(1)牧野内昭武:塑性と加工,40−460(1999−5),414−423.
(2)蔦森秀雄・岩田徳利・鈴木直守:塑性と加工,44−508(2003−5),519−523.
(3)宅田裕彦:塑性と加工,40−461(1999−6),514−519.
(4)上森武・藤原賢司・岡田達夫・吉田総仁:塑性と加工,42−480(2001・・1),64−69.
(5) 滝島清:塑性と加工,46−534(2005−7),545.
(6) F.Barlat and工Lian:International Joumal of Plasticity,5(1989),51−66.
(7) Daniel Hildillg and Erik Schedin: 4th European LS−DYNA Users Conference,
Material H(2002),41−51.
(8) John O.Hallquist:LS−DYNA Theoret輌cal Manual(1998),16.61−16.62, Livermore Software Technology.
(9)ANSYS LS−DYNAセミナー(2003),2.17−2.18,サイバネットシステム.
(10)吉田総仁:弾塑性力学の基礎,(1997),196497,共立出版.
(11)比良隆明・平本治郎・坂田敬:川崎製鉄技報,33(2001)2,66−71.
.78一
6。結
一一シ一 △冊本研究は,高強度鋼板の採用の増加にともない発生している成形上の問題を軽 減するための基礎的研究として,IT関連技術を利用して,薄鋼板の高速塑性特性 や変形の進行にともなう塑性特性の変化および高温下での塑性特性を取得し,得 られた塑性特性を検討することで,実際の薄鋼板の成形に用いることのできる塑 性学的指針を得ることを目的とした.
本研究で得られた結果をまとめると以下のとおりである.
第1章では,薄板鋼板の置かれている現状とその背景を述べるとともに,これ までに行なわれた関連する研究を紹介し,本研究の目的と研究の進め方,ならび に研究内容の概要を述べた.
第2章では,成形量や成形速度により製品の寸法に違いが生じる問題に対応し て,室温下の薄鋼板の塑性異方性に及ぼす引張ひずみと引張ひずみ速度の影響を 検討した.具体的には高強度鋼板とSPCCのア値およびη値を比較し検討し,つ
ぎのようなことが明らかになった.
τ値に関しては,平均γ値およびア値の面内異方性4アはひずみ速度とひずみの 両方に依存し,その程度は材料により異なることがわかった.SPCCと比較する と,DP鋼やTRIP鋼の平均ア値に及ぼすひずみ速度とひずみの影響は小さかった.
また,DP鋼においては,ひずみの増大にともなって1∠ア1は小さくなった.
SPCCと異なり,高強度鋼板の平均瞬間η値万*はひずみ依存性を示し,ひずみ の増大にともないが値が低下した.その原因は,本試験で適用したひずみ速度 下での自己発熱による試験片温度の上昇にともなう転位の熱活性化運動過程に関 係し,温度上昇が大きいほど転位が動きやすくなったことにあると考えられる.
DP鋼についてはひずみが大きくなると1∠が1は0に近づいた. JSC980Yはひず み速度の依存性もあり,己が高くなると計が大きくなった.
一79一
これらの結果は,DP鋼板のプレス成形においては,被成形物各部でのεの差を 小さくするためにコーナー部半径を大きくすることでεの不均一を軽減し,被成形 物の割れを防止したり,試行時と実成形時のプレス速度を同一にし,被成形物の 寸法の違いを小さくしたりできることを示唆している.
第3章では,変動温度サイクル法による薄鋼板の変形荷重温度特性の簡易測定 法を考案し提案した.提案した簡易測定法は,三点曲げ試験において試験片に変 動する温度サイクルを与えながら,継続した変形荷重を測定する試験法である.
この変動温度サイクル試験法では,加熱状態での三点曲げ変形荷重と,加熱変 形後室温まで冷却したときの三点曲げ変形荷重のデータを同時に得ることがで
きるため,薄鋼板の曲げ変形荷重温度特性を,簡便に知る方法として有用である ことが明らかになった.さらに,変動温度サイクル試験の結果から,加熱温度に 対応したスプリングバック量(角度)を推定する方法を確立し,その方法で求め たスプリングバック量の推定結果と試験結果がほぼ一致することを確認した.
第4章では,薄鋼板の成形性に及ぼす成形温度の影響を検討した.塑性特性の 基礎となる単軸引張試験により,成形過程での塑性特性の変化に着目して検討し,
得られた結果はつぎのとおりである.
総じて言えば,JSC980Yを除いてひずみ8の進行にともなう戸,」7の変化に対 する温度の影響は少ないといえる.ただ,JSC980Yでは,300℃において10%を
こえる大きな変形を行なう場合に,加熱成形により最大荷重点を与えるゾが約 25%大きくなる効果が得られることが分かった.
