1)兄島など周辺島嶼への外来生物の上陸阻止
まず第一に無人島へのニューギニアヤリガタウズムシや他のプラナリア等の侵入を防ぐた めに、その完全な隔離が必要である。無人島への上陸は、許可制が望ましい。水着、ビー チサンダルで上陸する場合は、特に問題は少ない。研究者や作業員等、土を持ち込むおそ れのある場合は、①靴や作業道具の土を洗い落とす、②海水で靴底や作業道具をあらう、
の二つの措置が必要である。できれば、全ての靴、器具を冷凍するべきと考える。ヤギ駆 除用の鋼管、その他の道具は、十分な検疫体制を実施する必要がある。これで十分かどう かは検討する必要があり、ハワイやガラパゴスのようにもっと厳密な管理をする必要があ るかもしれない。そのために、貝類学者による特別な検討を行い、それに基づいて事業を 考えるようにお願いする。
これまでニューギニアヤリガタウズムシが兄島や母島に侵入しなかったのは単なる偶然で あり、「幸運」以上のものではない。
無人島への植生回復事業でも、土の持ち込みは禁止するとともに、種子等にもウズムシ がつく可能性を考え、徹底した防疫が必要である。
2)母島へのニューギニアヤリガタウズムシ上陸の阻止
父島から母島へニューギニアヤリガタウズムシが侵入する確率はこのまま放置すれば長期
的には
100%であろう。侵入を防ぐには、土の移動の禁止を含む強い措置が必要である。
農業用苗の移動も制限すべきである。母島はまだ陸産貝類が生き残っている地点が多く、
海岸沿いはこのまま捕食性のプラナリアの攻撃を免れて生き残る可能性がある。母島は島 内での種分化がみられる残された唯一の大きな島であり、是非とも保全しなければならな い。母島を守ることは、又、周辺属島を守ることにもつながる。
3)父島内部でのウズムシの移動の阻止
ンクリート製ステップ、休憩所の資材等、父島の土の上においたものを移動すれば、プラ ナリアを運ぶ可能性が高い。すでに高山には侵入しているとの話もある。
4)ウズムシが侵入した父島の貝類の移植
非常に残念ではあるが、高山は陸続きであり、父島特産種のチチジマカタマイマイ生息地 にニューギニアヤリガタウズムシが侵入し、あと数年で絶滅してしまう可能性がある。絶 滅を防ぐには次の3つの方法が考えられる。
①飼育下での個体群の維持
②小笠原において、天敵排除型の飼育装置を作り、そこで個体群を維持する
③離島への再導入
①は現在の所、見通しが立たない。研究室である程度飼育できたものを多摩動物園に移し たが、短期間しか飼育できなかった。非常に汚れに弱く、飼育には相当の苦労が要るし、
繁殖は難しい(佐藤・大河内
1998)
②塩水トラップを用いた天敵排除装置(2m×1m)の中で一年飼育でき、2頭の子が得 られ、しかもある程度生長した。しかし、おそらく落下した枝を伝ってプラナリアが侵入 し、全滅してしまった。こうした装置で飼育すれば繁殖が可能なことはわかり、きちんと 侵入を防げれば個体群維持も可能かもしれない。ただし、侵入を防ぐには毎日見回るなど、
現地での管理体制が必要であり、その維持費も必要である。
③もっとも可能性の高いのが離島への再導入である。現在カタマイマイの生息している東 島は対象外となる。南島の対岸のジョンビーチにはチチジマカタマイマイがいるし、南島 の化石種にも本種が含まれるので、南島はロケーションとしてはベストである。しかし、
植生の回復が思わしくなく、現在棲息できる状況かどうかは、導入してみないとわからな い。西島は、エンザガイ等の陸産貝類がいるので天敵はいないか、弱い天敵しかいないと 思われ、これも候補地である。ただし、カタマイマイ類がいなくなった原因がクマネズミ の捕食であるとすると、導入前にクマネズミを根絶する必要がある。1平方キロメートル 程度の島であり、その根絶は十分可能と考える。このままでは西島に残る自然植生もじき に消滅してしまうところまで来ており、クマネズミ対策をして、植生を残し、チチジマカ タマイマイを導入するのが好ましいと考える。駆除や導入は単にすればいいというもので はなく、環境全体に影響が及ぶので、生態学者によるしっかりした検討と、事前のアセス、
事後のモニタリングを含め、事業と研究プロジェクトが一体となって行われる必要がある。
(注1)天然記念物の名称:小笠原諸島陸産貝、天然記念物の所在地:東京都小笠原村、
指定年月日:昭和
45
年11
月12
日4 引用文献
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添付資料2 生物種リスト
表1-1 外来植物リスト (学名およびIUCN等の指標)
日本 東京都 IUCN
コバノイシカグマ科 シマイワヒメワラビ Hypolepis bamleriana Rosenst.
ソテツ科 ソテツ Cycas revoluta Thunb. NT
マツ科 リュウキュウマツ Pinus lutchuensis Mayr
スギ科 コウヨウザン Cunninghamia lanceolata (Lamb.) Hook.
マキ科 イヌマキ Podocarpus macrophyllus (Thunb.) Sweet
ナンヨウスギ科 ナンヨウスギ Araucaria cunninghamii Aiton ex D.Don
モクマオウ科 トクサバモクマオウ トキワギョリュウ Casuarina equisetifolia J.R. et G.Forst.
モクマオウ科 モクマオウ Casuarina stricta Aiton
ヤマモモ科 ヤマモモ Myrica rubra Siebold et Zucc.
