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第 4 章 Armitage-Doll モデルを用いた症例対照研究シミュレーション 14

4.11 まとめ

4.30:

ばく露群

10

のオッズ比(

x = 10

診断時期

1

2

3

4

2000–2004 1.30 (1.10–1.53) 1.11 (0.96–1.28) 1.18 (0.95–1.36) 1.54 (1.32–1.82) 2010–2014 1.73 (1.35–2.14) 1.21 (0.95–1.50) 1.10 (0.85–1.41) 1.84 (1.40–2.33) 2020–2024 3.58 (2.69–4.73) 1.81 (1.44–2.39) 1.45 (1.16–1.84) 3.24 (2.50–4.10)

シミュレーションで得られたグリオーマの発症率の年次推移は

2010

年頃では実際の年 次推移と大きな差が見られない。症例の診断時期が

2000–2004

年では、

2

3で有意なリス ク増加が検出されず、

1

4 で検出された。症例の診断時期が

2010–2014

年では、

2

3で有 意なリスク増加が検出されず、

1

4で検出された。症例の診断時期が

2020–2024

年では、

⃝–

1

4で有意なリスク増加が検出された。症例の診断時期によらず

4 の症例のみ通話時間 を多めに回答するバイアスがある場合、いくつかのばく露群で誤ったリスク増加が検出さ れた。ばく露群

10

について、

1 の脳におけるばく露量でばく露評価をした場合は、症例 の診断時期によらずリスク増加が検出された。

2

3では、

1 に比べて過小評価され、症 例の診断時期が

2000–2004

年、

2010–2014

年の場合は有意なリスク増加が検出されなかっ た。脳におけるばく露量でばく露評価した時のオッズ比が小さい場合は、累積通話時間で ばく露評価をするとオッズ比が過小評価され、リスク増加の検出が困難になることが示唆 された。

4では、診断時期が

2000–2004

年、

2010–2014

年の症例対照研究では過大評価さ

れたが、

2020–2024

年の症例対照研究では過小評価された。過小評価された理由は、差別

的な想起バイアスよりランダム誤差が優位になったためだと考えられる。

報告される通話時間に誤差がある場合、非差別的な想起バイアスとランダム誤差が ある場合ではオッズ比は過小評価される

報告される通話時間に誤差がある場合、差別的な想起バイアスと非差別的なランダ ム誤差がある場合では、誤ったリスクの増加が観察されてしまう

5 章 結論

本論文では、発がんモデルを用いて携帯電話使用と脳腫瘍の疫学研究に関する考察を 行う手法を開発した。本論文では、発がんモデルである

Armitage-Doll

モデルを用いて、

トレンド解析と症例対照研究のシミュレーションを行った。

Armitage-Doll

モデルは

1

つ の細胞ががん化するまでに

k

回のイベントが必要であるというモデルである。はじめに、

Armitage-Doll

モデルのパラメータをグリオーマの年齢別の発症率から求めると

k = 3

なった。

次に、

k = 3

Armitage-Doll

モデルを用いて、携帯電話を所有した時点から

1

回目の イベントの瞬時発生率のみ

2

倍になる場合、

2

回目のイベントの瞬時発生率のみ

2

倍にな る場合、

3

回目のイベントの瞬時発生率のみ

2

倍になる場合の

3

通りで、グリオーマの発 症率の年次推移を導出した。

1

回目のイベントの瞬時発生率のみ増加すると仮定した場合 の結果から、高周波電磁界に発がん性がある場合でも、グリオーマの発症率の年次推移に 増加が見られるのは

2010

年以降になる可能性があるので、今後の年次推移をよく観察す る必要があることが示唆された。ばく露から相対リスクが増加するまでの遅れを恣意的に 決めずに、トレンド解析行うことができた。

最後に、

k = 3

Armitage-Doll

モデルを用いて、高周波電磁界ばく露で

1

回目のイベ ントの瞬時発生率が増加すると仮定して、症例対照研究のシミュレーションを行った。症 例対照研究のシミュレーションではばく露評価の不確かさの影響を、症例の診断時期をい つにするかということを含めて検討した。本論文では、ばく露評価の不確かさの影響とし て、報告される通話時間の誤差の影響(先行研究

[2]

と同様)と、携帯電話の出力電力が 一定でないため、同じ通話時間でも脳におけるばく露量が異なることの影響を検討した。

その結果、以下のことが示唆された。

症例対照研究

[1]

が行われた

2000

年頃では、高周波電磁界に発がん性がある場合で も、リスクの増加を検出することが困難な可能性がある

過去の症例対照研究でリスク増加が検出できていない場合でも、それ以降の症例対 照研究でリスクの増加が検出される可能性がある

累積通話時間でばく露評価をした場合、報告される通話時間に誤差がなくても過小 評価される

差別的な想起バイアスがある場合、誤ったリスク増加が検出されてしまう

本論文では、脳での

SAR

が端末の出力電力のみに依存するとしたが、電波の周波数等 を考慮する必要がある。また、基地局からのばく露も無視できないことが報告されてい る

[13]

ため、携帯電話端末以外からのばく露についても考慮する必要がある。これらを考 慮した検討も、本研究で開発した手法を用いて行うことができ、今後行っていく必要があ ると考える。

関連図書

[1] INTERNPHONE Study Group, “Brain tumor risk in relation to mobile telephone use: results of the INTERPHONE international case-control study,” International journal of epidemiology, Vol.39, no3, pp.675-694, 2010.

[2] Vrijheid M, et al., “The effects of recall errors and of selection bias in epidemiologic studies of mobile phone use and cancer risk,” J Expo Sci Environ Epidemiol., Vol.16, No.4, pp. 371–384, Jun 2006.

