• 検索結果がありません。

‑92‑

従 って群馬県のノしソ場 ダム建設計画が、群馬県側 との調整がつかず、計画を 発表す ることす ら出来ないとい う現状 にあるとい う。調整がつかない理由は明 らかに、水没す る地元の反対が強いか らであ った。 このよ うにダムの建設によ る水源開発 には、たんに経済的な コス ト上昇 にとどまらず、社会的な障壁 が強 ま りつつあ るもの といわねばな らぬ。 この地元住民の抵抗がなぜ強まるのか。

それはダムの建設による水源開発の主たる任務が、大工業 と大都市のためのも のであることを知 るが故である。その結果水没地域はその犠牲 となるのである。

相応の金銭補償をすれば 「公共 のための小数 の犠牲はやむを得ないとい う思想 は、 もはや崩壊 に頻 した 「旧秩序 」の思想で しかない」。少な くとも大都市や 大工業 のために、一つの地域 社会が消え失せて しま って よいとい う論理はあり 得 ないことを、山村、農村民 は実感 しつつあることを知 らねばな らぬ。

しか しなが ら農村 に対 して向け られ る資本家 と大都市は、 「農村 は不合理な 利用方法 にもとず く大量の水独 占を している」と。た しか に農業は大量 の水を 使 っている。例えば毎秒‑立方メー トルの水は場所 によってちが うが、 500

ヘ クタールの水田を准概 しているのだが、 これを米の粗生産額 にすれば、約3 億 円をっ くり出すに過 ぎfj:いO ところが毎秒‑立方 メー トルの水は、一 日に

86,400立方メー トル となり、約二十万人の都市の生活用水を一年間使用する ことができるのである。 この例か ら見て も大工業 と都市にとって、農業用水が いかに魅力にあふれたもの として、 目にうっ るか、十分 に想像ができる。 だが 農業 は、はた して不合理 に水を消費 しているだろ うか。農業 における水利用を み るはあい、 もっとも大きな経済的特徴は、都市 メカニズムない し契約関係が その配分原理 として確立 していない点 にある。 たとえば農業水利用団体 におけ る費用負也の方法をみ ると、大勢は面積割 りの賦課金である。 に も拘 らず、水 の使用に対する代価の支払 いとい う形態を とるものではない。事実 これ らの賦 課金 の負超は、用水の使用量 とは直接には無関係なのであ って、 どんなに大量 の水を使用 したとしても、賦課金額が変 わるものではない。 そこで農民は経済 見地か ら水利用量を調節す る根 拠を もっていないことになる. また農業水利団 体相互 の関係 についてみ ると、 ここにも市場 メカニズムは全 く働いていないと い うことができる。すなわち河川における水配分は固定的な もので、必要量の

‑93‑

変化が生 じた として も、水利権は動かすべか らざるもの と して、維 持 され るの で あるO実質的 にみれば、 この配分 関係 は力関係 であ り、原則 と して流動的に 変化 す る余地を殆 どもたない と言 わなければな らぬ。

このよ うな水配分関係 は水が独立の生産財で はな く、土地 の付属物 として機 能 し存在 しているとい う、 日本の稲作農業 の構造を根 ざ しているとみることも で きる。 それは 「水が商品 と して交換 され るものはな く、土地 の肥沃鑑の一要 素をなす付属的機能 と して、言 いかえれば地代形成条件 の一つ と して存在 して いることを意味する もので ある」。 これは水 田 とい うものを具体的 に考えてみ れば わか る。 日本の水 田は まことに精敵 につ くられた土地 の器である。 これに 水を湛 えて稲をつ くる。 しか し水田はそのままでは、平担 なただの土地であり、

畑 と同 じで ある

「水路 によ って必ず用水が もた らされ、稲の作期 には水を湛 え ることがで きるか ら、水田なので ある。従 って水 田における土地所有は、事 実上の用水権をふ くんで いると考 えることができるのであって、用水権を含む ものと して価 格を形成 し、売買 され るので ある。水はまさ しく土地 の付属物な ので ある。で もこのよ うな システムは水利用 の合理化を意図的 に、はばむ ため に存在 しているわけではない。 それは歴史的 産物 と して、それ1j:りの意味を も つ ものと して存在 しているので ある。 日本の農業水利施設は少数の ものを除い て相 当に古い歴史を もって いる。 愛知用水 とか大正用水 とか戦前戦後 に創設 さ れ た新 しい大農美 用水 もあらにはある。 また安穏疎水や那須疎水 など有名な大 用 水の建設 もい くつ もみ られ たo Lか しこれ らはいずれ も追 加的な開発ない し 再 開発 の範囲 を 出るものではな く、 わが国の水 田の基幹部分の開発は幕藩体制 期 に一応の終了はみ た. とりわけ大規模 な開発が行なわれたのは、戦国期から 江 戸時代の中期 まで の約200年間で あ って、河 川の形成す る扇状地か らデル タにかけて の広大 なひろが りを もった水臼地帯が この時期 に形成 され たのであ る。 大河 川 に水源を 求める大型 の農業用水施設 の多 くも、 この時期 にはほぼ骨 格を ととの えたとい って よい。 これ らの農業水利施 設 の大 きな特徴は、河祝の 比較的安定 している扇状地 の扇 頂部付近で河川 の表流水を取水 し、勾配を もっ た水路 によ って 自然流下せ しめ、つ ぎつぎに分岐 してゆ く小用水路 の網の 目を 通 じて、水 田に用水を供 給す るとい う機能を発揮 す る点 にあ った」 「玉城哲

