⑴ 代表者の自署押印
復興特別法人税の申告書には、法人税の申告 書と同様に、代表者等が自署押印すべきことと しています(復興財確法60)。
⑵ 連帯納付の責任
① 連結子法人
法人税法においては、連結子法人は連結法 人税について連帯納付の責めに任ずることと しています(法法81の28)。これは、連結納 税制度が連結親法人を納税義務者とするもの である一方、連結親法人が納付すべき法人税
(以下「連結法人税」といいます。)は連結グ ループを一体として計算されたものであるこ とから、連結法人税の引当財産を連結グルー プの各法人が所有する全財産とすべきである ことによります。
復興特別法人税は、連結法人の場合には連 結法人税を基礎として計算されるため、結果 的に、連結親法人を納税義務者として連結グ ループを一体として計算されたことになりま す。したがって、連帯納付義務についても、
法人税と同様のものとしています(復興財確 法61①)。
② 法人課税信託に係る受託法人
法人税法においては、受託者が 2 以上ある
法人課税信託に係る受託法人は、その法人課 税信託に係る法人税について連帯納付の責め に任ずることとされています(法法152)。こ れは、受託者が 2 以上ある法人課税信託に係 る受託法人に対する法人税が、主宰受託者を 納税義務者とするものである一方、その法人 課税信託の信託財産単位で計算されたもので あるため、その法人税の引当財産は全信託財 産とすべきであり、その信託財産を有する各 受託者に連帯納付義務を課したものです。
復興特別法人税は、法人課税信託の場合に おいても法人税を基礎として計算されるため、
結果的に、主宰受託者を納税義務者として信 託財産単位で計算されたことになります。し たがって、連帯納付義務についても、法人税 と同様のものとしています(復興財確法61②)。
⑶ 質問検査権
復興特別法人税については、法人税と同様に、
当該職員による質問検査権を認めています(復 興財確法62)。具体的には、次のとおりです。
① 国税庁の当該職員又は法人の納税地の所轄 税務署若しくは所轄国税局の当該職員は、復 興特別法人税に関する調査について必要があ るときは、法人に質問し、又はその帳簿書類 その他の物件を検査することができます。こ の場合の法人には、連結親法人の納税地の所 轄税務署又は所轄国税局の当該職員がその連 結親法人の復興特別法人税に関する調査につ いて必要があるときは、連結子法人を含むこ ととしています。
(注) 法人税法第153条第 1 項と同じです。
② 連結子法人の本店又は主たる事務所の所在 地の所轄税務署又は所轄国税局の当該職員は、
連結親法人の復興特別法人税に関する調査に ついて必要があるときは、その連結子法人及 びその連結親法人に質問し、又はその帳簿書 類その他の物件を検査することができます。
(注) 法人税法第153条第 2 項と同じです。
③ 国税庁の当該職員又は法人の納税地の所轄
税務署若しくは所轄国税局の当該職員は、復 興特別法人税に関する調査について必要があ るときは、法人に対し、金銭の支払若しくは 物品の譲渡をする義務があると認められる者 又は金銭の支払若しくは物品の譲渡を受ける 権利があると認められる者に質問し、又はそ の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査 することができます。この場合の法人には、
連結親法人の納税地の所轄税務署又は所轄国 税局の当該職員がその連結親法人の復興特別 法人税に関する調査について必要があるとき は、連結子法人を含むこととしています。
(注) 法人税法第154条第 1 項と同じです。
④ 連結子法人の本店又は主たる事務所の所在 地の所轄税務署又は所轄国税局の当該職員は、
連結親法人の復興特別法人税に関する調査に ついて必要があるときは、その連結子法人に 対し、金銭の支払若しくは物品の譲渡をする 義務があると認められる者又は金銭の支払若 しくは物品の譲渡を受ける権利があると認め られる者に質問し、又はその事業に関する帳 簿書類その他の物件を検査することができま す。
(注) 法人税法第154条第 2 項と同じです。
⑤ 分割法人は上記③及び④の物品の譲渡をす る義務があると認められる者に、分割承継法 人は上記③及び④の物品の譲渡を受ける権利 があると認められる者に含まれるものとして います。
(注) 法人税法第154条第 3 項と同じです。
⑥ 上記①から⑤までは、国税庁の当該職員及 び納税地の所轄税務署又は所轄国税局の当該 職員以外の当該職員のその所属する税務署又 は国税局の所轄する区域内に本店、支店、工 場、営業所その他これらに準ずるものを有す る法人に対する質問又は検査について準用す ることとしています。
