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五 国務大臣及び法律の定めるその他

五 国務大臣及び法律の定めるその他

の国の公務員の任免並びに全権委任

の官吏の任免並びに全権委任状及び

状並びに大使及び公使の信任状を認

大使及び公使の信任状を認証するこ

証すること。

と。

六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免

六 (同左)

除及び復権を認証すること。

七 栄典を授与すること。

七 (同左)

八 批准書及び法律の定めるその他の

八 (同左)

外交文書を認証すること。

九 外国の大使及び公使を接受するこ

九 (同左)

と。

十 儀式を行うこと。

十 儀式を行ふこと。

第4条 (略)

3 天皇は、 法律の定めるところにより、②

天皇は、法律の定めるところにより、

前2項の行為を委任することができる。

その国事に関する行為を委任することが できる。

4 天皇の国事に関するすべての行為に

第3条 天皇の国事に関するすべての行

は、内閣の助言と承認を必要とし、内閣

為には、内閣の助言と承認を必要とし、

がその責任を負う。

内閣が、その責任を負ふ。

(摂政)

第7条 皇室典範の定めるところにより

第5条 皇室典範の定めるところにより

摂政を置くときは、摂政は、天皇の名で、

摂政を置くときは、摂政は、天皇の名で

その国事に関する行為を行う。

その国事に関する行為を行ふ。この場合

には、前条第1項の規定を準用する。

2 第4条及び前条第4項の規定は、摂 政について準用する。

(皇室への財産の譲渡党の制限)

第8条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇

第8条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇

室が財産を譲り受け、若しくは賜与する

室が財産を譲り受け、若しくは賜与する

には、法律で定める場合を除き、国会の

ことは、国会の議決に基かなければなら

議決を経なければならない。

ない。

1 改正点とその解釈

1条と2条は、現行憲法と同文である。1条の末尾は「基く」と字句の修正。

現行憲法3条の天皇の国事行為の規定は6条4項に移されて、4条の天皇の権能に ついては、1項が字句の修正、2項は6条3項に字句修正のうえ移されている。

現行憲法5条の摂政の規定は字句修正を加えて草案7条に移されている。

現行憲法では、天皇の国事行為は、6条1項の内閣総理大臣の任命と2項の最高裁 判所長官の任命を規定し、7条でその他の国事行為を1号から10号まで列挙してあ る。草案は天皇の国事行為を6条1項として「国民のために」という字句を加えて、

内閣総理大臣と最高裁判所長官の任命と同じ条にまとめた。天皇のその他の国事行為 は、6条2項1〜10号に列挙した。

この部分の改正として重要なことは、現行憲法7条1項3号の「衆議院を解散する こと」が、草案6条2項3号で「第54条第1項の規定に基づいて衆議院を解散する こと」と改められていることである。現行憲法の字句表現によれば、天皇が衆議院を 解散することができるようにも読める。しかし天皇は4条により国政に関する権能を 有しないのであり、儀式的行為である国事行為のみ行いうるので、重大な政治行為で ある衆議院の解散を行いうるという解釈をとることができない。現行憲法では、内閣 の政治的決定に衆議院でこれに反対する意見があり、とくにそれが多数を占めるとい う69条にいう内閣の不信任状態での衆議院解散を誰が行うかの明文規定がなかっ た。そこで議会制政治の本質論にさかのぼって、この場合内閣総理大臣は解散権を有 し衆議院の解散をおこないうるという解釈、慣行が生じてきた。しかしその場合の名 目は、憲法7条1項3号による解散とされ、法文上のこととはいえ天皇の憲法上の権 能とは矛盾していることが指摘されてきた。そこでこの改正草案は、その54条1項 で「第69条の場合その他の場合の衆議院の解散は、内閣総理大臣が決定する。」と いう規定を新設し、解散権の所在を明文化した。これにともなって、草案6条2項3 号は「第54条第1項の決定に基づいて衆議院を解散すること」という規定になり、

天皇の国事行為の儀式的性格がより明確になった。

そのほか天皇の国事行為について、現行憲法7条4号の「国会議員の総選挙の施行 を公示すること」が、草案6条2項4号で「衆議院議員の総選挙及び参議院の通常選 挙の施行を公示すること」に変わった。参議院には解散がなく通常選挙のみであり、

総選挙という用語は衆議院議員の選挙に用いられているのであるから、用語上明確に したのである。草案では「官吏の任免」が「公務員の任免」に変えられている。官吏 という名称は「旧憲法下において、国家の公務に従事するもののうち、天皇の任命大 権に基づいて任命され、国家に対して忠順無定量の勤務に服することとされた者。・・