ブナ科 クリ Castanea crenata Siebold et Zucc.
ブナ科 スダジイ Castanopsis sieboldii (Makino) Hatus. ex T.Yamaz. et Mashiba
ブナ科 クヌギ Quercus acutissima Carruth.
クワ科 カジノキ Broussonetia papyrifera (L.) L'Her. ex Vent.
クワ科 アメリカドルステニア Dorstenia contrajerva L.
クワ科 ベンガルボダイジュ Ficus bengalensis L.
クワ科 オオバアコウ Ficus caulocarpa (Miq.) Miq.
クワ科 インドゴムノキ Ficus elastica Roxb. ex Hornem.
クワ科 ガジュマル Ficus microcarpa L.f.
クワ科 アコウ Ficus superba (Miq.) Miq. var. japonica Miq.
クワ科 シマグワ ヤマグワ Morus australis Poir.
タデ科 ニトベカズラ アサヒカズラ Antigonon leptopus Hook. et Arn.
ヤマゴボウ科 ヨウシュヤマゴボウ Phytolacca americana L.
ヤマゴボウ科 ジュズサンゴ Rivina humilis L.
オシロイバナ科 ナハカノコソウ Boerhavia diffusa L.
オシロイバナ科 イカダカズラ ブーゲンビレア Bougainvillea spectabilis Willd.
オシロイバナ科 オシロイバナ Mirabilis jalapa L.
ツルナ科(ハマミズナ科) ミルスベリヒユ ハマスベリヒユ Sesuvium portulacastrum (L.) L.
スベリヒユ科 スベリヒユ Portulaca oleracea L.
スベリヒユ科 ヒメマツバボタン マルバケズメグサ, ケズメグサ, ケツメクサ Portulaca pilosa L.
スベリヒユ科 ハゼラン Talinum paniculatum (Jacq.) Gaertn.
ナデシコ科 オランダミミナグサ Cerastium glomeratum Thuill.
ナデシコ科 コハコベ Stellaria media (L.) Vill.
アカザ科 シロザ シロアカザ Chenopodium album L.
アカザ科 アリタソウ ケアリタソウ Chenopodium ambrosioides L.
ii−1
レッドリスト IUCN Worst
科名 和名 別名 学名 100
日本 東京都 IUCN レッドリスト IUCN Worst
科名 和名 別名 学名 100
アカザ科 ウラジロアカザ Chenopodium glaucum L.
ヒユ科 ヒナタイノコヅチ ヒナタイノコズチ Achyranthes bidentata Blume var. tomentosa (Honda) H.Hara
ヒユ科 ツルノゲイトウ Alternanthera sessilis (L.) DC.
ヒユ科 イヌビユ Amaranthus lividus L.
ヒユ科 ハリビユ Amaranthus spinosus L.
ヒユ科 ホナガイヌビユ アオビユ Amaranthus viridis L.
ヒユ科 センニチノゲイトウ Gomphrena celosioides Mart.
クスノキ科 クスノキ Cinnamomum camphora (L.) J.Presl
オトギリソウ科 マンゴスチン Garcinia mangostana L.
フウチョウソウ科 フウチョウソウ Cleome gynandra L.
フウチョウソウ科 ヒメフウチョウソウ キバナヒメフウチョウソウ Cleome viscosa L.
アブラナ科 カラシナ Brassica sp.
アブラナ科 コタネツケバナ Cardamine parviflora L.
アブラナ科 カラクサナズナ Coronopus didymus (L.) Sm.
アブラナ科 マメグンバイナズナ Lepidium virginicum L.
アブラナ科 ハマカキネガラシ Sisymbrium officinale Scop. var. leiocarpum DC.
ベンケイソウ科 トウロウソウ セイロンベンケイ Kalanchoe pinnata (Lam.) Pers.
ユキノシタ科 ガクアジサイ Hydrangea macrophylla (Thunb.) Ser. f. normalis (E.H.Wilson) H.Hara
バラ科 モモ Amygdalus persica L.
バラ科 カナメモチ Photinia glabra (Thunb.) Maxim.
マメ科 ソウシジュ Acacia confusa Merr.
マメ科 ナンバンアカアズキ Adenanthera pavonina L.
マメ科 アメリカクサネム Aeschynomene virginica (L.) Britton, Stern et Poggenb.
マメ科 イタチハギ Amorpha fruticosa L.
マメ科 クズモドキ Calopogonium mucunoides Desbaux
マメ科 タイワンカワラケツメイ Chamaecrista leschenaultiana (DC.) Degener マメ科 オオミツバタヌキマメ Crotalaria pallida Aiton var. obovata (G.Don) Polhill
マメ科 キバナハギ Crotalaria trifoliastrum Willd.
マメ科 ドクフジ デリス Derris elliptica (Roxb.) Benth.
マメ科 タチクサネム ヒメギンネム Desmanthus virgatus (L.) Willd.
マメ科 カワリバマキエハギ Desmodium heterophyllum (Willd.) DC.
マメ科 ムラサキヌスビトハギ Desmodium purpureum Fawc. et Rendle
マメ科 カイコウズ アメリカデイゴ Erythrina crista-galli L.
マメ科 デイゴ Erythrina variegata L. ex Stickm.
マメ科 サンゴシトウ Erythrina x bidwillii Lindl.
マメ科 コマツナギ Indigofera pseudotinctoria Matsum.
マメ科 メドハギ Lespedeza cuneata (Dum.Cours.) G.Don
ii−2