(注) 法人税法第155条と同じです。
⑦ 国税庁、国税局又は税務署の当該職員は、
復興特別法人税に関する調査について必要が あるときは、官公署又は政府関係機関に、そ の調査に関し参考となるべき帳簿書類その他 の物件の閲覧又は提供その他の協力を求める ことができます。
(注) 法人税法第156条の 2 と同じです。
⑧ 国税庁、国税局又は税務署の当該職員は、
上記①から④まで及び⑥の質問又は検査をす る場合には、その身分を示す証明書を携帯し、
関係人の請求があったときは、これを提示し なければならないこととしています。
(注) 法人税法第157条と同じです。
⑨ 上記①から④まで及び⑥の質問又は検査の 権限は、犯罪捜査のために認められたものと 解してはならないこととしています。
(注) 法人税法第156条と同じです。
⑷ 罰則
法人税法における罰則と同じ内容の罰則を定 めています(復興財確法64~68)。各条の概要は、
次のとおりです。
条 項 項 目 概 要
第64条第 1 項及
び第 2 項 ほ脱犯 10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金又はこれらの併科(ほ脱 額が1,000万円を超える場合には、情状によりほ脱額以下とすることが できます。)
第64条第 3 項及
び第 4 項 無申告ほ脱犯 5 年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又はこれらの併科(ほ脱額 が500万円を超える場合には、情状によりほ脱額以下とすることができ ます。)
第65条 申告書不提出犯 1 年以下の懲役又は50万円以下の罰金(情状により刑を免除することが できます。)
第66条 自署押印義務違反 同上
第67条 検査忌避犯 1 年以下の懲役又は50万円以下の罰金 第68条
(第 1 項)
(第 2 項)
(第 3 項)
両罰規定等
① ほ脱犯、無申告ほ脱犯、申告書不提出犯又は検査忌避犯については、
その行為者を罰するほか、法人に対してそれぞれの罰金刑を科すると いうものです。
② ほ脱犯又は無申告ほ脱犯について上記①により科する罰金刑の公訴 時効の期間を行為者の公訴時効の期間に合わせるというものです。
③ 人格のない社団等について上記①を適用する場合には、刑事訴訟法 に被告人又は被疑者が人格のない社団等であるときの定めがないので、
これを法人と同様に扱うことを定めたものです。
10 復興特別法人税に係る法人税法の適用 の特例等
復興特別法人税に係る法人税法その他の法律の 規定の適用については、次のように定められてい ますが、法人税と同様に扱うという考え方に立っ
て措置されています(復興財確法63、復興特別法 人税政令10・附則②、復興特別法人税省令 2 )。
すなわち、次の法令について、それぞれ所要の 条項を読み替える等により適用することとされて いますが、それぞれの趣旨は次のとおりです。
⑴ 法人税法関係の規定の読替え
条 項 項 目 説 明
法人税法26①三 還付金等の益金不算入 還付を受ける復興特別所得税の控除不足額を、所得税の控 除不足額の還付金と同様に、益金不算入とするものです。
同26④⑤ 復興特別法人税の負担額又は減少額の受取額を、法人税の 負担額又は減少額の受取額と同様に、益金不算入とするもの です。
同38① 法人税額等の損金不算
入 法人税と同様に、復興特別法人税の額について、これに係 る利子税の額を除き損金不算入とするものです。
同38③④ 復興特別法人税の負担額又は減少額の支払額を、法人税の 負担額又は減少額の支払額と同様に、損金不算入とするもの です。
同40、81の 7 ① 法人税額から控除する
所得税額の損金不算入 復興特別法人税から控除し、又は還付を受ける復興特別所 得税の額に相当する金額を、法人税の額から控除し、又は還 付を受ける所得税の額と同様に、損金不算入とするものです。
同67③、③五、81の13
②、②四 特定同族会社の特別税
率 復興特別法人税の額を、法人税の額と同様に、留保所得に 含めないこととし、還付復興特別法人税の益金不算入額を、
還付法人税の額と同様に、留保所得に含まれる還付金等の益 金不算入額から除くこととするものです。
同69②、81の15② 外国税額の控除 当期の控除対象外国法人税の額が当期の法人税の控除限度 額と地方税控除限度額との合計額を超える場合に、前 3 年以 内の控除余裕枠を使って法人税から控除することが認められ ていますが、その合計額に当期の復興特別法人税の控除限度 額を加えるというものです。
同80の 2 、82 前事業年度の法人税額 等の更正等に伴う更正 の請求の特例