[3] S. Chapman, L. Azizi, Q. Luo, F. Sitas,“Has the incidence of brain cancer risen in Australia since the introduction of mobile phones 29 years ago?,” Cancer Epidemi-ology, April 19, 2016.

[4] P. Armitage and R. Doll, The age distribution of cancer and a multi-stage theory of carcinogenesis,” British journal of cancaer, Vol.8, no.1, pp.1-12, 1954.

[5] Hori M, et al, “Cancer incidence and incidence rates in Japan in 2009: a study of 32 population- based cancer registries for the Monitoring of Cancer Incidence in Japan (MCIJ) project,” Japanese journal of clinical oncology, Vol.45, no.9, pp.884-891, 2015.

[6] Committee of Brain Tumor Registry of Japan, “Report of Brain Tumor Registry of Japan (1984-2000)”, Neurol Med Chir (Tokyo)., Vol.49, pp.1-96, 2009.

[7] Pierce DA, Vaeth M,“Age-time patterns of cancer to be anticipated from exposure to general mutagens,” Biostatistics, Volume 4, No.2, pp.231-248, Apr 2003.

[8] K. S. Crump, R. B. Howe, The Multistage Model with a Time-Dependent Dose Pattern: Applications to Carcinogenic Risk Assessment, Risk Analysis, 4, 3, pp.163-176, September 1984.

[9]

厚生労働省

, “

平成

26

年人口動態調査

”, http://www.mhlw.go.jp

[10] Statistics and Information Department, Vital Statistics 2015, Tokyo: Ministry of Health, Labor and Welfare, 2016.

[11] Sato Y, et al., “Time trend in incidence of malignant neoplasms of the central nervous system in relation to mobile phone use among young people in Japan”, Bioelectromagnetics, Vol.37, no.5, pp282–289, 2016.

[12] Kosuke Kiyohara, et al., “Long-term recall accuracy for mobile phone calls in young Japanese people: A follow-up validation study using software-modified phones”, J Expo Sci Environ Epidemiol., doi:10.1038/jes.2016.73

[13]

新沼友望

,

, “

携帯電話基地局の電波による遠方界ばく露の評価および第

3

世代携帯 電話端末によるばく露量との比較

”,

信学技報

, EMCJ2015-112, 2016.

謝 辞

本研究を進めるにあたり、日頃から研究方針や方法、資料作成や発表について、数多く の御指導や御指摘、御助言を熱心にして下さいました多氣 昌生 教授に心より感謝致しま す。お忙しい中、夜遅くまで資料作成などについて相談する時間を設けて頂き、熱心に御 指導や御指摘、御助言を下さり、大変お世話になりました。また、ばく露応答などのシミュ レーションの条件についての御助言、御指摘を下さり誠に感謝しております。論文の情報 提供、症例対照研究シミュレーションや資料作成についての数多くの御指摘、御助言を熱 心にして下さいました相本 篤子 特任准教授に深く感謝致します。論文の情報提供だけで なく、論文の内容についても丁寧に御教授頂き、報告される通話時間に誤差が含まれる場 合のシミュレーションをスムーズに行うことができ、大変嬉しく思います。本研究の進捗 状況報告や発表について多くの御指摘、御助言を下さいました鈴木 敬久 教授に深く感謝 致します。乱数やモンテカルロシミュレーションについての御指摘や御助言を下さり、乱 数を使用する際の注意点についての知識を得ることができました。また、進捗状況報告に ついて様々な御意見や御助言をして下さいました

KIK Alfred

助教に感謝致します。

出生年別年齢別携帯電話所有率のデータを提供下さいました東京女子医科大学医学部衛 生学公衆衛生学第二講座の佐藤 康仁 講師に深くお礼を申し上げます。時代の流れを考慮 した本研究のシミュレーションに不可欠なデータであるためとても感謝しております。ま た、

SMP

のデータを提供下さいました東京女子医科大学医学部衛生学公衆衛生学第二講 座の清原 康介 助教に深くお礼を申し上げます。本研究のシミュレーションにおける仮想 的な人口集団の通話時間と端末の出力電力の設定に不可欠なデータであるためとても感謝 しております。また、疫学の観点から本研究についての御意見や御助言、御指摘をして下 さいました東京女子医科大学医学部衛生学公衆衛生学第二講座の山口 直人 教授と小島原 典子 准教授に深く感謝致します。

本研究にご協力して頂いた情報通信研究機構の和氣 加奈子 様、渡辺 聡一 様に深く感 謝致します。

端末の出力電力から脳全体の平均

SAR

に変換するためのデータを提供下さいました電 磁環境工学研究室研究補助員の幾代 美和 様に深く感謝致します。また、本研究にご協力 して頂いた電磁環境工学研究室研究補助員の江嵜 かおる 様に深く感謝致します。

疫学研究グループの先輩として、研究の御助言や御指摘を下さいました新沼 友望 氏に 感謝致します。また、研究室で意見交換をして頂きました黒崎 聡太 氏に感謝致します。

研究の助言や意見交換を行ってきました電磁環境工学研究室の同期である伊東 直基 氏、

山本 達也 氏、中村 瑛郁 氏に感謝致します。共に博士前期課程を修了したことを大変嬉 しく思っています。

最後に、日頃から資料作成や発表練習など多くのことに御協力、御助言をして下さいま した電磁環境工学研究室の皆様に感謝致します。

本研究は、総務省提案公募型研究

(

生体電磁環境

)

「無線通信等による電波ばく露の定量 的実態把握と脳腫瘍の罹患状況に基づくリスク評価」によって行われた。

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