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第 6 章 まとめ

新しく開発されたヒートポンプ式デシカント空調システムの実測調査を行い、以下の知 見を得た。

1)2013 年 12 月~2014 年 3 月の各月において給気温度は設定温度 20℃に達しているのは 6%以下であったが、15℃以上は約 70%であることがわかった。また、外気と給気が変動 しても還気はほぼ一定の変動であることがわかった。2015 年 1 月 19 日~23 日では、設 定温度 20℃に達しているのは 12%以下であったが、15℃以上は 100%であることがわか った。

2)2013 年 12 月~2014 年 3 月の各月において給気絶対湿度は設定絶対湿度 10gに達して いるのは 8%以下であったが、7.6g以上は約 80%であることがわかった。2015 年 1 月 19 日~23 日では、設定絶対湿度 10gに達しているのは 0%であったが、7.6g以上は 20%

であることがわかった。

3)2013 年 12 月~2014 年 3 月の各月において給気相対湿度は設定相対湿度 70%に達して いるのは約 60%であったが、給気相対湿度 55.1%以上は約 95%であることがわかった。

2015 年 1 月 19 日~23 日では、設定相対湿度 70%に達しているのは 0%であったが、給 気相対湿度 55.1%以上は 24%であることがわかった。また、どちらも還気相対湿度 40.1%

以上は約 90%であることから、室内の相対湿度は満足していると考えられ、還気温湿度 が 20℃以上、38%以上であることから室内の推奨温湿度環境は満足していることがわか った。還気相対湿度はほぼ一定で 40%~50%で変動であった。

4)2013 年 12 月~2014 年 3 月の 4 ヶ月の平均加湿量は 703 kg/day で 4 ケ月の平均電力量 は 190 kW/day であった。4 ケ月の平均処理熱量は 2,930MJ/day で、そのうち顕熱が 3~4 割で潜熱は 6~7 割であることがわかった。また、処理熱量が変動しても顕熱と潜熱の割 合はあまり変わらないことがわかった。2015 年 1 月 19 日~23 日の平均加湿量は 39.6 kg/h で平均電力量は 16kW/h であった。平均処理熱量は 241MJ/h で、そのうち顕熱が 6~7 割 で潜熱は 3~4 割であることがわかった。

5)2013 年 12 月~2014 年 3 月において定格 COP3.35 以上は約 85%であり、熱負荷率が 0.6 以上の時に定格 COP3.35 を超えていることがわかった。定格 SHF0.45 以下は約 75%であ り、加湿負荷率が 0.9 以上の時に定格 SHF0.45 を下回ることがわかった。

2015 年 1 月 19 日~23 日では、定格 COP3.35 以上は 80%であり、熱負荷率が 0.55 以上の 時に定格 COP3.35 を超えていることがわかった。定格 SHF0.45 以下は 3%であり、加湿負 荷率が 0.78 以上の時に定格 SHF0.45 を下回ることがわかった。

6)2013 年 12 月~2014 年 3 月において係数の絶対値の大きさから各因子の影響度を考え ると給気温度は還気湿度、外気温度、電力量の順に大きく、給気湿度は還気湿度、外気

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湿度、外気温度、電力量の順に大きいことがわかった。給気温度を 20℃以上にするため には還気湿度は 10.8g以上、外気温度は 51.2℃以上、電力量は 129 kW 以上必要である ことがわかった。また、給気湿度を 10g以上にするためには、還気湿度は 9.8g以上、

外気湿度は 29g以上、電力量は 96 kW 以上必要であることがわかった。しかし、それぞ れの測定箇所の温湿度と電力量だけでは正確な値を求めることが出来なかった。

2015 年 1 月 19 日~23 日において係数の絶対値の大きさから各因子の影響度を考える と給気温度は給気側全熱交換器後、給気湿度は排気側全熱交換器後が最も影響を与えて いることがわかった。給気温度を 20℃以上にするためには給気側全熱交換器後は 21.5℃

以上、排気側全熱交換器後は 15.7℃以上、蒸発器後は7.4℃以上必要であることがわか った。給気湿度を 10g以上にするためには、給気側全熱交換器後は 12.6g以上、排気側 全熱交換器後は 7.8g以上、蒸発器後は 8.8g以上、外気湿度は 0.5g以上必要であるこ とがわかった。

- 53 - 今後の課題

本研究では、冬期のみの結果であり中間期の解析は行っていない。よって中間期におい て、デシカント空調システムがどのような運転を行い、どれほどの性能なのかは不明であ る。そこで、年間を通してデシカント空調システムがどのような運転を行い、どれほどの 性能なのか明確にするために中間期の解析を行う必要がある。また、2013 年 12 月~2014 年 3 月の測定箇所は外気、還気、給気の三箇所、2015 年 1 月 19 日~23 日の測定箇所は給 気側全熱交換器交換後、凝縮器通過後、再生側デシカントロータ通過後、排気側全熱交換 器通過後、蒸発器通過後、排気側デシカントロータ通過後の 6 箇所であるが、空調機内部 の解析は行いきれていない。そこで、より詳細な性能調査を行うために空調機内部6箇所 における再生温度、デシカントロータの加湿効率、全熱交換器の交換効率などの解析を行 う必要がある。また、本研究では加湿器が運転しており、加湿器なしの性能を明確にする 必要がある。

参考文献

1)安松直樹 永田久美:低温再生デシカントと全熱交換による還気負荷の軽減、日本冷凍空 調学会、86、pp.9–13、2011-10

2)上村紘世 宋 城基:ヒートポンプ式デシカント空調システムの性能に関する研究 夏 季における実測調査、日本建築学会中国支部研究報告集、 38、 pp.317-320、 2015-03

3)伊藤剛 安松直樹 平田清 中山和樹:低炭素化と知的生産性に配慮した最先端オフィ スにおける潜熱顕熱分離型空調の研究 第一報 レタンエアデシカント空調機の実負荷 運転における最適能力調整、日本冷凍空調学会論文集、29、pp69~79、2011-11

4)永田久美:リタンエアデシカント空調機 リタンエア除湿方式による高効率外気処理機、

クリーンエネルギー、pp39~44、2010-12

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