復興特別法人税の課税標準又は税額について修正申告又は 更正若しくは決定があった場合において、これに伴い、既に 決定により確定したその後の事業年度又は連結事業年度の法 人税の課税標準又は税額が減少することとなるときも、更正 の請求の特例の対象とするものです。
同81の25① 連結子法人の個別帰属
額等の届出 復興特別法人税の負担額又は減少額を、連結子法人の個別 帰属額の明細書の記載事項とするものです。
法人税法施行令 9 ①一
ホ 利益積立金額 損金不算入とされた復興特別法人税の還付額を、法人税の 還付額と同様に、利益積立金額に加算される還付税金の額か ら除くものです。
同 9 ①一ヌ 復興特別法人税として納付することとなる金額を、法人税 と同様に、利益積立金額の計算上、減算するものです。
同 9 の 2 ①一ニ 連結利益積立金額 損金不算入とされた復興特別法人税の還付額を、法人税の 還付額と同様に、連結利益積立金額に加算される還付税金の 額から除くものです。
同 9 の 2 ①一ホ 他の連結法人から受け取る復興特別法人税の負担額又は減 少額の個別帰属額を、法人税の負担額又は減少額の個別帰属 額と同様に、連結利益積立金額の計算上、加算するものです。
同 9 の 2 ①一ヌ 復興特別法人税として納付することとなる金額及び他の連 結法人に支払う復興特別法人税の負担額又は減少額の個別帰 属額を、法人税と同様に、連結利益積立金額の計算上、減算 するものです。
同123② 合併及び分割による資 産等の時価による譲渡
(合併等により移転を する資産及び負債)
法人税と同様に、被合併法人が合併により合併法人に移転 する負債に、復興特別法人税として納付する金額でその申告 書の提出期限が合併の日以後であるものを含めるものです。
同143 外国税額の控除(地方
税控除限度額) 前 3 年以内の控除余裕額の繰越額を用いて外国税額控除を 行う場合の復興特別法人税の控除限度額について定めるもの です。
同144⑥一 外国税額の控除(繰越
控除限度額等) 前 3 年以内の控除余裕額の繰越額を用いて外国税額控除を 行う場合の地方税の控除余裕額及び控除限度超過額の計算上、
国税の控除限度額に復興特別法人税の控除限度額を含めるも のです。
同146③ 外国税額の控除(適格 合併等が行われた場合 の繰越控除限度額等)
適格合併が行われた場合において繰越控除対象外国法人税 額を控除するときの合併法人の前 3 年以内の控除対象外国法 人税の額とみなされる金額の計算について定めるものです。
同146⑥三ロ・四ロ 適格分割等が行われた場合において繰越控除対象外国法人 税額を控除するときの分割承継法人等の前 3 年以内の控除対 象外国法人税の額とみなされる金額の計算について定めるも のです。
同155の17 所得税額の損金不算入
額の個別帰属額 所得税額の損金不算入額の個別帰属額と同様に、法81の 7 により損金不算入とされた復興特別所得税の額の各連結法人 の個別帰属額を、復興特別法人税の額から控除される復興特 別所得税の額の個別帰属額に相当する金額とするものです。
同155の31 外国税額の控除(地方
税個別控除限度額) 前 3 年以内の個別控除余裕額の繰越額を用いて外国税額控 除を行う場合の復興特別法人税の控除限度個別帰属額につい て定めるものです。
同155の32⑥一 外国税額の控除(個別
繰越控除限度額等) 前 3 年以内の個別控除余裕額の繰越額を用いて外国税額控 除を行う場合の地方税の個別控除余裕額及び個別控除限度超 過額の計算上、国税の連結控除限度個別帰属額に復興特別法 人税の控除限度個別帰属額を含めるものです。
同155の34③ 外国税額の控除(適格 合併等が行われた場合 の個別繰越控除限度額 等)
適格合併が行われた場合において個別繰越控除対象外国法 人税額を控除するときの合併法人の前 3 年以内の個別控除対 象外国法人税の額とみなされる金額の計算について定めるも のです。
同155の34⑥三ロ・四
ロ 適格分割等が行われた場合において個別繰越控除対象外国
法人税額を控除するときの分割承継法人等の前 3 年以内の個 別控除対象外国法人税の額とみなされる金額の計算について 定めるものです。
同155の43②四・六・
七 連結法人税の個別帰属
額の計算(連結留保税 額の個別帰属額)
還付復興特別法人税の益金不算入額を、還付法人税の額と 同様に、留保金個別帰属額に含まれる還付金等の益金不算入 額から除くこととし、法人税の額と同様に、復興特別法人税 の減少額を留保金個別帰属額に加算し、復興特別法人税の負 担額を留保金個別帰属額から減算するものです。
同188①十 外国法人の国内源泉所 外国法人の国内源泉所得に係る所得計算において、復興特
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