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 3 ‑  1  「 少子化社会 」に お け る働 き方の 見直 しの 必 要 性 

 

  第 1 章では、我 が国の少子化の 現状とこれまでの対策、そして 先んじて少子化 という現象 を経験 してきた先進諸国 の取り組み等をみてきた。そこでは 、出生率の低下傾向から脱した 国 々が、 育児に 対する経済的支援等に 加え、「多 様な働 き方の 実現」 に向けて 積極的 に取り 組んできたことがわかった。  

  これまでの我が国の一 連の少子化対策は 、出生率の低下傾向を止めることはできなかった が 、決し て不 十 分だったのではない。 保育所 の数や 質、育児休業制 度は、「子 育ては 家庭の 問題、 ひいては個人の問 題であり、政府は 関与しない」と い うスタンスをとってきたアメリ カな ど に比べれば、か な り充実しているといえるであろう。 しかし、多くの女 性が、結婚・

出産を 期に仕事を辞め る か、働き続けるのではあれば子ど も は生まないという 道を選択して いる。 そして、働き続けながら子どもを生 んだ女性は、休む 間もなく「労働者 と妻と母親」

という 3 役をこなす日々を送っている。  

  では 、男性はどうか。 家事・育児参加を 求められても、そ の時間をどう捻出 すればいいの か と悩むほどに 、男性は 長時間労働の なかにいる。 人々の 声に耳を 傾け れ ば、「男は 仕事、

女 は家庭 」と い う性別役割分業感は年 々変わってきており、「 家事・ 育児に参 加し た い」と 思う男 性も増えている 。にもかかわらず 、男性の育児休業取得率は 1 割にも達しないという のが現 実である。  

  こうした状況のまま、新たな育児支援策を投入しても、大きな変化は起こらないであろう。

少子化 は高齢化と背中合 わせであり、国 全 体の人口が減少し 、社会は高齢化し 、労働力人口 も減少 していく。女性の 労働力への期待は 、これまで以上に 高まるであろうし 、高齢者も同 じである 。そうしたなか 、これまでのような 働き方 で、「仕事 も家庭 も」と い う生き 方が実 現できるのであろうか。 働く女性が増加すれば、ますます、 男性の家庭参加が 求められる。

しかし 、現在の「働き方 」を見直さなければ、男性の家事・ 育児役割の強化を 望むことは不 可能であろう。  

  これまでの少子化対策 の限界を超えるには、働き方の柔 軟 性を高めていくことが必要であ る。我 が国でも、一部の 企業ではフレックス勤務や在宅勤務制度が実施されているが、利用 者 の 数 は ま だ多 く な い

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。 フ レ ッ ク ス勤 務 が 「遅 く 出 勤 して 遅 く 帰 宅す る 」 と い う 単 な る

「 労働時間の移動 」に過ぎず 、「仕事と家庭 の両立」に有効に 機能していないというケースも 多い。      

  また 、我が国では、柔 軟な働き方を求めると、パートタイムや派遣労働などのいわゆる正        

1 わが 国で 在 宅 勤 務を 利用 し て い る労働者 は 、平 成14年 時 点 で3. 9% で あ る。(厚 生 労 働 省「 情 報 通 信 機 器を 利 用した 在宅勤務 の適 切な導入及 び実 施の た め のガイドライン 」(2004) より 。)

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規職員 とは別の就業形態 となってしまい、 大きな賃金格差や 不安定な雇用条件 を受け入れざ る を得 ない場 合が多 い。EUでは 、パートタイム労働者 とフ ル タ イ ム労 働 者の均 等 待 遇に関 する指令が成立(1997年)している。こうした取り組みも、参考にする必要があるであろう。 

  さ ら に、「家庭 や育児との両立」 という視点からのみ、「働 き方の見直し」を 促進させよう とすることにも 限界が あ る。それは、 これまでの両立支援 が、「働く 女性」を 対象としてき た が た め に生 じてしまった 限界 と同 じである 。現 在、 家庭 や子 供を も っ て い な い従業員の ニーズに も応えていかなければ 、従 業 員の中 で、不平等感 が生じてしまう 。そ し て、「同僚 に負担 をかける」、「周囲 の理解を得られない」等を理由に、 育児休業を利用できないといっ た状況 に陥ってしまう恐 れがある。  

  このような「 限界」を 超えた 「働き 方の見 直し」 のために、「子育 て」や「 家族」 にとど まらない、全ての労働者 の仕事と「生活」 の調和、すなわち 「ワーク・ライフ ・バランス」

という 視点が必要となってくるであろう。 ワーク・ライフ・ バランスは、労働時間の短縮・

柔軟化 、そして働く「場 所」の柔軟化といった「働き方のフレキシビリティ」 の確保をポイ ントとしており、多様な 働き方を実現するためにも重要な視 点であると思わ れ る。  

   

 3 ‑  2  欧 米の ワ ー ク・ ライフ ・バ ラ ン スへ の取 り組み か ら い え る こ と 

 

