• 検索結果がありません。

なぜ有機コーヒーの市場拡大を考えるのか

ドキュメント内 R[q[̎ЉȊwÍ@|ʂėL@R[q[͎sgł̂H| (ページ 90-142)

第 5 章  有機コーヒー市場拡大の条件分析

5.1 なぜ有機コーヒーの市場拡大を考えるのか

 コーヒー生産の状況は大変厳しい。コーヒーが栽培できる地域の多くは発展途上国であ り、外貨獲得の手段としてコーヒーをこぞって生産している。コーヒーを生産することは、

高品質のものを作り上げるのでなければ、困難を極めるものではない。適当な代替商品作 物は少なく、2000万人以上が、生活の糧として少しでも多くコーヒーを生産しようとして いるのである。その結果として1989年、各国に生産を割り当てていた国際コーヒー協定の 廃止を契機として、コーヒーの国際取引価格は歴史的に見ても低い水準に落ち込んでしま った。現在の価格ではコストも回収できず、コーヒー生産者は生産をやめるかどうかの選 択を迫られている。

 コーヒー生産は伝統的に行われてきたところも多く、認証は取っていないが昔からの有 機栽培で生産されているところも多い。日陰栽培も昔から続けられているところも多い。

コーヒー生産者は小農が多くを占め、コーヒーは熱帯林の中、もしくはその付近で生産さ れる。そのため、彼らは手付かずの自然、生態系が残る熱帯林と人間の生活圏との間に位 置する存在である。ここで近代的な農業、つまり農薬も多用するコーヒー生産に転換して いくのか、それとも有機栽培の維持もしくは新たに転換していくのかは、地域環境の保全 の点から大きな分岐点である。コーヒー生産者を失業させるということは都市への人口流 入、あるいは森林奥地への居住地移動など、世界的な問題にもつながってくる可能性があ る。

近代的栽培ではコーヒーはさらに増産できるようになり、消費者はさらに安くコーヒー を飲めるようになる。しかし、環境面や効率性重視による味の低下の恐れなど必ずしも良 いことばかりではない。では現状を好転させるにはどうすればよいか。そのひとつの方法 がコーヒーの付加価値を高めることである。コーヒーの単価が上がればコーヒーでまとも な収入を得ることができる。その付加価値付けの方法はいくつかある。1つめは粒の大きさ など市場で高く取引される条件をそろえること。2つめは味の良いコーヒーを作り上げるこ と。3つめは理念的価値付けを行うことである。

1つめの方法はごく普通の方法である。しかし、実際には基本的な高価格取引の用件をそ ろえる豆は多く、それほど大きな価値がつくわけではない。また、粒の大きさをそろえる ことなどは、プランテーション型の農園のほうが達成しやすいと思われ、本稿の問題意識

と合致しない。

2つめの方法はかなり期待が持てる。アンケートの結果からもわかるとおり、消費者は味 を最も求めている。コーヒー業者も、特に小規模業者はおいしいコーヒーをそろえること に努めている。ブルーマウンテンは大変おいしいので、非常に高価であるにもかかわらず 良く売れている。10%増しといった次元ではなく、普通のコーヒーの 2 倍でも買い手がつ くのがおいしいコーヒーの味の強さなのである。しかし、うまいコーヒーはなかなか作る ことができず希少性があるがゆえに高価であることも忘れてはならない。コーヒーの味は その気候、土壌など努力では変えようもないもので決定される部分が大きく、多数のコー ヒー生産者の望めるものではない。たとえうまいコーヒーを作ったとしても、より買い手 と直接契約をしない限り、安く、時に値切られて仲買人に買われ、他のコーヒーと混ぜら れてしまう運命にある。限界も見えている方策である。

3つめが理念に訴える方法である。これにはフェアトレードを行って生産者に配慮されて いるコーヒー、日陰栽培を行って熱帯林を維持しているコーヒーが挙げられる。有機栽培 を行っているコーヒーもこれに含まれる。この方法は、端的にいえば消費者に「何か良い ことをしているという満足感」を金銭で買ってもらう方法である。この上乗せされた満足 度分だけ高ければ、このコーヒーは売れるということになる。有機栽培と日陰栽培はこれ までも行われてきており、それ自体を行うこと、あるいは維持することは全く不可能なこ とではない。これらに社会的な価値を付与し、それを認証によって証明できれば、消費者 の新たな選択肢として加わるのである。