・・・・現行憲法下では、この身分的観念は消滅した。」(有斐閣、法律用語辞典)。現行 憲法の用語の整合性もあって、官吏が公務員に改められたのである。

皇室への財産の譲渡等の制限について、現行憲法8条は、皇室への財産の譲渡、皇 室の財産の譲り受け、賜与に、それぞれ国会の議決を要することとなっている。この 制限規定は、旧憲法下の皇室が莫大な資産をもち、その運営によって近代天皇制を支

え、また賜与等によって国民の天皇崇拝を高める機能を果たしてきた経過にてらし、

現行憲法はそれを抑制しようとしたのである。改正草案は、「法律で定める場合を除 き」というかたちで、国会の議決を要しない皇室の財産的行為を認めることにしてい る。そのことは直ちに戦前のような皇室財産のぼう大な集積とその運用につながるこ とにならないかも知れないが、これは皇室の行動範囲の拡大に資し、その影響力の拡 張の可能性を付与することになろう。

2 改正草案の意味するもの

草案の天皇についての第1章では、8条の皇室の財産授受について現行憲法がその すべての場合に国会の議決を要する、としていたのを、この授受について別に法律を 作ることができ、そこで定めがある場合にそれによって処理できるという規制除外の 一文が入ったほかは、条項の入れ換えと整理と字句の修正にとどまる。自民党草案で は現行憲法のいわゆる象徴天皇制は維持されている、といえる。

天皇の問題は、平和原則とならんで近代国民国家の憲法の中での日本国憲法の特色 をあらわすものである。平和原則が世界の潮流の中の先進性を示すものであることに 対して、天皇の存置は、近代化の中での後発国家日本の歴史が敗戦後に引き摺った尻 尾にあたろう。

自民党の中には天皇を元首とする条項を加えようとする意見が根強くある。しかし、

元首という言葉には多かれ少なかれ統治者という観念がついてくるので、草案では国 民主権と国政に関する権能を有しない天皇という規定の変改にまでには立ち入れず、

天皇を元首と明記する改定を断念せざるをえなかった。明治以後の日本を、栄光の時 代とみるか、止むことのなかった戦争と対外進出の果てに敗戦にいたった愚行と汚辱 の歴史とみるかによって、天皇についての評価は異なってくる。この時代においては、

天皇は国の権力そのものであり、同時に最高の権威であることによって、国の象徴で もあった。天皇の権威を支えていたものは、その歴史と血統であり、また現人神ある いは国家神道の最高司祭の地位であった。戦後、天皇は権力を失い、人間宣言により 現人神であることを自ら否認した。現在残された権威は血のつながりとなお神道の頂 点にあることによる。この改正条項は、宮中祭祀を天皇の「公的行為」として憲法的 地位を付与し、それを皇室収支の「自由化」により財政的にも補強していこうとする 意図にもとづくものである。

3 安全保障(平和主義)−9条

新 憲 法 草 案 現 憲 法

第2章 安全保障

第2章 戦争の放棄

(平和主義)

第9条 日本国民は、正義と秩序を基調

第9条 (同左)

とする国際平和を誠実に希求し、国権の 発動たる戦争と、武力による威嚇又は武 力の行使は国際紛争を解決する手段とし ては、永久にこれを放棄する。

(削る)

② 前項の目的を達するため、陸海空軍

その他の戦力は、これを保持しない。国 の交戦権は、これを認めない。

9条2項の削除が意味するもの

1 改正点とその意味するもの

新憲法草案では、9条第1項は条文を変更することなく残し、第2項を「削る」と している。

自民党草案は、現行憲法の基本原則をそのまま維持し、「平和主義」をそのまま引 き継ぐとしている。1項を残し、手を加えなかったのは、その意味だとする。しかし、

第2章の表題を「戦争の放棄」から「安全保障」に変更している事実、前文の全面的 書き換えにみられるように、平和的生存権や歴史認識に関する重要な記述を切り捨て、

現行憲法の基本原理を変質させるのが自民党の新憲法草案であることは先に述べた

(1前文2参照)ところである。とりわけ2項の削除は、前文の書き換えとあいま って、現行憲法の非軍事平和主義原則を根本から変質させる内容となっている。

9条2項削除は、自衛隊を軍隊に昇格させ、その活動に加えられた様々な規制を緩 和し、その行動の自由、とりわけ海外におけるアメリカ軍との共同軍事行動の自由を 意味する。

2 9条2項の果たしている役割

9条1項の戦争放棄、2項の戦力不保持と交戦権の否認という現行憲法のもとにお いて、政府は、「わが国が憲法上保持し得る自衛力は、自衛のための必要最小限度の ものでなければならない」とし、その役割は「専守防衛」に限定するとして、自衛隊 の存在を正当化してきた。9条のもとでのこの「自衛のための必要最小限度」という

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