‑94‑

水 の思想130‑ 132頁参照 )。

沖縄の水 資源開発 については次のよ うに報 じられている

「県企 業局 の調べ によると県内の水需要は年 々増加 し、昭和四十七年 に‑ 日当 りの配水量が20 万tであ ったのに対 し、昭和五十五年七 月には‑ 日当 り38万tと、八年間で 約二倍 に増 えている。復 帰後福地 ダム、新 川 ダムが完成 したが、水 の需要 の急 増 に追 いっかないのが実情である。 沖縄総合事務局 では、本島北部を中心 に、

ダムの建設計画を進めているが、水資源の開発 も次第に困難 にな って い る」(沖 縄 タイムス )。本来水道は 「文化のバ ロメー ター」 と言 われ、生活が豊かにな るにつれて、水の使用量 も年 々急上昇 している。復帰 した昭和四十七年は企業 局 の一 日の配水量が平均20万8千 tだ った。 しか し昭和五十五年七 月の平均 配水量 は38万2千 tと八年 間で約二倍 に増 えている。 四十九年 には福地 ダム、

五十二年には新 川ダムが完成 したが、急増 す る水事情 に対応で きないO 総合事 務局 としては現在安汲 ダムの建設を進 めてお り、五十六年末 に完成予定であり、

今後普久川、辺野喜 川、漢郡川、羽地 川などで ダムを建設す る計画を進めてい る。 しか し福地 ダムのよ うな大型 ダムは期待 で きない。北 部の河川 はまだ ダム を造れ る余 力はあ るが、残 された河川 も水量 はあまり豊富 とは言えない。建設 費 も高 くついて くる。 沖縄気 象台の予報で もここ当分 雨は期待で きず、水事情 は さらに悪化を している

「沖縄の年平均降水量は2,300ミリで全国の1800

ミリを上回 っている。 しか し土地が狭 く人口密度が高いため、‑人当た りの年 間降雨量は6,500立方 メー トルに対 し、沖縄は4,900立方 メー トル と逆 に 少 な くな っている。 しか も石 灰質 の土壌で保水 力が弱いため、夏場 に二 カ月も 雨がなければ、たちまち水不足 となる」。 これに対 して総 合事務局河川課では、

「ダム建設が立 ちお くれているのは事実 だが、北部河川の開発 に も限度が ある。

トイ レや洗操 な どに使 う雑用水 については、地下水、天水 タ ンクの設置を指導 していきたい。 また中水道 による水の再利用 も進めたい。 海水 の淡水化計画 も 進めてい るが、 これは莫大 な コス トがかか る。県 内の河川 の水量 には限度が あ り、節水型の社会をつ くる必要が あ る」と、農業用水は全 くおか まいな しとい わぬばか りの談話を発表す る。 昭和五十五年八 月二十六 日中山総務長官は 「沖 縄 に淡水化 セ ンターを建設 し、水不足 の解消を期 したい」。そ うして 「来年度予

算 に要求す る」と言 うが、そ の実現はいつのことや らわか らない。 それではそ の構想は どうな って いるのだ ろ うか

「わが国は科学技術を開発す ることによ って、現在 の安定を維 持 し、 また世界に貢献すべきではないか 」と。科学技術 の振興 の必要性をのべた後、 「毎 年水不足 に悩 む沖縄 のため、塩化 ビニールを 利用 した逆浸透陳 による海水淡水化 セ ンターを同地 に建設 したい」との構 想を壷 述べて いる。 この海水淡水化計画は現在、神奈川県茅 ヶ崎 市で実験を進めてい

る。 プ ラン トを本格的な ものにす る もので、来年度予算 に実用化第一号 のセン ターを建設す る要求を 出 したいと している。

それ より一 月も前沖縄 タイムスは 「水資源 開発 の促進をはかれ 」とい う見出 しで 「次のよ うなことを言 っている」 (1980.7.10 社説 )

台風12号 の影 響で沖縄 本島 も久 しぶ りにま とま った雨が降 った。南部の農 家では干天に慈雨 とばか り、 家族総 出で秋野菜の種 まきに励む姿 もみ られたO しおれかか った農作物 に生気を呼 び さます恵みの雨にな った。 だが本島内の給 水事情を好転 させ るほ どの雨量 を もた らさなか った。

北部で20ミリか ら30ミリ、中南部で20ミリ以下 と、 ダムの水をわずか に増 や し、畑 を潤 した程度である。制 限給水を解除す るには50ミリか ら100

ミ リの大降 りが欲 しい ということである。 これか ら先、制限給水が もっと強イヒ され るか、あるいは これを打 ち切 って二十四時間給水に立 ち戻れ るか、 もっぱ ら今後の降雨量 いかん にかか っているO住家や農作物、電気通信、交通、漁船 な ど.陸や海の物件施 設 に多大 の災害を もた らす台風はできた ら来 ない方がよ い。 しか し人間生活 に好都合の よ う、天然気象の コン トt3‑ルがさか ない状況 で、長期干魅 を どう解 消で きるか、選択の道 は限 られて くる。 水不足による断 水措置 は、県民 にと って二年三 ケ 月ぶ りの苦痛 な体験である。 五 月以降の異常 な少雨記希が大 きな要因 としてあげ られ るが、現象的 にはそ うであって も、そ れ ですべて片 付 く問題 ではない。生活用水や工業用水を確保 し、 円滑な係給を はか る水資源 開発計画 が大 巾な立 ち遅れをみせ ているか らだ。 国 と県の水行政、

政策 と建設計画が十分 に遂 行 されて いない ことを意味す る。復帰時に策定 され た長期振興 開発計画 の水資源対策 によると、同計画 の県 内におけ る水資源の現 状 と問題点を指摘 し、 これを踏 まえた計画 目標 と主要施策を明確に打 ち出 して

‑96‑

ドキュメント内 水・土・と農業: 沖縄地域学リポジトリ (ページ 31-37)

関連したドキュメント