5.2 有機コーヒーはどうしたら市場を拡大していけるのか

5.2.1 消費者の視点から見る市場拡大への条件

消費者へのアンケートの結果によれば、実際には消費者の選択要因は価格と味に集約さ れている。これは裏を返せばフェアトレードや有機栽培でコーヒーを選択するという消費 者は稀であることも示している。購入の選択条件に入れている人は、フェアトレードなど の流通経路が55人中わずか1人、無農薬や有機栽培が2人であった。この状況において市 場を拡大するならば、まずは消費者を啓発しなければならないと思われる。コーヒーの生 産の背景はあまり知られているとは思えない。理念に納得しなければ、味や価格(価格に おいてはまずないと思われるが)において優位に立たない限り有機コーヒーは買う理由が ない。価格のみで選ぶコーヒーを選択する消費者は有機コーヒーを選ぶ理由が全く存在し ない。そういう消費者には廉価品を選んでもらうしかない。それが賢明な選択である。有 機野菜などは、遠くの環境を考える意識がなくとも、味が良い、農薬が口に入らず安全で ある、栄養価が高く健康に良いなど様々な利点があり、その点で十分な付加価値がつくの

である。しかし、有機コーヒーにはこのいずれも該当しない。味に影響はなく、農薬で健 康が害される恐れもなく、健康に良いわけでもない。

 単純には、有機コーヒーの最も速く普及する方法は、とにかく農薬の危険性をあおって、

有機コーヒーが良いという宣伝をするということかもしれない。日本では長引く不況で他 にも問題が山積しているにもかかわらず、環境問題は重要な問題として国民の関心は増す ばかりである。業者も有機コーヒーの伸びを少しずつではあるが感じているようである。

よってこの方法は一定の効果があるだろう。しかし限界もある。環境志向を持たない層、

つまり、価格最優先派と味最優先派の双方から敬遠される可能性がある。

では、消費者が情報付けられたとして次に必要なものは何であるか。それは最高級の味 ではないとしても、飲んでもよいと思うような味と、強力な環境付加価値である。

先述の通り、消費者は「心理的満足」を買うわけであるから、上乗せされる価格がその 満足分以上に高ければ買おうとはしない。しかし消費者はスーパーやコンビニでコーヒー を購入することが多いようであるが、筆者の判断する限り、価格と味で有機栽培に競争力 はない。筆者がスーパーで最も多く見かけた有機コーヒーと最も安い価格帯のコーヒーと を飲み比べると、どちらも同じくらいの味でおいしくなかった。その味は「高くても飲ん でもよい」のではなく、どちらかといえば「安くても飲まなくてよい」という印象を持た せるものであるように思われた。しかもその価格差は約 3 倍であった。有機コーヒーにこ れほどの付加価値が果たしてついているのだろうか。そうは思われない。有機食品の割り 増し価格は 3 割程度が普通であることを考えると、これ以上に高いものはたとえ有機栽培 であっても高いと消費者に映るに違いない。まして味や健康上のメリットは有機野菜と違 って、有機コーヒーにはないのである。

スーパーやコンビニでコーヒーを買う人はかなりの割合を占める。ところがスーパー最 も多く置いてあった有機コーヒーは競争力がない。有機コーヒーは「高いがおいしくない」

という評価が現状では広まってしまう可能性がある。この点の改善が必要である。生産地 からの買い取り価格は高いといっても、物価差から小売価格ではそれほど大きな差ではな くなる。工夫次第で味の向上は望めるのではないだろうか。

一方で、アンケートから消費者は比較的高価格の有機コーヒーに大変な好感触を示して いた。質のよい有機コーヒーは、専門店のおいしいコーヒーの味に遜色ないように思われ る。しかし、この価格帯であれば、有機栽培であるか否かを問わず、専門店でおいしいコ ーヒーが手に入る。この段階では、「心理的満足」分の付加価値が必要になるのである。同 じ価格帯であってかつ味もおいしいのであれば、情報付けが適切になされている限り有機 コーヒーのほうが優勢である。

さて、次に必要になるのが強力な環境的付加価値である。コーヒーで考えられる付加価 値付けが日陰栽培を行って熱帯林を守っているという価値をつけることである。日本は熱 帯地方から木材を大量に輸入してきた経緯があり、熱帯林減少のテーマでは日本は矢面に

ドキュメント内 R[q[̎ЉȊwÍ@|ʂėL@R[q[͎sgł̂H| (ページ 90-142)