  上 記の 視点 に基 づき 、第 2 章で はイギリス 、ア メ リ カ及 びドイツ における ワ ー ク ・ライ フ・バランス支援の取り 組みに注目した。 特にイギリスでは 女性の就業率の高 まり、育児等 の 家 庭 責 任を 抱え な が ら働 く労働者 の増 加、 長時間労 働などを 背景 と し て、 ワーク ・ライ フ・バランスの支援が政策上の重要課題となっていた。イギリスの政策の特徴 は柔軟な雇用 制度の 導入促進を核としつつ、父親休暇の 法制化に象徴されるように男性の家 庭・育児への 関わ り を促進するスタンス、先進的な大 企 業や専門コンサルタント機関との連 携、ワーク・

ライフ ・バランス支援がもたらす経営上の メリットを強調している点などがあげられる。  

  これらの政策からわが 国への示唆を得るためには、イギリスとわが国との様 々な社会的背 景の相 違をふまえたうえでその効果を把握 し、評価を行うことが必要である。 しかし限られ た時間 の中で、それは 本研究の及ぶところではなかった 。ここでは第 2 章で見たことをもと に、わ が国の「働き方」 に関して言えることをいくつかあげるにとどめる。  

 

   3 ‑  2 ‑  1  ワーク・ライフ・ バランスの土壌づくり    

  わが国 では「 次世代育成対策推進法 」に基 づき、 301人以上 の労働者 を雇用 する事業主に 対 し て 「 一 般 事 業 主 行 動 計 画 」 の 策定 を 義務 づ け ( 300人 以 下 の 事 業 主 に対 し て は努 力 義 務)るなど、政府は少子化対策としての両立支援の促進に力 を入れている。働 き方の見直し

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という観 点か ら も、厚生労働省 が「仕 事と生 活の調 和に関 する検討会議報告書」( 2004)を 公表するなど検討が進められている。  

  し か し、 小倉( 2005)

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によれば、 わが 国で はパートタイマー が増 加す る一方 、正社員中 堅層の 長時間労働が増え る傾向にあるという。週60時間以上働く者は25歳〜 44歳の男性では 全体の 2 割を 超えている( 2003年)。「過労死」 を認定する際の 指標の一つである 月80時間を 超 え る超 過 労 働( サービス 残業 を含 む) を し て い る者 は、 30歳 代 男 性の 16% 、 20歳 代では 18%に及ぶ。こうした状況をふまえ、現在進められている時短促進法 の見直しに当たっては、

個別の 労働時間問題を よ り重視し、労働者 の健康や生活への 配慮を一層強めていく必要があ ると小 倉は指摘している 。  

  そうした制度面の整備 と併せて、まだ広 く認識されているとはいえないワ ー ク・ライフ・

バランスという概念が、 今後わが国の社会 に浸透することを 期待したい。ワ ー ク・ライフ・

バランスの実現のためには、雇用主と個人双方の意識改革が 必要だ。柔軟な雇用制度を導入 したとしても、それを受 け入れるように企 業の風土や経営者 、労働者の意識が 変わっていか なければ企業に根付かないし、利用されない。そのためには、第 2 章でみた国々 の取り組み にならえば①ワーク・ライフ・バランスがもたらす企業経営上のメリットに注 目しながら、

②経 営 側と労働者側が協 働して取り組むことがポイントとなろう。政策に求められるのはそ れ を バックアップ する 機能 ということになる 。イ ギ リ ス、 アメリカ をはじめ ワーク ・ライ フ・バランスに取り組む 海外企業の事例を 紹介することは、 その一つの方策であろう。  

  また 、ドイツの取り組 みでみたように、 地域レベルでの産官学のネットワークが主体とな り 、「 家 族 に優 し い 環境 づくり 」 を支 援 す る と い う取 り 組 みも 注 目さ れ る 。労 働 者の 「 生 活」の 土壌をなす地域社会が、ワーク・ライフ・バランスの 支援にどうかかわっていくか。

今後検討を進める上で、 参考となる取り組 みである。  

 

   3 ‑  2 ‑  2  柔 軟な働き方を普 及させるために    

  第 2 章でみたイギリスの 調査結果では、「パートタイム 」や「 期間限定労働時間短縮」な どの労働時間が短くなる 「時短型」の働き 方は、利用可能性 が高いにもかかわらず利用率は 低か っ た。労働時間を減 らすことが雇用保障やキャリア形成 にダメージをもたらすと、半分 以上の 労働者が考えていた。そうした懸念 が「時短型」制度 の利用を阻害している可能性が ある。 わが国では「短時間正社員制度」の 検討が進められているが、イギリス の例を踏まえ るなら 、制度の利用を進 めるためにはそれが雇用の安定や昇進上のダメージにはつながらな いことを雇用主が担保す る必要がある。特 に男性の場合、そうした懸念はなかなか払拭しづ らいだろう。労働者、管理者双方の意識改革が必要である。  

       

2 小 倉 一 哉「 時 短 促 進 法の改 正/ 多様 な働 き方 に対 応」日 本 経 済 新 聞(2005年 2 月28日付 )

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