η値に関しては,室温下と同様に高温下においても最大引張荷重点で,ひずみ εと瞬間η値であるがとが一致することが確認された.また,試験に供したいず れの鋼板も青熱脆性温度域を除き成形温度の上昇にともない最大引張荷重点を与
えるひずみεが小さくなった.このことは加熱により成形範囲が狭くなることに 注意すべきことを意味している.一方では,JSC980Yのように,青熱脆性域で最
.. W0.
大引張荷重を与える5が大きくなる特性を活用することが可能であることも示唆
している.
第5章では,第3章・第4章の結果を用いて単軸引張試験における試験片挙 動のコンピュータ解析を行ない,解析の実用化のための基礎的指針を得た.研究 は,動的陽解法有限要素解析に依り,BarlatとLianの異方性塑性モデルを適用し て行ったコンピュータ解析の結果を,単軸引張試験で得られた結果と比較するこ
とで進めた.
得られた結論はつぎのとおりである.まず,有限要素解析法については,塑性 変形を扱う場合は静的陰解法でなく動的陽解法のほうが実際の現象に適合してい ることが分かった.動的陽解法を用いた場合,BarlatとL輌anの異方性塑性モデル を適用すると拡散くびれと局部くびれの形状を得ることができた.しかし,解析 に用いた塑性特性データとくびれの形状の間に傾向性は見出せなかった.さらに,
単軸引張試験の塑性特性データに基づくコンピュータ解析により,最大引張荷重 点までは,JSC980Yを除き引張試験によるクロスヘッドストロークー変形抵抗曲 線をほぼ再現できた.
コンピュータ解析結果の定性的評価では,引張試験での後半の塑性特性データ を用いた場合に比較して,引張試験での全過程の塑性特性データを用いた場合の コンピュータ解析結果から想定される最大荷重点が,クロスヘッドストロークの 大なるほうに移動していることが分かった.さらに,その傾向はJSC980Yにおい て強かった.実用性の評価については,試験変形荷重曲線に対するコンピュータ 解析変形荷重曲線のかい離率によった.かい離率における,室温から500℃に至
る温度の影響は最大で12%で,多くの場合8.5%以下であり,少なくても500℃
以下の温度の影響下においては,動的陽解法有限要素法による解析は実用性があ ることが分かった.
これらの結果は,動的陽解法において,BarlatとLianの異方性塑性モデルを適
一81.
用した場合,単軸引張だけでなく薄鋼板の一般の成形に対するコンピュータ解析 においても,最大引張荷重点すなわち材料強度の範囲内においては,現実の成形 に近い結果が得られることを示唆している.ただし,曲げ成形部分については,
第3章で検討したようにスプリングバックの影響を考慮する必要がある.
以上のように本研究により,薄鋼板の成形性に関する基礎的特性を得るととも に,温度特性の簡便な測定法を考案し提案した.さらに,得られた基礎的特性を 用いたコンピュータ解析の有用な活用への指針を得た.この解析の成果を基に,
薄鋼板の絞り成形などに対し,さらに実用的な成形解析が進展することを確信す
る.
なお,第3章で述べた,変動温度サイクル法による薄鋼板の変形荷重温度特性 の簡易測定法の考案については,発明の名称 「金属板の温度負荷状態での特性
測定方法および測定装置」,出願番号 特願2005−45089として特許出
願中である.
.. W2.
謝 辞
本論文をまとめるにあたり,終始懇切なご指導とこ鞭捷を賜りました鳥取大学 大学院工学研究科教授 小幡文雄博士に謹んで謝意を表します.
また,薄鋼板の塑性異方性などに関して貴重なご助言を賜りました岡山理科大 学大学院工学研究科 細川智生博士に謹んで謝意を表します.
本研究を行なうにあたり,懇切かつ有益なご指導とご助言を賜りました鳥取大 学工学部機械工学科教授 北岡征一郎博士,鳥取大学工学部機械工学科教授 早 川元造博士,鳥取大学地域共同研究センター助教授 岡本尚機博士に心より感謝
いたします.
試験にあたっては,鳥取県産業技術センターのご好意により,試験機を使用さ せていただくとともに使用法に関するご指導をいただきました.鳥取県産業技術 センター長(現,鳥取県産業振興機構理事長)金田昭氏,同研究員 谷岡晃和氏 に感謝いたします.
本研究で得られた発明を出願するに当たり,ご指導を賜りました鳥取大学客員 教授 滝本智之弁理士に感謝いたします.
研究課題のご提供をはじめ実務的な面でご協力を頂きました株式会社ササヤマ の笹山勝部長に感謝いたします.
また,鳥取大学大学院博士後期課程在学中に多くのご助言をいただいた鳥取大 学大学院工学研究科助手 上原一剛博士に感謝いたします.
本研究にかかわる試験や結果の整理においては,鳥取大学大学院工学研究科の 院生であった竹内直幸氏,同工学部機械工学科の柴田亮氏の協力によるところが 大きく,両氏に感謝の意を表します.
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