第 5 章 学生によるスマートスピーカーの機能評価
図 5-1 アレクサの履歴表示の例
履歴には3種類の情報が残されている。
1) 発話の内容:
利用者がアレクサとの会話は全部クラウド上に記録されている。その記録データは音 声とテキスト両方がある。クラウド上にまず表示されるのは利用者の音声が文書化され ており、音声認識が不明瞭な時または音声を確認したいときはその文書をクリックし、
音声が聞ける画面に入る。そこから利用者がアレクサとの会話の音声データを確認でき る。
注意してほしいのは、アレクサは絶え間なく利用者の発話を全部記録するのではな く、利用者から「アレクサ」(もしくは「コンピュータ」や「エコー」などの「ウェイク ワード」)と呼ばないとアレクサは起動しないため、利用者の日常生活を常時に監視して いるのではない。その一方、アレクサと会話をしたいときはまず「アレクサ」と声をか ける必要がある。
2) 発話の時刻:
発話のテキスト内容の左下に記録されているのは発話の時刻となる。どの日の何時に 発話があったのかはわかる。
3) 発話の対象:
発話の時間の右側には発話の対象が記録されている。同じアレクサのアカウントでは
多数のAmazon Echoデバイスを管理することが可能である。管理しやすくするには各々
のデバイス名を修正することができ、また、利用されたデバイスの名前はそれぞれのテ キストデータに付属している。
この3つの情報を組み合わせることで、一つのアカウントが多数の利用者に利用され ているときに、どの利用者がいつにどのような話しをしたかを確認することができるよ うになった。さらに、それらのデータをまとめることにより、利用者の生活リズムを分
発話の内容
発話の時間
発話の対象
析することができた(図5-2)。
図 5-2 アレクサに記録されたデータのまとめの一例
図5-2に示されているのは学生実験の一人のデータの一部である。図5-2で示したよ うに、履歴に記録されたデータに基づいて各々の実験参加者のデータは日付、曜日、時 間と発話の内容と分けてまとめている。このように毎日のデータを累積し、分析を行っ た。
15日間の実験で以下の結果が得られた:
1) それぞれ収集したデータ数はA:106個、B:99個、C:240個となった。
A・B間には大きな差がないものの、Cのデータ数は圧倒的多かった。その理由はCだ
けはスマートスピーカーを家電製品と連携し、家電製品の操作が多かったためである。
2) スマートスピーカーに対しての挨拶はよくあった。
実験が始まる前に、実験参加者のアレクサへの利用に大きな影響を与えないために
「必ず〇〇しなさい」のような指示は一切出していなかったものの、実験の後半になる と全員がアレクサに挨拶(例えば、「おはよう」や「お休み」など)するようになった。
3) 起きる時間と寝る時間を把握することができた。
実験参加者からの挨拶が定着したことで、実験参加者の日々の起床時間と就寝時間の 把握ができた。長期間のデータを眺望することにより就寝時間に関する習慣も分かるよ うになった。
5.4 まとめ
以上のように、提案システムの一環であるスマートスピ-カーはいかに独居高齢者の生 活を記録できるのか、またそのデータに基づいて独居高齢者の生活リズムの分析が可能で あるかを検証することを目的とし、学生による機能評価実験を行った。
本実験の結果から、アレクサの履歴を活用することにより、独居高齢者・アレクサ間の コミュニケーションを全部記録することが可能であることが分かった。さらに、学生実験 の結果から、実験参加者が自然的にアレクサに挨拶するようになり、その挨拶に基づいて 実験参加者の就寝に関する習慣を把握することができた。この結果により、「挨拶」をう まく活用することで、独居高齢者の生活状況に関する情報を会話形式によりさりげのない データ収集が可能となると考える。
本研究においては主に収集したい日常生活における情報は、食事と睡眠に関するもので ある。睡眠に関する情報では、学生実験で分かったように、朝起きた後の「おはようござ います」と寝る前の「おやすみなさい」のような挨拶をしてもらうことで記録することが できる。食事に関しては「いただきます」や「ごちそうさまでした」などの挨拶が考えら れる。これらの挨拶が定着することによって生活リズムを分析することができる。
以上のように、学生実験から得た知見に基づいて独居高齢者による本実験の構築を検討 していく。