働いていると考えられ る。よってCs20Pb8I36のモデルからLUMOを形成するセシウム原子を取り除いたCs19Pb8I36-モデル を構築した。Cs19Pb8I36-モデルはCs20Pb8I36モデルと同様にヨウ素及びセシウム原子が豊富な表面 で、対称性はより高いOhとなっている。この構造では電気的に中性ではなく1価のアニオンとなっ ているが、量子ドットがデバイス内での電子移動によって負の電荷を持つことは十分考えられるた めアニオンのままモデルとして計算を行った。
構造最適化後においてもCs19Pb8I36- モデルはペロブスカイト構造を維持し、対称性もOh
を保持した状態だった。また分子軌道について、HOMOは鉛のs軌道とヨウ素のp軌道が中 心で反結合的な軌道となり、懸念であった分子軌道の偏りが無くなった(図20e)。LUMOは 鉛のp軌道が中心となる対称的な軌道を形成し、セシウム原子の寄与は確認されなかった
(図20f)。以上の結果よりCs19Pb8I36-はペロブスカイト量子ドットの電子状態をよく再現した モデルであることが確認できる。本研究ではこのCs19Pb8I36-モデルを基としてペロブスカイ ト量子ドットの発光特性に関する検討を行う。